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観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 弱いヒーロー Class1 (感想)

おすすめ度:300%
3人度:100%
クラスメイト度:100%
原題:약한영웅 Class 1 / Weak Hero Class 1 (全8話)

弱いヒーロー Class 1 韓国ドラマ 感想考察レビューあらすじ

優等生がイジメに対してとった行動とは…。2022年の青春アクション系ドラマ。

あらすじ・キャスト

成績優秀で勉強のことしか考えていないシウン(パク・ジフンさん)は、イジメのターゲットにされてしまう。
一方で喧嘩は強いもののバイトに明け暮れているスホ(チェ・ヒョヌクさん)は、ひょんなことからシウンと会話を交わすようになるのだった。
そんなある日、シウンのクラスにボムソク(ホン・ギョンさん)が転校生としてやってくる。
イジメグループはボムソクに近付き、シウンにある事をするよう命令するのだったが…。

感想

危うさ・痛み・青さ
とても素晴らしかった作品でした、息を呑むようでした。
最近このようなヒリヒリした痛みが画面から伝わる作品に触れていなかったのもあって、かなり夢中で視聴しました。
高校のクラスを舞台に、3人の男性たちに関するイジメや友情についてストーリーです。
またこれぞ韓国ドラマ!という静と動のあるバイオレンスさもあり、私は視聴後はかなりの満足度を得た作品でした。
激しい暴力シーンが全編通して多くありますので、苦手な方はご注意下さい。

何よりまずは、主演のパク・ジフンさんの素晴らしい演技が光っていました。ジフンさんについては、過去に数作品視聴していますが、いずれもご本人の持つ可愛らしさがどこかある役柄を演じられていたかと思います。
今作ではその可愛らしさを、内に秘めた黒い恐ろしさに繋がる役柄に見事に昇華されており、役を完全に自分のモノにした演技だなと大変驚きました。キャスティングされた方も天才だと思います。
またチェ・ヒョヌクさん、そしてホン・ギョンさん(本当に良かったです!)も文句なく本当素晴らしかったです。この3人の何とも言えない表情の演技には何度も胸を打たれました。

内容として2つに分断できるストーリーです。
お話としては、個人的には特に後半について若干キャラの描写不足を感じる箇所もありはしましたが、全8話という構成で無駄がなかったです。
場面カットとカメラワークもクリーンで美しい分、研ぎ澄まされたように彼らの壊れそうな関係性がジリジリと迫るようで非常に胸に刺さりました。
OST、オープニングや映像処理含めて全体的にセンスがとても良く、美しくまとまっている印象を受けました。

原作は同名のWEBトゥーンということですが、私は未読です。ドラマ版の視聴感想となります。

ゆるいネタバレありの感想

弱いヒーロー Class 1 韓ドラ 感想考察レビューネタバレ

ビョクサン高校1−6組。シウンは勉強が得意の学生。
クラスメイトとも一切馴染もうとせず、机に向かったままのシウン。そんな彼をヨンビンら一味がからかい始めます。
運動神経が良く売られた喧嘩には負けない一匹狼のようなスホは、そんな彼らの様子を快く思っていないようでした。
しかしイジメの脅しなどには全く動じないシウン。逆にヨンビンに「(勉強の)邪魔をするな」と警告。ヨンビンらはそんなシウンの妙に堂々とした態度に激怒するのでした。
その頃、シウンのクラスに転校生としてボンソクがやってきます。
内気そうなボムソクに興味を示すヨンビンら。ボムソクが前の学校でいじめられていたことを知り、ヨンビンは彼を”使って”、学内の試験の日にシウンに嫌がらせをしようと企みます。
シウンが満点を目指していたであろう模擬試験の日。ヨンビンとボムソクのせいで途中で身体の異常を覚えたシウンは、試験中に集中力を大きく欠いてしまいます。
無理矢理の意地で何とか試験を終了させたシウンでしたが、自己採点中にミスに気付き怒りが頂点に。
クラスメイトが注目する中、シウンは我を忘れたかのようにヨンビンらに激しく暴力を振るい周囲を震撼させるのでした。
そんな暴走したシウンを止めた者が…、スホでした。

3人の繋がり
シウンにやられたヨンビン、もちろん黙ってはいません。従兄弟のソクテ(シン・スンホさん)に復讐を頼みます。
このソクテ一味、主に高校生らから様々な手口でお金を巻き上げたりしている訳ですが、彼らもまたピラミッドの一部で搾取されている側でもあります。ソクテもまたギルスの元で都合の良いように使われ、暴力を振るわれて支配されているのでした。
そんな彼らに狙われたシウンを目撃したボムソクは、罪悪感もあったのかスホに彼を助けるように頼むのでした。
こうして3人は不思議とある意味同じタイプの3人でもあってか”仲間”となり、彼らにとって学生生活で初めての「友情」が生まれつつありました。

