ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 地獄が呼んでいる (感想)

おすすめ度:95%
地獄度:100%
動画配信度:100%
原題:지옥(地獄)/Hellbound 全6話

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突如人々を地獄に陥れる存在を神からのメッセージと説く男…2021年放送のダークホラー/カルト系作品。

あらすじ・キャスト

人々を騒がしている非現実的とも思える現象…。
宗教団体である新真理会の議長ジンス(ユ・アインさん)は、これを「神からの警告」だと発信し、次第に世間の注目を集め始める。
この超常現象を事件として追う警察のギョンフン(ヤン・イクジュンさん)や弁護士ヘジン(キム・ヒョンジュさん)はこの現象や人々の行動になすすべもなく途方に暮れることになる。
世間は新真理会の考えにどんどん心酔する一方、テレビ局のプロデューサーのヨンジェ(パク・ジョンミンさん)は懐疑的だったが…。

感想

強烈に面白かったです!!
全6話という観やすいドラマの枠で緊張感と不気味さの流れ、作品のスタイルを最後まで全く失わず、本当に素晴らしいなと思いました。
また随所に韓国作品らしいエッジのある「怖さ」と「皮肉」が散りばめてあって、大変満足度が高かったです。夢中で一気に視聴してしまいました。
2部構成のような形を取っていることもあってか、視聴していて一息入るインターバルのようにもなっており、時間経過を表現しつつその世界観を上手く表現していて上手いなあと感じました。
CGである"超常現象"に新興宗教団体、それに心酔し始める人々…「実態がよくわからない」モノに対峙した時のパニック状態。どうしようもないことに対する人間の心理状態など、近年のコロナ禍の状況にも似た雰囲気を作品からも感じ取れて、大変興味深かったです。

原作はWEBトゥーンで、この漫画のストーリー原作者がこの作品の監督であるヨン・サンホさんです。(ヨン・サンホさん監督作品は映画『新感染』が最も有名かと思います。)
今作では人々を恐怖に陥れる"現象"をCGで表現されているのですが、その有無を言わせない突然の出現は『新感染』のゾンビと類似していて、"地獄”導入部分のスピード感なども面白いなと思いました。

個人的にとっても好きな俳優さん3名(ユ・アインさん、パク・ジョンミンさん、リュ・ギョンスさん)がなんと揃って出演されていたので、その点だけで私はテンションが相当上がってしまいました。
特にユ・アインさんは謎の団体トップの役でしたが、言うまでもなくこの作品でもアインさんご本人が持つ何ともいえないカリスマ的雰囲気が爆発していて最高。お話が進むごとに(キャラの)感情の振れ幅を表現する演技が特に印象的でした。
パク・ジョンミンさんもやっぱり上手かったです!

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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ユ・アインさんインスタグラムより

我々が暮らしている社会の中で説明がつかない"現象"を「メッセージ」だと紹介していた、チョン・ジンス。彼は2012年に創立された新真理会の議長(代表)。
そのメッセージとは、突然空間に出現したモノから、その人物に死期を予言。死期の警告は数十秒後~数十年とそのスパンはランダムなようです。
実際にその時になると、どこからともなくやって来る足音と共に恐ろしい地獄からの怪物によって、残忍にそして最終的には業火によって殺されてしまう、というもの。
これを会では「試演」と定義し、この予言を言い渡された者は全員が「罪人」というのです。事実、予言を受けた人物とは犯罪者であり、神は人々に"地獄"の姿や恐ろしさを見せて人を正そうとしているのだと。
彼が配信するこの映像はとてもショッキングであり、彼が伝える説法はある意味で"真理を突く"ものでもありました。その真理とはタブーでもあり…。
そしてついに衝撃の"現象"が、実際にソウルでも発生します。この現象は瞬く間に拡散・報道され、恐怖を目の当たりにした人々は戦慄し、立ちすくみます。
次第にジンスの考えは注目され多くの人の心を強く掴み、"矢じり"と呼ばれる極端に暴徒化した信徒を多く生み出し、教団をより強固な存在にします。

上手い点はこの"地獄からやって来る怪物"なのですが、この世の生き物でない見た目をしていて強烈な力を持っています。(個人的には怪物は結構ユーモラスな風貌だなと笑いそうになりはしましたが。)
しかしそこはストーリーでもあまり論点にはならないですし、「受け入れなければならない圧倒的な存在」として君臨。視聴しているとついついこの怪物の説明をどこかで求めてしまいそうになりますが、そこは意図ではないのだろうな…と個人的に思います。
この怪物ですが、目に見えにくい概念やムーブメント、そしてCovid-19ウィルスのような病まで具現化しているようで、これを語らないという点が最も面白いところだなと強い印象が残りました。

人々を恐怖に陥れるこの地獄の使者による「試演」ですが、ジンスはこれを利用し「正義感を持って生きろ」と強く世間に訴えます。
つまり、予言されたくなければ罪を犯すな、ということです。逆に、使者によって殺されてしまう者たちは罪人なのだから(そうなっても)しょうがない、という考えに。
この点が正義をはき違えた"矢じり”を駆り立てる大義名分になってしまい、人々は地獄の恐怖と無政府組織化した矢じりたちの監視下で、ある意味平和で窮屈、恐怖をどこか感じながら生活を送ることになります。このあたりも現代社会へ問題提議しているようでした。
このようにドラマでの社会は、試演によって人々の生活が大きく狂っていく様子と、ジンス率いる団体の主張が広く支持されていく状況が語られていきます。

この教団を立ち上げたジンスという青年の背景ですが、実は彼も10代の頃に例の宣告を受けた人物だったと明らかにされます。
彼自身が20年前に死の宣告を受け、苦悩して出した答えこそが「他人にも恐怖を味合わせて正しく生きさせる」というものでした。
ジンス自身が「理由が必要だった」と吐露するように、彼自身も自分の罪を探し回っていたのでしょうが、答えは自身の中には見つからなかったようです。人々は何か良くないことが起こるとどうしても理由を探してしまうという人の性質を身をもって痛感していたのです。

人間社会での規律にはどうしても矛盾点や感情で、答えがでないものが多々あると思います。その人間の裏表の二面性、建前と本音などその曖昧な部分を非常に上手く表現している作品だなと感じました。
人生で突然見舞われる不幸に対して、あれこれ理由を探してみてもそれは時にはどうしようもないことで、ただただ「不幸だと思って理由を考えず受け止める」必要性があるんだということ。
そしてラストシーンのように、時に理由がつかない幸運も一方でまた人生に起こるんだということ。
人の繊細で壊れやすく流れやすい、そして善と悪、人が人を裁くという罪の部分、そして、最終的に人の恐ろしさを色々と考えさせられた作品でした。

シーズン2に続く可能性もありますが、あの子が救世主のようになって作られる"社会"になるかもしれません。(が、何となくそこも既に堂々巡りになりそうで皮肉な気もしますが…。)
またエンディングのあの女性の姿は概念が変わった、という表現かなと思いました。
総合的には非常に惹きつける部分と展開の速さとメッセージ性がある作品で、見応えがありました。加えて俳優陣も素晴らしく私は大変面白く視聴しました!とても良かったです。

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