ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ シスターズ (感想)

おすすめ度:1000%
ランの花度:100%
ドールハウス度:100%
原題: 작은 아씨들 / Little Women (全12話)

韓国ドラマ シスターズ 感想考察

貧しい3姉妹が金銭トラブルに巻き込まれ…2022年のミステリー・サスペンスドラマ。

あらすじ・キャスト

貧しい家庭に育ち一緒に暮らしている3姉妹。
長女のインジュ(キム・ゴウンさん)は経理の仕事をし、次女のインギョン(ナム・ジヒョンさん)は記者。そして高校生のイネ(パク・ジフ)。
ある日インジュは会社で唯一仲良くしていた先輩のファヨン(チュ・ジャヒョンさん)に連絡が付かないと、会社のコンサルティングを担当しているチェ・ドイル(ウィ・ハジュンさん)から告げられるが…。

感想

ものすごく面白かったです!
全編通して弛みが一切なく嫌な緊張と不安感を保ちながら、捻りが随所にありしっかり組んである話だなあ…とかなり感動しました。
毎週本当に楽しみに視聴していたのですが、回を重ねる毎に面白くなるという素晴らしい構成。とにかく本当に素晴らしかったです。
謎が残っていたり考察させられる点も多く、その部分も興味深かったです。(後述します)

シスターズという日本語タイトルで、『若草物語(Little Women)』をモチーフにしています。
ドールハウス”が1つのポイントになっていると思われますが、カメラワークもどこか「覗き見た」ようなカットや、絵のように真正面から人物やモノを中心に捉えたシーンが多く印象に残りました。窓から物語の中の彼らをのぞくような…そんな意味もあるかもしれません。
そして、何といってもセットや衣装の色調!!美術が突き抜けて良かったです。
ランの花も大きなモチーフになっている今作、全体的に花の色味のようにシックで少し青みがかった色彩に揃えられていて、大変美しかった。
衣装もどことなくクラシカルな雰囲気も感じさせ、このLittle Womenのモチーフに沿ったものになっているようにも思えました。

どのキャラクターたちも「全員どこかおかしい」部分があり、「よくわからない」という気持ちのまま観続ける必要があります。
つまりキャラへの信用度が毎回揺らぐので、視聴していて気持ちが定まらないというか、不安な気分を抱くことになります。ただそこが大きなポイントかなと思います。
このキャラに対する「よくわからなさ」が長く続くため、イライラさせられるかもしれませんが、ぜひそのまま視聴を続けて頂きたいです。

個人的に主演のキム・ゴウンさんが断トツで好きな女優さんということもあり、今作でもゴウンさんの演技に大変魅せられました。本当に文句なしで素晴らしい演技でした。今作の監督は『ヴィンチェンツォ』と同じ方ということもあってか、ソン・ジュンギさんが特別出演(カメオ出演)されています。

ゆるいネタバレありの感想と考察

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

@ggonekimがシェアした投稿

キム・ゴウンさんインスタグラムより

貧しい3姉妹、インジュ、インギョン、イネ。
芸術高校に通うイネを修学旅行に行かせようと、2人の姉はお金を用意しますが母に持ち逃げされるなど、常に金銭問題が3姉妹を悩ませます。
そんな中、長女インジュは勤務先での先輩ファヨンの横領問題、次女インギョンはソウル市長選に立候補しているパク・ジェサンの隠された事件、そして三女イネはパク・ジェサンの娘のヒョリンの絵画の”補助”と、3人は偶然にもある一家と繋がりを持つことに。
ここからストーリーの本題が。数々の事件と、そして社会とウォン家の関係が明らかになっていきます。
(以下、個人的な考察や気になった点を書いていきます)

青いランと情蘭会
インジュは先輩を、インギョンはジェサンの闇を暴くため追う2人でしたが、事件現場で謎の青いランが常に存在する共通点を発見します。
ベトナムの幽霊”と呼ばれる不思議な青いランですが、幻覚など毒性があるもの。
一般には出回っていない希少なもので、このランの”株”を持っているのは「ウォン・ギソン将軍からもらった」という校長先生と、そして将軍の家であるウォン家のみ。
ベトナム戦争でギソンを中心として発足した情蘭会というサークルがあります。
この会に入ると様々な優遇などを得るものの、人生を賭けた忠誠を誓わなければなりません。
・己の生死を預けること
・許された者以外に口外しないこと
入会すると1人1人に青いランが渡され、願いをかけてウォン家にある「父の木」に再び花を戻し”生かされ”ます。この特殊なランはこの木の元でしか生きれません。
”不要”となったメンバーは亡くなる際に、彼らのランが返却される(会からの除名=死のメッセージ)仕組みのようです。
だから現場にはあのランが残り、亡くなった人々は情蘭会のメンバーだったとわかります。

