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観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ D.P. 脱走兵追跡官 (感想)

おすすめ度:100%
ニュータイプの軍人度:100%
変えれるとしたら度:100%
原題: 디피 全6話 

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軍から逃げた兵を追う部署に配属された者が見たものとは…2021年のヒューマンドラマ。 

 あらすじ・キャスト

兵役法により2014年に入隊したアン・ジュノ(チョン・へインさん)は、脱軍担当官パク・ボムグ中士(キム・ソンギュンさん)に見込まれてD.P.という、軍隊から脱走した兵を追う組織に配属されることに。
つかみどころのない先輩のハン・ホユル(ク・ギョファンさん)と組んで次々と脱走犯を追う任務に就くが…。

感想

シーズン2の感想はこちら:

(以下シーズン1の感想)
素晴らしかったです!夢中で視聴してしまいました。
約55分x全6話という短めのドラマですが、群像劇のようにも進み、この全6話という枠がとにかくちょうど良く、映画とドラマの両方の長所を最大限に生かしたタイプの作品で大変面白かった!
余分な点を削ぎ落した作品だったので、焦点を当てられたテーマに集中して視聴できました。
原作はWEBトゥーン『D.P:犬の日』という作品です。

根本的には軍という閉鎖的な組織の中で、日々起こっている"イジメ”を扱ったお話ですが、もちろんそれは一般社会や学校の組織でも発生していることです。
オープニング映像で、ジュノを演じるチョン・へインさんがこちらを振り向き、刺すような視線で我々を見るシーンがありますが、「それでいのか?」と私たちに厳しく問いかけているように思えました。

組織や社会としての「やるせなさ」「声を上げることのむつかしさ」も描かれています。
軍から逃げた者を追うD.P.の彼らですが、逃げた者に対して「共感している」という自己矛盾をはらんでいる点がポイントというか、彼らも自分も歯車の一つとしてのやりきれなさを描いていました。

作品は大変テンポが良く、映像も特に光の使い方などが大変エッジが効いてて、とてもかっこよかった!
根本的に暗く重いテーマを扱った作品ながら、全体的にスタイリッシュで、観やすかったのは、この映像部分と完璧なキャスティングの素晴らしさが際立っていたからかなと感じました。

また、チョン・へインさん含め出演者のメイクも皮膚感などが荒く仕上げてあって、軍人という社会からどこか離れた場所にいる人という雰囲気も感じさせ、とても良かったです。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
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チョン・へインさんインスタグラムより

入隊したジュノは陸軍に配属され、身長が175㎝以上という理由で憲兵になります。
軍の組織というものは、ジュノの予想以上に「理不尽」の塊のようでした。先輩は絶対であり、上下関係は異常なほど徹底されていました。
入隊前にもTVのニュースで報道のシーンが入りますが、それは氷山の一角であり、軍隊内での先輩などによるイジメは日常茶飯事だということが、ジュノの目線からも描かれていき、視聴者にそれが伝わります。

ある日新人の面談で軍脱担当官のパク中士は、ジュノの勘の鋭さや物覚えの良さ、ボクシングをしていた過去に目を付け、彼をD.P.の部署へ誘います。
D.P.とは、Deserter Pursuit(脱走兵追跡)の略。
2人1組で基本的に脱走兵を追うD.P.たち、ジュノは配属早々に父が区長というコネを持つがゆえ、かなり適当でやる気のない先輩ソンウ(コ・ギョンピョさん)と組み、暴行を受けて脱走したという兵を追います。
が、ジュノはやる気がまるでない先輩と、「先輩の命は絶対」という悪しき習慣に流されてしまった自分のミスで、取返しのつかない結末を迎えます。
この組織に流れる「違和感」をD.P.に配属されて痛感したジュノは、先輩の態度に抑えていた怒りをむき出しにします。

