ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ シーシュポス: The Myth (感想)

おすすめ度:88%
アップロード度:100%
人の業とは度:100%
原題:시지프스: The Myth

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天才エンジニアと彼を守るべく未来から来た女性…2021年放送のSF/ヒューマンドラマ。 

 あらすじ・キャスト

天才エンジニアであり起業家のテスル(チョ・スンウさん)は飛行機事故をきっかけに、兄の死や謎の"存在”に気付きはじめる。
一方でテスルと国を守るために、未来からやってきたソヘ(パク・シネさん)は取締局に狙われるが…。

感想

JTBC放送局の10周年特別記念番組と銘打っている作品とのことで、見応えがあってとても面白かったです!!
序盤ストーリーの入りが気取っている感じがしてどうかな、と思っていましたが、中盤から謎が明らかになるに従って、特に終盤は怒涛の展開で、本当にはちゃめちゃに面白くなった作品です!

ちなみにタイトルの『シーシュポス』とは、ギリシャ神話に出てくる人物名で、神をあざむいた為に、岩を山頂まで上げる→岩が山頂から落ちる→また上げるという、永遠の罰を受けた者です。オープニングにも、この人物のモチーフが描かれています。
(詳しくはWikipedia/シーシュポスをご覧ください)

タイムリープストーリーなので、この「永遠の業」がテーマになっています。
また韓国語タイトル文字「프」の部分が、ストーリーで鍵となるキャラクター”シグマ”を表すΣと、無限/永遠∞ の両方をデザインしたフォントになっていて、凝っています。

そんな未来と現在が複雑に交差するストーリーで、主人公のソヘ(パク・シネさん)は当初から未来からやってきた女性だと明かされます。

ただこの手のお話の特徴として、丁寧に拾って視聴しないとわからない部分がネックとなります。
観ながら「あれ?おかしくない?」と考え始めると、途端に混乱してしまうという、なかなか難しい作品でした。時間をあけずに、一気にしっかりと見たほうが良いタイプのドラマかもしれません。

ドライな性格として描かれていた研究者テスルが、謎の情熱で自分を守ろうとするソヘに感化されて、次第に熱い人間になっていく点も非常に面白く感じました。
そのあたりの演技がパク・シネさんも、チョ・スンウさんの演技も素敵でした!(特にパク・シネさんは凄みの部分も多々あって、カッコよかったです)

ただ個人的には、終始胡散臭く且つ腹を立たせてくれた、べったりとしたおじさん2人の演技が本当にとにかく素晴らしく、強く印象に残りました。
パク社長とシグマを演じたお2人ですが年齢的にもかなりいい具合にアクが強く、どのシーンでも目を引く演技をされていました。渋みがあって魅力的でした!こういう部分は年齢を重ねないと出ない、クセの強さだなあとヒシヒシと感じました。

ハン・テスル役チョ・スンウさん
天才エンジニアであり、兄テサンと共に起業したQ&Tの代表。
皮肉な面も持っていてあまり人に心を開かないクールな男性。
少々うんちくが過ぎるときがある。

カン・ソヘ役パク・シネさん
未来からやってきたという女性。BTSのファンで好きな曲は”Spring Day”。
常に武器を携帯しており、取締局に追われている。
テスルを守る、という強い信念がある。

ソン/ジェソン役チョ・ジョンヒョプさん
中華料理店で働く男性。空腹のソヘと知り合いとなり、一晩泊めることに。

パク社長/パク・ヒョンド役ソン・ドンイルさん
ただの生活雑貨店ではなさそうなアジアマートの社長。
テスルの兄の事を知っているようだ。

キム・ソジン役チョン・ヘインさん
精神科医。昔テスルと付き合っていた。

エディ・キム/スンボク役テ・イノさん
Q&Tの共同代表。
テスルの親友であるが、テスルの成功を羨ましく思っている面も。
ソジンの事が気になっている。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
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パク・シネさんインスタグラムより

Q&T社の代表および現役エンジニアとして、次々と新しいテクノロジーを開発する、天才のテスル。
そんなテスルが飛行機事故に遭遇しますが、それがきっかけとし、次々と不可解な点が明らかになります。飛行機事故もバードストライクが原因だと結論付けられましたが、死んだはずの自分の兄テサンも絡んでいる事故だとテスルは知ります。
謎の女性ソヘに出会い、モヤモヤとしていた点が線になり、疑惑が確信にかわったテスル。

ソヘは、荒廃した未来のソウルからやってきた女性でした。未来では、戦争が勃発したため人が住める状態ではなくなっていたのです。ソヘはそんな悲劇を阻止するべく、テスルを守る、と宣言します。
その理由として、テスルが研究開発をしつつあった物質を違う時空に移動させる、アップローダーと呼ばれる”タイムマシン”のような装置がありました。
注*アップローダー:2021年に開発された「過去へ行ける」装置
ダウンローダー:未来から来た物/人を受け取る装置
そんなテスルの"研究”を巡って、さまざまな人々がそれぞれの思惑によって、時代を超えてテスルと未来から来た「密航者」のソヘを追っていたのでした。

次第にテスルを狙う「敵」の存在が明らかになっていきます。
シグマ(キム・ビョンチョルさん)と呼ばれる人物…。猛烈な恨みをテスルに対して抱いています。
そんなシグマも未来からやってきた人物、パク社長やソジンも…。そして恐ろしいことに国の主要なポジション人物たちもまた、未来人だと明かされます。現代に生きる人たちをあざ笑っているように、簡単に富を得て、人々を見物して楽しんでいたのでした…。(怖すぎです)

