ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 海街チャチャチャ (感想)

おすすめ度:97%
幸せとは度:100%
原点回帰度:100%
原題:갯마을 차차차 全16話

f:id:mirume01:20211017184549j:plain

ソウルから離れ海辺の街で開業すると決めた女性歯科医、そこには個性的な住人がいて…。2021年放送のラブコメ/ヒューマンドラマ。

あらすじ・キャスト

気が強く自分を曲げない性格の歯科医のヘジン(シン・ミナさん)は、勤務先の院長と診療方針の意見の違いでもめてしまい、トラブルの末にソウルを去ることになってしまう。
そんな時海辺の田舎町コンジンを訪れ、ひょんなことからドゥシク(キム・ソンホ/キム・ソノさん)に出会い、助けられることに。
ソウルで歯科医を続けられないと悟ったヘジンは、この街で心機一転、歯科医を開業することにするが…。

感想

今だからこそ、幸せって?
とても素直で良いドラマでした!!!
ヒネリを入れず基本的でとても誠実なストーリーラインで、完全に「あえて狙っていない」という意図がしっかりと感じられて本当に良かったです。
このコロナ禍において、人々の価値観が大きく変化したと思われる時こそ
「その価値観は自分に合っているの?」
「自分にとって大切なこととは?」
「我慢せずにもっと話そう」
と、やんわりと問いかけるエピソードが多く、大変上手いなあと思いました。
この時代だからこそ、今まで走り続けた自分を見直してみない?、というメッセージ性一貫してありました。
のんびりした美しい海辺のロケーションを最大に活かした映像と、視聴者にストレスを与えないストーリー展開が本当に素晴らしく、純粋に「観ていて楽しくてジーンとくる」という基本に立ち戻ったドラマだなという第一の感想です。

個人的にとにかくタイトルの『海街チャチャチャ』という絶妙なダサさが、最高にセンスがあるな…とタイトル発表の時に既に唸ってしまいました。
チャチャチャという語感の楽しさテンポの良さに、海街という悠々閑々とした印象。コンジンというレトロさを残す街と住人達に100%合致のタイトル。
ベーシックお話ですがタイトルやお話のテンポ含め、最後までかなり緻密に計算された作品だと思います!

主演のキム・ソンホ(キム・ソノ)さんとシン・ミナさんのえくぼカップルも、キャラと作品の雰囲気にはちゃめちゃに合っていました!!
キム・ソンホさん以外考えられないというぐらい、ホン班長がハマっていました。

そしてこの海街コンジンの住人の皆さん…。
韓国ドラマの真骨頂というか、毎回本当に震えそうなぐらい「上手い!!!」と思うのが、(ドラマお馴染み)街のおじさん・おばさん達を演じる俳優陣の皆様です。
とんでもねえぐらい、どの方も演技が泣くほど上手くて(もちろん主演の2人も上手いですが)、作品全体の底上げが半端ない。
リアリティとやり過ぎ感のミラクルな融合で、我々の心をコンジンに瞬時に連れて行ってしまう彼ら…。そんな名脇役の方々がこのドラマでも大炸裂。
このあたりの俳優さん達の素晴らしさですが、韓国ドラマを観ていていつも「スゴイな(語彙力)」と、個人的に毎回呆気に取られてしまう点で、大きな魅力の1つであります。

ちなみに、このドラマの原作は『どこかで誰かに何かあれば間違いなく現れるMr.ホン』という映画作品だそうです。(未視聴)

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

김선호(@seonho__kim)がシェアした投稿

キム・ソンホ(キム・ソノ)さんインスタグラムより

ソウルで歯科医をしているヘジンでしたが、彼女の性格もあってか病院長と診療方針の違いでもめた末、退職。
別の病院で働こうとしたものの、彼女が酔って取った行動が同業者の中で噂となり、最早ソウルで歯科医としては働けない…、と絶望するヘジンさんです。

そんな時に家族との思い出の街コンジンにやって来たヘジンさん、そこでもトラブルが待ち構えていました。そんな"都会の女性"のヘジンは、コンジンではどこにでも出現する謎の男性ドゥシクに出会って度々助けられます。
街の住人から歯科医が無いという話を聞いたヘジンは、勢いにまかせてコンジンで開業する!と半ば無計画に決定。
こうして、ヘジンは江原道チョンホ市コンジン洞の住人になります。

ヘジンがこの海辺の田舎町で生活を始めるにあたり、ここでも場面にも漏れなく出てくるのがドゥシクさんです。
ある時は市場の仲買人、ある時は不動産屋…他にもバリスタや宅配の配達、サウナで働いたりと、神出鬼没なドゥシクさん…。住人の平均年齢は高いコンジンで「なんでも屋」状態のドゥシクさんですが、もちろん適当に仕事をしている訳ではありません。
宅地建物取引士など、すごい数の資格をきちんと取得していました。

コンジン新入りのヘジンですが、自分の主張を曲げず、クールで白黒はっきりさせるタイプの女性。都会であるソウルとは異なり、人との距離感が近すぎるコンジンの住人たちとなかなか上手くいきません。
頑なな態度を取るヘジンですが、そこでドゥシクがやんわりとヘジンの考えにも理解を示しつつ、彼女にも人々に歩み寄る気持ちが必要だと告げます。

このように当初はハリネズミのスムスミのように常にトゲトゲしさを感じたヘジンでしたが、海風とドゥシクさんの笑顔のおかげで、態度も表情も次第に軟化。
彼女の内面や考え方にも変化が見られます。
加えて、ヘジンは視聴者と同じくドゥシクにどんどん惹かれていくことに…。

途中から、ヘジンの大学の先輩であり、プロデューサー(PD)として活躍しているソンヒョン(イ・サンイさん)がコンジンへ取材でやってきます。
実は彼は密かに学生時代からヘジンのことを想っていて、コンジンで再会することになります。

順調そうに進むヘジンとドゥシクのラブストーリーですが、ドラマの中で少しずつドゥシクの"闇"が次第に見え隠れします。
彼は今でも医師の元を訪れ、悩まされている悪夢について語っているシーンや、コンジンでは誰も知らない彼の空白の5年間について…。
そんな彼の明かされない、そしてドゥシク自身も口をつぐんでしまう過去に、ヘジンはモヤモヤを抱えることに。
彼女はハッキリしていてせっかちな性格のため、どうして彼が語ってくれないのかと理解できず悩み、気持ちのズレが2人の間に生じます。

f:id:mirume01:20211017184616j:plain

この2人の恋愛模様と上手く対比されていた関係が、統長ファジョンと元夫の洞長ヨングクの関係です。
彼らは3年前に離婚しているのですが、今現在も微妙な距離感を常に保っている2人。
どう考えても嫌いで別れたようには見えないのですが、ヨングクは藪から棒に妻ファジョンから離婚を突然言い渡されたそうです。
一体理由は何なんだ、と再び確認するヨングクにファジョンは「わかるはずない、死ぬまで」と告げる元妻。
この2人の関係が本当に切なくて、なかなか涙がこみ上げる部分がありました。

12話では、ついにファジョンが離婚を決めた背景が明らかにされるのですが、「うわぁ…!!」と胸に刺さったシーンの描写が、同じく12話のタラのスープの映像です!
夫が泥酔して話す様子をひそかに聞いていたファジョン、翌朝彼の洗濯物を集めながら感情が爆発し、夫であるヨングクと言い争いになります。
洗濯物が夫のために用意したタラのスープにじわじわと染みてくる描写と、ファジョンの涙がじわじわとこみ上げる表情がリンクしていて、本当に演出(と演技)が上手いな…と感動してしまいました。
彼女の心にずっとあったけれど蓋をしていた夫へのどこか引け目のような気持ちが、今大きな波になって広がり、止められない…という心理描写が、あの布のじわじわと染みる、浸食して戻らないような様子が出ていて、グッときました。

結局ファジョンは、元夫ヨングクに直接は離婚理由は明かしません。(ヨングク自身ががオ・ユンの話を元に知ります)
そんな彼女が、ヘジンに「簡単に心の内を話せる人もいれば、そうでない人もいる」と、ドゥシクが過去を話してくれない事に悩むヘジンに伝えます。そうなんですよね。
このシーンも彼女の離婚、ファジョン自身の素直になれない性格含め、しっかりと響くセリフでしびれました。

全体的にこのドラマは価値観を我々に問う点が多くありました。
ただ、個人的にやや気になった部分が、2点あります。
まずは、ドゥシクさんの「(難関)ソウル大出身」という設定です。ドゥシクがあれだけ多種多様な資格を取得できるのも、頭が良いという長所が大いに関係していると思います。
ですが免罪符のように「ソウル大出身"なのに”田舎町に戻ってきて無職なの」と、ソウル大出身ありき、が前提としてあるのが多少ひっかかりました。
(ヘジンが彼を紹介する時に頻出するセリフなので、彼女の元々の価値観が大きく関係しているのはあります、そこは理解していますが…)
ただヘジンの性格を抜いても、設定として何となくエリート以外が田舎に戻って無職…だと、特筆すべき問題でもないのかな、とも思わせられ、様々な価値観を尊重するという意図からズレるような気もして少々モヤモヤはしましたが。
(まあドラマなのでわかりやすい設定が必要なのは当たり前なのですが…)

もう1つは、ドゥシクを悩ませていた過去の件。
彼がソウルでファンドマネージャーとして働いていた際の出来事が、ついに終盤明かされます。
ドゥシクは事件以降ずっと責任を感じ悩み、悪夢に苦しんでいた訳です。
ですがその関係者たちが、"ドゥシクはもう許した!"的な態度を都合よく取ったようにも思えてしまい、個人的にモヤモヤしてしまいました。
そもそも、先輩やおじさんの2つの件共に、発端からどう考えてもドゥシク1人を責めたり、恨んだりするのは筋違いとも思えます。
あの男性も「恨む対象が必要だった」と認めながらも、ドゥシクに謝罪しないのは如何なものかと、かなりイラっとしてしまいました。
別の視点で見れば、ドゥシクは彼らから"責められるべきでない”十字架を背負わされ、長年苦しんでいたわけで、そんなドゥシク自身の「恨む対象」は一体どうなるの?とも思えました。
結局ドゥシクのような優しい人間が自分を責めてしまい、責任を抱えてしまうのは良くはないと思います。(今回はドゥシクが悪いとはあまり思えなかったので…)

ドゥシクは"許され”、長年の呪いからやっと解放されたようです。
最終回では文句ナシの完璧な大団円を迎え、チャチャチャは終わってしまいました。
わざとらしさを残しながら(良い意味で)、大フィナーレのようなエンディングに持って行ったのも、らしくて上手いなと感じました。
全体的にこの作品はフィクションっぽさとリアリティっぽさの表現のバランスが絶妙でした。

ということで、のんびりした海街を舞台に、生きていく上で「当たり前だけれど難しい」見過ごしてしまう人との繋がりや意思疎通の大切さなど、再度痛感させられました。
毎週末楽しませて頂きました、ありがとうございます…!という作品でした。とてもおすすめです。

こちらもおすすめ: