ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ その年、私たちは (感想)

おすすめ度:最高
19歳と29歳度:100%
生きるって度:100%
原題:그 해 우리는 全16話

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19歳だった2人、10年後に再び顔を合わすことに…。2021年放送のヒューマン系ラブストーリー。

あらすじ・キャスト

過去19歳の高校生の同級生だったウン(チェ・ウシクさん)とヨンス(キム・ダミさん)はTVのドキュメンタリー撮影がきっかけで交際するが、その後別れてしまう。
一方ウンの親友でTV局に勤務するジウン(キム・ソンチョルさん)は、10年後の29歳になったウンとヨンスのドキュメンタリーを再び制作するよう命じられる。かつてカップルだった2人は辛い別れを経験しており、2度と会うことはないと思ったが…。

感想

繊細さの塊

本当に胸が締め付けられるようなドラマでした…!!
ストーリーの筋書きはかなり平凡なのですが、演出・演技・セリフ・カメラワークがとにかく絶妙でそして恐ろしく繊細。泣けました。
本当に文句のつけようがないぐらい群を抜いてセンスが良く素晴らしかった!よくこんな丁寧に細かく作れるなあ…と感動してしまいました。
全てのキャラクターが愛おしく、そしてどこかしら共感できる部分があり、それが切なくもあり、もどかしくもあり、温かくもあり。色々な感情を一気に掻き立てて混乱させていくような、それであり初夏の爽やかさの塊のような、とんでもない作品でした。

キャスティングされている主役のチェ・ウシクさんとキム・ダミさん、そしてキム・ソンチョルさんがそれぞれ持っておられる、飾り立てていないリラックスした自然な美しさのような雰囲気もこの作品と演じられている役柄に非常にピッタリ効いていて、本当に本当に良かったです。パーフェクト。
性差を感じさせないファッションやメイク、インテリアなどドラマ全体の雰囲気もとても気取り過ぎない絶妙なセンスで、全体的に少し抜けた部分を持たせてあってとてもオシャレでした。OSTも抜かりなく、BTSのVさんの"Christmas Tree"も印象的。

上述したようにストーリー的には早々に先が読めるのもありますし、また大きな”事件”は発生しません。テンションもある種の一定した低さを保っているのもあり、ドラマとしては「ぬるい・つまらない」と思われる方もいるかもしれません。
ただ、このドラマはどちらかというと、人々の心の機微に触れそれを可視化して、隠しておきたかったような小さく細かい感情を揺さぶるような作品になっているので、その部分に是非注目して頂けると何かしら胸にぐっとくるのではないかなと思います。ぜひ最後まで観てほしいです。

エピローグを上手く使っていたり、各回のサブタイトルが映画の有名作のタイトルを文字ったものになっていたりと、そのあたりも凝っていて可愛らしかったです。
原作はNaver Webtoonということですが、私は未読です。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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キム・ダミさんインスタグラムより

チェ・ウンとグク・ヨンスの2人は高校の同級生。
と言っても、ヨンスは高校は主席入学でずっと学年トップの秀才。とことん負けず嫌いの性格は他人に辛辣で自信満々、人を全く寄せ付けないタイプの女の子。
一方のウンは成績は悪く、人と競うのを嫌いダラダラしている学生。しかし読書量は凄まじく、静かに絵を描くのを好む独特な感性を持った男子生徒でした。
そんな水と油のような2人の男女の生徒がTV局のドキュメンタリーの主役ペアに選ばれます。
1ヶ月の間イヤイヤながらも時に楽しく過ごした19歳の2人の学園生活の映像はみずみずしく光っていて、まさに彼らの「青春」そのもの。10年経過した現在も再生数は高く、コメントも未だにたくさん寄せられているようです。
そんな過去…しかし現在も人気があるドキュメンタリーですが、この2人は現在29歳に。29歳の2人が今どうなっているか、という企画がTV局SBCで持ち上がります。その担当プロデューサー(PD)に任命されたのがジウン。
実はジウンはこの2人と同級生、しかもウンの親友です。渋い顔をするジウンでしたが、結局この企画を引き受けることになりました。

このように19歳の時の2人が29歳になった今、再び顔を合わせて当時のようにドキュメンタリーを撮影するという、双方の了承さえ取れれば”簡単”な企画でした。
ですが、もちろん話はそれだけではありません。
実はウンとヨンスの2人は、19歳のあの撮影をきっかけに交際を開始していたのでした。ウンとヨンスの水と油のような関係は言い換えれば凹凸になっており、一見はちゃめちゃな主従のような関係でしたが、ある意味驚くほどバランスが取れてピッタリにハマった2人。
永遠に2人の関係は続くようにも思えましたが、今から5年前にヨンスは突然ウンに別れを切り出します。別れの理由も明らかにされずウンは悩み、苦しみ、憎み荒れます。
そんな時期から更に5年経過した今…再びヨンスとのドキュメンタリー、2人の関係を知っていたからこそ、親友のジウンは渋い顔をしたんですね。(それだけではないですが…)
ドラマの展開として、19歳の頃、2人が付き合っていた頃、29歳の現在という3つの時期のシーンを織り交ぜながら、その時々の人々の関係性や背景や事情が視聴者に明かされていきます。

