ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ ムービング (感想)

おすすめ度:700億点
南山トンカツ度:100%
親子度:100%
原題:무빙 / Moving (全20話)

韓国ドラマ ムービング 感想あらすじレビュー考察

特殊能力がある高校生たち、彼らはお互いを知ることになるが、その背後には別の思惑が…。2023年のアクション・ファンタジー/ヒューマンドラマ。

あらすじ・キャスト

高校生のボンソク(イ・ジョンハさん)は生真面目で誠実な高校3年生。しかし彼には、空に浮かぶことができるという驚くべき能力が。
しかしとんかつ屋を営む母ミヒョン(ハン・ヒョジュさん)の注意の通り、他人にバレないように注意深く暮らしているボンソクだった。
そんなある時、ボンソクのクラスに転校生ヒス(コ・ユンジョンさん)がやって来る。
ヒスの父ジュウォン(リュ・スンリョンさん)は心機一転、街でチキン屋を始めたのだった。
ボンソクとヒスは次第に顔見知りとなり言葉を交わすようになるが、そんな2人の様子を優等生ガンフン(キム・ドフンさん)は静かに注目している様子…。

感想

最高の家族の話
素晴らしかったです!!!感動しっぱなしでした。
オープニングタイトル「무빙」の文字が浮かび上がる所から、強烈に惹きつけられる作品。(毎話とても凝っています!)
不穏にそしてユーモラスに物語が紐解かれる流れがとにかく秀逸。群像劇のように人と人とが徐々に力強く繋がっていく様子はカタルシスさえ感じました。
最もこのドラマの素晴らしい点は、とにかくキャラクターたちの徹底した描き方です。
恐ろしく丁寧に人物描写がされていて、彼らの心情が震えるように伝わってきました。全てが明らかになった訳ではなく謎も残りますが(考察は後述します)、上手くまとまっていました。
今作では飛行や怪力など様々な特殊能力を持つ人物が描かれますので、さながらアベンジャーズのようでもあります。
ただその力を目いっぱい発揮するアクション系シーンももちろんありますが、一方で個人的には今作はとても繊細なヒューマンドラマでもあると感じました。
尋常でない能力を持つ子供たち、そしてその親たちの感情。それを知る周囲の人たちや組織。
そんな彼らの心情が見事なバランスとテンポ、そしてストーリー構成で描かれていて、ぶっちぎりの文句なしで良かったです。
そのシーンの余白と会話の間そしてストーリーの流れがとにかく素晴らしく、誇張なしで私は毎話結構な涙が自然と何度も出てしまいました。
また言うまでもなく、素晴らしすぎる大変豪華な俳優さん達の最高の演技は見どころの一つです。

韓国ドラマ MOVING 感想考察レビューネタバレ
ムービング Disney+ ドラマ感想あらすじネタバレ

1-8話は主に高校生3人の話になっています。その後、彼らの親たち、そして…という大枠で3つの区切りがある全20話構成。
通常この長さですとあっても無くてもストーリー筋には影響しない(というと大変失礼なのですが)エピソードが入りがちですが、このドラマにはそのような捨てシーンは皆無。
とにかく隅から隅まで楽しめる、本当に稀有で見事な作品です。
気になった方でチャンスがありましたら、とにかく一度見て頂きたいです。損はしないと思います。
また個人的な意見ですが、皆さん色々な状況下で普段ドラマなどを視聴をされているかと思いますが、この作品こそはテンポも良いですし是非倍速視聴は控えてしっかり観て下されば…と思います。(偉そうですみません)
原作はKang Fullさんの同名のWEBトゥーンです。(私は未読です)
20話で美しく完結していますが、シーズン2の可能性を残しています。エンドロールの最後まで視聴してください。

ゆるいネタバレありの感想と考察

MOVING 韓国ドラマ 考察レビューネタバレ
ムービング Disney+ ドラマ感想あらすじネタバレ
ムービング 韓国ドラマ 感想ネタバレ

高校3年のボンソク。彼には秘密がありました。それは”飛べる”こと。
飛ぶと言ってもまだ”浮く”程度ですが、とにかく彼にはそんな特殊能力が生まれた時から備わっていたのです。
そんなボンソクを過保護気味に見守る、トンカツ店を営む母ミヒョン。
ある日、ボンソクのクラスに転校生のヒスがやって来ます。彼女とボンソクは既に通学のバスで顔見知りになっていたのもあって、2人は会話を交わすように。
一方ヒスを妙に気にする学級委員長のガンフン。彼はヒスの”何か”を知っているようです。
何やら不穏な空気が漂うチョンウォン高校…。

 謎の配達員
ボンソク母ミヒョンは、しきりにSNSのタグで事件を探している様子。
一般人が投稿した”事件”は、何故か事件性はないように扱われていることが気に掛かります。
しかしミヒョンは、写真からFE Expressの車が現場にあるという共通点を見つけ出します。
彼女の嫌な予感は的中。客足が途絶えた南山トンカツ店の前に、まさにその車が…。
ドライバーのフランクは、ミヒョン含め特殊能力を持った人間たちを暗殺する者。
実はミヒョンは、五感が飛び抜けて優れている超感覚の持ち主だったのです。

組織と親子
ボンソクやヒスそしてガンフンらと同様、彼らの親たちもまた特殊能力を持っていることが明らかに。
親たちはかつて国のため、能力を活かして極秘計画に関与する”ブラック”と呼ばれる部隊に所属していたのです。
北と南、そして協力関係にあるはずだった国。この3カ国はお互いの思惑で、特別な能力を持つ者を”使って”政治的戦略を仕掛けていたのでした。
今は任務を解かれた”はず”…しかし再び緊張状態に置かれた親たちは、真っ先に我が子を心配します。
「自分と同じ道を歩ませてはならない」子の能力を知られないよう注意を払いますが、組織はそんな甘いレベルではなかったのです。
子たちが通うチョンウォン高校こそが、能力を持つ子供を集めて力を見極めて、将来の「国のため」に人材を秘密裏に養成していた場所だったのです。
親子たちは再び国同士の争いに巻き込まれていくのでした。

ムービング MOVING ドラマ感想考察
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気になった点と考察
・ナジュの娘
フランクに殺された美容師のナジュ。葬儀に来たフランクに対し、意味深な表情をしていた女性がいました。
恐らくナジュの子供だと考察しますが、何らかの力を持っていたのではと推測します。(彼女の1人娘は病気で亡くなりましたが、”隠していた”子がいてもおかしくないと思います)
最終的に”ブラック”達の子らが集結しますが、ナジュの子だけ不在でしたので残念に思えました。
・校長/鼻が効く男性
このレヒョクという人物ですが、登場シーンが全て不愉快で怒りが湧いてしまうぐらいの役柄でした!(演じるユ・スンモクさん個人に対してではありません)
何なの…と毎回思っていたのですが、彼も恐らく嗅覚系の特殊能力の持ち主ではないでしょうか?
・クラスメイトのギス
ガンフンにボコボコにされた学生ギス、少々謎でした。
体育館でギスは怪我を負ったにも関わらず、非常勤教師に傍観されていた意味深シーンがありました。教師はギスの能力の有無を確かめていたと考察します。
もしかすると彼は「(多分)回復能力を持つ可能性があった2世」かもしれません。
ギス自身も力がない事をコンプレックスに感じていたようにも見えました。
だからこそ、能力があるガンフンを妬んであのような態度をとっていたのかも。(もしかしたら原作では詳細な背景が描かれているのかもしれませんが…)
いずれにしても彼も学校の”異常性”に気づき、ファイルを見つけて確かめようとしていました。
あの非常勤の先生は表向きは”ファイル”を知らない者ですが、カメラが仕掛けられていましたし、ファイルの内容はとっくに知っていて、彼もまた学生の能力を確認していたと推測します。
最終回ではひねくれていたギスは、別の微笑ましい”興味”を発見して良かったなと思いました。
・時間を止めた生徒
チェックから漏れた強力なパワーを持っている者が、他にもたくさん存在することを示しているのだと思います。
・ガンフンと父親
実際の戦いの際、ガンフンは能力を活かせません。
意外でもあったのですが、彼もまた父親ジェマンに大変よく似たのだと強く感じました。
愛する者に対して”のみ”、その強力な力が発揮できるのでしょう。(ヒスを助けた時の力も彼女に好意的だったから)
当初ガンフンの態度から、父親に対してどこか冷たい雰囲気を感じたのですが、最後にガンフンが父にかけた言葉。2人にしかわからない強固な絆が描かれていて、観ていて非常に胸に刺さり涙が出ました。
ガンフン父ジェマンは、もしかすると他の誰よりも強いパワーを持っているかもと感じさせられましたが、彼はブラックには選ばれていません。ここはガンフンと他の2人と大きく条件が異なります。
にも関わらずジェマンの監視は情報院によって未だ続けられていて、ガンフンはそれをとても気にしています。ガンフンが進んで情報院の職を得たのも全て父親のため。
父親を”人質”に取られていた過去のミヒョンのように、権力側の汚いやり方が浮かび上がります。

ムービング Disney+ ドラマ感想あらすじネタバレ
MOVING 韓国ドラマ 考察レビューネタバレ

・「子供を守るためなら親は怪物にもなる」
かつて怪物になりきれず、計画を失敗させたミヒョン。しかし今回は違います。
この「子」や「仲間」を持つ者の気持ちはどこに?権力に振り回された北・南両国の”エリート”たちにじわじわ効いてくるのでした。
一体誰の為に戦っているのか?多くの無駄な犠牲を生み出した時代はここで終わらせる必要があるという、国に関係なく人として共通の概念が浮き彫りになっていたのは素晴らしかったです。
権力と個々の人権という図式が後半よりハッキリしていて、胸を打ちました。
・フランクの行方
フランクはやはり死んでいなかった…!
LAS VEGASという店の前で立つ彼の姿で最終回は終わりましたが、あのお店はフランクの母が働いていた店舗です。
彼もまたコードネームではない「自身に戻って」、権力から逃れて生きることを決めたのでしょう。きっと別れてしまった母を探したいのかもと思いました。
彼はしきり能力者に子供の有無を聞き回っていましたが、2世を狙うというよりは、自分の生き別れになった母親と重ねて能力を持った子供がどのように育っているのか、どんな親だったのか知りたかったのかもしれません。
実際、ナジュが「良い母親だった」と息子から聞いた時、フランクはほんの一瞬泣きそうな表情を浮かべていました。(リュ・スンボムさんの演技がうますぎる)
・いじめられていた転校生
最終回に国家情報院でガンフンがすれ違ったのは、あの転校生です。
彼女はミン室長よりも上の立場なのは明確ですから、本来は10代の高校生ではなかったという理屈になります。なので、恐らく彼女も特殊能力の持ち主(見た目が変わらない能力?)だと考察できます。
恐らくあの女性は、ヒスの能力を見極める為に自らいじめられる状況を作ってテストしていたのでしょう。そして転校後のヒスを更に追っています。
ここからも特殊能力者を巡って、同じ権力側でも様々なルートでアプローチしていることがわかります。
・ドゥシク帰還
これは敢えて無かったかと思いますが、個人的にはドゥシクとジュウォンの再会シーンも数秒でいいから欲しかったです!!
・ボンソクの卒業式
正直、何故ボンソクが学校から姿を消さなければならなかったのか、ちょっと解釈が難しいと思いました。恐らく約束通り母を守るためだとは思いますが…。
・「少し違って特別なだけ」
彼らは特殊能力を持っていますが、彼らの望みは至って平凡です。誰よりもただ普通に暮らしたかっただけ。国が違ってもそれは同じ。
彼らの能力は我々がみんなが持つ「違い」のひとつ。このドラマが一貫して描きたかったテーマはそこでしょう。
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ドラマとしては幾つかの対立の構図が浮かび上がりますが、その根底には”家族”というものがありました。
CGも多く使われ派手で残酷なシーンがある一方、日常の小さな幸せと気づき、人としての大切なものが多く、細やかに描かれていて感動させられました。
最終回の最後にジュウォンと妻のシーンの通り、綺麗に終了していて素敵でした。もちろんその後にシーズン2の匂わせがありますが、一旦は今作は終了していると思います。
あまり他の作品と比較するのが好きではないのですが(作品それぞれの長所短所が異なるので)このドラマは群を抜いて素晴らしかったと思いました。ぜひ観て下さい、おすすめです。

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