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韓国ドラマ 良くも、悪くも、だって母親 (感想)

おすすめ度:77%
豚度:100%
フェイスパック度:100%
原題:나쁜엄마 / The Good Bad Mother (全14話)

良くも悪くもだって母親 ネットフリックス 韓国ドラマ 感想考察レビュー

息子をエリートに育て上げた母親、しかし息子は事故に。再び母と子の生活が始まるが…。2023年のヒューマンドラマ。

あらすじ・キャスト

田舎のチョウ里で養豚場営む家に生まれたガンホ(イ・ドヒョンさん)は、母親ヨンスン(ラ・ミランさん)から厳しい教育を受け、希望通りソウルで検事となる。
久しぶりに実家に戻ったガンホを大歓迎する村の人々でしたが、彼が母に告げた言葉は冷酷なものだった。
落胆するヨンスンだったが、ガンホはソウル戻る帰り道で大事故にあってしまう…。

感想

俳優陣の演技が素晴らしく総合的には良い作品だと思いますが、私は観ていて常にモヤモヤと複雑な気分にさせられました。なんだか居心地が悪いドラマと言いますか…。(個人的な感想です)
日本語タイトルは「良くも、悪くも」それでも母親だ、という含みを持たせたものになっている反面、原題はストレートに『悪い母』です。途中まで私は原題の方が作品に合致している、と思っていました。タイトルそのものが”皮肉”を含んでいるという意味もあって、です。
しかし全話観終わった今、この日本語題の”ニュアンス”表現はなかなか上手いなと素人目線で感じました。
コメディさも多くあって面白い構成のドラマですが、エピソードのペース配分が良いと思えず、その皺寄せなのか終盤はかなり急いだ感が丸出しだったのは気になりました。テーマはとても興味深いものでした。しかしキャラの気持ちを深く訴えるような繊細な描写が思った以上になく、その機会をエンディング最後まで待っていた私にとって、その点は非常にガッカリしました。(後述します)

田舎で女手一つで育てられたガンホ。母ヨンスンは息子ガンホを妊娠中に、ある事件で夫を亡くします。
そんな背景もあったのか、ヨンスンは息子の将来を「決定」し、その道へ進むべく非常に厳しく育て上げます。彼女の恐ろしくもある執念を貫いた母の教育の甲斐もあって、まさにエリート検事となったガンホ。
しかしそんな35歳の彼も事故に遭い、記憶喪失のため7歳ぐらいの状態に戻ってしまうことに。
ここで再び母と息子の”いびつ”で”愛情に溢れた”2人の親子関係と、過去と現在の因縁の事件の背景が描かれる…、そんな作品になっています。

出演者の方々のみなさんが演技が素晴らしく、主演のラ・ミランさんとイ・ドヒョンさんは本当に文句なかったです。
個人的に今作でとても良いなと思ったのは、ガンホの幼馴染の女性ミジュ役を演じられたアン・ウンジンさんです。『賢い医師生活』でも大好きでしたが、非常にリアリティのある演技をされる方で今作でもやはり印象に残りました。
また特別出演(カメオ出演)が豪華で、チョ・ジヌンさんとリュ・スンリョンさんが出演されています。
スンリョンさんの過去作品を観られた方はニヤリとするシーンがありますので、楽しいものになっています。

ゆるいネタバレありの感想

イ・ドヒョンさんインスタグラム

妊娠中に夫を亡くし、絶望するヨンスン。彼女は愛する夫がどうしてその選択をしてしまったのか、状況から判断しても納得する答えが見つかりません。しかしヨンスンの疑問を聞き入れる者はいません。
ヨンスンは失意に暮れながらも再び立ち上がり、お腹の子に”彼女の”全ての望みを託します。
ガンホと夫が名付けていた息子の名前、その名の通り「最強の人」に育てるべく母親としての仕事が始まるのでした。

悪い母
母ヨンフンは息子ガンホの将来を裁判官か検察官と幼少期に決定。夢を息子が掴むようにまさに母は鬼になります。食事は常に腹八分として監視し、自由時間をほとんど与えず遠足すら行かせることはありませんでした。
この身体的・精神的にも厳しい教育法は、ガンホ本人はもちろん周囲の人々をも傷つけるものでした。
「悪い母」と心の中で呪い何度か反発するガンホでしたが、母は態度を変えることは決してありません。彼は屈服し、母の望み通り優秀な成績で検察官となります。
こうして、ヨンフンは子育てを「成功」させたのでした。

ガンホの事故
ソウルで検察官になっていたガンホは、母と長らく音信不通状態であったことがわかります。そんな彼が地元に彼女と共に戻ってくるようです。議員の娘と結婚の挨拶に来るに違いないと村の人々は大騒ぎ。
しかしガンホは冷たく「世話になっている人の養子になる」と告げ、母に一瞥もくれずソウルへと戻ります。ですが、その帰り道にガンホは大事故に遭います。
一命を取り留めますがガンホは記憶と身体の問題が残り、介助が必要な状況に。
ヨンフンは事故で記憶喪失のため実質7歳になってしまった35歳のガンホと、再びチョウ里で暮らすことになります。リハビリや身の回りのこと…ヨンフンはガンホを”復活”させる必要があります。
昔の「成功」した子育ての実績を振り返るように、もう一度「悪い母」になることをヨンフンは決意するのでした。

