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韓国ドラマ D.P. 2 脱走兵追跡官 シーズン2 (感想)

おすすめ度:100%
ニャオニャオ度:100%
卵と岩度:100%
原題:D.P. 시즌2 / D.P. 2 (シーズン2、全6話)

D.P. 2 ネットフリックス シーズン2 感想考察レビューあらすじ

軍の脱走兵を追うDPと呼ばれるジュノ。彼らと自分たちが抱える問題とは何か?ヒューマン・アクションドラマ、シーズン2。

あらすじ・キャスト

D .P.と呼ばれる脱走兵を追跡する任務のジュノ(チョン・ヘインさん)とホヨル(ク・ギョファンさん)は、脱走兵を追う日々の中で意識が変わってくるのだった。
そしてそれは上司であるジソプ(ソン・ソックさん)やボムグ(キム・ソンギュンさん)も同じで…。

感想

素晴らしい見応えでした!!
シーズン2を大変待ちわびていましたので、この見事な全6話を視聴した今、ただただ興奮気味です。
伝えたかったであろうことが芯に強くあり、そして支える俳優さんの完璧な演技…!
全ての役柄を演じる方々が満点で、要はすごかったなという感想しかありません。

シーズン1と最も異なったと感じた部分は、より強いドラマチックさの構成でしょうか。
良い意味で驚きもありましたし、観ていてより伝わりやすかった。
ただその反面、1と比べて繊細なシーンの重なりから生み出される”重み”に少々欠ける気はしました。
また物事を見据える視点も違いがあるように感じました。”視線”が軍の中から、より外の世界=社会に向けられていると思いました。
そのためか、本質的な”問題”は「私たちの中にもある」という点がより強調されているように感じ、主張したかったであろうことがより伝わってきました。
シーズン1でも「傍観者」が1つのキーワードになっていましたが、このシーズン2ではよりハッキリしたセリフで視聴する者にダイレクトに訴えかけて来て、非常に考えさせられました。

ストーリーのテンポも大変良く、変に焦らしたようなカットがなく非常に観やすい編集でした。そのまま惹きつけられてシーズン2全6話を一気に視聴する方も多いと思います。
そして俳優陣ですが、まずはチョン・ヘインさん。
このジュノという役は口数が多いタイプではありません。且つ、軍隊という場所柄か笑顔がどうしても少なくなります。
このような”制限”の中、ジュノという男性がどのように感じているのかが迫ってくるようで気持ちがヒリヒリしました。
そして1と同様にホユル役のク・ギョファンさん!
絶妙なゆるいコメディの雰囲気を適度に入れた演技で、ともすればテーマ的に重くなってしまいそうな話の流れの中、良い意味で息抜きのようなキャラを素晴らしく演じられていて感動しました。
さらにシーズン1では、若干のらりくらりとしていたジソプ演じるソン・ソックさん。
この2では感情をむき出しにするような場面も多く、その素晴らしい演技に魅了された次第です。
そしてそしてボムグ役のキム・ソンギュンさんのパーフェクトな演技…と、上げるとキリが無いくらい今作ではオールスター大集合状態。
またニーナ役を演じられていたペ・ナラさんもとても印象に残りました。
とにかく上手すぎる役者さんが勢揃いで、それだけで泣いてしまいそうでした。
演技合戦になっていて、それだけでも見応えがすごい。
長いシリーズでもないですので、まだ未視聴の方はぜひシーズン1からチェックすることを強くおすすめします。

ゆるいネタバレありの感想

D.P. 脱走兵追跡官 シーズン2 感想

このDPシリーズですが、構成としてはDPであるジュノとホヨルの2人が、脱走兵の足取りを追って「捕まえる」訳です。
しかし内情を知るにつれ、そう簡単に割り切れるものでもないことを知ります。
様々なケースに向き合う内にジュノとホヨル、そして職業軍人の上司らの”意識”にも少し変化が見られてきます。ただ、感動ストーリーのように上手く進むわけではありません。
我々の身近で今もどこかで起こっているいじめや隠蔽と同様、残念ながらゼロになるわけではないという残酷な事実も一方でしっかり描写されています。
このドラマは1人1人の脱走兵の抱えるドラマを展開しつつ、特にジュノという人間を中心とした一つの部門に関係する人々の、小さくも勇敢な”抵抗”と”運動”が強く描かれています。
今作については、ストーリーの流れではなく、個人的に感じた点を書いてみます。