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このドラマに出てくるほぼ全ての人物ですが、「自分にとって大切な人にほど、気持ちを伝えられていない」という大きな共通点があります。それこそがこの作品の最大の伝えたかった部分で最高に切ない点であり、おそらく我々が最も共感する部分ではないかなあと思います。
ヨンスは高校時代から常に成績優秀で、他人の目などお構いなく強く生きていました。しかし実は家庭事情も悪く、彼女は孤独で悩みも多かった少女でした。
彼女の”強い姿”は、そんなすぐに砕けそうになってしまいそうな脆さのある自分と自分のプライドを守るためガチガチに虚勢を張っていた姿だということが次第に語られます。
でもそれは秘密の姿。昔も今も恋人であるウンにさえ決して見せていない姿です。

6話でヨンスが何故ウンに別れを切り出したか、という気持ちを我々に語るシーンがありますが「これ以上一緒にいたら、私のひどい劣等感があなたにバレると思ったから」とストレートに(我々に)語る彼女のナレーションには大変胸が締め付けられました。
高校時代は勉強だけの物差しでヨンスが常にウンより上の立場に立っていましたが、大学生になった2人の間には将来や自身の可能性という別の指標が加わってきます。
加えて彼女の家の経済事情もあり、弱く困っている姿をウンに晒してしまうことが自分で許せなかったヨンス。劣等感を抱いて悩んでいる自分を他人に見せるなんてとんでもないことなんですよね、彼女にとっては。
ここは、彼女がウンを今まで下に見ていたのに立場が逆転して…という単純な理由だけでないのは明白です。
彼女はウンに出会う前から彼女なりの手法で必死で武装し、一生懸命自分を守り貫いて生きていた訳で、ここで自分の弱さや哀れさを他人に晒してしまうというのは、彼女自身の人生や生き方を自ら否定するのも同然。
そんな簡単に”じぶん”を変えられるワケない訳です。
それが例え大切なウンが相手であっても。自分が崩壊してしまう前に、ウンを”捨て”なければならなかったという選択をしたヨンス。
このあたりのヨンス演じるダミさんの繊細な演技や表情、声そして目線なんかがとにかく本当に本当に素晴らしく絶妙で、ダミさん以外のヨンスは考えられないなと思ってしまいました。

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ヨンスと同様、自身にストイックなルールを課しているのがウンの友人ジウンです。
彼も複雑な生い立ちを背景に、ウンと小学校の時からの家族同然の付き合いをしている関係です。
実は彼もウンと同じように高校生の時にヨンスに静かにそして熱烈に恋をし、29歳の現在も彼らを撮影しながらヨンスに想いを寄せています。ですが、彼は「唯一の友人」を絶対に失わないために感情を強く制しながら、ギリギリのところで生きています。
彼が”捨てられない”家族はまるでウンだけのように。

まるで水鳥のように水面下は必死でもがいているのに、見た目は美しくクールに振る舞っているのがわかりやすいヨンスとジウン。
しかし面白いのが、ウンがそんな2人の緩衝材のように存在するかというと、そうでもないという設定です。ウンをこの武装した2人の間に「気持ちを打ち明けていいんだよ」的に安直に存在させず、彼自身も他と同じくヨンスや両親含めどこか壁を作って問題を抱えている点です。

15話でウンが「哀れだよな。僕たち…全員」というセリフがありますが、まさにこれが”生きること”に集約されているような気もしました。
哀れ、だけれど幸せも確かに存在して「これが生きるってことか」(15話のパクPD)と19歳の時よりは29歳の彼らの方がその視点に気がつきやすいかもしれません。
大切なのは「同じことを繰り返さなければいい」(14話のウン)自分の生き方はなかなか簡単に変えることはできないけれど、人は誰しも過去から学び、自身を省みることができるチャンスは実は常にあって、脱線してもやり直せるんだと思えました。
犬のチョンチョンだって自分で克服したんだから…。

観ていてストレスを全く感じなかったのも素晴らしいのは、話の筋が上述したように大きな山場のシーンは皆無だからかもしれません。でもそれはまさに”平凡な日常だから”だと思います。
このドラマの中でドキュメンタリーを撮影していましたが、この作品全体こそがドキュメンタリーそのものを意識している部分も多くありました。
終盤に近くなると、ドキュメンタリーは面白いという意図のセリフが度々あり、その意図が分かりやすくなっていましたが、その点が最もこのドラマの構成のすごいところだなと思います。
主人公ウンとヨンス、ジウンの人生の一部を観て、我々視聴者に「これが生きるってことか」と、少しでも感じて欲しかったのではないかと思います。
こういう点も本当に上手いし、まんまとハマってしまうなと思った次第です。
ため息が出るほど丁寧でさりげなくて繊細、更にエンディングのオチまでも完璧で、とてつもなく良質な作品でした!
素晴らしかったです、おすすめです。

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