ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 怪物 (感想)

おすすめ度:95%
表情度:100%
20年前度:100%
原題:괴물 / Beyond Evil (全16話) 

韓国ドラマ 怪物 考察感想レビュー批評

20年前の未解決事件と容疑者。明らかになる真実とは…。2021のスリラー/サスペンスドラマ。

あらすじ・キャスト

次期警察庁長官と噂される父親を持ち、エリートとして進んできたハン・ジュウォン(ヨ・ジングさん)は、ソウルの本庁から田舎のマニャンの派出所へ出向することに。
小さな派出所内で、ペアとしてイ・ドンシク(シン・ハギュンさん)と組むことになるが、ジュウォンはドンシクに対して常に疑念を抱いている様子。
実はドンシクの妹は、20年も前にある事件に巻き込まれて失踪したままなのだった…。

感想

とても良かったです、見応えがありました。
マニャンという田舎において独特の人間関係の中で、過去の未解決事件を暴こうとソウルからやってきたエリートで若い警官。
彼が、一癖も二癖もあるドンシクという警官と共に行動を始めます。
不穏な人々、新たな事件の発生、明らかになる罪と真意、人の行動心理...そのような謎が全16話でしっかりと描かれています。
正直、サスペンスそのものとしてはそれ程新しさのあるネタでもなく、中盤以降は更に弱い部分もあるかなとは思いました。
ですが!このドラマは「誰が犯人なのか?」という部分を、”最終的には”焦点にしていないところがポイントかなと思います。
また無駄にサブプロットとして、メインの問題以外の話で時間を埋めるようなことを一切せず、正々堂々とした(?)脚本だなと印象に残りました。
中盤以降サスペンスとしては少々間延びした感じがありましたが、後半にはジュウォンとドンシクという2人の人間、そして警官としての成長や考え方に注目されるように物語が進んでいきます。
ここから今作が最も表現したかったであろう題材が、ドラマの構成として上手く組立られているので、視聴側にその意図が伝わりやすかったと感じました。
ただ、1,2話あたりの「よくわかんねえ感」(ただ、これはドラマ序盤のやや大げさな”掴み”シーンですが…)で、何となく気が削がれる方もいるかなと思います。
またキャラクターの心理状況などを表現するためか、ストーリー展開が遅く感じられる部分もありはしました。
つまらないと思われる方もおられるかもしれませんが、まずは4話まで視聴して頂ければなと思います。
また、どちらかというと「しっかり観る必要がある」タイプのドラマであるのは間違いありません。
ある程度の心構え(?)が要求されるので、こちら側にもそれに応じることができる気分や時々の状況がありますので、興味がある方はぜひ機会をみて視聴していただければなと思います。
(私は観たいと強く思いながらも何だか億劫な気持ちだったのですが、視聴し始めると止まりませんでした…)

韓国ドラマ 怪物 考察感想

今作は脚本そのものも面白かったですが、とにかく役者さんの演技が抜群に素晴らしく良かったです。
特にシン・ハギュンさんの表情の作り方、そして態度や演技に凄みがありすぎました。
こればかりは是非実際視聴して頂ければと思うのですが、この作品の大きな見どころです。
実際、韓国で権威ある賞である「百想芸術大賞」をシン・ハギュンさんが受賞されています。(他にも同賞において脚本賞とドラマ作品賞も受賞しています)

このドラマの面白い演出の1つに、「対比」があります。
特に顕著なのが特にドンシク演じるハン・ジュウォンさんの顔が中央アップで映し出されるシーンを多用しています。
これがものすごく効いていて、ある時は恐ろしく不気味で、ある時は怒りで...と、その表情の細かな違いだけでも結構な見応えとなっています。
個人的な印象ですが、ヨ・ジングさんが三白眼的な美しい目を持っていらっしゃる反面、シン・ハギュンさんはどちらかと言うと黒目がちで深淵のような瞳をされています。
ここも顔面アップとすると2人が対比として、かなり特徴的に感じましたし良かったです。(お2人のどちらの目も素敵で印象的です)
今作の人物カットのポスターもその違いが出ていて、大変魅力的で良いなと思います。

