ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 赤い袖先 (感想)

おすすめ度:75%
宮女度:100%
生きざま度:100%
原題:옷소매 붉은 끝동 / The Red Sleeve (全17話)

袖先赤いクットン 赤い袖先 韓国ドラマ 感想レビュー考察あらすじ

自分の人生を歩みたかった宮女と王、2021年のラブストーリー。

あらすじ・キャスト

宮女ソン・ドギム(イ・セヨンさん)は、機転が利く聡明な女性。
彼女はあるきっかけで世孫サン(ジュノさん)を巻き込むトラブルを起こし、反省文を命じられる。
一方でドギムは書庫である男性と知り合い、会話を交わすように。
兼司書と名乗る男性でしたが、後に本物の兼司書ホン・ドンノ(カン・フンさん)と会い、世孫の嘘だったと知るドギム。
次第に世孫と宮女ドギムは惹かれ合うが…。

感想

いやー・・・面白かったです。
世界観にのめり込むことも感情移入も全くできませんでしたが、人物について何かと解釈ができるドラマになっていて、とても興味深かった。
とりあえずは「ドギム呼んできて?」というところでしょうか。彼女と話してみたい。
気付けば私はドギマことドギムさんに夢中!視聴した皆さんと「ドギム討論会」をしたいほど。
今作の優れている点は、まさにその点ではないでしょうか。
切り口や観方によって色々考えることができるドラマというのは、その時点で優れていると思います。

今作は王サンと宮女ドギムの恋が描かれていますが、決して2人のラブストーリードラマではありません。
サンの生き様とドギムの生き様「個々の2人の生き方」のドラマだと解釈しました。

全17話ですが、元々16話予定が人気のため1話追加したとのこと。
全体的にテンポが悪く、中盤は特に悪さが目立ちました。途中に中弛みし、つまらなさを感じたのですが、終盤にかけて盛り返すものの大急ぎの展開でした。

ジュノさんの百想芸術大賞の受賞の通り、演技は大変良かったです。(私が今更言うことでもないですが…)
ネタバレですが、今作はハッピーエンドではありません。その雰囲気を最大限に活かすジュノさんの”ムード”がとにかく凄い。
具体的にはジュノさん演じるサンが、苦痛に歪むような表情をされたり、冷静さを失うような表情をされている時が特に私は良いなと印象に残りました。

原作は小説『袖先赤いクットン』という人気作品とのことです。

以下、個人的な感想を書きますが、私はドギムさんに対して結構ネガティブな気持ちを抱きました。
ドギムというキャラが好きで、そして今作を大切に思ってらっしゃる方の気持ちを否定するような意図は一切ないということを、どうかご理解下さい。

ゆるいネタバレありの感想と考察

赤い袖先 クットン 感想レビュー考察あらすじネタバレ
赤い袖先 韓ドラ ネタバレ感想あらすじ考察
赤い袖先 韓国ドラマ レビュー考察

宮女ソン・ドギム。知的で明るく、幼い頃からすでに上の者に目をかけられていたほど。
そして世孫サン。世子であった父を祖父でもある王に殺されたという、残酷な背景を持つ人間です。
実は2人は幼少期に出会っていますが、今再びその運命の線が交わります。
誰かの描いたシナリオ通りの運命なのか…ドギムは書庫で世孫と顔見知りに。
ドギムがその人が世孫だとは知らなかったからできたこと。サンもまた自分の身分を偽ったため。2人は純粋に打ち解けていきます。
サンが聡明なドギムに惹かれていくには、過去の縁もありそれほど時間がかからなかったのは自然なことかもしれません。
以降、2人の”因縁”の恋愛関係が始まります。
(以下、ドギムという女性について考察などをネガティブ多めで書きます。すみません。演じるイ・セヨンさんご本人へのものではなく、あくまでもドラマ上のキャラについてです)

ドギムの考える「選択」とは何か
ドギム…賢く宮女としてのプライドもあります。
芯が強くて物怖じせず、正しくない事柄には身分関係なく反論できる勇気もありました。だからこそ、目上の人々にも一目置かれていたのです。
そんなドギムが最も重視していたのが「自分」です。それは当然の権利ですが、この時代の女性には難しいこと。
そんな状況下でドギムがサンの”プロポーズ”を何度も拒否した理由は、
「自分を失わず、自分で決断して生きたい」から。
では、彼女の考える「自分の決断」とは果たして何でしょう?

