ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ バリでの出来事 (感想)

おすすめ度:88%
だめなのか度:100%
2004年の伝説度:100%
原題:발리에서 생긴 일 全20話

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バリで出会った立場の違う男女4人、絡み合う運命の行方とは?2004年のロマンス・メロドラマ。

 あらすじ・キャスト

バリで観光ガイドをしているスジョン(ハ・ジウォンさん)は、ある日お客として、3人グループのガイドを担当する。
その3人とは、御曹司のジェミン(チョ・インソンさん)と婚約者のヨンジュ(パク・イェジンさん)、そして、ヨンジュの元恋人のイヌク(ソ・ジソプさん)だった。
気まずい雰囲気のまま観光を進める4人であったが、この4人の関係はソウルへ戻ってからも続くのであった…。

感想

面白かったです!
2004年の非常に古いドラマですが、気づいた頃には色々な意味で見事にハマってしまい、そんな自分に大変困惑してしまったドラマです。
序盤は半笑いで視聴していたのですが(すみません)、進展があるようなないような謎展開にも関わらず画面カットのテンポが意外と良く、気付けば色々な意味で(2回目)夢中。
古いドラマ特有のとんでもねえダサさも含めて、かなり楽しめました!
中盤から「これ一体どうするつもり…?」と思っていましたが、収拾のつけ方というか、エンディングも見事だったな…と、そのまとめ具合に大満足しました。

バリという海外ロケを含めながらも、根本的にはメイン男女4人のみ話になっていて、貧困vs富裕をベースとした男女の叶わぬ愛を描いている、非常に単純なストーリー展開です。
本当にただこれだけで、視聴後に考えるとよく20話も続くなあ…という感じなのですが、観ていると異常なぐらい「この4人どうなるの?!」と血走った目で視聴を続けてしまうので、謎の魔力がある作品でした。不思議。
15話(U-Next版)ぐらいから、露骨に回想シーンが大量投入されますが、尺あまりでしょうか…?そこが少々気になりました。

個人的には、気持ちが揺れ動くスジョンのことは最早どうでもよく、チョ・インソンさんの狂気に向かっていく演技が、大変面白く感じ夢中になりました。

また、特に良いなと思ったのが男性2人の描き方です。
主人公女性を巡って2人の男性が存在する場合、「2番手」の立場の男性がいるのが大体のセオリーです。
が、このドラマでは「2番手」をあまり明確にしておらず、また男性2人がシーンによって立場が都度逆転するような部分が多く、それによって先があまり読めなくなっており、大変上手いと思いました。

イ・スジョン役ハ・ジウォンさん
幼い時に両親を亡くす。問題を起こす兄が1人いる。
バリ島で明るく観光ガイドをしていたが、トラブルによりソウルへ帰国する。
とにかく貧乏。しかしプライドを持っている。
帰国後は、設備的に心配になるレベルの友人の家に居候中。

チョン・ジェミン役チョ・インソンさん
とにかく父に恐れを抱く御曹司、27歳。
父の経営する会社で課長として働くが、実態はまるで仕事はしていない。
わがままで子供っぽい、よく泣く。
お金を湯水のように使う。

カン・イヌク役ソ・ジソプさん
29歳。食堂を経営する母を持つが、母も自分も貧しい。
非常に頭が良い。
ヨンジュは大学の後輩。

チェ・ヨンジュ役パク・イェジンさん
お金持ちの娘。
親が決めた相手であるジェミンと婚約しているが、2人の間に愛は無い。
昔の恋人であるイヌクが忘れられない。

ネタバレありの感想

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4人の出会いは楽園、バリ。
現地観光ガイドをしていたスジョンが、やたら険悪な雰囲気の3人を担当します。
御曹司ジェミン&婚約者ヨンジュ。そしてヨンジュの元恋人イヌク。
この4人の関係ですが韓国へ戻っても、もちろん続きます。ソウルに戻ったスジョンですが、色々あってイヌクも働くジェミンの会社で働き始めます。社会は狭い。
こうして4人が再び同じ場所に集結。ストーリーの本題へと進みます。

このドラマで流れるOSTですが、なかなかクセが強く面白かったです。
個人的に印象が強い曲ですが、オープニング曲でもあり、序盤・中盤でよく使われている、歌詞のない女性ボーカルの♪ハァ~アア~ア~ア~~♪という、不穏かつ高尚気味な旋律に、申し訳ないのですが、何度も半笑いになってしまいました。
これから何かが起こるぞ!という曲のムードが、とにかくすごくて妙にウキウキしてしまいました。

そして忘れてはいけないのが「ここぞ!!!」という時に流れる、ピアノの物悲しい旋律から入るメイン曲、チョウンさんの”だめなのか”というOST…。
このタイプの曲は個人的に大変苦手なのですが、なぜか気付けば一緒に熱唱できるレベルになっていました。さすが、”だめなのか”です。
この素晴らしいタイミングで情緒的な熱い曲を乱用する感じ、いかにも古いドラマっぽくて大変気に入りました。

当初はジェミンが婚約者ヨンジュとイヌクの関係に気付き、この3人の微妙な意地の張り合いのような三角関係が描かれます。
ジェミンはヨンジュを愛している訳ではありませんが、自分の所有物を取られるという点で面白くないんだと思います。
このあたりの描写は、ジェミンの女性に対する「俺の女」という根本的な考え方を端的に紹介するエピソードとして、上手いと思いました。

加えて、同じ会社で働くジェミンとイヌクというライバル関係。
立場はジェミンの方がもちろん圧倒的に優位ですが、イヌクはずっと頭が良く、仕事もできます。
ジェミンはイヌクに対して負けているということを痛感している、という部分も良かったです。パワーバランスがここで取れているのは良いです。

そしてスジョン。
ジェミンは貧しいスジョンの事を好きになり始めます。
が、正直ジェミンがスジョンを気になり始める心の変化が、少々わかりにくいなと感じました。(ここは不満でした)
スジョンに心を掴まれたジェミンは、婚約者のことはもう眼中にありません。
婚約も破棄すると宣言しますが、怖い父親にはもちろん反対されます。
一方で婚約者ヨンジュも、そんな状況で元恋人へ復縁を迫りますが、イヌクに「俺をもてあそぶな!」と一喝。まあ、イヌクさんもスジョンLOVEなんですよね、既に。
ヨンジュさんの状況ですが、ここで終了。
ジェミンからも拒否され、イヌクからも拒否され、これ以降この立場は変わらず、ただの可哀想な人になってしまいました。

一気にスジョンLOVEになってしまったジェミンさん、ライバルのイヌクがスジョン(の友人の家)と隣同士と知り、動揺。
加えて、イヌクの家からスジョンが出てきた現場を目撃 with ♪だめなのか♪。
ショックを受け涙目になり、失意のまま自宅へ。
一晩中同じポーズで雑な照明転換によって、呆然としたまま、時に泣き笑いをしつつ夜を明かしたと判明。

ジェミンさん…同じ部屋から2人が出てきたからって、何も2人が"関係”したとは限らないのでは…?と、声をかけてあげたくなりました。斜め上を行くジェミンさんのショックの受け方に、視聴していて困惑。
ジェミンさんにとっては、だめなのか?ではなく、完全に”だめ”なようです。
第1話では右肩に「夢」というタトゥーのあるL嬢と遊んでいたジェミンさん、想像以上に繊細な方のようです。

婚約者を巡って、かつて(一応)ライバル状態だったイヌクとジェミン。なんとスジョンを巡っても再び同様の状態に…。
しかし、ここに立ちはだかるのが格差です。
過去イヌクはヨンジュとの恋で、貧富の差を思い知った苦い経験があります。
金持ちジェミンのスジョンに対する、気ままで勝手な態度に我慢がなりません。
「責任を取れない同情をするな」とジェミンに忠告するイヌクさんです。

