ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ マイ・ディア・ミスター ~私のおじさん~感想

おすすめ度:100%
心のろうそく度:100%
生きるとは度:100%
原題:나의 아저씨(私のおじさん) 全16話

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罠にはめようとした相手、それは私の心を揺さぶる人だった。2018年放送のヒューマンドラマ。

 あらすじ・キャスト

建設会社で契約社員として働くイ・ジアン(IU/アイユーさん)は、職場に一切馴染んではないものの日々真面目に勤務していた。
ある日、ジアンの上司のドンフン(イ・ソンギュンさん)の元に、差出人不明の商品券の束が届き、驚愕するドンフン。
誰にも知られないよう、引き出しに商品券をしまい込むが、ジアンはその様子を見ていて・・・。

感想

良かった…というと簡単すぎるというか、なかなか感想が書きにくい作品ですが、一言で言うとやっぱり「良かった」ドラマです。
非常に丁寧に繊細に語られた、ジアンという女性、そして生きるということの物語。
そしてジアンやおじさん、周囲の人を通して、視聴者自身に問いかけるような静かで暖かい作品でした。

かなり重いストーリーで、夜のシーンが多いのもあって画面も暗いです。
ですが夜の道の街灯のような、地味ですが心強さと優しさをほんのりと感じる存在のような…。この作品は、かなり心に残ったものとなりました。

お話ですが、ドンフンとジアンの2人の関係がメインです。
ジアンの境遇があまりにもひどいので、そちらに目が行ってはしまいますが、ドンフンもまたジアンが言うように「真面目な無期懲役囚」のような暮らし。
弁護士の妻と、夫婦の歯車はもはや噛み合ってはおらず、何となく鬱々とした日々を送っています。

おなじ職場で働くジアンとドンフン。
当初ジアンはドンフンを罠にはめようとするのですが、ジアンはドンフンに別の感情を抱きはじめます。

イ・ジアン役IU(アイユー)さん
これ以上可哀想な女性っている?というぐらいの境遇に置かれているジアン、21歳。
借金、高齢で耳が聴こえない祖母…。
少しかすれたような声、人を信じていないような表情、無口で愛想がない様子、IUさん、本当にジアンという役が完璧で、全ての演技が素晴らしかったです。
ジアンが本当に存在しているようにも思えました。

パク・ドンフン役イ・ソンギョンさん
優秀で部下からの信頼も厚い"おじさん”。
だけど会社でのそんな印象と、プライベートのおじさんの姿を嫌味にならず、かっこよすぎず演じておられて、良かったです。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
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オ・ナラさんインスタグラムアカウントより

このドラマで一番最初に「いいな」と思った点が、衣装やセット、メイクでした。
色も抜けたような重そうな、黒いパーカーしか持っていないジアン。
髪もボサボサで唇も乾燥してつやがなく、顔色も悪く不健康そう…そんなジアンっぽさを完璧に仕上げていたメイクと衣装でした。
またドンフンの衣装の薄手のコートも、割と背中の部分のシワがまあまあすごくて、彼の生活になんとなく暗い影がある様子、エリート的な立場でありながらも内情決してそうではない、という部分の表現。
一方でドンフンに敵対するジュニョン(キム・ヨンミンさん)は、皺1つないかっちりしたトレンチコートを着用していて”武装”している点など、それぞれのキャラを引き立てる衣装として上手く使っているなと、かなり感心しました。

ジアンはドンフンの携帯電話に盗聴器を仕掛けて、彼の生活を聴き始めます。
電話に盗聴器というと、通話内容だけかと思ってしまうのですが、通話していなくても電話を持っていれば全ての会話を聴いています。
半分依存症かというぐらいで始終ドンフンの会話を聴いていたジアンですが、彼女はだんだんとドンフンの真の人柄に触れます。
こう書くと、「彼はいい人だったんだね!」という安易な印象を受けるかもしれませんが、ここは本当にドラマを観て下さい!としか言えねえ…という説明が非常に難しいところです。

ジアンは赤貧と孤独の中で、このドンフンの会話をじっと聴いているわけです。
友人と飲んでいる時の会話、夫婦の会話…遠い関係でドンフンを利用しようと思っていながらも、素のドンフンを誰よりも身近に感じてしまった彼女。

面白いなあと思ったのが、最後にこの盗聴がドンフンにバレてしまうのですが、ドンフンは逆に愛おしそうに携帯を触ったりするんですよね。
まるで側にジアンがずっといたんだ、とドンフンが安心したようにも見えて、ここは本当に胸にぐっと来ました。
お互いに素をさらけ出している状態だったことがわかって、むしろホッとしたような表情のドンフンがとても印象的でした。
属するコミュニティによって話す内容やキャラを変えることは、日常生活では往々にしてあると思いますが、このドンフンとジアンの関係は壁がない関係という部分を表していました。

ジアンはこの2人関係を恋愛だと思っていましたが、ドンフンはそこは共に闘っている"同志”のような関係だと(きちんと)理解していたところも素晴らしかったです。
また、ジアンは彼を恋愛対象として好きだ、という設定も上手いなあと思います。
彼女の未熟さや若さ、愛されたことがない経験、親子関係への憧れなどもあって、ドンフンを好きと表現する、また、そう感じるのは当たり前だと思います。
素直に好きなんだと実直にぶつかる様子も、彼女の強さと怖いもの知らずの部分も出ていて良かった…。

個人的にドンフンとジアンとは別に好きだったキャラはジョンヒ(オ・ナラさん)です。
ジョンヒの役柄はとても興味深くて、悲哀もあって素晴らしかった。
不満点といえば、彼女と僧侶サンウォンの過去が謎でした。
弟のギフン(ソン・セビョクさん)とユラ(クォン・ナラさん)を描くボリュームを減らして、ジョンヒの過去をもう少し描いて欲しかったです。
そしてジョンヒが好きだったサンウォンがどうして、あのコミュニティを抜けたのかがもう少し描写して欲しかったな…。
非常に強いつながりを感じた、あのドンフン達の仲間や家族ですが、サンウォンやドンフン妻のユニ(イ・ジアさん)のように「合わない」人もいる点をちゃんと描いていたり、セリフにして明確にしている部分はリアリティがありました。

印象的な撮影場所の1つとして、踏切があると思います。
私はあの踏切の音を聴いてから、ジアンがドンフンの盗聴を止めたのも、心の区切りを表現していて、とっても良いと感じていたのです。
ソウルの二村駅(イチョン駅)にある踏切だそうですが、このドラマの雰囲気やテーマに踏み切りという場所も合っていて、良いロケーションでした。

全体的にちょっとした良いシーンやセリフが多数ちりばめてあったので、感想がかなり散漫になってしまいすみません。
とにかくまずは観てください!!(2回目)としか言いようがないタイプのドラマです。
重く暗くて、盛り上がるシーンが大きくあるタイプのドラマではないので、面白くない、つまらないと感じて観るのを途中で止めた方もいるかもしれません。(私は中盤ジアンが可哀想で、しばらく小休止していました)
ですが、何か残していくものがある作品であるのは確かですので、是非観て頂きたいドラマでした。OSTも良いです(”Dear Moon”が素敵でした)

最終回と前の終盤は涙が止まりませんでしたし、ジアンのように「ファイト!」と言える人間でありたいです。単純ですが…。
とにかくよくこの重く暗いテーマをドラマとして制作し描ききったなあと、韓国ドラマ界のジャンルの深さに驚くばかりです。
観ていて辛い部分もありましたが、ろうそくの灯のように心に優しく残るドラマとなりました。大変素晴らしかったです。

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