父と息子の事件
ヨンフンの夫へシク(チョ・ジヌンさん)は自殺とされますが、実はソン会長(当時は理事)に殺されていました。この事件について当時の担当検事は、今や大統領を目指すオ・テス。この2人は繋がっていて、様々な事件をもみ消していたのです。
そして現在、ガンホは何とソン会長と養子縁組しようとし、さらにテスの娘と交際中。これはもちろん偶然ではありません。
ガンホは亡き父の死因、そして母を「悪い母」に変貌させ、自分が検察官にならなければいけなかったその理由を密かに探っていた結果なのでした。

良くも、悪くも、だって母親 韓ドラ 感想考察レビュー

気になった点と考察
以下、この作品について個人的に気になった部分を書きます。否定的な部分は全てキャラや内容についてであり、演じる役者さんご本人についてでは勿論ありません。
・悪い母は正当化されること?
今作では多くの悪い母と父が描かれます。
ガンホの母ヨンフン、サムシク母、ミジュ、オ・テスと妻やソン会長。そしてガンホもです。
なかでも主人公ヨンフンですが、彼女が過去そして35歳のガンホに対して行った数々の”教育”は、常軌を逸するものだと個人的に感じました。彼女自身も「悪い母」だと認めています。
このドラマで個人的に圧倒的に不満を抱いた点は、「辛い人生を送ってきた」から”しょうがない、理解できる”と、どこかそれを正当化させているところです。途中からはヨンフンの病気も加わり、その同情ムードは加速。
背景事情と理由、ヨンフンの気持ちはストーリーとして理解できるものの、だからといって彼女の態度を正当化できるかどうかは別の話ではないでしょうか。
結局”しょうがない”と納得させる大きな理由が「母親だから」だという点です。
(ひどくても)愛すべき…”だって血が繋がった母親”、”母の愛情”なんだもの、という部分があるのが気になりました。
そんなモヤモヤを濁しつつも、日本語タイトルの「だって母親」に含まれているような気もしないでもありません。そのため日本語タイトルが割と私はしっくりきました。
もちろんフィクションのストーリーとして、母の愛強しの流れになるのは本当に理解できます。
ですが、メインのヨンフンとガンホ親子については、母親側の一方的な理屈とタイトルの「悪い母」意図を考えると、その部分こそガンホの気持ちがあまりにも無視されていると強く思いました。
要はヨンフンはガンホに手紙ではなく本気で対面で謝るべきでしたし、ガンホも辛かったのだと母に直接伝えて欲しかった。
個人的にはやっぱりここが最も残念に思ったところです。(個人の感想です)
ヨンフンはガンホの事故後に、いかに”悪い母”だったのかを痛感する場面があります。しかし彼女はそれでも教育スタイルを決して変えません。
結果ガンホは無事復帰しますので、ここでもヨンフンの”子育て”は「成功」とになります。
最終回にガンホが法廷に立ち因縁の2人の罪を明かした際、いきなり「ガンホ、万歳!」と叫んだのはヨンフン自身です。
このシーンに結構な違和感を私は覚えたのですが、この場面を長年夢見て彼女は息子を育て上げたのだろうなと察することができます。
あの時のヨンフンは、まさに”子育て”の集大成のような晴れがましい気持ちかと思いますが、一方ガンホの自らを捨てるしかなかった今までの人生はなんだったのでしょうか?そのようなことを視聴しながら考えてしまいました。

・キャラの成長が感じられない
この作品で個人的に不満だったのが、人物が心情を吐露するシーンの短さです。
色々な事情で大切にすべき人を傷つけたキャラたち、しかしその後の当事者たちの気持ちの描写があまりにもボリュームが少ないように思えました。
ヨンフンとガンホ、ミジュとガンホ、ガンホと双子、ヨンフンとミジュ、ガンホとハヨン、ガンホとサムシク、サムシクと彼の母など…。
彼らはいずれも「問題がある」関係ですが、短い会話を交わした後、簡単にもしくは単にぼんやり雰囲気に流されながら、わだかまりが解消されてます。ガンホと双子に至っては、ラストでもガンホが父だと彼らは知りません。
結局ドラマ内でキャラクターの感情の機微やぶつかり合いを描く時間が極端に少なく、しかし内容的にはそこが最も重要なのでは?というシーンをあえて端折っているようで大変残念でした。
そのせいでキャラクターそのものの内面の成長や、彼らの気付きを期待した程には感じられなかったです。
ヨンフンについては、言葉の節々から(日本語翻訳での判断です)なかなか人に対して一方的な判断を下す人物だなと思っていましたが、それを回収するような繊細な内省もなく、結局何も変わらずに亡くなってしまったと思ってしまいました。
ラストの手法は感動的ではありましたが、今までの行動の積み重ねもあり、なんだか自分勝手で独り善がりような印象さえ受けました。(個人的な感想です、すみません)

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ということで素晴らしいキャスティングととても面白い掴みで、相当期待したドラマだったのです。
が、上述した理由から個人的にはちょっとガッカリした作品となりました。
エンディングまで引っ張った数々のネタ、特に歌手の一連のエピソードについては、あれほど尺を使うならば、もっとヨンフンの内省または常にピエロ化されていたサムシクの成長を描いて欲しかっです。
恐らくですが、エンディングの子豚のシーンより、ガンホは宿命のように追っていた事件が解決したことで検事を辞め、父と母が行っていた養豚場をチョウ里で行うのではないかと考察します。
毎週楽しみに視聴していましたし、全体的には良い作品だと思いますが、個人的には何とも言えない勿体なさを感じた次第です。

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