ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 庭のある家 (感想)

おすすめ度:65%
食事シーン度:100%
庭度:100%
原題:마당이 있는 집 / Lies Hidden in My Garden (全8話)

庭のある家 韓国ドラマ 感想考察レビューあらすじ

何か異臭がする家、夫を疑う女性…2023年のサスペンス系ドラマ。

あらすじ・キャスト

郊外の豪邸に病院長の夫ジェホ(キム・ソンオさん)と息子と住むジュラン(キム・テヒさん)は、庭からの異臭に気づくが、夫らは取り合ってくれない。
一方、妊娠中のサンウン(イム・ジヨンさん)は夫から日々暴力を受けていた。しかしある連絡をサンウンは突然受けるのだった…。

感想

面白かったですが、ドラマとしては思わせぶりで少々強弱に欠けるかなと思いました。
どちらかと言うと映画向きのテーマだったというか、映画のようにまとめ上げられた作品に感じました。(個人的な感想です)
全体的にセリフ含めてシーンが非常にゆったりと余裕を持ちすぎるほどスローな流れが印象的で、実際どのシーンも美しかったです。
またシーンもその”余白”を意識した映像で、ミニマムなものが多かった。
その緩やかなシーンの流れが、逆に登場人物の不気味さ、歪さを際立たせているようにも感じました。
ただメインのお話の軸がスリラー・サスペンス系ですので、このもったりとしたスピードで展開されるにはちょっとテンポが気になるかな…とは個人的に思いました。
このスローシーンで終始進めるのであれば、キャラの心情をどうしてもその”間”に視聴者として考えさせられるものですが、それにしては彼らの背景の説明が不足しているのではないかと思いました。
そのためドラマの中で”余白”を与えられても、あれこれ考えさせられるものがそれ程ないというか…。正直、観ていて”待ち”のシーンも多いように感じました。
映画でしたら通常このような部分が無視できる流れが多いのですが、8話構成といえドラマとしてそれなりの尺があります。
加えて与えられたヒントのようなエピソードがありますので、その”間”に何を問われているのかと考えたところで、何らそれに対する回答や伏線回収を得られないという状況が多く、ドラマとしては少々思わせぶりな感じもしました。(偉そうにすみませんが、個人的な感想です)
余韻を感じるドラマというより、疑問がぼんやりと残ったまま終わった感がありました。テーマとしては、最終的には一応まとまっているとは思いますが…。

演じる俳優さんたちですが、やはりサンウン役のイム・ジヨンさんは目立って素晴らしかったです。
特にジヨンさんが物を食べるシーンは、様々な意味での迫力があり、そして今作のテーマである「生きる」ということを表現する演技だったと強く印象的でした。
原作は同名の小説とのことです。

ゆるいネタバレありの感想

韓ドラ 庭のある家 考察あらすじ評価レビュー

精神的に不安定なジュラン。彼女を心配して、一家はソウルから離れた郊外の広い庭のある家に引っ越して来ます。
夫は病院の院長ジェホ、そして中学生の1人息子の3人家族。家族は母ジュランの病状にとても理解があるようです。
そんなある日、ジュランは何かの”におい”に気が付きます。が、夫らは彼女の気のせいではないかと全く取り合ってくれません。
日々強くなるにおい…気になったジュランが遂に庭を掘ってみると、なんと人間の指が。
しかし夫に再度確認してもらった際、ただの見間違いだった判明。単なるゴミだったよう。
ですがジュランは”あの指”が現実のものだったのか、自分の思い込みの症状なのかわからず混乱します。
一方のアパートに住むサンウン。
彼女は妊娠中で夫と2人暮らし。ですが近所の人が察知するほど、サンウンは夫から激しい暴力を受けていたのでした。
そんなある日、サンウンの実家に車で夫と向かうはずの途中、夫の仕事の相手である病院長ジェホの邸宅に2人は寄ることに。謎の大きなバッグを持って。
サンウンは、院長不在のため応対したジェホの妻ジュランをそこで目撃するのでした。
翌朝、実家にいたサンウンに突然の電話が。夫が亡くなったというのです。

ある事件
夫の死後、サンウンは車の中で見つけたあの”ピンクのスマホ”を確認。10代の女性スミンの持ち物のようで、彼女と院長の線が浮かび上がります。
サンウンは夫が院長をこの女性の件を使って脅迫し、その後殺害されてしまったのではないかと推測します。
ちょうど殺された夫の葬儀に来た院長と妻ジュランを見たサンウン。
彼女はジュランに「あなたの夫が私の夫を殺した」と告げるのでした。戦慄するジュラン。
庭の指の件があったばかり…。ジュランは、夫ジェホが何らかの事件に関わっているのではないかと密かに疑い始めます。
夫を殺されたサンウン、夫を疑うジュラン。消えた女性とサンウン夫との関係。
以降、2人は時に協力し、時に疑いながら自身の目的のために行動します。

