ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国映画 暗数殺人 (感想)

おすすめ度:80%
表情の変化度:100%
サイコパス度:100%
原題:암수살인 110分

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7人を殺害したと自白する男の意図とは…2018年公開のクライム/サスペンス作品。

あらすじ・キャスト

麻薬捜査班のヒョンミン(キム・ユンソクさん)は、胡散臭い男性テオ(チュ・ジフンさん)と別件捜査で知り合い、彼から過去の7人の殺害を告白される。
しかし彼の自白は明確ながらも、証拠がはっきりと出ず警察側はいつも彼に煙に巻かれていた。
そんなヒョンミンは彼の言葉のどこかに真実があるはずだと、執念で事件を追い求めるが…。

感想

実話を元にしたフィクション。
大量殺人の話を扱っていますが、目を覆うような残酷なシーンは特にありません。
どちらかというと刑事と犯人のある意味淡々とした心理戦がメインの作品です。それだけに、キム・ユンソクさんとチュ・ジフンさんの表情や声のトーンなどの演技が大変見応えがあり、とても良かったです!
チュ・ジフンさん演じるテオが、いわゆるサイコパス気質で画面に出て速攻で「やべえヤツ」だとわかる目線や話し方がとにかくスゴイ!(語彙力)
不穏…だけど妙な人懐っこさがあるという、とにかく掴みどころのない人を食ったような態度の役だったのですが、終始このテオという人間から目が離せませんでした。本当に素人目でもジフンさん上手かったです。

タイトルにもある「暗数」の意味ですが、事件として届けられて"いない"数ということ。警察などが把握している事件数よりも、実際はより多くの人々が殺人事件に遭っているということを示した言葉ということです。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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チュ・ジフンさんインスタグラムより

麻薬捜査班の刑事ヒョンミンが(テオの犯した事件とは別に)追っていた件について、テオに会います。が、彼はなんと自分の目の前で殺人犯として(別の刑事に)逮捕されてしまい、呆気にとられるユンソク。
やはり彼は"普通の人"ではありませんでした。
ここで既にヒョンミンは、初対面でありながらテオの異様な雰囲気に何かを感じとります。
そしてヒョンミンはテオから「7人殺した」と拘置所から電話で連絡を受け驚愕。後から考えると、ヒョンミンはここで既にテオの罠にしっかりとハマったことになります。
テオの妙に信ぴょう性のある情報を小出しにして、人を惹きつける「自白」に虜のようになってしまう、ヒョンミン刑事。ここから2人の間で長い駆け引きが始まりまることに。
そもそもテオが元々逮捕された恋人殺人の件でも、自白するものの遺体や証拠が見つからず、拘留期限が迫りつつありました。ヒョンミンはテオの更なる自白を引き出すため、自白の見返りとして時に金銭の要求にさえも応える程"入れ込む"ことに。
しかしテオも何も考えずに話している訳ではありません。テオもテオで違う考えがあったのでした。
彼はヒョンミンを「使って」警察の落ち度を証明します。裁判所でその彼の手の内に気付いたヒョンミンはただただ唖然とします。そう、それがテオの大きな目的。計算通りだった訳です。
数々の自白を餌に、手のひらの上でヒョンソクを踊らせていたのでした。そして減刑や自らの"潔白"を刑事の捜査によって勝ち取るという算段。テオの方がずっと上手だったのです。

しかし、逆にこれがヒョンミンの心に火をつけます。
麻薬捜査班から刑事課へ移動し、本格的にテオの捜査をほぼ1人で始めます。他の刑事は、テオの態度に半ばあきらめて、解決しやすい事件に手をつけていたからです。
拘留されているテオに頻繁に面会し、時に彼の欲しがる品物やお金を振り込み真実と嘘が混じったような自白を元に捜査する日々が続きます。

最も印象的だったシーンが、刑事とのやり取りで興奮し始めたテオが冷静さを失い「殺人は大変なんだぞ!」と怒鳴るシーン。
チュ・ジフンさんの表情がみるみる変化して、怖い顔でセリフを吐く演技はかなり迫力がありました。また、あまりにも平然と簡単に殺人を犯してきたようなテオも「大変だ」だと言うのも、つい内面を見せてしまったようにも思え興味深かったです。

と、テオと刑事ヒョンミンとの根競べのような会話。そしてヒョンミンの地道な捜査が続きます。
あるポイントではテオが「どうあがいても俺には勝てない」と勝利宣言しますが、ヒョンミンは「お前に勝って何になる」と返答します。このセリフはしびれました。
そんな小さな事で捜査しているのではないんだ、とテオに知らしめたのは視聴していてやはり悪VS正義という表面的な部分に注目していたので、一瞬ハッとさせられました。(まあ、結局構図は変わらない訳ですが)

最終的にヒョンミンとテオの戦いの結果については、作品を観ていただければと思います。
正直スッキリとした終わり方ではありませんが、私はこの作品にピッタリだと感じました。煙に巻くような雰囲気に非常に合うエンディングだと思いました。
ですが、この作品の元になった実話の犯罪者についてテロップが入りますが、そこで何とも言えない気分にさせられ、そこが作品の暗さとこの「暗数殺人」の訴えたかった部分と思われる「真相は闇の中」という、やりきれなさを感じた次第です。

あえて熱量を抑えたシーンが多く、特に刑事役のキム・ユンソクさんの芯のある落ち着いた演技が、サイコパスのテオのキャラ設定と上手く嚙み合っていて、水面下の怒りなどが込められているように感じ上手いなあ…と思いました。
全体的に淡々としたシーンが多かったのですが、チュ・ジフンさんの表情が特に惹きつけられるものが多く見応えがあり、本当に素晴らしかったです。そこだけでも観る価値はあるかなと思いました。

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