ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 空から降る一億の星 (感想)

おすすめ度:85%
ソ・イングクさんの視線度:100%
兄の存在度:100%
原題:하늘에서 내리는 일억개의 별 全16話

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闇を抱えた男性と似た境遇の女性が行き着く先とは…2018年のサスペンス系ラブストーリー。

あらすじ・キャスト

陶芸家であり友人のスンア(ソ・ウンスさん)の展示会に招待されたジンガン(チョン・ソミンさん)は、クラフトビール会社に勤めるムヨン(ソ・イングクさん)と会場で出会う。
展示会でムヨンが起こしたトラブルがきっかけとなり、スンアとムヨンは付き合い始める。そんな友人の彼ムヨンに、スンアは胸騒ぎを覚える。
一方ジンガンの兄ジングク(パク・ソンウンさん)も、とある殺人事件の捜査で、ムヨンがこの事件に関係しているのではと疑い始めるが…。

感想

原作は北川悦吏子さん作の脚本で、日本で2002年に木村拓哉さんと明石家さんまさん主演で放送されたドラマとのことです。
その作品の韓国版リメイクですが、私はオリジナルは未視聴で、内容も全く知らずに今作を視聴しました。(タイトルの印象から、いわゆる普通のラブストーリーと思って視聴しましたが…)

大体先が見えるドラマが多いですが、この作品はどう結末を迎えるのかはっきり読めず「そっちか~…!」と、久しぶりに"エンディング"で驚いた気持ちになったドラマでした。
始まりからずっと重めの内容で謎も多いストーリーでしたが、最後まで作品自身のスタイルを失わず、進め方や魅せ方も上手い作品だなあと思いました。
視聴側の感情をしっかり劇場型でかき乱す"ドラマっぽさ"を感じたのは、(悪い意味ではなく)原作が古いというのも大きかったかもしれません。

そしてこのドラマで最も良かった点は、やはりダントツでソ・イングクさんの演技だったと思います。
素人のくせに上から目線で大変恐縮ですが、このムヨンという役が本当に当たっていました!
掴みどころのないタイプで何を考えているのか読めない、近寄り難さ…そんな何をするのかわからない怖さもあるムヨンという男性を、イングクさんの独特の眼差しや、どこか孤独感ある雰囲気、ちょっと首を傾げて話すところ、そして小動物のような可愛さなど、その時々のキャラ描写にとにかくピッタリ。
その部分がものすごくこの作品に効いていました。
至極単純な感想として「イングクさん、すごいな~(語彙力)」と本気で思いました。
とにかくイングクさん演じるムヨンという人物に対しての説得性が、とにかくすごかったです。
作品の粗や、わざとらしい点を全てイングクさんの力でカバーしたな…と本当に感じました。
結論、イングクさんが素晴らしかったです。

個人的な感想・印象としては、ジンガンの兄である刑事のジングクのキャラクターが、ネガティブな意味で大変気になりました。
「愛情・情熱」で押し切ればそれでヨシ!的な、古臭いキャラ設定にかなり鬱陶しさを覚え、そこが最大限にこのドラマ内で気分を削がれた点ではありましたが…。
というか、警察内の兄と女性カップル(?)2人ですが声が(物理的にも)うるさい割に、愛するジンガンのためになぜもっと上手く立ち回れなかったのかな…と、行動にいちいち無駄な部分を感じてはしまいました。
とはいえ、上述したようにイングクさんとソミンさん2人の可愛らしさで、色々視聴している上でカバーして頂けて有難かったです。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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ソ・イングクさんインスタグラムより

デザイン事務所に勤めるジンガンは、親友スンアの展示会に向かいます。
彼女のお祝いでもありましたが、ジンガンはスンアの財閥御曹司の彼のコネという"仕事"のミッションも目的でした。到着した会場ではクラフトビール会社の搬入なども始まっています。
そこでムヨンとジンガンは出会うことになりますが、初対面から「キレイでない」などとジンガンにかなり無礼な発言をするムヨン。加えて意味ありげな笑顔…。