互助会としての情蘭会
回顧録から、国から”棄てられた”戦士たちが社会/国へ復讐のような形で結成されたことがわかります。
ウォン将軍が意識不明になってからは、唯一の発足メンバーの校長の話などから察するに元々の掲げていた理念とは次第にかけ離れたものになったのではないかと推測します。
恐らく当初は上層部の利権が、もっと最下層の会員にも上手く分配されていたのでしょう。しかし、どんどん情蘭会の相互扶助の意味合いがズレていったと思われます。
ウォン・サンアのせいで。
社会への復讐のために発足した会が、かつての国のような行動を取ってしまい、同じように”棄てられた”人間たちによって復讐されるのはとても皮肉な結末となりました。

ウォン・サンアという人間
最終回でサンアが校長に「なぜ私じゃだめなのか?私は選ばれなかった」という恨みや悲痛とも取れる彼女の心情を吐露する台詞があります。
つまり、サンアは”父から認められず”情蘭会のメンバーでなかったとわかります。
しかし「父なる木」の管理を任されています。(「父がくれたのはランだけ」という言葉)
サンアは幼少期から、敬愛している父からずっと認められたかったのでしょう。それが叶わず不満と愛情不足を今も抱いていることがうかがえます。
彼女が母を殺して(正確には違いますが)しまったのも、”間違っている”母を更正させ、父の賞賛を得たかったのかもと思いました。

彼女の資質を父も見抜いていたのか、彼女の利己的で歪んだところを夫ジェサンや他の会メンバーからの軌道修正を願って、サンアを会には入れなかったと思われます。
ちなみにサンアがしばしば暴走してしまうのは自信もジェサンも理解していたので、彼女は夫の”監禁”にも応じたりしていたのではと推測します。
とはいえサンアがランの管理者でありウォン家の娘である以上、情蘭会が破滅の運命を辿ることは運命だったのかもしれません。
だからこそ、可能性を考えた将軍は校長に「情蘭会」を半ば託したようにあの”ランの株”を預けていたのでは、と考察します。ランの株は会そのものを表しています。
理由として、12話でサンアが追い詰められた時、ジェサンの言葉として「打開策は(妻は)考えているのか」心配していたと知るところ。
つまり、サンアとは違い、会の性質として将軍や夫らメンバーは常にプランB,Cを用意して行動していたと思われます。
サンアはここで己の詰めの甘さと「なぜ自分ではダメだったのか」を痛感したようにも思えました。

父から決して認められず満ち足りないサンアは、ずっと”ドールハウス”で遊び続けていたのでした。
ちなみに面白いなと思ったところは、イネに対するサンアの態度です。イネはどこか達観したような性格で、サンアの挑発のような行動に乗ってこないためか、イネを「閉ざされた部屋」に入れても全く楽しそうな表情をしなかったのは良かった。
サンアを演じられたオム・ジウォンさんの表情は毎回本当に素晴らしかったです。

あの木の下で最後インジュに殺されるのを待つように、青いランと同じ色のドレスをサンアが着用してるのはゾクゾクしました。
望んだ情蘭会に入れてもらえず、ランを最後まで受け取れなかったサンア。
自らに引導を渡すように、あの花のと同じドレスで自身の幕を引いたのかなと思います。ある意味呆気ない死だったは、彼女は死を願っていたからでしょう。
死に際も、彼女の仮面が剥がれるような手法だったのは最後なのは興味深かったです。

Netflix 韓国ドラマ シスターズ 感想レビュー

「家」からの脱出
ドールハウスがモチーフになっていましたが、ウォン家(サンアとヒョリン)とオ姉妹は共に違う形で”家”に縛られていました。
お金がない姉妹たちは、各々に”夢”があるものの金銭問題のため、無意識にお互いを縛り付けている状態。それを最も敏感に感じ取っていたのがイネでしょう。
イネはその悪循環に気づき、「家から逃げる」手段を試します。
同様にヒョリンは母サンウと祖母の関係を踏襲せず、嘘の家族から自らの足で踏み出します。
ヒョリンとイネはこの物語で最もファンタジー性があるキャラでとても良かった。
現実的な問題を無視し「幸せに暮らしましたとさ」という童話のような終わりにしたのは、個人的にとても気に入りました。
最終的に3姉妹とヒョリンは家から出て、外の世界を知るのでした。サンアはドールハウスでもある家に自らの魂を縛り付けたまま破滅してしまいますが。