支配と保護
ジュランとサンウン。2人は正反対の生活をしているようですが、彼女らは共に夫に精神的に支配されていました。
サンウンは何不自由ない生活を与えられているようでしたが、彼女は姉を亡くしてから、いやそれ以前から”弱かった”ことが彼女の母親との関係を見ても察せられます。
そんな彼女の性格を十分理解して「保護」し、うまくコントロールしていたのが夫。
ジュランは弱く不安定だと”されていて”、何一つ自分で判断できないように彼女自身そう信じさせられていました。
そしてサンウンは、言わずもがな暴力によって夫から支配を受けています。サンウンは「殺さなければ、殺される」状況に限界の様子…。
同じスカーフを着用していた2人。彼女たちは異なる生活をしていますが、同じ”生き方”をしていたのでした。

気になった点
サンウンの夫と”ピンクのスマホ”のスミンを殺したのは一体誰か?誰が嘘をついているのか?
嘘が次々と塗り重ねられた証言の中、どう物語が進むのかについては是非ドラマで確認して頂ければと思います。
以下は、個人的によくわからなかった部分を考察を含めて書きます。
・ジュラン姉の事件
最もモヤモヤしたのは、ダントツで姉の事件です。
繰り返しフラッシュバックして挿入される過去の事件のシーン。
ジュランの最大のトラウマになっている訳ですが、どのような事件だったのか、犯人は果たして誰だったのか(解決したのか)などは一切明かされません。
息子の担任を”犯人”としてジュランは考えていたシーンがありましたが、真実か思い込みかは謎。そして何故彼女だけが、母親から責められる必要があったのか…?(毒親と思われる母との関係も謎)
主題から外れるとはいえ、ジュランのその後の感情や考え方を理解するのには、正直もっと描写が欲しかったところです。
・ジュランは何がしたかったのか?
最後の計画。彼女はサンウンをはめようとした訳ですが、夫の”真の姿”を見たからなのか、再度考えを変えた察します。
ですが、サンウンにジェホが平然と暴力を振るう姿を傍観しているなど、ジュランが結局何をしたいのかよく理解できませんでした。
やっと止めたと思ったら、その方法も「それ?」というものというか…。
非常に緊迫感ある一連のシーン、間違いなく今作ではピークに当たる部分ですが、個人的にはジュランの行動の理屈がイマイチよくわかりませんでした。
・サンウン夫の犯人
ジェホが最終的にサンウン夫殺害の犯人であると解決したようです。
ですが、そもそも院長にはアリバイもあり、映像証拠なども問題なかったと警察で一度クリアになっていましたので、そこは雑すぎるように思いました。
・隣人の存在
彼女は夫の「保護と支配」から、偶然もあって運良く抜け出し、目覚めた存在です。
彼女との会話や、ジュラン息子の「なぜそんなに弱いのか」という言葉から、一歩踏み出し目覚めようとしたジュラン…!と、最後は夫から抑圧されていた女性の自立がテーマだったような感じでポジティブに終了。
特にジュランは「秘密が眠っている家」で再び自分らしく生きていく!!と新たな人生を歩むと思われ良かったね…、と思いました。
しかし(私の理解不足が原因ですが)彼女の「考え方の転換」の流れがずっと読みとりにくく、この結論まで急にワープしたような帰結でちょっとモヤモヤしました。ギリギリまで彼女は夫と「最後まで一緒」と考えていたフシがあったので…。
言わんとすることは察することはできますが…。
一方のサンウンは妊娠しているという設定と食事のシーンからも特徴的で、”生きる”ことにある意味執着しているようでした。
彼女は誰よりも絶望していましたが、誰よりも生きたかったのが伝わりました。
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ということで、スローな展開で不穏な緊張感と独特の雰囲気は非常に魅力的でしたが、気になる謎は置いてけぼりのままで、エンディングに至ったようで色々と伝わりにくい作品だったかなと感じました。
8話構成ですが、このテーマとシーンでしたら映画だったらかなり良かったのではないかと感じました。
驚きがあるネタではありませんが、雰囲気やシーンの映像がかっこよくて良かったです。
ただ、視聴後に何かを考えさせられるような作品ではなかったかなと思いました。
個人的には期待度が高かったのもあってか、少々残念に感じました。(すみません、個人的な感想です)

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