ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

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韓国ドラマ もうすぐ死にます (感想)

おすすめ度:65%
12回の死度:100%
死度:100%
原題:이재, 곧 죽습니다 / Death's Game (全8話)

韓国ドラマ もうすぐ死にます考察レビュー感想ネタバレ

辛い人生…死を選択した男性に待ち受けていた、新たな「死」とは?2023年のサスペンス/ファンタジードラマ。

あらすじ・キャスト

就職浪人中のイジェ(ソ・イングクさん)は度重なる出来事に絶望し、死を自ら選択する。
しかし目を覚ましたところに、「死」(パク・ソダムさん)がいたのだった。
罰として、イジェは12回全く別人の人生を歩み、そして12回死を経験することとなるが…。

感想

テンポもよく面白かったですが、特に何か訴えてくるものが足りないように私は感じました。
死、特に自殺をテーマに据えた作品です。
主人公イジェが人生に絶望して亡くなってしまう訳ですが、そんな彼に「死を軽んじた」という理由から、12回もの死を再び経験させられるというストーリー。
この12回の死=人生を豪華な俳優陣が演じられていますので、まず観ていてとにかく飽きず派手です。

内容ですが、私は自殺という重く、そして複雑な要素が絡み合う事柄に、一体どのようなアプローチで向き合うのだろう…?と、ある意味構えて視聴ました。
後半にかけてオムニバス調だった登場人物が繋がっていったりと、要素的には"回収”された部分もありはしました。
しかし肝心の「自殺は良くない、なぜならば~」のメッセージですが、想像以上に薄い内容で全く私には響いてこず、個人的にはかなりガッカリしたものだったかなと感じました。(あくまでも個人的な感想です)
ドラマのネタバレがあるので理由は後述しますが、現代での自殺問題を考えるに今作の訴える要素はもちろん重要ではあると思います。
ですが、社会的な原因や心理的な問題含めて、今の時代に実際に苦しんでいる人に諭すような段階はもう超えているのではないかなとも私は感じます。
何度も強調しますが、このドラマでの訴えが正しいのは間違いありませんが、これはある種の道徳の授業的な「まとめ」であり、正直なところ単なる綺麗事でしかないようにも思えました。
今さらその点を強くラストに据えて語りかけるというよりは、もっと現実的で多角的な視点から死の選択を思いとどまるようなアプローチが欲しかったかな、とは個人的に大変残念に感じました。

ドラマとして今作の圧倒的な強みは、やはり出演されている俳優の方々かと思います。
12回の人生をイングクさん演じるイジェが再び経験するという設定ですので、本来のそのキャラにイジェが"乗り移る”ような状態となります。
そのため、性格が途中からイジェになるという演技が必要なのですが、どの方もその変化がわかるように演じられていて、とても面白かったです。
またキャスティングも絶妙で素晴らしかったです。

主な出演者ですが、コ・ユンジョンさん、チェ・シウォンさん、キム・ジフンさん、ソンフンさん、チャン・スンジョさん、イ・ジェウクさん、イ・ドヒョンさん、キム・ジェウクさん、オ・ジョンセさんなどなど、大変豪華でした。
個人的にはキム・ジェウクさんの役が良かったと思いました。
ちなみにこちらも原作はWEBトゥーンです。(私は未読です)

ゆるいネタバレありの感想

韓ドラ もうすぐ死にます レビュー感想ネタバレ考察あらすじ

幼い頃に父を亡くし、母と2人で暮らしてきたイジェ。
頑張って大学に入学、そして就職の道へ。
憧れていた大企業テガングループの面接の日に、イジェは他人の自殺を目撃してしまいます。その状況にショックを受けたイジェは、動揺し面接に失敗。
その後も就職に失敗し続け、気づけば7年の歳月が経過。
自分を応援し続けてくれた彼女ジスは、やっと小説家として一歩を踏み出そうとしていました。
今度こそ自分も…!と、再びあのテガンに挑戦するイジェ。
しかしそんな彼に社会はまた試練を与えるのでした。
不採用、そして友人に勧められて行った投資の失敗。彼女との格差と別れ。加えて住んでいた家からも追い出されてしまいます。
もう何も"ない”…。
絶望の淵に立つイジェは、ここで自ら死を選択することを決めてしまいます。
生きることこそ、彼にとって苦しみになってしまったのでした。