長女インジュ
最後まで視聴すると、正直インジュには同情してしまいました。(現段階では)彼女には側に誰もいない、目的を失ってしまった状況だからです。
姉妹と住む家を熱望していたインジュ。先輩を信じ続けたインジュ。
しかし、全ての事件が終わった後、妹たちは歩き出し、先輩ファヨンは(生きていたものの)受刑者となります。
だからこその最終回のあの暗い部屋で泣くシーンが効いていて、本当に良かったと思いました。彼女はあの部屋から新しく何かを自分の足で再び見つけ出すのでしょう。
そしてドイルとの関係もゆっくりではありますが、進展を感じさせます。

ドイルとコ室長
ドイルとインジュの関係を考える時、最も好きだったのは、最後までインジュとドイルのはっきりした”関係”が描かれていない点です。
最後、キスシーンがあると興醒めだな…と思っていたのですが、ある意味キスシーン以上のシーンがあり、告白以上の告白シーンがあり、本当に良かった!!
そんな2人の微妙な関係を、視聴者目線(?)でぐいぐい確認しに行くのがコ室長。
自らの命が危うい状況で、ドイルに「愛しているのか?」と問うシーンはネタ状態で笑ってしまいました。しかも結局最後まで納得する答えはドイルから聞けず絶命。泣けます。

ジョンホとは何だったのか
この作品で最も個人的にしっくりこなかったのが、ジョンホさんです。
次女インギョンの幼馴染で彼女常にサポートする男性。彼は本当に本当に不思議な存在でした!序盤から最終回まで私は「ジョンホは怪しい」と常に思い続けていたのですが…。
全キャラがおかしい今作、彼も理解しがたい行動をしばしば取りもします。
しかし蓋を開けると平和で完全に何もないというのは、個人的には正直ちょっと納得が行きませんでした。(彼を悪者にしたいわけではないのですが)
ジョンホだけが裏もなく、会からも狙われず無傷でフリーダムに行動できる理由がよくわかりませんでした。また率直に言うと彼がいなくても話の展開に殆ど支障がないように思えたので、このキャラに対しては本当に謎でした。若草物語のローリー役でしょうか…。
何となく3姉妹には、イネにはヒョリン、インジュには先輩(不在時はドイル)と言うようにペアを用意していたようだったので、インギョンにはジョンホと言う役だったのかもしれません。まるでモブキャラのようでもあったジョンホ…。
彼に対してはちょっと描写不足というか、物足りなさを感じました。

700億について
ウォン家の裏金ですが、結局ドイルの計らいで取り上げられずに済むようです。
ちょっと個人的に11話のインジュの涙の訴えから矛盾するようで、考えてしまいました。
彼女は「お金よりも自分自身の方が大切」だったと痛感したのです。ですが、最終回では真逆に。どのようなルートを辿ったとしても、振り込まれた元のお金は「あの」裏金だと知っているインジュたち。
それを受け取るのは、また1話に逆走するような雰囲気も感じられます。(ただ、ドラマでは”振り込まれたことに驚く”シーンのみですので、その後彼らがどうリアクションするのかは不明)
ただこれについては、悪と権力への勝利的な「めでたしめでたし」のエンディングと、(貧困の中では)結局お金がないとどうしようもないという現実性、そして元々このドラマが持つある種の不穏さ(受け取るならば再び罪に問われる可能性)など…。
それらが色々混じった帰結になっていて、とても考えさせられているのと、このドラマのもつダークさがあるスタイルそのもので、一貫性があって本当に素晴らしいと思いました。
ちなみに大おばの負債(80億)を背負ったインギョンでしたが、イネからの分配100億でここは帳消しにできるようになっているなと思います。

大おばと情蘭会との関係性の不明や、ドイルの両親の行方など残った謎もありましたが、全体的にはうまく纏めてあるなと思いました。
そして、何といってもどの女性キャラも”強かった”のが大好きでした。
ということで、見応えがあり本当に面白く視聴しました!素晴らしかったです。

こちらもおすすめ: