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韓国映画 スウィング・キッズ (感想)

おすすめ度:90%
タップダンス度:100%
音楽のセンス度:100%
原題: 스윙키즈 (Swing Kids)133分

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捕虜収容所のタップダンスチーム…立場や主義が違うそれぞれの思惑とは。2018年公開のヒューマンストーリー。

 あらすじ・キャスト

朝鮮戦争さなかの韓国、巨済島(コジェ島)にある捕虜収容所。
元ブロードウェイで踊っていたジャクソン(ジャレッド・グライムスさん)は、気まぐれな所長の命令で捕虜たちでチームを組みダンスを踊ったらどうかと告げられる。
収容所の問題児だったギス(D.O.(ディオ)さん/EXO)、避難の最中にこの収容所に連れてこられたビョンサム(オ・ジョンセさん)、中国人捕虜のシャオパン(キム・ミノさん)、そして通訳を無理矢理申し出たパンネ(パク・ヘスさん)というメンバーで、タップダンスを始めるが…。

感想

大変心に残る良い作品でした。
軽妙さと明るさ、そして独特の重苦しさと厳しさ…。それぞれの対比が本当に素晴らしかったです!
また音楽の使い方が本当にセンスが良いなあと感じました。エンドロールにはThe Beatlesの曲が使われているのですが、ちょっとゾクッとしたぐらい良かったです。

舞台は朝鮮戦争中の巨済島捕虜収容所…。そんな重苦しい雰囲気が漂う中でも、タップダンスという軽快で痛快なサウンドとリズムが根底にあります。そのためか「戦争映画」ということを忘れてしまうような、コミカルさや楽しさも多くあります。
そんな戦争という狂った状況の中で、人が人として生きるということの本質や、人種や主義主張だけに囚われてしまうことの愚かさなども描いてあり、大変心に響きました。

文章が下手なうえ説明し難いのですが、全体的とにかく非常に丁寧に作られている!と一目瞭然というか、愛を持って描かれているのがヒシヒシと感じられて、その部分が本当に強く印象を受けた作品でした。
未視聴の方はぜひ、ネタバレは無しで視聴して頂きたいなと思いました。

ゆるいネタバレありの感想

ジャレッド・グライムスさんインスタグラムより

朝鮮戦争下の1951年の朝鮮半島。巨済島(コジェ島)捕虜収容所。ここには主に北朝鮮や中国の人々が収容されていました。
アメリカ軍の所長は対外的アピールのためもあり、きまぐれに部下のジャクソンに捕虜のダンスチーム結成することを提案します。このジャクソンは元ブロードウェイのダンサーでした。

ドタバタがありつつも、才能があるのか無いのか謎の訳あり4名がジャクソンの元に残ります。ジャクソンは英語を話しますが、通訳を買って出たパンネ以外は英語は話せません。そんな"4人のタップダンス"が始まります。
と、こう書くと「言葉は要らない、ダンスで心を交わす!」的な単純なストーリー展開かと想像されると思うのですが、決してそれだけではありません。
もちろんそれも多くあるのですが、彼らは彼らで色々な背景を持ち合わせています。
もちろんダンスが好き!というのは根底にあります。

ですが、個人的に視聴していて一番上手いなと思ったのが、彼らを率いるジャクソンが黒人で、彼もまた軍の中で違う扱いを受けているという酷い事実です。
ある意味、ジャクソンも何かしら捕虜という立場に共感を持った人だったのかもしれません。そんな構造もこのジャクソンと捕虜のチームという関係性に大きく響いています。

順調に練習が進むタップダンスのチーム。
しかし、楽しく愉快なお話しだけではなく、やはり雲行きが怪しくなってきます。
この収容所には捕虜が送られてくるのですが、ある日ギスの同級生の男が収容キャンプにやって来ます。
それまでは各自出身国のイデオロギーを胸に抱きながらも、収容所で自由主義の文化に触れ、感化されつつあった捕虜たち。
しかし、この男はそんなある意味"のほほん"と緩んだ根性になった仲間に対して、強烈に檄を飛ばし、敵を討つべく鼓舞します。
このあたりから、陰鬱なムードに。どんどんと過激思想になっていく捕虜たち。

そして立場的に最も厳しくなったのがギスです。
彼の兄は英雄扱いされている伝説の人物。その弟として、当然彼にも人々からは兄と同様の"行動"を切望されているような視線やプレッシャーを感じ取ります。
しかし、隠れて敵のタップダンスに夢中になっている一方の自分…。相反する複雑な気持ちを抱くギス。
そのような気持ちを持つのはギスだけでなく、ジャクソンや他の人々も立場が違えど抱えている葛藤。

それを大きく表現し爆発させたシーンが、ギスとパンネが踊ったダンスです。
David Bowieの"Modern Love"が効果的に使われたこのシーンはとても力強く、かっこよかった!
ダンス表現として扉の前で躊躇したり、障害物を蹴破ったり…という描写がありましたが、このダンスの前にあるパンネの「イデオロギー」に関するセリフと大きく関係していて、彼らの精神的な解放を求めたとっても素晴らしいシーンでした!
ほぼずっと横から撮影されているのですが、そこも人生を駆け抜けるという力強さの表現を感じとれて良かった!(しかし残念ながら結局は現実を思い知る2人なのですが…)

そして冬。
ジャクソン率いるダンスチーム「スウィング・キッズ」はお披露目の場として、クリスマス公演が初舞台となります。
この舞台は大成功。まるで戦争やお互いのイデオロギーや人種、言葉の事など全て忘れてしまったような熱気に包まれます。
ジャクソンはあのカーネギーホールの風景を重ね合わせ、不思議な感覚を覚えます。
しかしこの大喝采の裏には、様々な人々の複雑な思惑が絡み合っていました。そう、捕虜側はその場を反乱の場と計画していたのでした。

このように、戦争という重く辛い舞台設定。
"いつ"来るんだ?…と、悲惨なシーンが来るのは最初から想定できすぎるだけに、終盤の畳み掛けるような彼ら舞台のエンディングには思わず言葉を失ってしまいました。
ただ最後のエピローグのようなエンディングは、暗い悲しみだけでこの作品は終わらない、まだこの物語は"生きて"いるんだ…と、前向きな強さも感じさせられました。
このあたりも抜かりがない…とグッときました。
そして、エンドロールのThe Beatles"Free As A Bird"!最高か?!と、ただただ感動しました。本当に上手いと思います!

ということで、タップダンスを扱っているだけに、ストーリー展開のテンポも良く、またキャスティングも最高でした。
極限の状況だからこそ、明るく、そして前向きに生きる人々を強く描いた、時に誇張した表現を加え軽さをだしつつも、非常にしっかりした作品でした。
大変良かったです、とても感動しました。

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