ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ ウ・ヨンウ弁護士は天才肌 (感想)

おすすめ度:絶対視聴すべき作品
考えること:100%
クジラ度:100%
原題:이상한 변호사 우영우 / Extraordinary Attorney Woo (全16話) 

ウ・ヨンウ弁護士は天才肌 韓国ドラマ感想レビュー

自閉症スペクトラムの弁護士ヨンウを主人公にしたヒューマンドラマ。

あらすじ・キャスト

自閉症スペクトラム症の弁護士ウ・ヨンウ(パク・ウンビンさん)は、大手法律事務所でミンソク(カン・ギヨンさん)の元で新人弁護士として、チェ・スヨン(ハ・ユンギョンさん)、クォン・ミヌ(チュ・ジョンヒョクさん)らと働き始める。
様々なケースと向き合いながら、ジュノ(カン・テオさん)の事務的なサポートもあって、ヨンウは弁護士として経験を積んでいくが…。

感想

本当に色々と考えさせられるドラマでした。
視聴しながら毎回かなり(本当に)感じたことは多かったです。
ただ、素人の個人的な考え/感想を根拠もなくオープンなこの場に書くのはどうなのかと正直なところ躊躇してしまいます。このドラマが扱っているテーマとエピソードはまだまだ私にとっては難しくもあり知識が足らず、社会的にもそう簡単に答えはでない問題が多いように思います。
しかしながら、作中で投げかけられる多様な問題について、私たちに短時間でも考える機会や意見を出し合う動機を真正面から作ってくれた稀有なドラマであって、それだけでも本当に素晴らしいなと思います。
結局どんな問題であっても、我々ひとりひとりがしっかり考え、様々な違いを持つお互いを尊重することが大切なんだと思います。

私がいつも韓国ドラマや映画に魅力を感じるのが作中キャラの描き方と、それをしっかり演技される役者さんの素晴らしさ(とピッタリのキャスティング)ですが、この作品もまさにその部分が光っていて感動しました。
フィクションであるヨンウやハンバダの人々ではありますが、生き生きとシーン外でも立体化されているようで、物語に説得力がありました。

こちらのドラマも原作は同名のWEBトゥーンです。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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カン・ギヨンさんインスタグラムより

主人公であるヨンウは自閉症スペクトラムの弁護士です。
ほぼ1話ごとに彼女が弁護を担当するクライアントの問題が変化し、その扱う裁判内容(ほとんどがセンシティブなもの)は多岐に渡ります。
ヨンウが直面するこの担当案件と、彼女自身が抱えている問題を絶妙に絡ませながら、お話が進んでいきます。
ただドラマ自体はかなり明るいタッチで終始描かれており、重くなりすぎずテンポも良くてとても観やすい作りになっています。

私がこのドラマで最も良いと思った点は、テーマとする議論に関して必ず「もう一方の意見」を常に何らかの形で取り入れているところです。
異なった意見に対して(裁判の結果は出ますが)正しい、間違っているという論点をドラマの中では決して中心に据えていないところです。
ただ、もちろん主演がヨンウなので、彼女の弁論が筋にはなってはいます。ですが、割とストレートに「もう一方の意見」を表現するセリフが多く、視聴していて再び深く考えさせられる構成は本当に良かったです。

クォン・ミヌについて
個人的に最も興味深かったキャラクターは腹黒策士ことミヌでした。
これは私の勝手な考察ですが、(ある意味)理想的な男性のような態度でヨンウに接するのジュノと、ヨンウに意地悪をするミヌがルームメイトとして同居しているというのは、人間の持つ二面性と言いますか、感情と理性というか、そのような正反対で混ざった複雑な感情を誰しもが常に持ち合わせているというようなメタファー的なところまず一番感じました。

ミヌのヨンウに対する行動を画面上で評価すると、端的に言って”嫌なヤツ”です。ミヌを悪人とカテゴライズするのは簡単です。(ですが悪者、と決めつけてしまうのもまた彼への偏見ではあるのですが)
しかし色々考えていると、ヨンウを「強者」「天才」と呼び警戒し、自分のライバルであるとヨンウを位置付けている時点で、彼はスヨンと同じくヨンウをしっかり対等に見ている人間であるとも言える気もします。
また、スヨンからジュノがヨンウと交際していると聞いても、ミヌは(例えばジュノの姉のように偏見を持って)何ら驚いたりしません。
スヨンから明かされた”腹黒策士”のあだ名より、彼はロースクール時代から意地悪だったと推測されますので、ヨンウに対してだけ、という訳ではなさそうです。
ミヌはヨンウにハンバダでの新人弁護士同士としてポジションを得る”宣戦布告”をしていて、ある意味ヨンウにとっても”わかりやすい人”かもしれません。
実際、ヨンウは事務所代表のコネもあり、ソウル大主席、独創的な視点を持ち、弁護士として非常に優れています。

決してミヌの態度を弁護する訳ではありませんが、このミヌという存在によっても差別や偏見、考え方の違いは本当に本当に難しいですし、またそれに対する感じ方も違うかもしれない点を考えさせられました。(ただ、ミヌのような”役”はドラマあるあるの存在ではあるとは思いますが)
ヨンウに対してフィルターをかけて見ているのは誰なのか?(しかしこの問いの答えは出ないはず)と、この辺りも非常に考えさせられました。

ウ・ヨンウ弁護士は天才肌 Netflix 韓国ドラマ 感想評価

少し個人的に気になった点は、取り上げるセンシティブな問題の裾野を特に中盤あたりはちょっと広げ過ぎたというか、欲張ったような気がします。
内容が内容だけに、決して1話だけで議論できるものではない問題が多すぎるのではないかとは感じました。
上述した「もう一方」の簡略的な意見だけでなく、もう一方だけでは済まない多様な意見が存在する問題も多く、そのあたりは何となくモヤモヤとしたものが残りつつ次のエピソードへ…という回もありました。
加えてそのせいなのか、裁判の流れのくだり(弁護の根拠など)が全体的に若干荒いように感じました。(ただ裁判だけに焦点を当てているわけではないので、ストーリー上しょうがないですが)

「風変わりだけど」
この作品の主旨として、視聴者に何か”考えるきっかけ”を与えるというのは間違いなくあると思いますので、その部分は本当に大成功だったですし功績だったのではないでしょうか。
最終回にヨンウの
「私の人生はおかしくて風変りだけど、価値があって美しい」
という素晴らしいセリフがありますが、まさにこれがこのドラマの言いたかったことなんだろうなとぐっと来ました。

シーズン2の噂もちらほら存在するようですが、個人的には作品としてこの全16話でしっかり美しく終わっていたと感じました。続きをもっと観たいような、もうこのままでもいいような…。
軽妙で明るく面白かったドラマ、だけど深くもあって重くて…、とても不思議でそしてたいへん素晴らしい傑作でした。視聴後はきっと出会えてよかったと思えるドラマだと思います、おすすめです。

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