ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ ナルコの神 (感想)

おすすめ度:90%
謎の牧師度:100%
エイ度:100%
原題:수리남 / Narco-Saints (全6話)

ナルコの神 ネットフリックス 韓国ドラマ感想レビュー

南米でビジネスをするはずが、犯罪組織に巻き込まれ…2022年のクライム・アクションドラマ。

あらすじ・キャスト

儲け話に魅せられ南米のスリナムへ飛んだ、カン・イング(ハ・ジョンウさん)。商売を始めた矢先に現地でトラブルとなり、知り合ったチョン牧師(ファン・ジョンミンさん)に解決してもらう。
しかし国家情報院のチャンホ(パク・ヘスさん)から、チョン牧師は麻薬王だと聞かされ…。

感想

演技の圧がすごい
面白かったです!!とにかく見応えがありました。
良い意味で俳優陣の皆さんが漏れなくギトギトした重厚感があり、南米の独特の色合いと空気感。彼らの脂ぎった”絵”が大変マッチしていて、危険さ・胡散臭さが激増、すごい。
クセが強めのキャラばかりでしたが、お互いの性格に干渉し合わず融合している演技合戦になっているのは、観ていて非常に満足度が高かったです。
ストーリーは南米にあるスリナムという国を舞台。単にお金儲けがしたかっただけの”ビジネスマン”の中年男性が麻薬組織に巻き込まれたところを、組織を狙っていた国家情報院から「協力」を求められるというお話。
悪いヤツの中で緊張感ある空気の中でも、どこか飄々としたように肝が据わっている一般男性イングが主人公です。
この作品は実話を元にしたフィクションになっていて、スリナムで組織のトップになった韓国人のチョ・ボンヘンがモチーフになったとのことです。
ちなみに今作の海外ロケ国ですが、スリナムではなくドミニカで撮影されたものです。

元々映画としてプロダクションされていたのが、全6話のドラマ構成になったそうです。
個人的には特に中盤については動きが感じられず、正直ちょっと間伸びしていると感じました。4-5話構成でも良かったような…。(素人が偉そうにすみません)
ただ終盤は本当に演技・物語共に駆け引きが大きく盛り上がり、本当に素晴らしかったです!!真骨頂といいますか、この作品を象徴するようなシーンが多く圧巻でした。
ぜひ最後まで視聴して頂ければと思います。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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Netflix Koreaインスタグラムより

カン・イング。10代の頃に両親を亡くし、兄妹を支える必要があった彼は、仕事を掛け持ちし、必死で働いていました。それは結婚後も何ら変わりません。
生活のために必死で働いて生きていく…。
そんな死ぬまで終わらない人生サイクルにぼんやりと憂鬱になっている頃、友人ウンス(ヒョン・ボンシクさん)からスリナムという国で魚のエイでひと儲けしようという話を聞かされます。
信心深い妻の反対を押し切り、結局イングは稼ぐためスリナムへ行くのでした。

スリナムではほぼ食用されないエイを、韓国へ輸出して儲けるという明快な計画。しかし、事業を始めた2人は早速”洗礼”を受けます。
韓国でカラオケバー業で客とのトラブルを多数経験していたのもあってか、交渉に長けているイング。しかし本物のギャング相手には、そう上手くいきませんでした。
困った2人はたまたま出向いた現地の韓人教会のチョン牧師に、事の成り行きを説明します。牧師は2人を連れてギャングの本拠地チャイナタウンに出向き、異様な雰囲気の中でさっさとトラブルを解決してしまいます。
イングらは呆気に取られますが、この牧師がスリナムではかなりの権力者であることを後に知るのでした。

大口の注文が入った後の夜、イングは出荷したエイを運ぶ船長から寝耳に水の連絡が。荷物のエイから”薬”が発見されたというのです。イングは混乱の中で警察に逮捕されてしまうのでした。
なぜこんなことに?異国の地での刑務所暮らしの中、イングを訪ねる韓国人チャンホが。彼はなんと国家情報院の職員でした。
チャンホから、あのチョン牧師は有名な麻薬組織の王だと聞かされます。そしてイングらは”荷物を運ぶため”に利用されたのだと。
イングはこのチャンホから、牧師を逮捕するために「協力して欲しい」と切実に頼まれるのでした。