ゆるいネタバレありの感想

ヨ・ジングさんインスタグラムより

マニャン派出所。ソウルから次期長官と噂される人物を父に持つ、まさにエリートのジュウォンが派遣されます。
ジュウォンは潔癖症で人と容易に馴染もうとはしません。そんな彼とパートナーを組むことになったのが、ドンシク。
20年前のマニャン、ここには忌まわしい事件がありました。
ドンシクの双子の妹ユヨンはある夜から失踪してしまいます、指先だけを残して。今もユヨンは見つからず、犯人も逮捕されていません。
実は当時ドンシクは妹失踪他の容疑者とされていた過去を持つ、ワケアリの人物だったのです。
ジュウォンがマニャン派出所にやって来た目的も、この過去の事件と容疑者だったドンシクが大きく関係しています。
そう、ジュウォンはマニャンに来た当初から、ドンシクこそが犯人であると強く疑っていたのでした。

新たな事件の発生
ユヨン失踪から20年も経過した今、ドンシクとジュウォンらは別の遺体を目の当たりにします。過去と同じ手口…周囲は20年前の同一犯の仕業ではないかと考えはじめます。
更にドンシクや他のマニャンの人々も良く知る女性の指先が新たに発見され、周囲は戦慄。
そこで何とドンシクの家から指先の女性の血痕が発見され、彼は再びまた容疑者として逮捕されるのでした。
ジュウォンは「やはりドンシクが犯人だった」と確信するものの、犯人だと裏付ける証拠やアリバイなどが揃いません。筋書き通りに進まないことに苛立ちを覚えるジュウォン。
一方、緊急逮捕されたドンシクは不吉な笑みを浮かべるのでした。

マニャンのやり方
ジュウォンが当初から困惑したのが、マニャンの人々の謎の庇い合いです。誰が一体何のためにお互いをかばっているのか?
当初、地域特有の家族のような付き合いのためかと思われるこの人間関係でしたが、ジュウォンは次第に気付き始めるのでした。
そう、全ての人々が、そして当のジュウォン本人でさえも「隠したい真実」を持っていることに…。
ジュウォンもそしてドンシクも、”目的”のためには手段を択ばないということを…。

韓ドラ 怪物 レビュー批評

犯人たち
誰が指先を切ったのか?、妹ユヨンを殺害した真犯人の存在にドンシクは気付き怒りで震えます。
しかし、”それだけ”で逮捕まで結びつけることができないのは、身をもって知っているのでした。20年前の自身と同じ状況です。
一方のジュウォンも真犯人を逮捕したものの、残された謎が多いことを不審に思います。
ドンシクとジュウォン、2人はお互いを疑いつつも、20年前から続く事件の真相と犯人の逮捕という目的は共通。次第に物事の本質に迫り始める2人です。

誰が怪物なのか
事件の犯人こそ、そして利益のために口をつぐんだ者たちが、怪物であるのは間違いありません。
しかし、真の怪物とは、その目的のために自身をも容易く犠牲とし、その怪物を引きずり下ろす”怪物”になる人物…。
自分を怪物に変えてしまう程の強い執念と深い怒り。それこそがこのドラマが描きたかったことではないでしょうか。
ジュウォンが15話で「僕が怪物になって~一緒に地獄へ落ちる」という印象的なシーンとセリフがありますが、まさにここだったと思います。
そして、真の目的達成のためには、自分こそが”怪物になる必要がある”ということ。
ここで完全にドンシクの歩んできた壮絶な人生、そしてジュウォンが対峙している現実と重なって、真の関係が生まれたシーンに見え、大変素晴らしかったなと感じました。

ということで、色々わかってから再度振り返ってシーンを見直すと、各キャラクターの視線の意味や行動心理が面白く、上手く練られたストーリーでした。
サスペンスとしては、完全に描かれていない部分も多いです。この作品の場合、この謎部分が上手く余白として存在していると感じましたし、ドラマの本題がどこかという点が明らかになっていて良かったです。
作品に説得力を持たせる完璧に表現できる役者さんが揃い、ドラマの質が格段に高くなっていました。
作品そのものレベルが高く、特に最終回ラストシーンはドラマの1話のエンディングのドンシクのアップのシーンと対比してあり、とても綺麗に終わらせてあって良かったです。
視聴後、とても満足度を感じたドラマでした。おすすめです。

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