「死」との対峙
目を覚ましたイジェは、「死」に会います。
死を冒とくした罪で、イジェはこれから「12回の死」の苦しみを味わえと宣告されてしまいます。
「死」が撃つ銃弾によって、イジェは別の人間の人生に"入り”、彼らとしてその人生を生きて、そして死ぬというのです。
ちなみにルールとして、別人の"彼ら"として生きた際に得た知識や経験、そして元々死ぬ前にあったイジェの記憶などはすべて引継いでいますので、それなりに12回生きるうちに彼は自然と経験豊かにはなっていきます。

それぞれの12回の人生の生き様については実際にドラマでお楽しみ頂きたいですが、生まれてまもない赤ちゃん含めて多様な人間にイジェは転生(?)し、そして死にます。
ただ生きて亡くなるというわけではなく、途中で共通したある「悪人」を見つける…という本筋とは別のサイドストーリーも用意されつつ、物語は進みます。
そして、イジェは「生きるとは」をやっと気づくのでした。

もうすぐ死にますレビュー感想あらすじネタバレ 韓国ドラマ

気になった点
「大切な人が悲しむ」
今作の最終的な「自殺は良くない」という理由ですが、「大切な人が悲しむ」という点でした。
これはその通りだと思います。
ですが、個人的にはこの時代に「そこ?」とまず少々疑問にも思ってしまいました。
そもそも「大切な人のために我々は生きているのか?」と問いたいというか…。
例えば家族も友人もいなくて、社会にも積極的に属しておらず、大切な人がいない状態で絶望の淵に立つ人たちには、では一体どのような言葉をかけるのですか?と聞きたいというか。
元々このような問題は様々な要素が複雑に絡んでいると思います。
そこを感情論のように「明日はよい日になる、周囲の人が悲しむ、あなたよりも酷い状況の人はいる」という言葉で紛らわせるようにエンディングに繋げたのは、個人的にはかなりシラケてしまいました。
結局責任を「生きるのを頑張らない」本人に転嫁しているだけというか。
冒頭にイジェが「生きることが苦しい」と述べていましたが、そんな彼へのアンサーには何らなっていませんよね。

周囲の人が悲しむのはわかっているけれど、その選択をせざるを得ない状況に置かれた人にとって、そして今作の主人公の気持ちを改善するような描写が全くなかったのは非常に残念でした。
視聴していて、イジェは辛い立場にいながらも、結局彼の本当の心情を吐露する場所や人が存在しなかったように思えました。
彼女にも親にも弱い気持ちは見せれず、1人孤独に辛さを抱え込んでどうしようもなくなったように見えました。
近しい人にほど弱い自分を見せたくないのは、誰しも持つ感情ではないでしょうか?
そのようなイジェに、何か他の救いになる場所を提供できなかったという視点(描写)が今作には欠けていると思います。

また例えば、イジェが経験した赤ちゃんやいじめられていた高校生がいました。
彼らは作中の「死」によると「そういう運命で避けられない死」だったと思いますが、果たしてそうでしょうか?彼らは自殺こそしていませんが、十分防ぐことができた死です。
避けられない不運の元に生まれた人もいるのに、自殺するなんて!というようにも思え、その比較と理屈は問題がそもそも違うのではないかと思った次第です。
大人や世間のシステムがきちんと働いていれば防げた死のはずです。
このドラマではそのような要素には触れず(本筋ではないので理解できますが)、親が悲しむ、恋人が悲しむ…だから生きて!というのは、そもそも社会全体の責任を放棄していると思います。

あと、これは単なる揚げ足取りのようですが、最後「死」がイジェに銃を渡して”自ら撃たせる”ように仕向けたシーンがありましたが、あれだけ自殺云々と煽っておいて、その行動は矛盾なのか皮肉なのか何なのか…と疑問に思いました。

ということで、出演者も素晴らしく豪華でエンターテイメントとしては面白いドラマだと思いましたが、メッセージ性や内容としては陳腐な気もしなくもないなと思った次第です。(あくまでも個人的な感想です、すみません。)

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