ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国映画 スマホを落としただけなのに (感想)

おすすめ度:70%
スマホ度:100%
紛失度:100%
原題:스마트폰을 떨어뜨렸을 뿐인데 / Unlocked (117分)

韓国映画 スマホを落としただけなのに 考察

落としたスマホ、変わる生活…2023年公開のクライムスリラー映画。

あらすじ・キャスト

イ・ナミ(チョン・ウヒさん)はある夜、自分のスマートフォンを落としてしまう。
拾得者から連絡があり、ナミは指定された店に向かうのだった。
一方私生活でも、ナミの父が営業するカフェで謎の常連の青年ジュニョン(イム・シワンさん)と知り合うのだったが…。

感想

テンポが良く、細かい演出が巧みで気になるところもありつつ、総合的には面白かったです!
現代社会でなくてはならないスマホにまつわる状況を、ポップさとそのすぐ裏にある恐ろしさの対比の描き方が大変上手いと思いました。
タイトル通り「スマホを落としただけで」、とんでもないトラブルに巻き込まれてしまうというストーリー。

正直タイトルと序盤だけで、ストーリーの転がる先がすぐに予想できはします。
ですが、その物語の流れに行き着くまでの手法や、スマホそのものの手軽さゆえの皮肉さなどがいずれも軽妙でありながら不穏さを大きく秘めてテンポ良く描かれます。
ストーリーの”ピーク”を辿るように導線が引かれていて、澱まず進む展開に小気味良ささえも感じました。

主演としてチョン・ウヒさん、そしてイム・シワンさんが演じられていますが、お二人ともとても良かったです。
特にイム・シワンさんは、不穏さの演技が本当に素晴らしかったです!
ウヒさんの演技ですが、終盤輝くので是非注目していただければと思います。

原作は志駕 晃さんの同名の小説で、日本でも2度映画化もされています。
ただ申し訳ないですが、私は原作小説も未読、映画作品についても未視聴ですので、以下の感想は韓国版の映画を視聴したのみの感想となります。

ゆるいネタバレありの感想

Netflix Koreaインスタグラムより

会社員のイ・ナミ。大多数の現代人と同様、彼女もまたスマホを手放せない生活を送っています。
仕事にプライベート、思い出の写真や人とのメッセージのやりとり、SNS…。
そう、彼女そして私たちが持っているスマートフォンは、もはや”自分自身”でもあるのでした。
そんな大切な分身のようなスマホを泥酔したある夜に、ナミは落としてしまいます。彼女の落ち度は「たったそれだけ」。

不穏な拾得者
ナミは女性の声のスマホ拾得者から連絡を受け、自分の破損したスマホを受け取るために寂れたビルにある修理店を尋ねます。
画面が割れたので修理店に預けた、代金は既に払ってある…。指定された店で修理された自分のスマホを受け取り、安堵と共にまるで新品のようになったと無邪気に喜ぶナミ。
しかし、ここから犯人=拾得者の”ゲーム”は始まっていたのでした。

ためらい
この作品で特に面白いなと思ったのが、何度かキャラたちがためらうシーンがあります。
・ナミがスマホ修理店で受付票にロックのパスワードを書くシーン。
・ナミ父が娘が送信したリンクからダウンロードしてしまうシーン。
いずれも2人共に少しのあいだ判断に躊躇しているのですが、この短いシーンが作品全体に何とも効いていて、個人的には素晴らしいと思いました。
判断の迷い→状況から問題ないと決断するという場面ですが、ここで立ち戻っていれば…と、どうしても振り返ってしまうのですが、果たして自分ならどうだろうか?と考えてしまいます。
また、現実問題としていかに普段私たちは表面的なものを判断材料にしているのかと思わざる得ません。難しい…。

ちなみに、ナミがパスワードを犯人に結果的に明かしてしまって以降、2人ともマスクを着用しているシーンがないように思えました。ここも私は面白い演出だなと感じました。
まさに”素顔が明かされた”ことがわかります。
マスクの着用の演出は、冒頭にニュースのセリフで違和感を軽く消していて、さりげなくて本当に上手いと思います。

Netflix 韓国映画 スマホを落としただけなのに 感想考察レビュー批評

気になった点と考察
展開は良く面白かったですが、人物関係についてはちょっと描写が不足していたのではないかと思います。
その部分が作品のストーリーにイマイチ深みを与えておらず、私は残念に感じました。
個人的に気になった点は:
・ナミの友人関係
スマホスパイウェアが仕掛けられている、と”専門家”からアドバイスされたナミ。
同時に、いつも会っている親友が故意にナミのスマホにインストールしたのでは?と言われてしまいます。
ここから2人の交友関係にヒビが入る訳ですが、「そうなってしまった流れ」に非常に説得力が無いように思えました。
ナミが友人を”疑う”前フリが不足しすぎて、なぜそんな簡単に長い付き合いの親友を安易に疑うのかと困惑させられました。事前に2人が口論でもしていれば、まだ状況が理解できたのですが。
・刑事と息子
連続殺人事件が明らかになりつつあり、刑事は7年連絡を取っていない自身の息子を疑い始めます。
この親子2人の背景があまり語られなかったので、結構気になってしまいました。
父である刑事は”自身で捜査”することに拘っていたので、作中で語られること以上の何かしらの過去があったような気がします。
また、刑事が犯人を撃つことに躊躇していたのは、何か”聞き出したかった”のではないかと感じました。
・犯人の動機
犯人の「なぜ?」という動機が一切語られない今作。
個人的には、彼はソシオパス(サイコパス?)というキャラになってしまっているのだろうな…という考察しかできませんでした。
ただもう少し考えると、ナミ父に「たった3日で!」と、他人を(ほぼ)知るのに数日しか要しなかったことを勝ち誇ったように告げている点。
そして、必要な情報を得て”最終目的を実行”する前に、ナミの人間関係、つまり社会から孤立させたりと大きな嫌がらせをしているところから、他人の人生を「嘲笑うようにコントロールできることに優越感を覚えている」ように思えました。
ここに彼の中の歪んだものを感じ、もう少し心情が語られても良かったのではと思いました。

ということで、エンタメとして総合的には面白い作品だったと思います。
ただちょっと表面的すぎるというか、深淵のような恐ろしさが作中にないのは少し物足りないかなと感じました。
軽妙さと”手軽に陥ってしまう”恐ろしさはとても表現されていて良かったのですが、対比としてもうちょっと踏み込んで欲しかったかなとは思いました。
ただただスマホは紛失したくないなと、視聴後思った次第です。

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