ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ マスクガール (感想)

おすすめ度:95%
マスク度:100%
女同士度:100%
原題:마스크걸 / Mask Girl (全7話)

韓国ドラマ マスクガール ネットフリックス 感想レビュー考察あらすじ

外見に自信がないモミはマスクガールとして配信で人気者になるが、トラブルに巻き込まれ…。2023年のダークコメディ・スリラー・ヒューマンドラマ。

あらすじ・キャスト

容姿にコンプレックスを持つキム・モミ(イ・ハンビョルさん)は会社員として働きながら、夜は”マスクガール”として覆面を被り人気配信者になっていた。
ある夜、孤独を感じたモミはファンと会うことにする。しかしそれは全ての事件の始まりだった。
整形して新たな人生を歩もうとしたモミ(ナナさん)だったが…。

感想

最高に面白かったです!!
個人的に好きな要素が詰まっていて、まさに夢中で視聴しました。期待以上!
エッジが効いた、キツめのブラックコメディ&スリラーの作品。
動画配信、ルッキズム、レッテル貼り、整形、毒親、アイドルの闇、いじめなど様々な問題が作品に皮肉さを持って描かれていたのは興味深かった。
ただ残酷なシーンの中にもどこかコミカルな要素が常に入っているので、その絶妙な線引きが巧みで観ていて楽しすぎました。
各話が1人のキャラにスポットを当てて独立しているようで、テーマとモミに繋がっていく見せ方も素晴らしかった。
視聴後は単純にも見えるストーリーですが、ヒネリが多く用意してあり、先が読めず飽きさせませんでした。ジェットコースタードラマ。
演出やテンポの潔さ、画面の色合い含めた編集など総合的に大変センスが良いドラマだなと個人的には印象が強く残りました。
好き嫌いが別れる作品かもしれませんが、7話に過不足なく詰められていますので、気になった方は是非視聴して頂きたいなと思います。

モミという自身の容姿が彼女の持っていた”夢”にマッチしない女性が、顔を隠してマスクガールとしてネットで人気者に。
配信で成功した彼女でしたが、しかし現実での彼女は弱く傷付く出来事ばかり。そんな彼女を”狙う”人も多く…というお話。

面白いのがこの主人公モミを演じるのが、オーデションで選ばれたイ・ハンビョルさん、ナナさん、コ・ヒョンジンさんの3名の女優さんという点です。
単に年齢や容姿だけの”変化”をつけるためにこの3人が演じられたのではないというのが、作品を観られるとわかると思います。

原作は同名のWEBトゥーンとのことです。(私は未読です)
今作は暴力だけでなく性的なシーンもありますので、ご注意下さい。
また他の出演者ですが、アン・ジェホンさんやヨム・ヘランさんに加えて、イ・ジュニョンさん、チェ・ダニエルさんらも出演されていて演技は勿論キャスティングとしても皆さんとても”変”で良かったです。

ゆるいネタバレありの感想

韓ドラ マスクガール レビュー考察あらすじ
Netflix マスクガール 感想批評

踊るのが大好きで幼い頃から芸能人になりたかった、キム・モミ。
しかし母親から容姿を否定され、周囲から失笑され、思春期の頃には既に彼女の夢は遠く霞んでしまいました。
そんなモミも27歳、今は平凡に会社員として働いています。しかし彼女には誰も知らない裏の顔が。
実はモミは”マスクガール”と呼ばれる、人気配信者だったのです。仮面を被ったモミはまるで別人格。
スタイルの良い彼女の体の線が出る服を着て、ダンスなどの配信をする日々。そう、彼女は幼少期抱いた夢を、マスクを被って実現していたのです。
しかし現実に戻るとそこは別世界。
美人同僚が周囲にチヤホヤされている事に日々苛立ちながらも、モミの密かな恋は職場に存在したのです。モミの上司であるチーム長です。
彼は、他の男性社員のような”低レベル”な女性の扱いをしません。モミが最もチーム長を「評価」しているのがその点のようです。
ですが、そんな彼への尊敬が地に落ちる現実を目にするモミ。
崇高なはずのチーム長もまた、モミが嫌う”男ども”と何ら変わらなかったのでした。
モミはショックを受けてしまいます。

オナムとモミ
密かにモミがマスクガールであると知る者がいました。同僚のオナムです。
ステレオタイプのオタクとして描写されている、オナム。
彼は元々マスクガールのファンで「前世はウォンビン」という名で認知されています。
オナムはまた彼女の”中の人”を自分だけが知っているという部分で、別の興奮を既に得ているようにも見えました。
モミが気になってしょうがない様子、しかし彼女がチーム長が好きだと知り嫉妬で怒りが湧き上がります。
そんな複雑な感情を抱きながらも、彼女が事件に巻き込まれた際にわざわざ危険すぎる状況に手を差し伸べてしまうオナム。
「僕がモミを守る」…しかし、果たしてそれは彼女が求めていたものでしょうか?
モミは人生を”リセット”することを決めます。

