ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ ここに来て抱きしめて (感想)

おすすめ度:83%
ハンマーへのこだわり度:100%
初恋度:100%
原題:이리와 안아줘 全16話(Netflix版)

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凶悪犯罪に翻弄された2人の愛の行方とは。2018年放送のスリラーロマンス。

 あらすじ・キャスト

国中を震撼させた連続殺人犯ヒジェ(ホ・ジュノさん)の息子、ナム/ドジン(チャン・ギヨンさん)。
父親が中学生の頃逮捕され、成人して名前を変えた今もなお、ナムは過去に父親が起こした事件と、そして父の存在に人生を振り回されていた。そんな彼を心のどこかで支えてくれていたのは、初恋相手であり父親の被害者の娘、ナグォン/ジェイ(チン・ギジュさん)。
彼女もまた、女優の道を歩んでいるものの、両親を殺害され自身も危険な目にあったため、トラウマに悩まされていたのだった。
再び出会ったナムとナグォン、運命の2人だった…が、今なお影響力がある父の存在が2人の気持ちに暗い影を落とす…。

感想

とても面白かったです。
無言にさせられる都合の良すぎる部分がありはしましたが、極悪で怖いヒジェおじさんが一体どうなるのか?!という点が気になって、次々と視聴してしまい、一気に観てしまいました。
また、この作品もキャスティングの良さが際立って良かったと感じられました。
サイコパス☆ヒジェを演じるホ・ジュノさん含め、主人公のチャン・ギヨンさん、チン・ギジュさん共に役柄にピッタリで、雰囲気がとっても盛り上がっていました。

個人的に気に入ったこのドラマ内でのラブストーリーの見どころ(?)として、チン・ギジュさんとチャン・ギヨンさんのシーンでは、ギヨンさん演じるナムが、嬉しさと愛情があふれているせいか、質問されても胸がいっぱいで言葉が出てこず、コクコク…とただただ頷くシーンが頻繁にあり、この演出は非常に可愛らしかったです。
チャン・ギヨンさん、このドラマでも影のある役柄がやたらと似合う方ですが、このような可愛い"オフ"の表情の対比シーンが非常に効いていました。

ユン・ナム/チェ・ドジン役チャン・ギヨンさん
真面目で学業優秀。
実母は亡くなり、飲食店を経営する育ての母がいる。
事件後にドジンと名前を変え、現在は警察大学の卒業間近。
サイコパスの父親に半ば洗脳のような形で愛された少年。
ナグォンは初恋相手であり、忘れられない最愛の人。

キル・ナグォン/ハン・ジェイ役チン・ギジュさん
女優の母と優しい父の元で裕福に育った。
中学時代にナムと出会い、好きになる。
ナムの父親によって両親を殺害され、自身も深いトラウマを持つ。
名前を変え、女優の道に進み、やがて大人気に。

ユン・ヒジェ役ホ・ジュノさん
サイコパスで金槌(ハンマー)を武器に持つおじさん。
とにかく不気味で、ニヤリと笑うクセがある。
21歳の初婚から、離婚を繰り返し合計4回結婚し、息子2人の父親。
特に次男のナムを「俺に似ている」と異様な愛情で可愛がる。
「軟弱になるな」「目障りな者は消せ」等、独自の理屈を元に、特に理由なく人々を殺害する。犬舎によくいる。

ゆるいネタバレありの感想

チャン・ギヨンさんインスタグラムより

中学生時代、お互いに初恋として惹かれあっていたナムとナグォン。
しかしそんなナムの父親ヒジェは、普通の人間ではなく、ハンマー使いの異常殺人者。
独自の理論に基づき、意味なく次々と善良な人々を殺害する危険な人物です。ナグォンの両親もその手にかかり、そして彼女自身へも…。
しかし、ヒジェの息子ナムが彼女を守ります。そして父を通報、逮捕されます。

そして9年後…彼らは大人に。
ナムは前代未聞の殺人者の息子として名前を変え、警察官の道を志しています。
しかし、父親が自伝を出版。再び世間の注目の的に…。
一方の駆け出し女優ジェイも、殺害された女優の娘であると連日マスコミを騒がせます。

この辛い日々を特にナムは、女優になったナグォンをずっと想い、心の糧にしながら過ごしていました。
それを最も端的に描写しているシーンが、警察学校にあった自動販売機のナグォン(ジェイ)の写真を愛おしそうに見つめるナム(ドジン)の姿です。これは本当に伝わってくる、とても良い演出だなあと思いました。

更に月日が経過し、ドジンは警察官、ジェイは人気女優へ。
一度彼らは警察大学で遭遇してはいますが、ジェイの元へ届いた不審なプレゼントの事件。この件を担当することになったドジン。
再びというか、やっと運命が繋がり、ナムとナグォンはきちんと出会い、恋愛へ発展します。

犯人の息子と被害者の娘の恋愛という設定ではありますが、そう単純な対立関係でないのが面白かったです。
息子ナムも完全に被害者であり、またその相手が憎み切れない、縁が完全には切れない肉親の父親であるという点が、彼の人生に一生貼られたレッテルとなり、ナムが置かれた過酷で苦しい立場であるのは明白で、とても同情しました。
つまり、私はこのナムとナグォンは同じ被害者としての同志であり、"あの日"の秘密を共有し合っていた、他人には理解できないぐらいの強い関係だと感じました。
そのため、この2人のお互いを想う気持ちが大人になっても一切ブレないというのは、ストーリー上、一貫性があってとても理解できました。

