ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

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韓国映画 完璧な他人 (感想)

おすすめ度:83%
3つの生活度:100%
月食度:100%
原題:완벽한 타인 116分

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他愛無いゲームから始まった、いつもの仲間が集まった楽しいはずの夕食会の結末とは。2018年公開のブラックコメディ/ヒューマン系映画。

 あらすじ・キャスト

40年来の仲の同郷の男性4名とその妻たち。
引っ越し祝いも兼ねて、気の置けない友人たちが集まった食事会で、とある「ゲーム」が始まる。
各自のスマートフォンに入るメッセージや電話を、みんなにオープンにするというもの。
知っているようで知らなかった、友人や配偶者の裏の顔が明らかになっていくが…?
キム・ジスさん、チョ・ジヌンさん、ユ・ヘジンさん、ヨム・ジョンアさん、
イ・ソジンさん、ソン・ハユンさん、ユン・ギョンホさん出演。

感想

皮肉や腹の探り合いのような部分もあって、見ごたえがある会話劇で面白かったです!
絶妙なバランスで成立していた結婚生活、友人関係…。
それらが、たった数時間スマホをオープンにしただけで、崩れ落ちる様子をテンポの良い会話で楽しむブラックコメディ作品でした。

元は2016年のイタリア映画『大人の事情』という作品で、日本でも『おとなの事情スマホをのぞいたら』というタイトルで公開されています。

とても仲が良いソクチョ(束草)出身の男性4とその妻3人。見た目にもとても仲が良い7人ですが、内情はそういう訳ではないようです。
スマートフォンというブラックボックスを、上手く使ったストーリーでした。

完璧な仲間たち
(食事会主催)
精神科医 イェジン役キム・ジスさん
美容外科医 ソクホ役チョ・ジヌンさん
妻イェジンは、一人娘が最近彼氏と遊びまわっていることに悩む。自身も結婚前に妊娠したことが影響しているのかもしれない。
やや気が強いイェジンと、比較的おおらかなソクホ。
2名とも医者で新居も豪華であり、金銭的には裕福な家族。ソクホは夕食会に招いた友人たちに、郷土のソクチョ料理を振る舞う。

(夕食会に参加した友人たち)
弁護士 テス役ユ・ヘジンさん
専業主婦 スヒョン役ヨム・ジョンアさん
夫テスの母親と同居しているスヒョンは、口うるさくモラハラ気味の夫が自分に興味を失っていることに不満な様子。
夕食会の手土産には、スヒョンお手製のティラミスを持参。

レストラン経営者 ジュンモ役イ・ソジンさん
獣医 セギョン役ソン・ハユンさん
新婚でとても仲が良い、セギョンはジュンモより年下。
新居祝いのギフトととして、セギョンは中国製のフクロウの陶器の置物を渡す。

元体育教師 ヨンベ役ユン・ギョンホさん
過去に妻と離婚し、現在は ミンソと呼ばれる女性と交際中。
手土産として、大量のトイレットペーパーをイェジンに渡す。

ゆるいネタバレありの感想

チョ・ジヌンさん事務所SARAM Entertainmentインスタグラムアカウントより

いつものように食事会で、歓談していた7人。
会話の流れで、各自のスマートフォンに入るメッセージや、通話もスピーカーにし、をその場にいる全員に明らかにするというゲームをすることに。
たった数時間でしたが、裏の顔とも言えるメッセージや電話が上手いタイミングで入り、それが原因となり夫婦や仲間でお互いを責め合ったり、罵ったり。
楽しいはずの時間は雲行きが怪しくなり、ついには険悪な雰囲気に一転します。

お互い親友や夫婦であっても「知らなかった」「知るべきでなかった」事が次々に明らかになります。浮気、金銭問題、不仲の原因などの数々の秘密が…。
そして、仲の良かったと思われていた友人関係の男性4人、そして妻3人の関係も、誰か1人を"のけもの”にしていたことがわかって、気まずいムードになったりも。

面白いのが、テーマとして月食とこの会合が随所にリンクさせてあるのが、素敵だなと思いました。

個人的に気に入ったキャラクターは、ソクホとヨンベです。そして、彼ら2人に関するシーンがとても印象に強く残りました。

ソクホを演じるチョ・ジヌンさんが好きな俳優さんでもあるのも大きいですが、プライドの高い妻のイェジンと、1人娘との険悪な仲の間に立つ、理解ある父親の役です。
イェジンが娘の問題(彼氏と遊んでいる点)をみんなに隠していながら、仲間の前で父として人生の先輩として、率直にそして非常に思いやりのあるアドバイスを20歳の娘にするシーンは、この映画内でダントツに光っていた描写とセリフかなと感じました。
大変良かったし、胸に来るものがありました。

そして意図せずに同性愛者だと仲間内にカミングアウトしてしまう状況に置かれてしまう、ヨンベ。
事の発端は、弁護士のテスが自分のスマートフォンに、夜10時に57歳の年上の女性からよからぬ”写真”が送られてくることを、妻に知られるのを避けたい状況から始まります。
テスはヨンベとスマホを取り換えてしまうのですが、結果テスのスマホ(本来はヨンベの物)にミンスという男性から愛を匂わせるメッセージが入り、妻含め周囲にテスはゲイだったのか?!、と衝撃と困惑を与えます。
後にテスではなく、ヨンベが同性愛者は自分だということを発言しますが、仲間内には嫌悪感を抱く者もいて、人の考え方の違いを浮き彫りにします。

興味深かったのは、この仲間内で最も一番保守的に描かれていたテスが、周囲に同性愛者だと勘違いされた部分です。妻に非難されたり、周囲に嫌みを言われた短時間での経験を踏まえたのか、「2時間ゲイになってみたが、大変だった」というユーモアがあるセリフです。

ゲイであるヨンベはこの作品内で、かなりリベラルな考えの持ち主として描かれていました。
このテスとヨンベの思想の違いを、立場を逆転させることでお互いの理解を示すという描き方はとても面白かったです。また、リベラルなヨンベでさえ、この同性愛という部分を隠さなければならなかったという点など、いまだに残る社会の背別的風潮も語られていました。

仲の良い気の置けない仲間との夕食会が、こんな悪夢のような集まりになってしまった一夜でしたが、エンディングは「!?」となりました。
先程の2時間の惨事はなんだったのでしょうか、夢?…とはいえ、月食とリンクされているのがポイントかもしれません。
ヨンベが「人の本性は月食のようなもの、隠していてもまたあらわれる」と述べたように、彼らのあの全く別人のような一面は、月食の終わりと共に消えてしまいました。
しかし恐らく今後の彼らの人生で再びその「顔」を出すのだと、すくなからず暗示しているようだと考察しました。ヒネリが効いててよい終わり方だなと印象的でした。

ということで、小気味のよいラリーのようにポンポン続く会話と、その時々のキャラクターの態度がなかなか面白い作品でした。キャスティングも素晴らしく、セットがほぼ室内だけに、俳優さん達のちょっとした仕草などもじっくり観れて面白かった!
観終わった後に2回目として楽しむと、役者さんたちの表情や視線の先の意味がより深く分かって、別の視点で楽しめるような気がします。
日本含め他の国々でたくさんリメイクされているこの作品、それぞれのお国の事情や設定もあって、観比べるのも良さそうだなと思いました。
面白い映画でした!

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