その後、ジュノは"つかみどころのない"飄々としたハン・ホヨルと組むことに。
他の先輩とは違って軍人という堅苦しさを全く感じさせないホヨル…、何を考えているのか彼の真意がイマイチわからないジュノ。
しかし、ホヨルの中に、あのどうしようもない独特の「理不尽さ」は無いようです。
ジュノはこの自称"ニュータイプ"のホヨルと共に、命令を受けて下界に降りるわけです。
ある意味絶対領域だったエリアから、D.P.という立場のため、簡単に民間人のように街へ出て自由に飲食できてしまいジュノは、複雑な表情を浮かべます。

もう1人、クセのある人物といえば、イム・ジソプ大将補佐(ソン・ソックさん)です。
新しく配属されたジソプはパク中士の上司に当たり、この2人は立場と考え方の違いでしばしば静かに衝突します。

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あいつは自分
と、ストーリーはジュノとホヨルの凹凸コンビが、脱走兵を追って…と進みます。
各脱走兵の逃げた理由や生き様。コメディタッチの部分もありはしますが、この作品内の脱走理由というのが基本的に悲哀と共感を持って描かれる部分です。
韓国という兵役法が定められている国で、この法を破ってまで脱走するという理由。逃げた者の苦しみと葛藤。

2話でジュノが「入隊しなければ、脱走することもなかった」と呟く場面がありますが、パク中士は「無意味だ」と皮肉を込めて返答します。
定められた絶対的な決まりの中で、入隊しないという選択肢は(一般的には)無い訳で、その「どうしようもない」ことに対して、視聴していてどう捉えてよいものか…と考えてしまいました。

主に「入隊」という「どうしようもない」ことにフォーカスして描かれていますが、各エピソードではそれが一般社会にも降りて対比されているのは面白いなと感じました。
一番強く感じたのが、ジュノの両親です。
暴力を振るジュノ父の元から離れようとしないジュノ母。そんな母の態度に怒りを覚えているのはジュノです。
ジュノにとっては離婚して父の元から離れればよいと考えていますが、母は「どうしようもない」事として甘んじて受け入れています。(勿論、入隊とは別次元の問題ではありますが)

逃げた者を追うのがD.P.ですが、彼らは逃げた者をあまり責めていなかったように思えました。
恐らく入隊した方ならば「逃げたくもなるよ」と、誰しもの本心だからかもしれません。
個人的に興味深かったのが、ある意味兵役という制度に関して、そして軍のなかで(普通に存在するであろう)イジメ問題に一石を投じるような作品にもなっている部分です。
このあたりは韓国ではどのように捉えられているんだろう…と思いました。
Netflix作品という全世界向けのドラマに、深く自国の制度に切り込んだ部分はなかなかだなと興味深く感じました。

終盤では、ジュノにも優しい態度だったあのアニメのソクポン先輩が脱走。
彼もまた壮絶なイジメに遭っていました。
このエピソードですが、傍観者だった我々にも厳しい言葉を突き付けられます。そんな自分たちへ向けられた視線から言い逃れするかのように、自戒と希望を込めたようなセリフが入ってきます。
「時代は変わった」「変えられたら?」

一方のソクポンは「何かしないと何も変わらない」と強烈なメッセージを残します。
そしてエンドロール後にもソクポンと友達だった者から、同様のメッセージと共に驚く短いシーンが入ります。
「変えられる」のは自分から…待つのではなく、何かしないと。
この2つは銃を使った強いシーンです。
相手への決死の反抗を強くアピールしているようにも思えますし、ネガティブなイメージもありますが、個人的には傍観者含めて「今までとは違った行動」を促すという、やや肯定寄りのメッセージと取りました。
(ただどちらにも取れるというメッセージはとても良いと感じます、ソクポンの生死が不明という部分もそこに関係していると思います)
だからこそ、最後のジュノの行動(違反ですが)に繋がるかなと感じました。

ということで、視聴後に「うわぁ~」と思わず言ってしまった、個人的に大変良いと思った作品でした!
韓国作品らしい、鋭さあるシーン展開。考えさせられるテーマ。ホヨルの気の利いたセリフの数々。ジュノの湿っぽい親子話が来るかと思いきや、サッパリ削いだ点。キャスティングの美しさ…などなど、どの点をとっても最高でした!素晴らしかったです。

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