おすすめ度:88%
財閥ファミリー度:100%
手帳度:100%
原題:눈물의 여왕 / Queen of Tears (全16話)
財閥家の女性と結婚したものの、妻に我慢できずに離婚を切り出そうとするが…。2024年のロマンティック・コメディ。
あらすじ・キャスト
財閥クイーンズの娘ホン・ヘイン(キム・ジウォンさん)と格差結婚した、ペク・ヒョヌ(キム・スヒョンさん)。
逆玉の輿として羨望の的だったその結婚でしたが、数年後のヒョヌは離婚したくてたまりません。
そんなヒョヌが遂に離婚を言い渡そうとしたその時、へインからある問題を知らされます。その話が信じられないヒョヌでしたが…。
感想
よくあるベーシックなドラマ題材を使って、丁寧に話が組み立てられていて、面白い良いドラマでした。
観る人によって好き嫌いが別れにくい、”オールラウンダー”タイプの愛される作品だと思います。
『幸福の王子』考察も不要だと感じましたし、小難しさがなく素直にストーリーが進みますので、視聴していて物語の良さが純粋に伝わってきました。
色々な人間関係において「側にいる」…、それが一貫してテーマになっていて、良かった!
ただ、残念ながら残り4話程になってから、繊細さと深みを失い一気に平凡な昼ドラ風になってしまったかなとは私は感じました。(後述します)
「もっとできたはずなのに…」と勝手に勿体なさというか、視聴後最高だった!と言い切れない感じは残りはしました。(個人的な感想です)
大財閥の娘と結婚した田舎出身のエリート男性ヒョヌ。
スタートはコメディタッチでヒョヌの財閥家の婿としておもしろおかしく展開されますが、"問題”発生以降は面白さの中にも、心をグッと鷲掴みにされるような描写が多かったです。
主人公2人ではない脇キャラの短いカットでも泣けるような、全体的に手抜きのない良質なシーンが多かったドラマでした。
良質なドラマには素晴らしい俳優さんが存在するのは当たり前なのですが、今作も皆さん漏れなく文句ないキャスティングで大変良かったです。
特に主演のキム・スヒョンさんですが、役柄にピッタリでハマっていました。
個人的にスヒョンさんはコメディ調の演技も、そして演技が、抜群に良いという印象があるのですが、
今作でも特に序盤は小ワザが光ったオモシロ演技が炸裂していたので、上手いな~と思いました。
メイン2人の演技に加え、脇を固める俳優陣も全員本当に素晴らしかったです!
脚本家が『愛の不時着』の方、そして監督が『ヴィンチェンツォ』を手がけた方なのです。
その縁でしょうか、この2つの作品に関係する方々がカメオ出演(特別出演)で登場されいますし、その他ドラマのオマージュシーンもあります。
未視聴の方は楽しみにして頂ければと思います。
ゆるいネタバレありの感想
クイーンズグループの3世、財閥の娘ヘイン。
彼女は田舎出身で名門大学を卒業後に、弁護士になった夫ヒョヌと結婚生活3年目。
世紀の結婚のように噂になった現在…。
彼らは寝室も別で広い邸宅に住む2人は同じ会社で働きながらも、会話を交わすことは必要最低限のものばかり。
夫のヒョヌは妻へインの傲慢さと冷酷さ、そして財閥家の面倒な人間関係としきたりにウンザリしていたのです。
ヒョヌは「離婚する」と遂に決意し、田舎の両親にまでそれを伝えるのでした。離婚届も準備して、親友の離婚専門弁護士にも相談済。
これで別れる準備はしっかり整ったのです。
寝耳に水、へインの話
我慢の限界、ヒョヌはへインに離婚を申し出ようとします。ですが、そこで思ってもいなかった話が。
「余命3ヶ月」
へインの死が近いと聞かされたヒョヌは混乱。
しかし、これはヒドイですが、ある意味「渡りに船」でもあるのかもしれません。死別すれば、自動的にへインとも財閥家ともすんなり離れられるからです。
ヒョヌはひとまず離婚の話は保留し、残り3ヶ月をへインに”尽くし”金銭的にも円満に死別を…と考えているようです。
再び恋愛期
実は2人の結婚は純粋な恋愛から始まります。
ヒョヌはへインが財閥家の娘だということすら気づいていないレベルで。
結婚後も2人は仲が良かったのですが、へインが流産してから2人の間に深い溝ができてしまって修復できずにいたのです。
しかしその溝を無理矢理にでも埋めざる得ない緊急事態の今。
ヒョヌは過度にへインを気遣って優しくするのですが、どこか抜けているへインは、彼の優しさに純粋に恋愛感情が芽生えるのでした。そしてそれはヒョヌも同じ…。
2人はもう一度自然にお互いを好きになっていたのでした。
ウンソン登場
再び信頼関係を築いた2人でしたが、やはり問題が。
へインの”友達”ウンソンが2人の間に、そしてへインの家族との間に入ってくるのでした。
