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観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 悪鬼 (感想)

おすすめ度:100%
鏡度:100%
扉に注意度:100%
原題:악귀 / Revenant (全12話)

韓ドラ 悪鬼 感想考察レビュー

「悪鬼が憑いている」告られた女性の運命は…。2023年のホラー系ミステリードラマ。

あらすじ・キャスト

父を亡くし家計を支えるク・サニョン(キム・テリさん)は、日々の生活に疲労してながらも明るく生きていた。
しかしある日、母に連れられ父の実家に行くことに。亡くなったはずの父は、最近まで生きていたことを知らされ混乱するサヒョン。
大学教授のヨム・ヘサン(オ・ジョンセさん)も、亡くなったサニョンの父を謎を追っていたが、そこでサニョンと知り合う。
ヘサンは何とサニョンに”悪鬼”が憑いていると告げるのだった…。

感想

よく練られた作品で、大変面白かったです!!
ジャンル的にはオカルト系で古くから存在する”鬼”をテーマにしたストーリーですが、決して一筋縄で進むドラマではありません。
上手く現代に生きる我々の生活にマッチさせた設定と展開になっていて、ヒューマンドラマとして考えても非常に上手く作られたドラマだなと思いました。
また、印象が強かったのはストーリー上で抜けがないというか、辻褄が合わない箇所がほとんどなく(1か所だけ個人的にあまり理解できない点がありましたが)、話がかなりスムーズに繋がっていました。
最終回まで作品としての緊張感を失わず、スゴイなと思いました。
また全体的に”鬼”や恐ろしさを表現する時に、CGなどにあまり頼っていなかった点も良いなと個人的に思いました。
ここは、超自然や異世界のモノをテーマとしたお話ではありますが、我々の生きている自然界とある意味で繋がっているという今作の一貫した考えがあったからかもしれません。 

そして、何と言っても今作でダントツ目立ったのは、主演のキム・テリさんの素晴らしい演技です!
テリさん演じるサニョンは序盤で、テーマとなる「悪鬼」に憑りつかれていると明らかにされます。
この時点でテリさんは悪鬼のサニョン/普通のサニョンの2役を演じ分ける必要があるのですが、そのオン・オフの表情の変化の付け方が本当に圧巻で、スゴイという言葉しか表現できないかなと思います。
ちなみに、物語が進むにつれて更に別の”パターン”も増えますので、テリさんの繊細で惹きつける強い演技が、今作の大きな見どころの1つであるのは間違いありません。

脚本の良さと俳優陣の演技力が完璧にマッチした作品に仕上がっていて、とても面白く、そして強いドラマだったなと思いました。
死を多く扱った内容で不気味なシーンもありますが、気になった方は是非チェックして頂ければと思います。
個人的には視聴後とても満足度が高いドラマでした。

ゆるいネタバレありの感想

韓国ドラマ 悪鬼 レビュー考察
韓ドラ 悪鬼 あらすじ考察

幼い時に父を亡くしたサニョン。
精神的に不安定な母のためにも、彼女は1人アルバイトを掛け持ちして日々忙しく働いています。
そんな厳しい生活に追い打ちをかけるように母親が詐欺に合ってしまい、サニョンは気持ちが大きく沈みます。
終わりのない歯車のような人生、疲弊した自分はこのままどうなってしまうのか…?
そんな時、母から驚きの事実を聞かされます。父ガンモが亡くなったと。
父は昔に亡くなったはず、しかし父はずっと生きていて先日”亡くなった”と。サニョンは混乱しつつも、母と2人初めて父が住んでいた祖母宅へ。
そこでサニョンは、祖母から父が彼女に残した謎の髪飾りを一旦受け取るのでした。
祖母宅を訪れていたのはサニョンたちだけではありません、父ガンモを追っていた謎の民俗学の教授ヘサンも。
サニョンはそこでヘサンと顔を合わせることに。お互い初対面でしたが、ヘサンは突然サニョンに「悪鬼が憑いている」と告げます。
自身の母を悪鬼に殺されたヘサンは、ずっとその鬼を追っていたのでした。

悪鬼
サニョンは、自分の周囲で不可解な死が連続して発生することに気付き始めます。
警察もまた、サニョンと事件の関係性を疑いはじめますが、証拠は何も出ないのでした。
自身に憑いている悪鬼の正体を調べるため、サニョンはヘサンと共に動き始めることに。
調べる内に、古い里で行われていた風習とモクタンという少女の存在にたどり着く2人。
そしてサニョン父のガンモもまた、彼女と同様悪鬼に憑りつかれていたことも。
悪鬼の正体は、酷い状況に置かれなくなったモクタンなのでしょうか?

悪鬼 韓ドラ ディズニープラス レビューあらすじ

人の欲望
幼い子供を生贄として鬼にし、富を得ようとした人々。
全ての始まりは自らの家族にあることを突き止め、絶望するヘサン。
ヘサンの祖父と祖母は代償を伴うものの、望みを叶えるという恐ろしい約束に目がくらんだのでした。
望み通りに悪鬼の力を借りて莫大な富を得たヨム家でしたが、ヘサンの祖父、父そして母も亡くなり不可解な点も多い死ばかり。ヘサンも初めてできた友人もまた亡くなってしまい、金銭的に豊かであろうと決して幸せを感じたことはありません。
「私たちの欲が作り出した」「弱点を突く」鬼たち。
悪鬼の全貌が徐々に明らかになるにつれ、事実に戦慄するサニョンとヘサン。

悪鬼の欲望
5つの物を集めて悪鬼を消そうとした2人でしたが、真の悪鬼の正体であるヒャンイはサヒョンに自分の遺体を探して欲しいと頼みます。
恐ろしく、そしてある意味感動的でもあったのが、このヒャンイがサニョンをとても気に入ったというヒャンイが甘えるような仕草をしたシーンです。
悪鬼になったヒャンイは冷酷で自己中心的な性格も持ち合わせていますが、彼女が生きていた状況を考えると彼女を100%責めることもできないかもしれません。
実際、ヒャンイが憑りついたサニョンと状況は少し似てもいます。家族の為に自分を犠牲にしなければいけなかった2人。
ヒャンイは過去数人に憑りついていますが、彼らを殺しています。
ヒャンイがサニョンを”評価”する理由がセリフでありますが、皮肉にもこのヒャンイが気に入った彼女の”芯”こそが、鬼である彼女にとって致命的になるというのは大変面白いなと思いました。
悪鬼はもう一度「生きて」「欲望を満たしたかった」のです。
ヒャンイはサニョンに憑りついた際に、ホンセに「(自分を)好きじゃないのか?」と問うシーンがあります。
ヒャンイが当時美術の先生に恋心を持っていたのを察することができますので、サニョンの身体を使って恋愛や遊びなど含めてやり直そうという欲望が見て取れて興味深かった。
しかしヒャンイが乗っ取ったサニョンの体では、霊としての力を使って人を殺すことはもうできません。

鬼と私
ヒャンイに体を乗っ取られたサニョン。
しかしサニョンは、鬼の姿は自分自身であると気付きます。
消えない欲望、果たしなくわき上がる悩み。自分の弱みを、傷をえぐっていたのは、一体誰なのか?他でもない自分自身だったのです。
自分を救えるのは自分だけ。
「鏡」が霊を見る道具として使用されていましたが、まさにを己の姿を写すという”鍵”になっていて、ここも最後まで設定が良く繋がっているなと思いました。
生きたかったヒャンイと諦めかけていたサニョン…この2人はそのどちらもが”私”であるということ。
サニョンは、誰かのためではなく、自分のために生きる必要があるのだと気付きます。

気になった点
ストーリー上個人的に気になったのが、なぜ悪鬼がサニョンの父ガンモに憑りついたのかという部分です。
そもそも悪鬼はヨム家の繁栄のために生み出されたもの。この悪鬼が”契約”を超えてガンモの家に移るわけですが、ヘサン祖母はそもそもそれを許すものでしょうか?
特に彼女は鬼を生み出したことに今も肯定的で、特に後悔などしていない様子でした。
またもう自分の一家に憑りついていないヒャンイについて、ヘサン祖母が彼女を消さない理由もよくわかりませんでした。
ガンモの視力の問題が関係あると思われますが、そこで簡単にそもそもの悪鬼の「家長に憑く」という設定が無しになるのが少々理解ができませんでした。ここは説明不足だと個人的に感じました。

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ということで、緊迫感と適度な怖さが間延びせず描かれた全12話。
俳優さんの演技も素晴らしく、とても面白かったです!
最終回のエンディングは視力を失いつつあるサニョンにホンセが今後寄り添う可能性も微かに描かれてあり、辛い現実も多いけれど、決してそれだけではないという人生におけるポジティブな部分と自分を受け入れるサニョンの強い表情で締められていました。
単なるホラー系のドラマではなく、落としどころがとても良かったなと印象に残りました。見応えがとてもあって、大変面白かったです。

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