冒頭で赤い袖について「王の女」という説明があります。宮女は全て王の所有物。
ドギムに念を押すように何度も「宮女ごときが」のようなセリフもあります。
彼女が宮女として「本来できる選択」とは、一体どれだけあったというのでしょう?
そもそもドギムが平然と王を拒めた”背景”は、ひとえに「サンは自分を許してくれる」という甘えがあるから以外考えられません。普通は断ることはできないはず。
側室になれば自由は奪われ、自分が自分で無くなるのはその通りでしょう。
実際それを強いられ体現しているのがサン、その人です。
では側室と宮女の”自由度”は何が違うのでしょう、責任や重圧ですか?
ドギムが宮女として比較的自由に「選択」でき、発言と行動が許されているのは、サン実母との元々の関係性とサンや王妃、尚宮などから気に入られて都合の良い状態の中にいるからです。
しかし彼女はそれを「自分の選択」だと勘違いしています。
もちろん彼女が聡明でサンらが満足する答えを出せるからこそ。ですが、それは発言する場を誰かから与えられてこそ発揮できるものですよね?
彼女が今まで選択したと自負するその道は、実は他の誰かの立てた計画の1つや、気遣いから(知らずとしても)手に入れたものではなかったでしょうか?実際そのような描写はあります。
私はどうしてもドギムが独りよがりで、自分が見えていない人に思えてなりませんでした。

韓国ドラマ 赤い袖先 感想あらすじ考察ネタバレ

ドンノがドギムに「(王宮から)逃げよう」と誘うシーンがあります。
ある意味「真の選択」をできる最大の機会を得ます。
(脚本的にナシなのは一目瞭然ですが)彼女は考える間もなく王宮に戻ります。なぜ?
サンの側にいたいのはもちろん、結局「宮女として自ら下したと”思い込んでいる”選択」ができる、優遇された環境に満足しているだけでは?
サンを愛しながらも宮女でいたかったドギム、女官として何がしたかったのですか?
チョ尚宮の末路を歩む未来だってありえるのに。

あるシーンではドギム友人が宮廷を離れ、町で働いているエピソードがあります。
ドギムは王と勝負し、友人を再び宮廷に呼び戻す願いを叶えてもらいます。
どれ程あの友人が戻りたがっていたのかは不明ですが、あの友達はもしかしたら宮殿を離れて別の幸せを見つけていたのかもしれないのに…、と私は思いました。
かなり意地悪な見方ですが、ドギムが自己満足で彼女を宮女に戻したと見れなくもありません。友人の選択はそこにあったのか疑問を感じました。
仲間の4人、その友情を疑う余地はありません。しかしずっと一緒に変わらず過ごすことは不可能です。実際ドギムこそが最初に仲間から”抜け”ました。
あの友を宮殿に戻したのは、彼女のエゴではないでしょうか?

終盤、ドギムの友人の1人が罪に問われて亡くなってしまいます。
彼女こそ真に「選択」して自身を貫いた宮女ですが、これが後ろ盾もない”一介の宮女”が自分で選択した悲惨な結末だと、ドギムはあまり理解していないように感じました。
友達が死んだのは、サンが「例外を認めず」助けなかったからですか?そうではないですよね。
例外は彼女だけです
殆どの女性が発言権も選択肢も人生すら持てず最期を迎えている、それに気づいて欲しかった。

ドンノの死と側室へ
サンとドギムの恋愛関係、今作では他の女性の影はさほど強く描かれていません。
しかし別の三角関係が用意されているのが面白い点。
ライバル役に、ホン・ドンノというサンの右腕でもある男性が存在します。
ドンノとドギムが、双方の翼のようにタイプ一致なのは非常に興味深かった!
ドンノさんは露骨にサンLOVEなのですが(BL的な意味でなく)、王の関心を速攻で奪っていったドギマさんに怒り心頭。
このドンノとドギムの一番大きな共通点は、2人ともが「サンは自分を捨てるはずがない」とどこか侮っていた点です。