シウン
体育系の仕事をしている父と有名塾講師の母を持つシウン。両親は幼い頃から不仲で、シウンは愛されていないと知ります。
現実逃避のように子供の頃から勉強に打ち込んでいたシウン。父と一緒に住むものの、不在がちで孤独でした。
そんな背景のせいか、学校でも他人と関わらず孤立を好んでいたシウン。しかしそんな彼に、強引に且つあっけらかんと接するのがスホです。
スホの押しの強い態度に呆気に取られながらも、シウンは初めて”誰か”を素直な気持ちで受け入れ、勉強以外の時間をスホと持つことになります。
シウンにとって、彼の世界が外に向けて広がった瞬間でした。

弱いヒーロー Class 1 韓国ドラマ 感想考察レビューあらすじ

スホ
運動神経抜群で喧嘩も強いスホ。
とはいえ、彼のポリシーを随所に感じられるように、無闇に喧嘩をふっかけたりする訳ではありません。自身の中で正義感を持って行動しているスホ。
自分の中のルールを曲げず、強く芯を持っているという共通点に惹かれたのか、スホはシウンに興味を持ちます。
真逆のように思えた2人、いつしか信頼関係が生まれたのでした。

ボムソク
国会議員を父に持ち裕福なボムソクですが、彼は父のイメージアップのために迎えられた養子で、両親からの愛情を感じたことはなさそうです。
前の学校でイジメを受けたことをトラウマに持ち、”貸し借り”なく仲良くなったシウンとスホにやや気後れするものの、今までとは違った友人関係に安定した気持ちを得たようです。

3人の均衡と気になった点
後半のテーマになるのが、この3人の友情関係の崩壊です。
鍵となる人物がボムソクですが、個人的には彼は今作で最も複雑なキャラクターだったと思います。
ですが3人の関係性について少々キャラ描写が薄かったような。というか、もっと突っ込んで語られていればなあ…とは思えました。
ボムソクが2人に過去のイジメを話した際「結束を固めるため、誰かをのけ者にして」と吐露していることから、単なる暴力だけではなく仲間外れからそうなったと推測されます。(過去のシーンは暴力を受けている部分だけですが)
また転校当初、ヨンビンから前の学校でいじめられていたことを知られた際の怯えた様子からも、友人関係とイジメは彼の中で紙一重で、トラウマのトリガーになっていると思われました。
だからこそボムソクは、3人の間に突然ヨンが「加入」したことで、過剰な程に疎外感と危機感を覚えたり、スホがSNSでフォローしてくれないことに関して過敏に固執していたのだと思います。(スホに他意はなく、単に何も気にしていないタイプだと思いますが…)
ボムソクが抱えられる缶ジュースの本数(=友人関係)は3本だけだったんですね。(このシーンは大変切なかった)

シウンは自らの家庭環境とボムソクと似た点もあることから、彼の心情を「寂しいのだと思う」と察したと思われますが、そこに至る部分を描写としてもう少しあってもよかったと思えました。
ボムソクの歪んだ友人への嫉妬心や、新しい”仲間”へのライバル心などは、特に10代の頃は誰しもが多かれ少なかれ持つものではないでしょうか?
彼ら3人の中の友情関係の繊細さ、感情の積み重ねのシーンがやや足りないように感じました。そのため過程が飛んだようなシーン変遷で、ボムソクが単にオーバーにキレてしまったようにも見えもしたので、これについては個人的に残念に思えました。
ボムソクの心情と、3人がまだ100%親友になりきれていない繊細で青い関係の描写こそが肝になる部分だったと思われたので、もったいなさも感じました。

ボムソクはお金を使って友情を他から得ようとします。
が、彼は結局いじめられていた頃と構造は同じであることに、残念ながら状況が致命的になるまで自分を制止できません。ボムソクのプライドと悔しさ、そして気恥ずかしさもあってか、今更もう止められないところまで来ていたのでした。
ボムソクの彼の最終回のセリフは、まさにそのような複雑な感情を端的に表現したもの。
シウンはそんな彼を痛いほど理解できたからこそ、やるせなさと悲しさを感じたのでしょう。
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ということで、強固のように思えた繋がりが非常に脆く繊細だったという流れは10代の人間関係を表現している点でも(ある意味)現実的でもあり、痛みとやりきれなさが十分に伝わり良かったです。
ハッピーエンドではありませんが個人的にはとても良い終わり方で、この作品のスタイルを保ったままの残酷ですが美しいラストだと感じ印象に残りました。
シーズン2の可能性も大いにありますので、続編があれば楽しみなドラマになると思います。
観ていて辛く刺すような作品ですが、視聴後に確実に爪痕を残していくタイプのすごいドラマだと思いました。おすすめです。

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