おすすめ度:68%
デバイス度:100%
明け方度:100%
原題:반의 반 / A Piece of Your Mind (全12話)
不思議な依頼と忘れられない恋…。2020年のヒューマン系ラブストーリー。
あらすじ・キャスト
ハウォン(チョン・ヘインさん)は長年の片思いの相手キム・ジス(パク・ヒョンジュンさん)の存在が常に心にあった。
AI対話デバイスを開発していたハウォンは、このジスの人格をAIに取り入れて自分の側に置きたいと願うようになる。
そんな時、スタジオで働いているソウ(チェ・スビンさん)はジスの声を録音して欲しいという依頼を受けることになるが…。
感想
散らかっているけど美しい
第1話のとっかかりから既にキャラの心情が理解しにくく困惑させられましたが、「ラブストーリー」と「映像」に注視すると楽しめましたし個人的には好きでした。詩的なところもあり美しかったです。
ただ、いかんせん本気で”散らかっている”内容とスローな展開なだけに、つまらないと感じる方も多いかもしれません。
私はチョン・ヘインさん演じるハウォンとソウ役のチェ・スビンさんの気持ちの重なり合いの雰囲気に惹かれましたので、一転集中で楽しめました。
ただ、いわゆるヒーリング系によくある大きく動かない展開。それに加えて今作では謎アイテム、謎の展開が目に付き、いくらメインカップルが気に入ったとはいえ、視聴後は渋い気持ちは残りはしました。
そのため視聴後のざっくりとした第一感想としては「チョン・ヘインさん、素敵だったな…」ぐらいになってしまったのが正直なところでした。
ヘインさん演じるハウォンはものすごく純粋に1人の女性を想って生きて来た男性ですが、本人も気付いていない天性の人たらし(というと語弊があるかもしれませんが)のような会話シーンもあって、そのあたりのキャラがヘインさんに非常に合っていて、個人的にはその若干小悪魔的な箇所が最もキャラとして惹かれました。
ご存じの方もいるかと思いますが、この作品は低視聴率のため当初16話構成だったものの、4話カットされて全12話で実質打ち切りとなっています。
ポテンシャルは高いドラマだったと思うので、序盤の入りが特に素人ながらに敗因のようにも思え勿体無いなと感じました。(偉そうにすみません)
後半はかなり忙しい感じになってはいますが、まあそれなりに無事完結したなと思いました。
既にこの時点で作品に対してネガティブなイメージがわいてしまうかもしれませんが、私は良いところも多くあるドラマだったと感じました。
ゆるいネタバレありの感想
チョン・ヘインさんインスタグラム
ハウォンはAIを使ってある製品を開発しています。”その人”の分身のようなAIを作ること。その人の声を使い考え方などコピーし、まるでその人と会話するような小さなデバイスを試作品としてテストしています。
そんな頃、近くのスタジオからピアノの旋律が聴こえてくるのでした。気になったハウォンはスタジオを覗きますが、そこにはサウンドエンジニアのソウが働いていました。
これがハウォンとソウとの最初の出会いに。
ある日ソウが新しいビルの管理人になったスノから、ある女性からお皿を買って欲しいという依頼を受けます。しかしスノはお皿自体には興味がなさそう。
続けてスノは、ソウに再びあのお皿を売っていたジスという女性の声を録音して欲しいと頼みます。
「ある人が、ジスを恋しがっている」ためだとわかり、奇妙に感じながらもソウは引き受けるのでした。
一方、ソウが使っているスタジオですが、深夜から早朝にかけて使用している男性もいました。
ソウは彼のことをセビョク(明け方)と呼び、2人は顔を合わすうちに親しくなっていきます。
実はビルの管理人のスノとハウォン=セビョクは親類で、ジスの声を欲しがっているのはハウォン/セビョクなのですが、ソウはその事は知りません。
ソウはセビョクにその不思議な依頼について、あれこれ話すのでした。ソウは依頼人の男性ハウォンとジスを「再会させよう」と計画します。
ハウォンの動機
そもそも私は「なぜハウォンが(生きている)ジスのAIを作りたかったのか」に当初から理解しにくかったです。
彼は幼少期からノルウェーでジスと過ごし、ずっと彼女を好きだったんですね。その後、ハウォンはアメリカの大学に留学して2人は離れ離れになりますが、ジスのことは決して忘れていません。
突然会いたいと言われ即彼女のいる韓国に戻ったハウォンですが、ジスから突然「結婚する」と告げられショックを受けます。
彼はそこでやっとジスに告白して「結婚後も想い続ける、不幸になったら連絡してくれ」と苦しそうに告げるのでした。
それから9年間、結婚したジスを想い続けたハウォン。
ここで満を持してAIジスを作ろうとしていたのですが、この流れがどうにも腑に落ちませんでした。
彼女と二度と会えない状態ならば理解できますが、彼女が「お皿を売っていること」レベルまでわかっていて、それより前から祖母”支援”繋がりもあります。
彼女から絶縁されているようでもないので、いくらでも関係を取り戻す可能性があるにもかかわらず、「声を録音」という遠回りした手法でジスを身近に感じようとする動機が1話で語られるのですが、このプロローグで既に強引というか…。
ジスの「半分の半分」でもいいから…声だけでも欲しいと、彼女を心の支えにしている悲痛とも取れる気持ちは理解できました。
が、だからと言ってAIで解決!というのも個人的には納得しにくかった。(商業用途の開発から派生したとしても、です)そのためAIデバイスの存在意義が、特に序盤は一切見いだせなかったです。
途中ジスが亡くなってしまうのですが、そこからやっとこのAIの活躍の場ができるのですが、ここに繋げるパスとしても1話のエピソードの組立は個人的に良いとは思えませんでした。私はこの第1話を理解したくて2回視聴したのですが、結局よくわからなかったです。
結局ソウがジスとハウォンを再会させようとした後、ハウォンは意を決してジスに電話して2人は連絡を取り始めますので、ここでまたもや「じゃあAI何だったの」と思いました。
ソウとハウォン
ジスが亡くなり(ちょっと状況が不自然でしたが)、ハウォンは彼女と連絡を取り合っていただけにますます彼女そのものに執着しているようにも思えました。
またソウはジスと死ぬ直前から会話していたこともあり、ハウォン・ジス・ジス夫の3人に複雑な問題があると察します。加えてソウは次第にセビョク/ハウォンが気になり始めます。
ハウォンは作り上げたジスAIと対話しようと試しますが、”反応点”と呼ばれるきっかけを得れず困っていたのですが、ソウが先にジスAIの反応点を見つけAIとの会話に成功します。
ソウはジスと会話したい一心のハウォンに協力することを決めます。
必死にジスを”理解しようとする”ハウォンの姿を見るうち、ソウは彼から目が離せなくなります。ソウはハウォンを完全に好きになっていたのでした。
ハウォンの魅力
見え隠れするハウォンのソウへの態度は、なかなかの”人たらし”のようで面白かったです。
私が唯一AIジスが存在していて面白い役割をしていると思ったシーンは、ソウのハウォンへの気持ちが明らかになるところです。
AIジスはハウォンが同席していないと判断してソウと会話するのですが、ソウの”片思い”をバラしてしまいます。
焦るソウですが、開き直って「(ハウォンが)好き」だと彼の目の前で”告白”するものの、「彼には知られたくない」と暗に自分の片思いを黙認するようハウォンにくぎを刺すように語ります。
このシーンの演技ですが、ジスへの興味とハウォンの自分への気持ちへの発見への驚きがちょうど半分半分のような表情をヘインさんがしていて、何とも大変良く最も印象にのこったシーンでした。
なんでしょうか、ハウォンの新たな恋愛の扉が開けたというか…。
彼も次第にソウへと気持ちが移って行くわけですが、ずっと1人を静かに辛く想っていたハウォンにとっては、誰かが自分のことを好きだという”安全な道”が存在していることが見えて、新たに一歩踏み出せる可能性があったようで、新鮮な驚きを持っているようにも見えて、単純に可愛らしく良かった。
その後もハウォンは「(ソウはこのまま自分に片思いを)続ける?」や「側にいて」など、いわゆる両想いの確定前にソウさんの琴線に触れまくるセリフを連発。
ここはハウォンさんがヘインさんなので(?)、付き合う前の駆け引きというか、そのような塩梅がズルくならない微妙な雰囲気で非常に良かったです。
悪者はいたのか?
どこからこのドラマが散らかってしまったのか…。1つは、イヌクさんの引っ張った問題かなと思います。彼は過去に過ちを犯し、それがハウォン母の死に繋がっています。
ハウォンは母の死の真相についてずっと悩み続けていたのですが、それに対してイヌクを悪人と(やや簡単に)物語上仕立て上げていたのは個人的に安易かなと思いました。
恐らく…というか、ストーリーの帰結もそうなのですが、ドラマとして「過去を乗り越える」ことがテーマになっていますので、各キャラそれぞれの背景/トラウマが語れます。
イヌクの背景ですが、彼の「懺悔すべき」過ちそのものよりも、彼がハウォンとジスの関係に嫉妬している描写と混同しすぎていて、ズレてしまったような。
イヌクもジスの死より、ジスがハウォンと関係していなかったかどうかを気にしすぎているのもなんだかなというか…。
ここはもう少し問題の本質に沿って、彼の過ちがハウォンからどのように許されるかを描いて欲しかったかなと思います。
ジスは家族同然だったハウォン親子に申し訳なくなり、問題を乗り越えることができず、半ば死を自分から受け入れたようにも思えました。(あまり納得しにくかったですが)
このイヌクの悪者のような設定が、妙に話の筋をずらしてしまったようで残念に思えました。(イヌクを演じたキム・ソンギュさんが悪いという意味ではありません)
ということで、他にもハウォン君が開発しようとしていた謎の手の感覚のデバイス、下宿の人間模様、スノがうるさすぎる件、同棲かと思いきや全く一緒に住まない件、側にいて→いない件、急にジスとハウォンの絆に傷つく件、ジスAI(バッテリー/電化製品)をそんなところに置いてしまう件、などなど問題が浮上しては消えていくようで、関係性が不明のエピソードも多かったです。
とはいえ、ドラマそのものの雰囲気は好きでしたので、なんだかな…と思いつつも、スビンさん&ヘインさんのお2人に引き付けられ最後まで気付けば結構楽しく視聴しました。