マスクガール 韓ドラ 感想考察

気になった点
このドラマはスリラー系なので、生まれ変わったモミの物語がどう進むかについては是非ドラマを観て頂きたいです。
以下は個人的に気になった点、好きな描写を考察してみます。あくまでも私の勝手な解釈と考えです。
・モミ
彼女は本来とても明るく溌剌とした性格だったことがわかります。
しかし母親から容姿否定をされ続け、年齢が上がると次は周囲から同じ対応をされてしまいます。
様々な本来の”可能性”が見た目だけで社会から潰されています。これについてはオナムも同様です。
・マスク
モミが「彼は他人とは違う」とした上司も、結局”そのような仮面”を被っているだけでした。モミが勝手に彼をそう判断していたのです。
オナムがモミ/マスクガールを一方的に好きになったのも、チュネがアイドル志望のプヨンを好きになって利用されたのも、全て彼らの”マスク”に惑わされていたから
騙された彼女たちが悪いという意味ではなく、見た目で判断され嫌な目に遭っている人でさえもまた、他人をフィルターをかけて判断しているという皮肉が描かれています。
それは生きている限り「どうしようもない」避けられないことなのだと。
・モミ2章
過去の自分を封印するように、新たな顔を手に入れたモミ。
しかし彼女の生活はあの配信していた”日陰で生きていた”頃と、さほど変化はありません。
勿論追われているからですが、ここは美しい仮面を手に入れても「変わらない」…という皮肉が少なからず含まれていると思います。
新生モミはアルムと名乗りますが、この名前は会社員をしていた頃の美人同僚の名前。彼女のコンプレックスが垣間見れます。
・赤い糸
モミは自分と似た女性チュネと出会います。あなたは私…。互いにシンパシーを抱き助け合う2人。
個人的にとにかく秀逸だと思ったシーンが、恋人とトラブルになったチュネをモミが助けた場面!
2人は協力して男性を赤い紐で締め上げますが、見事なトライアングルでモミとチュネは”赤い糸”で繋がっています。
個人的にはユーモラスさの中にフェミニズムの描写も感じ、また自分たちを容姿で判断し、利用してきた男性たちそのものに対する制裁を上手く形にしていてすごいなあと印象に残りました。
・オナム母
息子を溺愛し何事にも”熱い”オナム母。
マスクガールへの復讐を掲げ、拠り所のように生き甲斐にして暮らし始めます。
しかしそれは本当に息子のためでしょうか?
子育ての描写含めて、結局オナム母が欲していたものは、あくまでも自分のため、自己満足だったように思えました。
オナムはそれを感じていたからこそ、家を出てレッテルを貼ってくる母含めてた他の人を介在させない自分の城に閉じこもったのだと思います。
それにしても、ヨム・ヘランさんの不気味で一線を超えたような演技は本当に圧巻です。
・モミ3章
刑務所生活も長くなってきたモミ。演じる女優さんがヒョンジンさんになり雰囲気がぐっと変化します。
演者の変更ですが、これは老いなどの外見的な変化だけでなく、彼女が”マスク”を完全に外して別の局面から変化フェーズに入ったことを表現したかったのだと思います。
また「マスク無しでも人は変われる」という意味合いもあったかもしれません。
理由は娘ミモの存在です。
モミは妊娠を感じた時「(子供に)かわいいと言う」とチュネに話します。
モミは自分の娘を愛していると、どうしても知らせたかったのではないでしょうか。
苦しんでいる娘ミモを何としても守る必要がありました。
・最終回
ミモはマスクガールの娘として、その消えないレッテルに幼い頃から苦しみます。
母と同様、唯一の味方であるべき祖母からでさえ同じ扱いを受けます。連鎖。
近所のトッポギ屋の老婆だけが彼女の心の拠り所に。しかしこれもまた血を考えると不思議な因縁です。
モミがオナムの血がミモに流れていると最後まで明かさなかったのは、恐らくレッテルを貼りたくないという母としての想いがあったのではないでしょうか。
最後にミモに長年のしかかっていたレッテルの原因となる人物が全て消え、彼女はやっと”呪い”から解かれた気分になったのかもしれません。
また母モミ&チュネの構図と同様、娘ミモも友人イェチェンと誤解を経て仲良くなります。
エンディングのシーンで、私は感傷的になってしまいました。
誰が彼女たちを「そうさせて」しまったのでしょうか?
残念ですが答えは決して出ません。
このドラマは一見、容姿含めて何かの指標を過剰に判断材料としてしまう現代への問題提起のようでありますが、同時にその問題は「死ぬまで消えない」という残酷な現実も描いています。
外見より中身で判断!…正論ですがそれは所詮、綺麗事でもあるわけです。
--
ということで、何の情報もなく視聴を開始してその内容に驚いてしまいました。
正々堂々としてた気持ち悪さとユーモラスさがあり、韓国作品としてのノワールさもしっかり見え隠れしていてとてもユニークな作品でした。
個人的には大変面白いと思ったドラマでした。大満足。

こちらもおすすめ: