ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 君は私の春 (感想)

おすすめ度:60%
会話の丁寧さ度:100%
転ばないように度:100%
原題:너는 나의 봄 全16話

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同じビルに入居する精神科医とホテル勤務の女性。1人の男性の死から、解き明かされる縁とは。2021年放送のヒューマン系ラブストーリー。

 あらすじ・キャスト

外資系ホテルのコンシェルジュのダジョン(ソ・ヒョンジンさん)は、男性運の無さもあって心機一転と99ビルへ引っ越しをする。が、そのビルはダジョン入居直前に殺人事件が起こった場所でもあった。
ダジョンの住む部屋の1階下には医師のヨンド(キム・ドンウクさん)が精神科のクリニックを開いており、初対面状態にも関わらずダジョンの持ち物や行動から勝手に心理分析をされてしまう。
そんな時、ダジョンに会いに頻繁にやって来るジュン(ユン・パクさん)を見て、ヨンドは彼に会わない方がよいとダジョンにアドバイスするが…。

感想

ホンワカさ&やるせなさ
とても良い雰囲気のダジョンとヨンド、2人の恋。
そして彼らが抱える子供の頃のトラウマへの癒し。そして殺人事件…。
特に序盤はテンポも良く驚きを感じながらストーリーは進みます。
サスペンス部分とのんびり・ほんわかした恋愛部分、緩急ある展開で個人的に特に前半部分は面白く感じましたし、続きが気になる展開でした。

ただ、やっぱりロマンスとサスペンス2つの物語の軸のストーリーが、ちょっとバランスが悪い仕上がりになっているように思ってしまいました。特にサスペンス部分は荒いなと思いました。(個人的な意見です)
サスペンス部分のエンディングの着地点について、スッキリせず新鮮味がなかったのが個人的にガッカリ。
スタートは良い感じで面白かったのに、何だかもったいない!と思ってしまいました。

ラブストーリーはとても素敵!
ただラブストーリー部分としては、メイン2人のソ・ヒョンジンさんとキム・ドンウクさんのカップルが、本当に大変良かったです!
特にヨンドを演じる、精神科医で他人の行動に関してはアレコレ冷静な判断をするにも
関わらず、自分の恋愛に関してはまるで中学生のような行動を取るヨンド。
そんな役柄にドンウクさんの誠実な可愛らしさのような部分が効いていて、わざとらしくならず自然で良いなと思いました。
またヨンドは適当な言葉を使わずに、的確で誠実な表現が多かったです。この点で古臭い気持ちのすれ違いが生じにくかったのは、視聴していてストレスがあまりなかったです。

ゆるいネタバレありの感想

キム・ドンウクさん所属事務所インスタグラムより 

父は母に頻繁に暴力をふるっていた家庭で育ったダジョン。
ある夜、そんな母は7歳のダジョンと幼い弟を連れて父の元から逃げ出したという、ダジョンには辛い思い出がありました。父への恐怖は彼女のトラウマとなっています。
しかし現在は外資系ホテル、グランド・ハイアットホテルのコンシェルジュとして、明るくバリバリと働くダジョン、
気持ちを新たに99ビルの4階へ引っ越してきます。3階にはヨンドの精神科、2階には動物病院、1階はカフェが入る99ビル。

この1階のカフェを経営している男女の双子の友人という関係で、ダジョンとヨンドは知り合います。初対面はあまり良い印象が無かった2人でしたが、顔を何度も合わせることに。
加えて、ダジョンの新居である99ビルに、ダジョンを訪ねてジュンという男性も頻繁にやって来ます。
彼を”ストーカー”だと呼ぶダジョンですが、自分に好意を持ち優しいジュンに彼女も悪い気はしておらず、次第にその気持ちも傾き始めます。
ですがそんな時、ふいにヨンドからジュンに関する不穏なアドバイスを受けるダジョン…。
そんなある日、ダジョンがジュンとデートした時、彼はペーパーナプキンで作った花を机に1つ残し、ジュンはダジョンの元から消えてしまいます。
残されたメッセージを辿って、ヨンサン駅のコインロッカーへ向かうダジョン。中にはダジョンも写っている子供の集合写真、その裏には「ずっと探していた」というメッセージと犯した過去の殺人事件の自白の手紙が…。
ジュンは、それらを残し何と自死していました。

ジュンという男性についてショックを受けるダジョンですが、更に驚く事が続きます。
勤務先であるホテルに、死んだはずのジュンと同じ顔を持つ男性を見かけ、凍り付くダジョン。
彼はアメリカから来た医師、イアン・チェイス/ドクター・チェイス(ユン・パクさん)。再び不穏な気持ちがダジョンを襲います。
ここでダジョンとヨンド、そして同じ顔を持つイアン/ジュン(本名はチェジュン)という4人の顔ぶれが揃います。

ヨンドとダジョンの恋愛パートの間に挟まれるエピソードとして、この4人の関係が次第に明らかにされます。
舞台となるのは、もちろんあの胡散臭いナヌムジェイル教会です。
そして(やはり)ジュンとイアン・チェイスは、その教会に時間差はあるものの預けられていた双子だったのでした。
この教会の施設にいた2人、戸籍の関係もあり1人はアメリカに送られ、もう一方は韓国の養父母へ引き渡された、そんな離れ離れになってしまった双子の兄弟だったのがチェジュンとイアン。

