ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ ゴールデンスプーン (感想)

おすすめ度:77%
金のさじ度:100%
露天商度:100%
原題:금수저 / The Golden Spoon (全16話)

韓国ドラマ ゴールデンスプーン 感想レビュー考察

親を”取り替える”魔法のスプーンがあったとしたら…。2022年のファンタジー復讐ドラマ。

あらすじ・キャスト

貧しい家庭に育ったイ・スンチョン(ユク・ソンジェさん)。
クラスメイトで財閥の御曹司ファン・テヨン(イ・ジョンウォンさん)を中心とした階級社会のような中で、
スンチョンはその経済状況のためで何度も辛い思いをしてきたのだった。
そんな時、道で物を売っている老人から、不思議なスプーンの話を聞かされるスンチョン。半信半疑でスプーンを買うのだったが…。

感想

気になる点もありましたが最後まで面白かったです。
展開がとても漫画っぽいのでわかりやすいですが、こちらもWEBトゥーンが原作のドラマ。不思議なスプーンで貧しいスンチョンが、財閥御曹司のテヨンと入れ替わるというお話。
おとぎ話風でもあり、格差社会への復讐というテーマもあってか、根本的にはよくあるネタで勝負しているドラマですが、ヒネリがありテンポも良く惹きつけられるドラマでした。
権力とプライド、カネと愛など究極の選択的な問題を提起していると思います。(考察は後述します)
後出しじゃんけん的な粗い展開ではありましたが、皮肉も効いていて最後まで結末が見えにくく、毎週楽しかった。
大切なもの…僕やっとわかったよ!的な、Eテレ的な内容だったらつまらないなあと考えていたのですが、そのような単純な展開にはなりませんのでご安心(?)下さればと思います。

主人公のイ・スンチョンというキャラがわかりやすい清廉潔白さがあまり無く、一貫してアグレッシブに”金”に食らいついていく(ある意味)執念深さがあります。
時に自分勝手にも見えるその性格が、アンチヒーロー的役割がとても強くて個人的にそこが通常の主人公とは異なり一番面白く思いました。
そんな時として”嫌なヤツ”になるスンチョンを演じるユク・ソンジェさんが、とても役に合っていました!
スンチョンの生意気さや意地の強さ、どこか芯にある冷淡な表現がとても上手いなあと印象的でした。
対立するテヨンのキャラもそうですが、2人が合わせ鏡のようなキャラクターなのも興味深かったです。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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ユク・ソンジェさんインスタグラム

高校生のイ・スンチョン。彼のクラスでも既に階級社会は存在します。
頂点に君臨するのは財閥トシングループの後継者である、ファン・テヨン。そしてスンチョンは底辺に属するのでした。
いくら勉強や努力をしても超えられない格差。スンチョンは何度も絶望します。
父は元漫画家、今も細々と描いてはいますが無職状態。母や姉も働いていますが、家計は苦しく借金まみれの家族です。スンチョンはこのような経済状態にある家族そのものをどこか毛嫌いしている様子。抜け出したいと願います。
そんなスンチョンはある日、謎の老婆に出会います。
古びた道具を売っているこのお婆さんですが、まるでスンチョンの置かれた状況を知っていたかのように”金のスプーン”を見せます。
なんでも、このスプーンを使って相手の家で食事を3回するとその子と「入れ替わる」とのこと。つまり「親を取り替える」スプーンだ、と。
もちろん疑うスンチョンでしたが、藁をもすがる気持ちがあったのでしょう。スンチョンはそのスプーンを購入するのでした。

同時にスンチョンはテヨンの勉強を手伝ったことで、繋がっていきます。
テヨンの父は後継者である息子を鍛えるためか、厳しい課題を彼に与えそれがテヨンによっては重圧になっていたのです。
次第にテヨンの信頼を勝ちとったスンチョンは、テヨンの家で”食事を取る”チャンスを偶然と意地で得ます。
そして…気付けばスンチョンは”テヨン”になっていたのでした。
立場が入れ替わってしまったスンチョンとテヨン。お互いの持っていた技能などは引き継ぎません。ちなみにテヨン君の方ですが、入れ替わったこともわからないまま。
こうして、スンチョンのテヨンとしての生活が始まります。

親を替えて良かった
スプーンを使って見事テヨンとなったスンチョン。今までのお金に困窮した生活とは180度違い、自由を得たような気分に浸ります。
スンチョンの父が借金取りに土下座する様子を見て、思わず「親を替えて良かった」とこぼします。この一言は彼を印象付けるセリフとして効いていて良かった。
「金があれば何でもできる」「必ず生き延びる」ととにかく貧乏を忌み嫌うスンチョン、テヨンとなった今はもう怖いものはありません。
とはいえ、テヨンとしての生活は楽しいだけではありません。あの厳しい父親に一挙一動を監視されているような生活。”後継者”としてその地位を確約して欲しいテヨン(スンチョン)ですが、息子だからといって財閥を相続できるとは限らないよう。テヨン父は何か考えがある様子。
テヨンは持ち前の頭の頭の良さと大胆さでテヨン父を驚かせ、”過去のテヨンとは違う”ということをアピール。テヨン父も態度が変わった息子に満足そう。

ゴールデンスプーン ドラマ考察批評レビュー

スプーン常習性
テヨンになったスンチョン君でしたが、スンチョン父の大怪我にはさすがに動揺。父を亡くすかもしれない…。スンチョンはお金に目がくらみ、両親を替えた罰だと反省したんですね。
しかし心を入れ替えて元の生活に戻ったのも束の間。再び痛感させられるあの忌々しい貧困問題。また借金漬けの悪夢の日々。
テヨン父の考えの通りなのか、「富に染まってしまった」スンチョン君。
自分でも恐れていたように、再びテヨンになる道を選んでしまいます。常習性があるスプーンの恐怖。
とはいえ想像もしていなかった規模の困難とトラブルに見舞われることに。

大量生産品スプーン
この手のドラマでは散見されますが、魔法のスプーンの使用ルールが後付けでバンバン出てくるので、都合の良さを感じはしました。
特に後半にかけては「!?」という新たなスプーンも続々と出現しますので、半笑いになってしまいました。
確かなことは、結構な本数であのスプーンは世間に出回っているということです。皮肉でしょうが…。

気になった点
計画性の無さ
スンチョンの普段の計算高さからは想像がつかない「計画性の抜け」には、ちょっと甘すぎる設定で閉口させられました。
最も大切なスプーンの秘密を残していたり、テヨン変身後へのスプーンを取られたり、テヨン父の不正を告発したり。
紛失した場合のプランBを考えておいたり、テヨン父が事件もみ消しなんて簡単なことぐらいスンチョンなら当然予想できると矛盾に思えましたが。
ただエンディング付近ついては、直前にスプーンをポケットに入れるという異常に気が利くスンチョン君になっていましたが…。
ジュヒさんエスパー化
スンチョンがテヨンになったりする訳ですが、最後までジュヒさんは毎回彼に心を惹かれている様子。
正直ジュヒとスンチョンがスプーン前に交際期間が(長めに)あれば、ある種の”彼を見つけ出す”感覚が備わっているのも納得できたのですが、2人の恋は始まったばかりでのスプーン事件発生。
なぜジュヒだけがそのようになるのかあまり理解できませんでした。愛というのであれば、スンチョンの家族が誰も彼に気づかない(父は一応ありましたが…)という点でちょっと矛盾があると思います。
スプーンのルール
誕生日に両親に会うと戻る…1日だけでした!など、正直後付けが多すぎて如何なものかと思いました。
また最後のスンチョンが持ち出したスプーンですが、あれは元々”自分”のスプーンなので、自分の記憶も戻せるのかどうか、よくわかんねえなと思いましたが、恐らく戻せるのだと思います。

スプーンの代償と考察
金の匙で簡単に得た富と権力。やはりその代償は計り知れませんでした。
結局「愛」と「お金」はトレードオフだということでしょうか。使用者は漏れなく不幸になっているようです。
今作では最終回のラスト20分ぐらいが非常に強いオチになっているので詳細は避けますが、スンチョンに関しては主人公特別枠なのでしょうか、完全に罰を受けたとは私は思いませんでした。
ただこれは彼の序盤のセリフ「生き延びてやる」がここでバッチリ効いているので、伏線回収というか非常に良かったです。
ですが自分で望んだ「テヨン」という立場。それが再び別人によって奪われてしまうというのは大きな皮肉でとても面白い着地点だったと思います。
彼はもしかしたらどこかホッとしたのかもしれません。かつてのテヨン君のように。
ただ最後彼はスプーンを直前に持ち出していますので、スンチャンの記憶は保ったままで生きていることが考察できます。(株のことやジュヒの取材だけ受けたことから)
思い出の海岸でスンチャンと同じセリフ…。エスパージュヒは彼の手を再び握ることになるでしょう。

ということで、時間と立場がどんどん変化することで、観ていて全く飽きず単純に楽しいドラマだったなと思いました。
都合の良さもありましたが、スンチョンが最後まで持ち前のある種の”ふてぶてしさ”とハングリー精神を失っていなかったのは良かったです。主人公を”良い子”だけに仕立て上げなかったのが、特に印象に残りました。
総合的には面白いドラマでした。

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