ビジネスマン
序盤ですが、イングという男性のある意味”根っからの商売人”気質がわかる彼の生い立ちが描かれているのが本当に良かった。
特に彼が結婚する際のエピソードは、イングというキャラの物事の見方や価値観を端的に表現していて、彼の後の行動原理に説得性があって非常に良いなと思いました。
イングは何度も自らを「ビジネスマン」だと名乗ります。
当初私は観ていて会話の都合上ビジネスマンと名乗っているのかと思っていたのですが、彼の第一の信念である「稼げるかどうか」…これが彼がビジネスマンだと自信を持って名乗る所以だと思います。
ここは作品上も終始カン・イングという男性の中に一貫して強いポリシーなのは良かったです。また彼は長年の労働で得た経験から、多少なりとも人心掌握術に自信もあったと推測されます。
このイングの空気を読む間合いや己の勘への信頼、そのようなものがストーリー上では何度も”効いて”くる訳ですが、この彼の性格は敵対するチョン牧師とも似た部分があります。この2人の対比も面白いなと思いました。

ナルコの神 韓国ドラマ感想レビュー

3つの組織
国家情報院チーム長のチョンホは、この組織を3年間追っていました。
スリナムと韓国の間の犯罪人引き渡し条約の関係上、先が見えずこう着状態の計画。そんな最後のそして最大のチャンスになると思われたのがイングの存在です。
とにかく彼らの”荷物”をアメリカ領域へ輸出させるよう動きかけて欲しい…イングは参加への対価を約束させて、チョンホとの計画に合意します。
イングとチョンホ(サンマンと名乗ることに)は韓国で”モノ”を売り捌くビジネスを始めるため、と理由付けてチョンにアプローチを仕掛けます。
この際、同時にチョン牧師と敵対するチェン率いるギャングへのお互いの敵対心を利用しながら行動します。イングは二重スパイというか、三重スパイ状態やビジネスマンという第三者の無関係な立場のように都度状況に応じて演技しながら、行動するのでした。

イングという男性
面白かったのは、イングが必ずしも情報院に忠誠心が必ずしもあるわけではないという点です。
彼の「稼げる方に付く」という考え方がしばしば見え隠れするのが、物語の中での3者間の攻防戦において読めないポイントになっています。
彼が商売人だと書きましたが、損得勘定だけで動いている訳では決してないところもしっかり描写されているのも本当によかった。
適当に決めたと思われた結婚相手、しかしイングは彼女の言いつけを(適度に)守っていることからも察することができます。また刑務所内で子供たちの成績表を確認していたり、殺されてしまった友人の家族を心配したり、彼の誕生日のシーンなどでも彼の感情面や誠実さが明らかになっています。
このようなシーンがあるために、チョンホとの約束を反故にしないという点、そして最終回ラストシーンの野球ボールに繋がっていると考察できます。

イングは韓国へ戻って来て、再び何事もなかったように働き始めます。まるで自分の父親と同じように。
スリナムで一体何があったのか、機密情報のため大っぴらに話すことはできません。
あのサッカーボールとは違って、本物であり大切な品だった野球ボールをイングへ渡してくれたチョン牧師。彼はイングのことを気に入っていて、”誰よりも信じたかった”のかもしれません。
悪夢でもありマボロシのようでもあったスリナムの生活…。

超・非日常を送った日々が何事も無かったかのように、日常生活に戻ってしまう不思議さの中に、余韻を残しながら迎えるエンディングは情緒もあって本当に素晴らしかった。
今作はNetflixの短編ドラマにあるような「続編匂わせ」も無く、まさに映画のようなラストシーンで素敵でした。
俳優陣全員の説得力ある演技と取りこぼしが無いストーリーで、視聴後はとても満足度が高かったです。とても面白かったです。

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