ドンノは”一線”を越えたため、遂に王は関係を切る決断を下します。
死ぬ前のドンノがドギムに(自分が死んだら)「殺したのはドギムだ」と言い放ちます。
ドギムにとって、彼のこの言葉と死は大変なショックを与えたように見えました。
ドンノのこの”呪いの言葉”は、ドギムが死ぬ直前にサンに言い放った言葉と対になっています。
ドンノは王に罰せられ亡くなった…ドギムは彼の末路に自分の姿を重ねていたはず。
王は自分を許してくれる、と考えていた2人。(ドギムは決して言葉には出しませんが)
現実を痛感したのか、ドギムは王をみくびっていた「罰を受け入れる」気持ちになったのだと思います。
側室となり自身を王に捧げ”死ぬ”罰です。ドンノと同じように。
彼女はその罰を「自分の選択」だと納得しています。王を愛しているにも関わらず。

韓ドラ 赤い袖先 クットン レビュー感想考察ネタバレ

サンを愛していたのか?
個人的には間違いなく!ドギムはサンを愛していたと思います。しかし認めることができなかったと思います。
ドギム最期の強烈なセリフ「来世では見ぬふりをして」「望み通りに生きたい」
床に臥してもなお耳を疑うようなセリフ連発、サンのライフこそゼロよ!という状態。
痛烈な仕返しだと驚くと共に、私はここで更にドギムに失望と哀れみを抱いてしまいました。
上述しましたが側室になることは、王からの「罰」を甘んじて受け入れたとも同義。自分を殺したのですから。
この「呪いの言葉」は、自分を奪い罰したサンに対する最後の反抗でもあります。
罰を受けたのはあくまでも自分の選択であるとし、サンを愛しているという純粋な気持ち…その感情すら死ぬまで認めることができなかったドギム。可哀想な人。

愛した人は王で、自分は宮女。それを変えることはできません
ドンノが「どこから間違えていたのか…」と内省しましたが、ドギムも最初から間違えていたのです。
宮女になった時から選択肢などそもそも一切無かった、それが現実です。
「決断して」王の元から去り自由に生きることも、現実を認めることも決してできなかった女性。
エゴに縛られがんじがらめになった人、それがドギムだと思います。
ドギムはサン含め本当に多くの人に愛されていました。そして彼女も王と周囲の人をとても愛していたと思います。
現実を認めず素直に幸福を享受できなかったのは、とても不幸で傲慢なこと。
これこそが、このドラマ最大の悲劇です。

サンの最期
ドギムの呪いの言葉に苦しみ続けたサン、本当に同情しました。
彼女は一体自分の何を守ろうとしたのでしょうか?サンは答えを聞けぬまま。
ドギムが抱えた巨大なプライドとエゴ。
亡くなった今、寂しく残された彼女の衣服のようにそれはどこかちっぽけにも思えます。
最終回、サンは亡くなる直前にドギムとの幸せだった、そうなるはずだった時間を夢みます。
2人のラブストーリーはもっと単純で、笑顔で溢れていたはずだったのに。やるせなさが残るばかりです。
--
ということで、ドギムさんの考えを否定するという気持ちは毛頭ありませんが、今作でのキャラの描き方を考えるに、私はこのような気持ちを持ちました。
フェミニズムや当時の人権問題を絡めたいのは読めましたが、宮女/側室を(女性として権利があるかという視点で)全く異なるように位置付けていることがまず納得できませんでした。
どちらにしても当時の宮廷の女性たちは籠の中の鳥で、籠が広いか狭いかの違いだけです。
ドギムに野心があり、いつか独立して宮廷を出る〜などのストーリーがあれば話は全く違います。しかし彼女は女官としての人生に固執していました。
この作品は良くも悪くも「ドギム・スタイル」を一貫して描いてあり、彼女の生き方のドラマです。
そしてそんなドギムを「王として」愛するしか方法がなかったのがサン。
悲劇の宮廷ロマンスというよりは、本来は平行線だった2人のザ・生き様ドラマ!として私は興味深く視聴しました。
全17話(U-Nextでは意味不明の全36話ですが)ぶち抜きで、ひたすらドギムさんについて考えされられた作品となりました。

こちらもおすすめ: