ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ わずか1000ウォンの弁護士 (感想)

おすすめ度:87%
サングラス度:100%
指輪度:100%
原題:천원짜리 변호사 / One Dollar Lawyer (全12話)

韓国ドラマ わずか1000ウォンの弁護士 感想レビュー批評

たった1000ウォンで引き受ける弁護士とは。2022年放送のヒューマン系コメディドラマ。

あらすじ・キャスト

下町の古い雑居ビル2階に事務所を構える、弁護士チョン・ジフン(ナムグン・ミンさん)。彼は受任料をたったの1000ウォンで受けるという異色の弁護士。
そんな彼の元に大手法律事務所の代表の孫であるマリ(キム・ジウンさん)が試補として2か月間働くことになる。
マリはジフンの予想がつかない行動に翻弄されるが…。

感想

とっても面白かったです!!!
おふざけとシリアス、キッチュさと重厚さのバランス感覚がとにかくが素晴らしかったです。
ただちょっと後半から個人的に残念に思う点は多々ありましたが(後述します)、このドラマのオープニングやポスターからも予測できる通りのスタイルが一貫して最後まであり、”パッケージ”として完成度がとても高いドラマだと強く印象に残りました。
そして何と言っても今作は…
ナムグン・ミンさん大炸裂
玄人っぽい演技がとにかくすごい」(100%良い意味です)
飄々とした軽快さ、やり過ぎ感がないアクの強さ、胡散臭さ、冷酷さ。そしてガッチリ掴んでくるシリアスさ。
全ての局面でミンさん節が爆発していて、ミンさん見本帳のようで視聴していてかなり満足度を得られました。
ストーリーによっては”俳優さんの振れ幅”が出にくい作品も多くありますが、このドラマに関してはラッキーなことに様々なタイプのシーンが含まれますので、役柄とのシンクロ率もあいまってナムグン・ミンさんの演技幅がかなり堪能できます。
脇を固めるキャラもゆるめのボケ程度でサポートをしっかり組んであり、演出含めてとにかく”やりすぎ感ゼロ”のバランスが良いドラマだなと思いました。個人的にはチェ・デフンさんが特に面白かったです。
雑だなと感じる点も割とありましたが、基本コメディ色強めのため(良い意味で)その粗さが完全に隠れており、上手いと思いました。

脚本は2015年のSBS脚本コンテストの受賞作ということで、時間が経過してからのプロダクションになったようです。
当初は14話予定が12話に変更となったとのことで、これも後述しますが正直気になるところでした。

カメオ(特別出演)として、イ・ジェフンさんがご本人役で出演されています。
イ・ジェフンさん、ナムグン・ミンさんのドラマ『ストーブリーグ』でも特別出演されていましたので、少々ニヤッとしてしまいました。
ちなみに『ストーブリーグ』も素晴らしいドラマですので、気になる方は是非視聴して頂きたいなあと思います。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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ナムグン・ミンさんインスタグラムより

古い雑居ビル2階にひっそりと存在する「弁護士2階」、ここの代表弁護士はチョン・ジフン。なんと受任料はわずか1000ウォン。
元飲食店跡のこの古ぼけた事務所に、サングラスと柄のスリーピーススーツ、髪はコテで巻いているという、クセの強すぎる弁護士ジフンさん。
たださすがに1000ウォンではやっていけないのか、事務所の家賃も払えていない様子。
とはいえ、ジフンの弁護士としての腕はピカイチです。華麗なというか、人を煙に巻いたというか、視点を上手く変えて勝利します。
彼の信念は「罪を犯した者が、相応の罪を償う」こと。それを曲げずに生きてきたのです。
ある日、大手法律事務所の代表の孫であるマリが、このジフンの事務所にやって来ます。
ジフンの強い信念を知ってか、祖父から命じられ2か月の間試補としてジフンの元で学ぶように言われたのでした。ジフンは、他にはいないタイプの弁護士だからという理由です。
マリは祖父のその言葉の真意を理解できず拒否しますが、ジフンの掴み所のない人柄や弁護士としての信念に触れるうち次第に気付きを得るのでした。

このように序盤は、人々から依頼された色々な事件を解決する弁護士ジフンの仕事の姿。そしてそんな彼と嫌々一緒に働き始めるマリのエピソードが展開されます。
そして誰もが気になるのがジフンの「よくわからない態度」です。フレンドリーのようで、どこか人を寄せ付けない壁を持つジフン。
笑顔のようで、作り笑いのようでもある表情。飄々としている中にある冷えた芯…。
ジフンは”元検事だった”ということが明らかになりますが、彼の検事としての過去はどうだったのか?次第に明らかになるのでした。

道化師ジフン
個人的に気に入ったのがドラマの構成です。
キャラの背景が語られる際、よくチラチラと小出しで過去と現在が交差する作品が多い中、今作は集中して”過去”のジフンがほぼ中盤しっかり使って描かれます。
そのため弁護士ジフンと検事ジフンが、180度異なったキャラであることがクッキリしていて良かった。まるで別作品のような演出になっているのも面白かったです。
加えてジフンという人間が根本的に変化していない、というのが明確だったのも興味深かった。彼の信念は現在も同じ。
今は別の仮面を被っていながらも、ジフンという人間がどこか常に壁を作り他人を信用しきれていないということもわかります。
今はふざけた弁護士ジフンというキャラを演じていて、過去は感情を出さす一匹狼の検事ジフン。彼は常に孤高でした。

わずか1000ウォンの弁護士 感想レビュー

過去
彼が変わった大きなきっかけ。それはジフンが検事時代に直面した、大切な人2名の死。
検事として企業の裏金問題を調べていたジフンは、やがてそれが自分の父親が少なからず関与していることを知ります。
元検事だった父親を尊敬していたジフンにとっても厳しい状況になりますが、しかし彼は「罪を犯した人が償うべき」という信念を貫きます。
ジフンを誇らしく思っていた父、そして”組織”の恐ろしさも知っていた父。彼は亡くなってしまいます。
上層部の意向もあり、捜査も打ち切りとなったジフンは、失望します。彼自身や社会、そして正義への失望のようにも見えました。
そんな頃、固く心を閉ざしていたジフンを「引っ張り上げた」のが弁護士のジュヨン(イ・チョンアさん)です。
ジュヨンはマリの祖父が代表の事務所に所属していた弁護士でした。次第にジフンはジュヨンには心を許していくようになります。
しかし幸せだった2人に悲劇が。ジュヨンは事件に”巻き込まれて”命を落としてしまいます。

第8話は本当に素晴らしくて、強く印象に残った回となりました。
検事だったジフンが、悲痛な気持ちを抱きながら彼女の意思を継ごうと決意したところです。
ジフンがどういう気持ちでサングラスをかけ始めたか…?
現在ではサングラスは彼の冗談のようでキザでもある特徴的なアイテムになっていますが、彼自身の”仮面”に完全になっていて、この使い方は完璧でした。
スタイリストの方のセンスが良いのかもしれませんが、抜群に顔立ちに似合ったサングラスを毎回着けられていてナムグン先輩かっこよすぎました。
また指輪も上手く繋がっていて、当初やたら目立つ指輪だなと思っていただけに理由が明かされてグッときました。
弁護士ジフンの”理由”は悲劇ですが、ある種のドラマチックな壮絶さがあり、その反動が今の彼だというのはストーリ上でとても説得力があるなと思いました。

弁護士ジフン
ついにジフンはジュヨンと父を死へ追いやった犯人らを見つけます。
しかし彼は突然、マリや事務局長の元から意味深に姿をくらませてしまうのでした。
事件解決に向かう際、過去の因縁を晴らすように再び”サングラス”のメタファーが効いていました。
恋人が亡くなった時に自分も”死んでいた”。別人のように生きてきた弁護士としてのジフン。そんな過去との区切りを感じました。
ここで自ら「1000ウォンの弁護士」だと自信と信念を持って言えたのでしょう。

不満点
・なぜ「道化」を選んだのか
ジフンにとって忘れられない2人の死。沈んだ気持ちを隠すように”今”のジフンになった彼の心情について、もっと語られるべきだったのではないでしょうか。
これではまるでジフンが視聴者との間に壁を作ってしまっている状態で、個人的にはかなり不満でした。察することは出来ます。が、彼の口からしっかり語られても良かったような。
ジフンと恋人との(特に知り合ったり付き合ったりする)過去よりも、彼女を失った彼の心情の変化にもっと重点を置いて描写して欲しかったです。

・14話→12話への変更
最後に思いっきりネタをぶち込んでくるドラマは多々ありますが、今作も乗車率500%の満員さ。
他人の裁判の方が時間をゆっくり使っているとは何事かと思いました。これはもしかしたら、このドラマが14話から12話に減らした事と関係しているのかもしれません。
理由は色々あるのでしょうが、最も力を入れるべきジフンの問題を5倍速レベルで片付けてしまったのは、勿体無いにも程があるかと思います。
同様にとっても面白いキャラだったミニョクの件。彼がマリに恋していたネタです。
おそらくこれも伏線回収される前にカットされたエピソードだったと推測できます。14話のままで進んでいたら、何かしら彼のオモシロ話が膨らんでいたような気がして残念。

ということで、色々思いつつも漫画的演出と上手い編集で乗り切ったなと感じましたが、雰囲気は崩れず良かった。
ポテンシャルが非常に高かったので、あと少し活かせば本当に最高ドラマだったのに…と思いました。心底もったいないと思います。
とはいえ総合的には勧善懲悪のストーリーでもあり視聴後はスッキリさせられ、エンタメとしても楽しいドラマだったなと思いました。おすすめです。

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