ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国映画 野球少女 (感想)

おすすめ度:68%
色々な戦い度:100%
マニュキュア度:100%
原題: 야구소녀 105分

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ずっと目指してきたプロ野球選手の道、女性だからダメという理由はないはず…2020年公開のスポーツ系ヒューマンドラマ。

あらすじ・キャスト

リトルリーグから野球を続け、プロの選手を目指すスイン(イ・ジュヨンさん)は、
高校3年になり、その人生の岐路に厳しさを感じる。
同級生のジョンホ(クァク・ドンヨンさん)はプロ入りが確定し、男子選手との差を感じるのだった。
そんな時、高校の野球部に新しいコーチ(イ・ジュニョクさん)が着任。スインにプロ入りは諦めるように告げるが…。

感想

タイトルの印象から女性の野球選手のプロ球団入りという、単なるサクセスストーリーを予想していたのですが、恐らく主張したかった部分は「それだけでない」という話で、良い意味で期待を裏切られました。
ちょっとお話のテンポが少し悪く感じたのと、映画としては抑揚がなく、あまりに淡々としすぎているかな…とは思えました。ただその分、描写はとても繊細・丁寧で、特にフェミニズムという視点では、個人的に良いなと思えました!

また以下の点を指摘するのはかなり野暮かなとは思いますが、主人公を演じるイ・ジュヨンさんが"野球選手"としては、体格的に華奢で細く、正直あまり運動選手という説得力が画面からはなく…という表面的な部分で少々気になる点がありました。
加えて高校生のお話ではありましたが、クァク・ドンヨンさん含めてさすがに誰も高校生に見えない点もやや気になりつつ…。

映像の仕上げも全体的に暗めで、作品としてもう少しメリハリが合っても良かったかなとは思えましたが、地味ですが主張もしっかりしていて良い映画だと感じられました。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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イ・ジュヨンさんインスタグラムより

あまり裕福でない家庭の子のスインは、幼少期から野球一筋。
女性ながら(というのは良くない表現ですが)、最高130キロの投球をする天才少女と報道されたことも。
そんな彼女は現在、高校3年生。進路に周囲が騒がしい頃です。
とはいえ、ずっと"プロ入り"を目指して頑張ってきたスインは、むしろそれしか目標はありません。
ですが、現実と性別の壁は厳しく、球団のテストに向かった彼女に冷たい態度の球団。
テストさえも受けさせてもらえません。
一方、ずっとリトルリーグから一緒に野球をしていた、幼馴染であり男性のジョンホはプロから既に声がかかっています。
昔は自分の方がジョンホよりも強く、上手かったのに…、どうして自分はダメなのか?
日々複雑な気持ちを抱くスインです。

そんな時、高校の野球部に新しいコーチがやって来ます。
このコーチも訳アリ…というか、コーチ自身も人生の選択に迷い、このコーチという道に新たに進んだ人物。独立リーグにいましたが、プロを夢見ながら諦めた過去がありました。
彼もまた人生の再スタートといった状況で、高校の野球部のコーチに就任しましたが、野球部に女子選手のスインがいることに驚きます。
高校3年のスインに、監督やコーチは「プロは諦めろ」と日々アドバイスという忠告ををする先生や親たち。しかしスインは絶対に決意を変えません。
そんな彼女を見て、コーチは次第にスインに"指導"を始めます。

…と、大まかにはスインが最終的にはプロの選手の座を無事勝ち取るまでの「戦い」が描かれていきます。
序盤は、「女性だから」という理由で、球団のトライアウトさえ受けさせてもらえず悔しい思いをする描写も。
しかし、女性という理由だけで断られている訳ではないのは、スイン含めてわかっていることでした。それは、やはり体格や球の速さの違いです。
そこで彼女はコーチと共に、彼女の持ち味を生かした別の投げ方などについて研究します。

個人的に興味深かったのが、プロに進む事を決してあきらめなかったスインに対する周囲の女性たちの描かれ方でした。
まずは母親
この母親はスインのプロ野球選手という夢に対してはとても懐疑的。野球よりは現実を見て働いて欲しいと願っています。
何度となく野球から強く娘を止める母親…ですが、彼女も女性の生き方としてある種のモデルでもあります。
というのも、スイン父は、資格取得のため何年も勉強しています。資格のため…という名目ですが、ある意味、父は夢を持って(そして妻に支えられて)生きています。
そんな夢に生きる夫の元では、妻であり母はワンオペのような形で現実的に家族を支えている訳で。
夢を持って、目標のために生きるという選択肢は、彼女にはそんな余地が与えられなかったということがわかります。

もう1人は元野球選手で、今は日本語の先生をしている女性教諭。
この説明から、元々韓国で女性選手として野球をしていたのですが、やはりプロは諦めたということがすぐにわかります。
また、恐らくこの先生ですが選手として日本に数年滞在し日本語習得し、野球とは違う仕事をしている(教員)…という道を歩んだのではないかと推測できます。
(スインが韓国でプロになれないという会話で「日本か海外に行くか?」というセリフもありました)
一度は夢に向かってチャレンジしたものの、挫折/諦めてしまった女性がいます。

そしてスイン本人です。
このように3人のそれぞれの女性が描かれているのは、なかなか良いなと思えました。
スインはコーチや仲間のジョンホにも応援されて、意思を通して突破口を見つけます。
ここでもまた、このようなある意味社会的概念を変えるようなチャレンジを行うには、強い気持ちと周囲の理解を得ることも大切なんだなと思えました。(そしてもちろん、実力もですが…)

主演のイ・ジュヨンさんは『梨泰院クラス』で印象的な演技をされていましたが、今作でも独特の雰囲気があり良かったです。
また梨泰院クラス繋がりでしょうか、あの問題の"会長”が少し出演されていましたので、面白かったです。

ということで、単純なスポーツ・サクセスストーリーではなく、色々と考えさせられるお話にもなっていて、作品として興味深いと思いました。
ただストーリー自体の核となるネタが小さく話が広げにくいというのもあってか、テンポやメリハリが悪く感じてしまい、映画としては少しダレてしまう部分があったのがちょっと残念に思えました。

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