一方のスンアも、この展示会のプログラムについて彼氏と口論をしているところをムヨンに知られます。ムヨンは、そんな困っているスンアをまるで漫画のように"救って"くれます。
この件がきっかけでスンアはムヨンに夢中になり、2人は程なくして付き合い始めます。
しかし、スンアには御曹司の彼がいて、また厳しい母親はムヨンとの交際はもちろん反対。それどころか「育ちが良くない」と、ジンガンとの友人関係にさえ文句を言う始末。なかなかの母親です。

そんなスンアとムヨンのカップル…。
ムヨンはこのいきなり自ら始めた男女関係においても「心ここにあらず」の表情が多く、視聴していて第1話はムヨンに対して「コイツは一体…?」と、彼をどう捉えてよい人物なのか、なかなか彼の行動や本心をあまり読めません。
スンアに「君がキレイだから」「会いたかった」と言いながらも、目に光がないというか、とにかくデフォルトで何だか怖いムヨンさん。
冒頭から不穏感が半端ないです。

一方のジンガン。友人スンアの彼という枠と、仕事でもムヨンの勤めるビール会社と関わる件でムヨンとその後も会うことが多くなります。
次第に顔を合わせるうちにぽつぽつと自分の身の上話をするムヨンとジンガン…。お互いが腕に火傷の跡があったり、お互い両親を知らなかったりと共通点も多いことが判明する2人。
しかしムヨンの読めない態度や、人を食ったような発言に、毎回イライラさせられるジンガンさん。
ムヨンの方もそんなジンガンに「君の目は気に障る、イライラする」と、クールにゲームを進めるタイプの彼も、なぜかジンガンには心を乱されている様子。
そんなムヨンは唐突にジンガンに「付き合おう、お前が好きだ」と告げ、ジンガンと視聴者は唖然とします。
親友スンアの事もあり、簡単に「好き」だと言い人の心をもてあそぶ人間がムヨンだとし、ジンガンはそんな彼の態度に怒り、「あなたは哀れだ」とムンガンに告げ、ジンガンは去ります。
しかしこの時2人は既に、強烈にお互い惹かれ合っていたのでした。
このように、ジンガンとムヨンの関係も始まります。

もう一方の軸が、ジンガンの兄であり警察のジングク(通称ユ課長)です。
とある殺人事件を追っている内、ムヨンに目を付けたジングク。ムヨンに何度となく対峙しますが、その冷たい目と独特の雰囲気に、ジングクの方が飲まれそうになります。
その彼の視線がジングクの過去の思い出の人物と交差します。というか、彼(ムヨン)こそがその"人物"だった訳ですが…。
ジングクは実はムヨンの父を(正当防衛)で撃った辛い過去がありましたが、それはごく一部の人しか知らない封印された事件。
ムヨンはジンガンの兄が父を撃ったとはもちろん知りませんが、度々フラッシュバックで拳銃が出てきたりと、ずっと悩まされ記憶を辿り続けることに。

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というように、ドラマあるあるとして恋仲になった2人の運命が、家族や過去によって絡まりまくっているという設定です。
ただ、問題はこのジンガンの暴走気味の兄です。
1)実は兄はジンガンのと血の繋がりは一切ありません。
ジンガンはそれを既に中学生の頃から知っているのですが、ピュア兄は妹のジンガンは知らないと信じていて、今も知るべきでないという考えです。
2)兄の直感としてムヨンが、あの自分が銃殺した事件に関係ある子かもしれない、と割と早い時期に感じ取ってはいます。

個人的に、嫌だなと感じた部分が1)の部分と兄の異常な妹ジンガンに対する過保護ぶりです。
既に兄はおじさんであり、妹のジンガンも立派な大人の女性です。にもかかわらず、異常に妹のジンガンを可愛がっていました。
彼女がムヨンと深い仲になり始めた時、何と兄は「ムヨンを刺す」という、とんでもねえ事件を起こします。
ストーリーとしては「ムヨンは殺人事件に関係するレベルのヤバイ人物、そんな男に妹を近づける訳にはいかねえ…!」的な愛情爆発の親心として刺してしまった、という描写になっていました。
兄は半分無意識状態での事件…というような状況で”処理”されていたのですが、正直私は半端ない気持ち悪さをこのあたりで最大限に感じました。
というのも、深読みしすぎかもしれませんが、兄はジンガンに妹として以上の愛情を抱いているようにも明らかに思えたからです。