特にナムは離れていた10年以上もの間、"心の拠り所"としてナグォンを想っていました。ナグォン=楽園という意味だそうですが、チン・ギジュさんのふわっとした雰囲気と、リラックスさせるような明るさや強さが役にピッタリでとっても良かったです。
全体的に重い内容のドラマですが、ギジュさんが映ると画面が柔らかくなるのが大変良いと思いました。
2人のラブストーリーはこれで終わりというか、2人の絆や愛情は最初から最後までずっと変わりません。

チャン・ギヨンさんインスタグラムより

問題なのは、ハンマーおじさんの存在です。
サイコパスの光におびき寄せされる同志…なのか、収監されているヒジェですが、彼を色々な意味で慕うものが複数名存在します。
模倣犯や、ナムの兄でもあるヒョンム、そしてヒジェを「父」と呼ぶ青年。そしてマスコミ関係者…。

複数名を殺害し、反省の色は皆無のヒジェさんですが、何故か警察による彼の警護はいつも緩い…というか、むしろノーガード状態。
看守を襲い殺そうとしても、数日後の一般人との面会では手錠もなく、キャンドルがたくさん灯る雰囲気のよい場所で行われます。
他のドラマでよく見る、厚いアクリル板越しに行われる面会とは雲泥の差ですが…。

刑務所内シーンでは暗い照明に加えて血の気のないメイクをされていたのもあって、ホ・ジュノさんがまるで蝋人形のように見える時があり、良い意味でも悪い意味でも最高に不気味でした。

警護がユルユルの警察ですが、頑なに手錠を使わず、紐で絶対に対処するという、彼らの強い意思を感じられました。
護送車両が事故に遭遇し脱走したり、入院中のヒジェがヘアピン1つで手錠を解錠したりと、イリュージョンのようにやりたい放題…雑というか、茶番というか…。

このように今作品内では、警察という存在がまるでギャグだったのですが、"かっこいい"主人公のナム(ドジン)が今作の謎の警察組織に所属しているのは、結構な皮肉だなとは思いましたが…。そのあたりの矛盾は良いのでしょうか…?

最終的にこの金槌おじさんは、因縁の対決、父vs息子の最終決戦を迎えます。
口論で息子にあっさりと論破されてしまい、加えて過去と同様に再びナグォンと息子の愛を見せつけられ、ヒジェはややトーンダウンします。
警察も駆けつけ、ナム君の「逮捕する」というセリフでもって撃沈。
ナム君の中身、チャン・ギヨンさんがWikipedia情報によると、身長が187㎝という方なので、年齢的にも体格的にも絶対的に有利そうだったので、肉体戦だと簡単かなと思っていました。

ただ、最後の最後で再び警察がなぜか1人でヒジェの対応をしたため、またもや彼に逃げられそうになるという、学ばない組織の姿に辟易しつつ…。
しかし最終的に息子ナム君が、ラストは銃で撃つ(ただし足)シーンで終了。
ヒジェさん、しつこく生命力あふれる、雑草のような親父の姿を最後まで見せつけてくれました。
ただ、このヒジェという男性ですが、気持ち悪く不気味という印象は大きくあったものの、ナム君も指摘したようにただの弱い物イジメの「小物感」があった、謎の生き様でした。

このドラマですが面白く視聴しましたが、個人的に気になるのが、ストーリー展開で挟まれる回想シーンの多さでした。
大人になったナムとナグォン、彼ら2人の関係の基礎になっているのが中学時代というのは大いに理解できます。が、結構な回数でこの中学時代の同じようなシーンが繰り返し入るのは、しつこさを感じてしまいました。
シーンの進め方が若干もったいぶった感じがあったかな…。

このヒジェという父の不気味さと、常に狙われているナグォンという暗いお話の反面、
ナムとナグォンの恋愛パートは邪魔が入らず(金槌おじさん関係以外)、割と甘い雰囲気で、特にナムを演じるギヨンさんの表情ですが、2人になると途端にゆるむのが可愛らしかった!

個人的にギヨンさんの良い表情の演技だなと感じたのは、15話(Netflix版)で父から
ナグォン誘拐の連絡を電話で受けた直後の表情です。
動揺と不安で涙を流しながらも、彼女を絶対に守ると決意したシーンは、ギヨンさんの特徴ある目元が活きていて、大変良いなあと思いました。

ということで、敵対する相手を好きになる話か…と適当に観始めたのですが、ホ・ジュノさん演じる父親がとんでもねえヤバさに仕上がっており、視聴していてウキウキしてしまいました。
上述したように、警察の行動や回想シーンの多さが気になりつつも、ラブストーリーの散りばめ方や気持ちの描き方など全体的には上手くまとまっていて、一気に観てしまう面白さがありました。

ただ、ヒジェは特段反省するタイプでもなさそうですので、受刑者として生きている限り、次の信奉者が出現する可能性や脱獄(再)もゼロではないですよね…?
ナグォンとナムの安全が確実になった訳ではないのでは…?と、このあたりを考察すると別の怖さを感じます。完璧なハッピーエンド風のエンディングを観ながら、ぼんやりとした不穏な気持ちを覚えつつ、視聴を終えました。

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