ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国映画 楽園の夜 (感想)

おすすめ度:75%
水刺身度:100%
ブルー度:100%
原題:낙원의 밤 131分

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敵対する組との抗争、1人のヤクザが逃げた先は済州島だった。2020年公開作品。

 あらすじ・キャスト

ヤクザのパク・テグ(オム・テグさん)は敵対する組との抗争に巻き込まれ、大切な姉と姪を失う。
復讐を誓ったテグ、は敵対するプクソン派の会長を殺し、済州島に身をしばらく滞在し隠すことに。
1週間の約束で済州島のとある”家族”の家に滞在することになるが、その家の娘ジェヨン(チョン・ヨビンさん)には問題があり…。

感想

これぞ!という、韓国ノワールといったハードなストーリー。
非常に残虐なシーンもありますが、根底にクールさがずとあるのは、映像の色調が落ち着いていたブルーだったのと、俳優陣の渋さが効いているなと感じました。
主演のオム・テグさんが終始"静か”だったので、その部分が怖くもあり、優しくもあり、不思議な雰囲気が常に漂っている作品でした。
北野武さんの”キタノブルー”を彷彿とさせるぐらい、ブルーが印象的な作品です。

ラストのシーンがこの作品の全てであり、最も描きたかった部分かなと想像しました。
途中、都合が良すぎでは…というような部分も少しありましたが、このラストシーンの印象がとっても強かったし、大変良かったと思います。
とにかく「全てが終結した」ラストシーンの説得感がありました。
ラストシーンについては色々な意見があると思いますが、個人的にはこの結末を予感させる描写もあり、むしろ完璧なエンディングだったな、とある種のカタルシスを感じるというか、かっこよさを感じました。

 ゆるいネタバレありの感想

チョン・ヨビンさんインスタグラムより

ヤン社長の元で忠実な部下として働く、ヤクザのテグ。
彼の腕をみこみ、テグは抗争相手のプクソン派のト会長からスカウトされますが、断ります。

しかしそんなある日、テグの愛する姉と姪が事故に遭い、亡くなってしまいます。ヤン社長から、姉の事故はプクソン派の報復の仕業だと告げられ、怒りに復讐を誓うテグ。
スカウトを口実にプクソン派のト会長に会い、会長を殺害しようとします。

プクソン派から逃げるため、ヤン社長の手引きでテグは済州島に飛びます。とりあえず1週間ほど滞在し、その後、船でウラジオストックへ渡って逃げ切るという計画を立てます。
会長を襲ったテグ、もちろんプクソン派も黙ってはいません。マ理事(チャ・スンウォンさん)の指揮の元、テグやヤン社長を追います。

済州島で訳アリの人物クトの家に滞在しますが、そのクトの姪であるジェヨンの態度が気になるテグ。
彼女は重い病状のため、余命宣告されている女性でした。
そのため、人生に希望が持てないような、投げやりな態度をいつも取っている、少しエキセントリックな女性。そんな2人はもちろんお互いに良い印象はもちません。

一方のプクソン派のマ理事とヤン社長。
トラブルを最大限に抑えるため、裏取引でヤン社長は生贄としてテグを差し出すことを決めます。
そんなことは知らないテグは、済州島で次の指示を待ちます。
そんなある日、クトが襲われます。彼は元々、武器の違法取引をヤクザたちとしていました。叔父を助けるべくジェヨンとテグが助けに入りますが…。

このあたりからラストまで怒涛の展開で、ヤクザ映画!!という描写が続きます。
ただ、しばしば途中に、ヤクザの抗争とは程遠いような、済州島の海とジェヨンとテグの2人の静かな関係も描かれます。
このヤクザ抗争という非日常と、平和な島という日常との対比の演出が素晴らしく、として悲壮感がある終わりを予期する演出が大変印象的でした。

作品の序盤から明かされるジェヨンの余命宣告されている病、そして組から追われるテグ…。
どう考えても2人のバッドエンドしか想像できない演出と、それをふと忘れてしまうような、のんきな日常が一層悲壮感がありました。
テグとジェヨンの恋愛について、しっかり描かれていなかったのが特に良かったと思いました。あくまでも2人の間には線があってという部分が、より2人の関係性を表現していたと感じました。

ということで、ヤクザ抗争!!というようなシーンも多かったですし、事が上手く運ぶなあと思った点もありましたが、最後のシーンで全て「終わったんだ」という演出になっていて、文字通りこの映画も幕を閉じたということになりました。

テグ役を演じられた、オム・テグさんが大変渋くてかっこよかったです。こういう無口で静か、やや朴訥で心に何か秘めた男性役、『コインロッカーの女』でもテグさんが演じられていましたが、本当に似合いますね…。

エンディングがとにかく完璧で、個人的には最後まで集中して楽しめた物語でしたが、何か具体的に心に残ったかと問われると答えが出ない、という映画でした。ですが、作品としては最後まで”スタイル”を失わず、まとまっていて素晴らしかったです。

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