キム・ビンチョルさん事務所インスタグラムより

少しややこしいのが、「タイムパラドックス」現象です。現在の物体/人と未来から来た同じ物体/人が同一の位置に存在した場合、どちらか一方が消えてしまいます。加えて、特に人の場合は記憶が伝達されるという点。
過去や未来の記憶が一方に伝わり、記憶として残ってしまうため、現在の人の場合は未来の現象を知り得てしまいます。

シグマはこの習性を利用し、複数回にわたって未来と過去を行き来して、その時々の記憶を受け継いだまま、時代を変え何度も何度もテスルを狙います。
つまり、現在軸のテスルの”成功”への道筋も、全て未来から来たシグマが描いていたルートで、テスルはシグマの手のひらで踊らされている状態でした。
シグマにとっては、テスルの行動は全て台本通りでお見通し、勝ち目はないと思われました。

ただ、このタイムパラドックス/未来往復を使っているのは、シグマだけでありません。ソヘもまた、過去にやってきたのは今回が初めてではありません。
事実、ソヘがそもそもテスルを助けにきた訳は、”現”未来のソヘが自分の白骨死体(BADエンドの未来のソヘ)を見つけ、自分への忠告を記した手帳を読み、タイムパラドックスが発生したところからのスタートです。

第1話の中華料理店で宝くじの番号をすべて当てたソヘですが、いくら未来人でも覚える…?という違和感はここで解決でした。つまり、ソヘがこの宝くじのTV番組を見たのは2回目だったんですね。

ただ、テスルの弱点(?)としてシグマはQ&Tのエディの元で開発されているアップローダーを完成させるため、テスルの最終コーディングを必要としています。一方でソヘは未来の戦争を阻止するには、アップローダーの開発をとにかく中止するべきだという考え。
しかし、テスルはアップローダーの開発中止は、愛するソヘと自分を繋ぐ唯一の方法であるため、シグマを殺すことに躊躇してしまいます。
シグマがテスルに問う「女と世界、どちらを選ぶのか?」という質問はそこからきていたのでした。
そしてテスルとシグマ、最後に勝つのは…。

という点を注視して視聴していましたが、最終回で「うわあ…!(驚愕)」となりました!
シグマを倒したとしても、新たな”敵”が、そしてしっかりと次の”シグマの芽”が再び現れているという部分です!
ここはこのドラマの最高の部分で、良いエンディングで本当に素晴らしかったです!!
タイトル『シーシュポス』の永遠の業という意図がしっかりと効いていて、完璧なループ物の完成!!!スゴイ!!!

人間の業(カルマ)というか、欲望や恨み、羨望…そのような言わば汚い感情と正反対の、テスルとソヘとの関係に象徴される、愛情など…人間の裏表の2つの部分のために、人は後悔し続け生き続けなければならないんだ、と感じました。

パク社長のエピソードしかり、最終回がやけに情に訴える演出だな…と思ったのですが、多分この作品ではシーシュポスのタイトル通り、「人間の業」について結局伝えたかったのではないかな、と個人的に解釈しました。
だからこそ、テスルがとった選択が自死だったと思います。人が生きている限り、罪があり、業は続くので…断ち切るには死しかないわけです。

最終的にソヘとテスルは、一応ハッピーエンド的なシーンで終わりましたが、恐らくまたシグマに追われ同様の展開となり、永遠ループとなる気がします。
夢オチエンド????というか、今後発生するであろうことを描いていたお話だったかな…と思いました。

飛行機のシーンのソヘはなんだか変な気がしましたので、個人的にはあのシーンのソヘ自体はテスルの”幻想”な気がします。あのソヘは、テスルの”幻想”で、だからこそ、テスルは飛行機で薬を飲もうとした(けれど、幻想でもソヘに会いたくて)が薬を落としたままだったのでは…。
つまり、テスルはソヘを覚えているけれど、ソヘは(今は)存在しない、そしてこの後再びエピソード1に戻ってループ…。
かな…と私は考えました。(ただ、正直わかりません)
何通りも解釈が考えられるお話ですが、タイトル通りループ物かと個人的には思います。難しい!

中盤以降、本当に面白くなったなと夢中で視聴していたのですが、ただ根底には「やっぱり、わかりにくいな…」という部分が多くありました。(私の理解力が足りないせいなのですが…。)
明らかに異形(エイリアン)の敵などもいましたが、あれは…?(ダウンローダーの失敗というやつでしょうか?)全体的に細かな謎が多かったです。

あと、シグマですが、彼が戦争を起こそうとするきっかけが、社会=テスルに対する恨みです。これは格差社会の問題提起にもなっているかなと感じました。
画家で誹謗中傷していたシグマが、「炭とロープを買ったのに誰も止めてくれなかった」という恨み節を話すシーンがあります。
テスルが悪い、というわけではありませんが、社会としてもしシグマに誰か1人でも救いの手を差し伸べていれば、戦争は起こらなかったはずです。1人の男性の悲痛な叫びを無視したために戦争になる…そんなバタフライエフェクトのような…。
これは今の現代社会に警鐘を鳴らすような意図があったと思います。

ドラマとしては、最後の最後までどのような手法で終わるのか全く読めない展開は、視聴していて全く飽きませんでしたし、素晴らしかったです!
終わり方は個人的にはとても好きでした。色々観る人によって考えが違ったり、受け取り方が別れるお話は、やっぱり面白いと思います。
二十世紀少年」のオマージュか?と思うような描写もあったり、SF系にお詳しい方だと他にも色々発見があって面白いかもしれません。
ストーリーも凝っていたので、しっかり考えながら観たという満足感もあり、難しかったですが非常に面白かったです!

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