ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 私たちのブルース (感想)

おすすめ度:80%
済州島度:100%
市場の人々度:100%
原題:우리들의 블루스 / Our Blues (全20話)

私たちのブルース感想

済州島のある市場で働く人々、彼らにはドラマがあった…2022年放送のヒューマンドラマ。

あらすじ・キャスト

済州島のプルン里の市場では、様々な人が集い働いています。
一帯の鮮魚店を経営しているウニ(イ・ジョンウンさん)、小さなトラックで生活必需品などを売るドンソク(イ・ビョンホンさん)。そして海女としても、居酒屋プルンの経営もするヨンオク(ハン・ジミンさん)、船長のジョンジュン(キム・ウビンさん)…。
一方そんな島を出たのに再び戻ってくる人もいた、ソナ(シン・ミナさん)もその一人だった。
何も変わらないような済州島での日々、しかしそこで生きる人々には楽しくもあり辛くもある毎日があった。

感想

良かったです。
ですが、ちょっとお膳立てされた感動ストーリーありきすぎて、正直もったいないと思いました。せっかくこんな素晴らしい俳優陣を集結させたのに、もう少し余白を持った展開でも良かったのではないかなあと、そこが少々萎えてしまいました。(すみません、個人の感想です)

群像劇形式で描かれた作品が特に構成として効いていて、キャラが上手くクローズアップされていました。
済州島の田舎ならではという描写として、プライベートの無さや閉塞感、しかし時に家族以上の強い結束力のような仲間愛やそれゆえの関係性の歯痒さ、不器用さを強く語られています。
この毒にも薬にもなる人間関係を、時にユーモアを交えて描かれています。

個人的に最も気になった部分としては、上述したように話の展開が「感動ありき」のストレートな1本道で進む点でしょうか。(ただこれは本当に単なる個人的な好みなので申し訳ないですが…)
1つ1つの”彼ら”のお話ほぼ全てが、人情と愛情で強く押し切った筋書き通りの帰結(イコール涙)という名のゴールが確立させてありました。
それありきでストーリーが進むため、予定調和を感じてしまい私は残念に思えました。

また殆どのキャラがストレートに物を言うタイプの人々ばかりで、常に喧嘩腰というか正面衝突のような形で、半ば強引に”話し合い”エピソードに転換してしまう部分も気にはなりました。これはドラマのポイントでもあるので理解できるのですが…。
これはウニさんが「下着を何枚持っているかも知っている」というセリフにも集約されるとおり、界隈全員がもはや家族のような舞台設定が大きくあると思います。それが良くも悪くもドラマを生み出しています。
ただ、気持ちをぶつけあい、わかり合うべき、だってそれが家族だから!的な部分は理解できますが、ちょっと同じパターンが多いかなあとは思いました。

出演者の方々ですが、顔ぶれだけでも豪華メンバーで、俳優さんたちの出演料がすごそうなドラマだなという印象が強いですが、演技ももちろん本当に素晴らしかったです!!これは本当に見どころの1つでしょう。
全体的に泥臭い演技を求められるシーンが多く、その要求にしっかりとハマっているという俳優陣…スゴイと単純にそう思いました。
個人的には特に食事などのシーン。食べ方などがそのキャラの人なりを出しているような演技を強く感じ、痺れました。上手いですよね、特にイ・ビョンホンさん。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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ハン・ジミンさんインスタグラムより

高校生カップルとその父親たち
学年トップのヨンジェ、そしてヒョン。2人は優等生の高校生です。親同士の仲の悪さもあってか、島の雰囲気もあってか、お互いを想いあっているようですがそれは秘密の関係です。
彼らの父親ホシクとイングォンは犬猿の仲。2人は顔を合わせる度に取っ組み合いの喧嘩をおこす状態です。かなりの大人でこの関係は、色々な意味でなかなか大変そうだなという気がしますが…。
しかし、そんな状況も一変。ヨンジェが妊娠したのでした。
当初2人は親たちには内緒で手術しようと考えますが、そう簡単には話は進みません。
ヨンジェとヒョンが出した結論は、出産したいと決意します。
そのため彼らの父親であるホシクとイングォンに打ち明けることに。彼らの妊娠をきっかけに、仲の悪かったホシクとイングォンがなぜこの状況になったのかなども明かされていきます。

このエピソードは10代での妊娠と親子関係、根深い友情をテーマにしていますが、かなりというか相当ベタなラインの話だったなあという印象でした。
親のプライドと子供でありながら”大人に”なっていく子たちとの関係性。父親という時に情けなかったり、疎ましかったり、だけれども愛すべき強い存在そんな親子愛。
ただ、彼らが妊娠した瞬間に、いがみ合う父親たちの感動和解ルートが露骨で、少々残念に思えました。

好きだったシーンは、当初誰にも祝福してもらえなかったヨンジェ(と胎児)が、第三者であるソナに「おめでとう」とその妊娠を祝ってもらえたところです。
ソナの置かれた事情もあり、またヨンジェが一番本来は聞きたかったかもしれない言葉をやっと言ってもらえたというシーンは、ありがちかもしれませんが単純にやっぱり良かった。

船長とヨンオクの謎
船長ジョンジュンは寡黙な男性。そんな彼の船に乗るのがヨンオク含め海女たち。
チームワークや決まり事を守るのが大切なのが海女の仕事、なぜなら一歩間違えれば重大なことになりかねない仕事。
その輪を乱すの…がヨンオク。彼女には様々な噂が付いて回っています。
男性経験も豊富、常に鳴る電話、そしてお金に貪欲な態度。
ヨンオクはジョンジュンにも軽い雰囲気で仲良くなりますが、船長は彼女の事を次第に真剣に考え始めます。
しかし2人の仲が進展し始めた頃、ヨンオクはそれまでの態度を急変。
彼女は一体何を隠しているのか…?そこが焦点になってきます。
ヨンオクには実は双子の姉がいたのでしたが、その姉はダウン症です。2人は小さい頃に両親を亡くし、苦労して過ごしてきたことがわかります。
ヨンオクは船長を一歩進んだ関係を結ぶ時、この姉の存在が頭によぎっていたのでした。