そしてこのウンソン、実はへイン祖父の愛人モ・スリの実の子だと明らかにされます。
ウンソン、スリ、そしてへイン弟スチョルの妻ダヘらがグルとなって、このクィーンズグループの乗っ取りを狙っていたのでした。
加えてヒョヌが”保留”していた離婚について、へインや家族にバレてしまいます。
へインはヒョヌが裏切ったとして激怒し、2人の仲はまたもや深く亀裂が入ってしまいます。
そんな中でもへインの病状は思わしくありません…。
気になった点
・ウンソンの描き方
パク・ソンフンさん演じるウンソン…、彼は本当に愛に飢えた可哀想なキャラだったと思いました。
彼はいわゆる2番手であり悪人キャラでしたが、主要な人物でもあります。
ソンフンさんの演技変化が素晴らしく、後半はどんどんウンソンが悪人化していて表情の演技からもそれが際立っていて怖かったです。
このドラマのテーマは個人的に「側にいてくれる人」についてかと思いますが、彼にはずっと誰も側にいてくれる人がいませんでした。
そんな人生を生きてきたウンソン、彼が母を渇望していた辛い幼少期の背景があったのですから、彼が長年抱え続けた苦しみにも「救いと罰」を用意してあげて欲しかった。
自爆のような終わり方は非常に味気なく呆気なかったです。
これではウンソンが単なる深みのない”悪者”で終わってしまい、個人的に今作で最も残念に思った箇所です。
・ヒョヌの交通事故は必要だったのか?
15話最後にダメ押しで事故に遭うヒョヌ。
相当な事故のように見えましたが、かなりのスピードで”復帰”を果たしたので、ただのネタ感があって申し訳ないですが苦笑いしてしまいました。
更にその後続けて大きな傷を負いますので、正直一体あの交通事故によって物語にとって何がプラスになったのか…。
事故→事件の連続の騒動でヒョヌの身体はどう考えてもヤバい状況だったと思いますし。
最終回「ヒョヌはどうなるの〜?」という煽り目的以外考えられませんでしたが…。
この事故は個人的には茶番感と古臭い盛り上がりを単に付け加えただけの蛇足のように思え、ガッカリしました。
・モ・スリについて
息子ウンソンが暴走したのは母モ・スリのせいでもありますが、この強欲な人生を歩んできて彼女は一体何を悔いたというのでしょうか。
最初からこの女性の恐ろしさが出されていましたが、事の顛末としてはフツーでしたのでちょっとスッキリするものがありませんでした。
ボコボコにされたからヨシ!ってものでもないと思いますので…。
派手に成敗されて欲しかったというよりは、最後に色々と詰め込みすぎて”その後”について納得させられる描写時間が圧倒的に少なかった。
長年の息子との軋轢、彼女の本当の気持ちは一体何だったのでしょうか?知りたかったです。
今までは「訴えるには時間がかかる」などの理屈で訴訟に進まないことばかりでしたが、最終回のスピード感がすごいなと思った次第です。
・へインの記憶の戻り方
手術後記憶を失ったへイン。
過去の自分からのノートを運よく受け取り、一瞬で”把握”してしまったへイン。
このへインがヒョヌのことを思い出す流れも、もう少し丁寧に時間をかけて描かれていても良かったのでは…?
この記憶の”雪解け”がかなりのドラマティックなポイントになるかと期待していましたが、手帳の力が絶大すぎて拍子抜けしました。
・84歳没のへイン
へインが病気が再発せずに、人生をヒョヌに見守られて終えたことが描かれます。ハッピーエンドです。
この老後(?)シーンは好みが分かれるかもしれませんが、私はあまり良いと思えませんでした。
というのも、そんな未来のことより現在のアレコレに描き足りない部分が余りにも多すぎました。
彼女が何歳で亡くなったか…そこはヒョヌが奇跡の復活を果たしたり、へインが脳の手術を受けたのに髪を剃る必要がないように、ファンタジックなままでいて欲しかったです。少々興醒めしました。
2人の仲は強固で、お互い自分の未熟さと短所に気付いた…それで良かったのでは、と思います。
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ということで、総合的にはとても良い楽しいドラマだったと思います。
ただ後半から、往年の韓国ドラマあるあるのオモシロ・ビックリ展開が強くなってきて、個人的には繊細さに欠けた大味な流れになったなと残念に思った次第です。
とはいえ、キム・スヒョンさんとキム・ジウォンさん、パク・ソンフンさんら全ての俳優さんの演技も見応えがあってレベルの高いドラマでした。
視聴しやすく、エンタメドラマとしての面もしっかり取り入れてある作品楽しかったです。おすすめです。