このムヨンを刺す前のシーンでは、ムヨン宅で仲良く過ごすジンガンをブラインド越しに睨むという、おじさん大嫉妬のストーカー的シチュエーションを取っていました。
このシーンより、ただの好きな女性を奪われた1人の男性のような感情の兄が、社会的立場や血の繋がり前提という設定なども忘れ、嫉妬と怒りで理性を失ってムヨンを刺したとしか思えませんでした。
また、2)はジンガンには絶対に知られなくないことであり、ジンガンの尊敬する兄という立場から逆転し、人を殺めてしまった自分として見られるという、尊敬を失う、兄のポジションを失うという怖さが兄には常にあったと思います。
血の繋がりがないという点をやたらと妹に隠すようにした部分も、繋がりがなければジンガンが去る可能性を考慮したのでは…と思ってしまいました。
なんとなくこの兄にズルさというか、「ジンガンを絶対に離さない」的な気持ち悪さを終始感じてしまいました。

と、ムヨンとジンガンの複雑な関係ですが、大元の兄の拳銃事件は避けられなかった発端なので無視したとしても、それ以降のトラブルが兄の鬱陶しいプライドと、妙な兄妹以上の愛情が波及して発生したようにも思えてしまいました。
個人的にこの兄には「すべての元凶では…?」という、ネガティブな気持ちを抱えながら視聴をしてしまいました。(演じるパク・ソンウンさんは、もちろん問題はないのですが…。)

その点含めてこの作品では、ストーリーラインで個人的にちょっと嫌かなと思う部分として、このような妙な"兄妹愛"を匂わせすぎる点でした。
ジンガンとムヨンにもその部分を後半ぶっこんで来ますが、この2人の場合は強烈に愛し合っていたので、(ストーリー上必要な)絶対的な「別離」をさせる必要性のためには、まあしょうがないネタなのかな…とは思えました。
が、この兄とジンガンもそのようにも取れる描写があるのは、ちょっと作品に"その傾向"が強すぎるかな…と気になり、ちょっとどうかなとは私は思えました。(あくまでも個人的な感想です)

最終的に、このストーリーは壮大な悲劇でムヨンとジンガンの関係は終了してしまいます。
久しぶりに最終回に「Noooooooo!!!」と心で叫んでしまいました。が、なんとなく『ロミオとジュリエット』的にも感じられ、これで良かったな…と、瞬時に納得してしまいましたが…。
残った者こそ反省すべきというか…この2人は本当に可哀想なのですが、もう2人の愛はどこにも行き着く場所がなかったのかもしれません。
兄とムヨンの会話では、しばしば兄がムヨンをなじるセリフが多かったですが、結局あれは鏡に向かって話す状態で、ムヨンに「人を殺して…」と発言していた兄こそ、まさにそうな訳で…。
その代償を払ったのは兄であり、その代償とは愛する女性であり、妹であったジンガンだったという部分が、結果的に皮肉だなと思えました。
彼(兄)はどのように今後生きていくのでしょうか…。

ということで、想像以上にヘビーなお話でしたが先が読めず、「これぞドラマ!」という形で幕が下りた作品でした。
ソ・イングクさんのどこか世間から離れた冷たい表情でありながら、ジンガンと気持ちが通じた後のリラックスした自然に甘える仕草など、かなり場面によって強弱ある気持ちを掴まれる演技をされていて、大変印象深かったです。
チョン・ソミンさんも自然で可愛らしく、わざとらしさが無くて良かった!
非常に重く暗めのお話でスッキリするタイプではありませんが、ドラマを観た!!という気分にさせられる、見応えある作品でした。

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