このヨンオクのエピソードから、”隠されていた”姉が明らかになります。
セリフについても色々と思う部分も個人的にはありましたが、いずれにしても当事者ではないのでこればかりは難しいなと感じました。
ただ踏み込んだエピソードだと印象付ける反面、少々ステレオタイプの描写が多いようにも思えましたが、社会というのはまだ変わっていない部分も多いという問題提起かもしれません。
ただ下記に載せたドラマポスターのデザイン(当初)は、あまり見て良い気持ちにはなりませんでしたが…。

私たちのブルース 韓ドラ

ウニさん
冒頭で島の人全員がウニさんの男性経験の有無まで知っている状況で、絶句してしまいましたが、彼女は島でのトップクラスの成功している経営者であり、情報通であり、島全ての事件のある意味中心(?)人物でもあります。
そんな彼女は初恋を今も胸に小さく抱きながら、強くたくましく仲間に囲まれながら生きている訳ですが、小さなトゲが数年前からありました。
それは親友であるミランオム・ジョンファさん)との関係です。
10代からの2人…裕福な家の子のミラン、そしてそうでないウニ。美人だったミラン、そうでなかったウニ。2人は仲が良かったですが、長年どこか2人は持つ者・持たない者の関係に思うところがあったのでしょう。
それが爆発してしまうのがミランの3回目の離婚の時でした。連絡を受け心配して島からソウルに駆け付けたウニ。しかしそれはミランの悪ふざけであり、心配したウニを笑い者にするような態度を取ったミラン。その時から、ウニの中にはミランに対しわだかまりがあったのでした。
そんなウニの気持ちは知らず、いつものように島に戻って来たミランでしたが…。

女性2人の(おそらくどの年代の方にも響きそうな)面白味のあるテーマでしたが、これもやっぱり友情ゴリ押しでまとめてしまったのか…とひどく残念に思いました。
親友同士の、大好きだけれど、どこかに小さく存在するトゲトゲした気持ち→大爆発というお話、個人的にはこのネタに関してももう少し踏み込んだ描写があればなあと思いました。
ミランが「言ってしまった」事の酷さですが、これに立腹するウニ、だけれども”そんな彼女を”受入れようとした”心情の描写や説明不足の点、これが個人的にとてもガッカリしました。
結局ミランに同情してソウルへ自ら向かったウニですが、彼女の取った行動はまさにミランがウニを”そう扱った”そのもの。
語られたミランの謝罪(言い訳)が決してあの時の言葉を否定するものでもなく、結局格下に見ているのは違いないようにも思えますが、ウニはそれを受入れます。受け入れるウニの深い気持ちをもう少し語って欲しかったです。
個人的にはウニが彼女を許した説得力が感じられませんでした。(ミランを可哀想な人だとそのまま受け止めたとしても)

ドンソクと母そしてソナ
実は10代の頃から知り合いだったドンソクとソナ。
ドンソクの方がもちろん年上ですが、彼らは実はずっと昔から想い合っていました。
ソナは鬱病が原因で離婚。その後も愛する子供の親権を失いつつあります。
自分を責めながらもどうしようもないソナ、再び済州島へふと戻ってきたのでした。そしてドンソクと再会します。
2人の単純ながらも長い純愛…なのですが、個人的にはソナさん、少々ズルい気もしないでもありませんでした。
ストーリーそのものは良い点もあるかなあとは思いますが、なんでしょうか2人の関係があまりしっくり来ない気がしました。
というのもドンソクさんかなり根深い、ある意味とても執念深い男性なんですよね。
母との確執もあり、愛情不足なドンソク。その性格をソナは深く知っていて、彼は”結局”ずっと自分を待ってくれる人…と、ずっと当てにしていたのかなあという気がします。

ドンソクと母の件ですが、彼は実の母に”捨てられ”ているのですが、まずこの母息子の関係がものすごく「深く長い恨み」のようになっています。
頻繁に市場や界隈で母と顔を合わす訳ですが、毎回老いた母に激怒。ドンソク自身も結構な年齢でこの態度…親に向かって!という意味ではなく、単純に毎回こんなキレていて疲労しないのかなと観ていて不思議に思うほど常に怒っている訳です。
母も「何故そんな態度をあの時取ったのか」は長い間ドンソクに語らなかった訳で、膠着状態というか進展ゼロ。不仲のままお互いこの年齢まで経過しているようです。
こじれてしまった親子関係…、しかしここでドンソク母の病状が知らされます。
親子だからこそ「上手く話せない」素直になれない関係性、母の置かれていた状況など、キム・ヘジャさんとイ・ビョンホンさんの演技でとんでもない深みのあるシーンになっていて、上手いなあ…と素人目にも明らかで素晴らしかったです。
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良いエピソードもシーンも多かったですし、観ていて涙が出るシーンも多々ありました。
ただ、総合的にはやはり上述したように、各キャラクターの持っていた”わだかまり”への解消が感動ストーリー一直線で進みすぎた部分が、視聴していて残念に感じました。
とにかく演技力が素晴らしい俳優陣なので、もう少しお話に余白があれば、より作品に厚みが出る気がするような…。(素人なのに偉そうにすみませんが…)
とはいえ見応えはありましたし、良いドラマだったと思った次第です。

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