また、ヨンドも実はこの施設に短期間だけ入所していたことが明かされます。
ヨンドも幼少期に兄を病気で亡くしているのですが、母との間に兄の死で壁を感じていたヨンド少年。
自分のせいで兄を亡くしたのではないか…と、自分をどこか責めるような気持ちを抱きながら大人になっていました。
ヨンドもまた心に傷を負っていたのです。(この兄の病気の際に、父親がある意味ヨンドを守るため施設に入れていたのでした。)
一方ダジョンはこの教会にお菓子目的で近づいた事があり、ジュンとイアン、そしてヨンドと子供の頃から、実は4人は知り合っていたのでした。

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人を責めないという生き方
お話しの展開にやや不満は持ちましたが、ダジョンとヨンドの2人の会話が非常に丁寧で魅力的だったのは、本当にこのドラマの根幹の素晴らしい点だと思いました。
ヨンドが精神科医という設定もあるかもしれませんが、このドラマのキャラは誰かを責めるというスタンスを基本取らない。
ヨンドも人の心の傷を治す立場ながら、自らも心に蓋をした深い傷を負っていました。
そんな彼にダジョンは、当時のヨンドとヨンド母に言葉をかけ、彼は気持ちが軽くなります。
第14話でよくメタファーとして使われるトンネルのシーンがありますが、そんなどこか薄暗かったヨンドのの気持ちが、やっと解放されたという象徴的なエピソードで良かったです。

「より悪い方に転ばないように」
ヨンドとダジョンのやや過度にも思えるぐらいの、幸せぶりと対極の存在がイアン/ジュンです。
あの教会でアメリカと韓国に離れ離れになった双子は、18歳の時に再会します。
嫌々アメリカに渡ったイアン、幸せに暮らしているはずと想像した韓国に残ったジュンは、ずっとひどい状況で暮らしていました。18歳のジュンを守らざるえなかった18歳のイアンは罪を犯します。
そして現在…追い詰められた形になったイアンは、ふとヨンドとダジョンの言葉を思い出します。
「助けが必要なら、助けます」
イアンがジュンのように助けを求めているという状況が、非常に不憫に感じました。

「全てが終わってほしい」
イアンとジュンは、もはや2人は1人という存在で“チェ・ジョンミン"という人でした。
間接的/直接的に殺人を犯し続けた悪夢の迷路から"抜け出す方法がわからない"ジュンはそこから抜け出すため、「全てを終わらすため」自ら命を絶ったことになります。
ただ、ジュンが藁をもつかむ状況でSOSを出していた相手がダジョンと考えると、物語とはいえ正直やるせないと思えました。
そしてジュンが亡くなった後、イアンもまた同様にこの永遠に続く迷路から抜け出したい、終わらせたいと感じています。

やるせなさ
視聴していて、ヨンドとダジョンのパートになると、2人のハッピーそうな関係を見たて、「良かったな…」と素直に思えました。エピソードも可愛らしかった!
「彼女ができた」と嬉しそうに周囲の人々に言ってまわるヨンドの姿に微笑むダジョン…。この2人のラブストーリーは純粋に良かったです。
が、そんな能天気(意地悪な言葉ですが)な2人を観るたびに後半は、やや気持ちがモヤモヤと…。
というのが、やはりイアンとジュンの存在です。
結局、彼らは幼少期から「愛してくれる人がいなかった」状況で、偶然にもイアンとジュン2人が助けを求めた相手ダジョンには、それが叶わず。
ストーリー的にも、殺人が絡むため倫理的にもこの展開はしょうがないのは理解できますが、何となく救いが無いというか…。
最終回でも、イアンはまだ袋小路にハマっているようです。
カウンセラーと話すシーンでも、浮かない顔。睡眠薬が欠かせず、悪夢の中に今なおいる彼。
ただ、この作品序盤に警察署でも「生まれ/環境」を理由とした殺人は許されるものではないと語られるように、割とそのメッセージは一貫して強いと感じます。
そうなると、このドラマの主張とイアン/ジュンという悲哀を強調した存在の矛盾点の解消・落としどころが不足。
そのため観ていた私は感情の「やるせなさ」が終始残り続けてしまいました。(犯罪を擁護しているわけではないです)

ということで、ラブストーリーだけに注目すると可愛らしくて、和む2人で素晴らしく、面白く良い部分も良い点もたくさんあったのですが、ホンワカした恋愛パートとシリアスな線が上手く繋がっていない印象を受けました。
ヨンドの職業設定もあり、「ヒーリング」というのが今作のキーワードになっているとは思います。
ヨンドとダジョンが「君は私の春」という存在を示す一方、彼らは他の誰かの春でもあったわけで、そこはどうしても取捨選択が発生しています。(しょうがないです、もちろん)
ただ、その"捨てた”部分に対して、もう少し何か示して欲しかったな…と思った次第です。
根本的にイアンについては大した終点が用意されておらず、蓋を開けるとヨンドとダジョンの楽しそうで幸せなシーンが増加するたびに、あの双子との落差を感じさせるだけに後半なっていました。
これでは通常のラブコメ的立場の主人公カップル+単なる2番手の男性に。
サスペンス風味を足した少し趣向を変えただけの単なる当て馬状態のイアン/ジュンのような存在に。
その点が最も「う~ん…」と常にモヤモヤしてしまい、私は非常に残念に思えました。普通のラブコメなら全く気にならない点ですが…。
個人的には、序盤の期待よりも違った着地点となったドラマかなと思いました。

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