逃げた人の気持ち
脱走した彼らには理由があります。そのどれもが十分理解でき、同情するものばかりです。
しかし一方で、逃げた者に対する”ルール違反”についてはどうなのかという、真っ当な問題もあります。状況がいくら辛くたって、規則に従っている人々もまた多くいるのですから。
この難しい矛盾は、何も軍隊だけの話ではないことは容易に想像できます。
ルールというのはどの国にもどんな組織や社会にも存在するもので、そこから大なり小なり逸脱せざる得ない状況の時もあるかもしれません。
自分は「逃げる者」には”絶対ならない”ので大丈夫、ルールは守るから問題ない…、しかしそんな”絶対”は果たしてあるのでしょうか?このドラマでは、その点を非常に強く問いかけて来ます。
ジュノに「追われる側になっていても何らおかしくない」というセリフがありました。
ニーナの回では、演劇をする彼が外の世界でもイジメを受けていたことが短いシーンでありますが、自分や身近な人々が枠組から外れてしまわない、逃げざるを得ない状況に陥らないという保証など誰にも無いという事実にまず気付かされます。
その上で「逃げた者」に対して、その罰をもう一度考えるべきなのかもしれません。

卵で岩を叩く
これはヘヨンとウンの会話での表現です。軍内部での事件に関して、不明瞭な点を真正面からぶつかるへヨン。
彼女は岩が卵で割れるわけではないのは承知していますが、「岩に痕跡が残る」と考えています。ここがまさに、今作の伝えたい点ではなかったでしょうか。
枠となるルールを変えることは、困難かもしれません。
しかし、そのルールを支えている組織の一員である我々の小さな力で、傍観者=共犯者にならず、間違いを正すよう行動して痕跡を何度も残すことでその構成員の意識を変えることは可能であると思います。
ジソプの「僕のように後悔するぞ」というのは、傍観者であった自身への消えない後悔でしょう。

「まだ始まってもない」
シーズン2のエピソード5のタイトルが「アン・ジュノ」となっています。
彼なりにDPとして組織の一員として勤務し、また一方で脱走者の心情に触れ、やるせなさを感じます。
逃げた彼らと追う自分、何ら変わりはないということ。
また、ボムグの「こんな所に自分の子供を行かせたくない」というセリフ。これは美しいオープニング映像にもリンクしていると思います。
上述したように、彼らと私は紙一重である訳で、彼らは私たちなのです。
1人の人間としてジュノが行動し、彼の行動に感化された周囲の人々が動きます。しかし、このような”小さな”抵抗で大きく何かが変わることはないでしょう。
しかし確実に、そのわずかな波紋は伝わっていくはずです。
ジュノの最終回のセリフ「まだ始まってもいないと思うけど」は、まさにその通りだと思いました。

気になった点
・ソンウ登場
少しネガティブかもしれませんが、個人的に気になったエピソードがソンウ(コ・ギョンピョさん)です。
この2では1で主要だった役柄を集大成のように上手く入れているのですが、ちょっとソンウの突然の出現に関しては、藪から棒的な足されたような印象が否めないかなと思います。
エンディングに繋がる盛り上がるストーリーの本筋から、このソンウの存在がややズレているように思えてなりませんでした。
(演じるギョンピョさんご本人や、演技についての意見では決してありません)
・ウン弁護士
このジソプ元妻のウンですが、いきなり弁護士に転身されていて驚きました。
元々そのような資格があったのか、彼女が勉強し直したのか不明ですが、ドラマ内でのタイムラインが正直なところ歪んでいる気がしました。
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ということで、シーズン1が放送されたのが何と2021年8月。約2年後のこのシーズン2ですが、1と変わらず素晴らしいと思いました。
エンディングの雰囲気から、シーズン3の可能性がゼロとも言えなくもありません。ただ個人的に、このシーズン2でシリーズ終了であるかなとは思います。
オープニングから泣いてしまいそうになる作品ですが、鋭さと含みのある脚本と役者さんの演技で大変強い作品に仕上がっていました。
すごかったです、おすすめです。

シーズン1の感想:

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