ジェミンは戦える武器がお金しかありません。
スジョンの気を引こうと、お金を使って様々な手法で彼女と”きっかけ”を作ります。最終的にはマンションの部屋まで与えるジェミン。
このような描写はジェミンの愛情表現がお金を通してでしかできないという、可哀想な部分も感じさせ、いじらしくもありました。

2人しか知らない秘密の部屋B1311号室、スジョンの存在が嬉しそうなジェミン。
しかし、これに怒っているのがイヌク。お金で「買われた」状態のスジョンにイラつきます。

そんなスジョン、とうとうジェミンに心を決めたのか?と思いきや、彼に重大な告白をします。
スジョン「お金のために(ジェミンを)落としてやろうと思った」
スジョン「心を開かないのは、最後のプライドよ…」
♪だめなのか♪
ジェミン「それでもいい…」
と、ついに2人は一夜を共にします。
スジョンさんのプライドとは…?あるのかないのか、正直微妙だなとは思いましたが。

が、ジェミンの父親にこのウキウキ♡部屋がバレてしまい、ジェミンは父に半殺しに。
更に爺が「あの女(スジョン)もただじゃおかない」と宣戦布告。爺、怖すぎ。
ジェミンはスジョンの身の上を心配し、距離を置くことにします。
この爺なんなの?と視聴していてイラついていたのですが、このドラマではとにかく、父親と金持ちには絶対的服従のような部分があり、時代を感じます。

急に冷たい態度を取り始めるジェミンに、スジョンは困惑。恐怖政治爺とジェミンの事は全く知らないスジョンなので、戸惑うのも無理ありません。
イヌクの言う、金持ちの気ままな態度がまさに現実に…。
そして、スジョンはヨンジュと父の命令通り結婚。と同時に、ジェミンが完全に本当の意味でメンタル崩壊。嫌な予感…。

17話では急な態度の変化に疑問を持ったスジョンが、ジェミン宅を訪ねてくるのですが、彼は冷たく追い返します。ですが、視聴していて引いてしまうぐらい、その後号泣してしまうジェミンさん…。
また、結婚おめでとう、と電話をスジョンがジェミンにするのですが、その際も、嗚咽するほど泣きます。(しかし頑張って電話を続けます、エライ!)
この後半のチョ・インソンさんの非常に"不安定"な演技は、作品内で非常に効いていました。
ここまで男性が泣くドラマを観たのは、初めてかもしれません。

結婚したヨンジュさん、謎のパーマスタイルで推定年齢50歳ぐらいに見えてしまったのですが、ジェミンの投げやりな態度の被害者に。
「あなたの不甲斐なさを人の責任のようにするのはやめて」と正論をぶちかまします。この作品内で、ヨンジュの最も切れ味が光ったセリフだったように思えました。

ジェミンから捨て犬のような扱いを受けたスジョンに、イヌクは「結婚しよう」と告げます。が、そんな資格はないと答えるスジョン。

一方、お酒に溺れながらボロボロのジェミンさん。
もちろんスジョンを忘れられずにいて、高額小切手を渡したりしますが、再度父親に見つかりボコボコにされます。
そこにイヌクとスジョンが交際しているという噂を聞き、絶望。
嫉妬&狂気の鬼★ジェミン爆誕

このジェミンというキャラですが、前述したように主役にも関わらず、ピエロ的な立場になったり、イヌクの引き立て役のような時もあり、とても面白い役柄だなと思います。
半分ネタのような存在だったのですが、この嫉妬&狂気のジェミンとなり、更にキャラ設定が一段と強くなり、もう最強では…?という存在になっていました。
また、終盤のこの狂気ジェミンを象徴するように、やや無精ひげ的なメイク演出も良かったです。

嫉妬の鬼と化したジェミンさん。仕事もせず(元々していませんが)、ただただイヌクとスジョンを別れさせたいという気持ちでいっぱいのようです。
イヌク「責任感もないのに、愛を語るな」
ジェミン「あいつは俺の女だ!」
というセリフが2人の対比でしたが、ジェミンの感情的・性急さと比べ、イヌクの冷静さ・理屈的な対比がわかりやすくて良かった。

ストーカー状態のジェミンさん、ある夜、いつものようにスジョン宅を見回っていました。
イヌクがスジョンにキス(軽め)をしているのを目撃し、まるで殺人現場を見てしまったかのように腰を抜かしてしまうレベルで驚愕し、嗚咽・号泣。
ジェミンさん、泣き方が激しくて「そんなに!?」と毎回のことながら、驚いてしまいます。
ちなみにこのシーンは”だめなのか”は採用されていませんでした、残念…。
その後家に帰って、ベッドで寝ているヨンジュを無駄に睨みつけるなど、情緒不安定な謎の行動。観ていて不安感がすごい。

その後も、ジェミンさんはスジョンの残したカバンを抱きしめて大泣きするなど、とにかく涙腺が完全に崩壊。インソン先輩、泣く演技のプロ。

そして、最終回…。
色々あってイヌクはバリへ再び行くというか、逃亡することに。
もちろん、スジョンを誘います。適度にじらしながらも、スジョンは決意。2人は新婚旅行状態でバリへ。
そしてどういう訳か、ジェミンさんも2人を追ってバリに到着。彼らの宿泊先を探し当て窓から睨んでいます。

ある朝、イヌクとスジョンがベッドで話しています。
イヌクはスジョンとバリに逃亡してきたものの、彼女も自分も全く幸せじゃないという、重大な事実に気が付いたようです。
イヌク「(スジョンを)自由にしてあげたい」
彼の望みは、好きなスジョンを権力やお金から自由にしてあげたかったんですね…。
一方のスジョンは、バリにイヌクと来て初めて自分の真の気持ちに気付いたようです。スジョン「心までは開かないつもりだった…」
手に入れたものの虚しさに、涙を流すイヌクとスジョン。

ここで狂気のジェミンさんが部屋に乱入、問答無用で2人を撃ち殺します。
スジョンは最後、ジェミンに向けて「愛してる…」と告げます。
失ったものに気付き、半狂乱になるジェミン。
彼も最後は自ら銃の引き金をひき、「だめなのか」という状況で物語を終えました。
-BAD END-

スジョンさんの拘る”プライド”とは、一体何だったのか…。
ここまでジェミンやイヌク、両者に存分に助けられながら、今更それはないだろうと思いつつ…。
個人的にはこのスジョンの「プライド」理由が、最後の最後で陳腐だなとは感じました。とはいえ、最早プライドとかどうでもよい状態だったのは、やっぱりジェミンさんの狂気が勝っていたからだと思います。

ジェミンさんが終盤とにかく完全に狂気に向かっていたのが明確だったため、とんでもねえ事が起こるな…と思ってはいましたが、まさか3人が死んでしまうとは想像していませんでした。(男性2人が死かな、と予想してました)
ロミオとジュリエット的な部分も感じつつ、個人的にはこのこじれた関係を収拾するのに、とっておきの方法が取られたな…と、この狂気→悲劇の流れがまさにこの作品の特徴であり、秀逸なオチだと思いました。

ということで、
・TVのリモコンはジェミンが死守
・ジェミン泣きすぎ問題
・イヌク考えポーズのマンネリ感
・視聴者に全て説明してくれる同僚たち
・よくわからない犬がうろつく街(9話)
・クセのあるOST
・ファーを衣装で多用しすぎ問題
・イヌク(出世バージョン)の部屋のインテリアの成金感
・スジョンの主体性とプライドの是非
・伝説のバッドエンド
以上の10点でお送りされたドラマでした。

2004年のドラマとなり、個人的に視聴してきた中で最も古い作品でしたが、想像以上に楽しく視聴しました。中毒性がすごい。
古いですがとても新鮮な気持ちになり、現在のドラマの洗練のされ方を再度認識し、とても興味深いなあと思った次第です。
面白かった!

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