ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ ムーブトゥヘブン: 私は遺品整理士です (感想)

おすすめ度:89%
彼のペース度:100%
ボクシング度:100%
原題:무브 투 헤븐 : 나는 유품정리사입니다 (ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です) 全10話

f:id:mirume01:20210515231841j:plain

遺品整理の仕事を行うマイペースな青年と彼の後見人。2人の静かな絆を描く、2021年公開のヒューマンドラマ。

 あらすじ・キャスト

20歳のアスペルガー症候群のグル(タン・ジュンサンさん)は、父親と共に故人の遺品整理の仕事を丁寧に行っていた。
平和と思われたある日、突然父親を亡くしてしまうグル。
そんな彼の元に、グルの“後見人”として、胡散臭いサング(イ・ジェフンさん)が家にやって来て、一緒に生活することに。
グルを支える良き隣人のナム(ホン・スンヒさん)はサングを良くは思わない。
態度の悪いサング、しかしグルは父と行っていた仕事を辞める気はなく、彼のペースで進めようとするが…。

感想

想像以上に胸に訴えるものがあり、とても良かったです!
飽きさせないストーリーで、すいすいと一気に観てしまいました。

視聴して1話の最初の仕事のシーンで、お部屋の天井の星のシールを映す箇所で思わず涙が出てしまい、このドラマ最初からこの調子だと、後半自分はどうなるのか…と混乱しました。(あまり1話から涙が出ることはないので…)

グルと父親は、仕事として遺品整理を請け負っています。
各話ではその“仕事”を通して、故人の背景が描写されていくのですが、描き方が非常にドラマチックながらも、わざとらしさが全くなく、素晴らしかった!

グルが仕事をする際、いつも(かなり)古いiPodでクラシックのピアノ協奏曲を聴くのですが、曲とシーン描写がとても情緒的というか、メランコリックで良いです。
またドローンを使っているのか、パズルのようなソウルの街並みが俯瞰的に映るシーンが見れますが、”死”が身近でありながら、どこか他人事のような雰囲気を想像させ、良いなあと印象に残りました。

演じる俳優さんですが、主演のタン・ジュンサンさんが、グル役にものすごくハマっていて、そこが一番驚きました。
目線や姿勢など、役を自分のモノにしたんだな…と画面から伝わってきて、視聴していて説得力がありました。『愛の不時着』の時よりも、若く見えたような。(ジュンサンさん、2003年生まれだそうです)

加えて、イ・ジェフンさんですが特に中盤以降、持ち味の(?)隠し切れない人の好さが爆発して、大変良かったです。「人の好さ」については、私の勝手な想像ですが…。ボクサーの役だったので、身体づくりも大変だったのではないでしょうか。『狩りの時間』に続いてのチンピラ系の役でした。

また、グルがアスペルガー症候群だという設定なのもあり、彼の独特のテンポと仕事や生活の進め方が存在します。
そのため、グルと周囲の人々との関係性にズレがしばしば発生。特に性格が真逆である、グルとサングは凸凹コンビのようで良かった。このあたりの描写もストーリーに効いていました。

『ヴィンチェンツォ』でお馴染みの“クムガプラザ”も出現。これには視聴していて、ニヤリと思わずしてしまいました。
特別出演として、イ・ジェウクさん(はちゃめちゃに良かった!)
『こんにちは?私だよ!』のイ・レさん、『青春の記録』のクォン・スヒョンさん(良かった!)、ナム役のスンヒさんは『ナビレラ』に出演されてましたし、視聴していて嬉しい驚きも感じさせられました。

ゆるいネタバレありの感想

イ・ジェフンさんインスタグラムより

ソウルのハヌルサン路29道4にある"MOVE TO HEAVEN"社は、亡くなった人の遺品整理を行う会社。グルと父、2人の会社です。

彼らは故人の部屋に入る際、必ず挨拶します。
亡くなった人々の部屋で、残された物から彼らの人となりを想像し、共感し、果たせなかった想いにできる限り寄り添います。
それがグルと父ジョンウの仕事の流儀であり、プライドでした。
グルが「亡くなった人は部屋を自分で掃除できないから、僕がする」というセリフは、とても印象的でした。

そんなグルと父親でしたが、父が亡くなってしまいます。
母親を亡くしていたグルにとっては、まさに父親と二人三脚だった生活。今までとは異なる生活を送ることになったグル…。

ですが、80年代のようなヘアスタイルのチンピラ的な男性が「この家の主人だ」と突然やってきます。チョ・サングと名乗る男性、グルの父の弟(父親違い)、つまりグルにとっては唯一の叔父。
ただ、サングは単にお金が目当てで、やってきた様子です。

記憶力が抜群なグル、刑務所帰りのチンピラのサング。
この接点がない2人が、ある日グルの父の死がきっかけとなり人生が重なります。
グルの遺品整理の仕事を向かいに住むナムらと一緒に、嫌々ながらも適当に手伝い始めるサング。

そんなサングでしたが、彼には別の一面がありました。
彼は、違法の格闘場(旧クムガプラザ内)に出入りしていて、そこで高額な賞金目当てに戦っていたのでした。

ボクシングをしていたサング。
とあるきっかけで、高校生のキム・スチョル(イ・ジェウクさん)と知り合います。
まるで兄のようにサングを慕うスチョルに、渋々ボクシングを教えます。
上達するスチョル。ついに全国チャンピョンにまでスチョルを“育て上げた”サングは、とても満足気。
ですが、スチョルは突然「ボクシングを辞める」と告げます。サングは自分の努力を裏切られたような、苛立ちに似た気持ちを覚えます。

ちなみに、このジェウクさんの「ヒョン、ボクシングを辞める」と発言する場面の演技がとんでもなく良かったと、観ていて感動してしまいました。
個人的な意見ですが、ジェウクさんこの役のように、芯にどこか弱さがある役が本当に上手だし、似合います…。

そして、運命の夜、例の格闘技場。
サングは弟も同然のスチョルと、賭博ボクシングで対決することになります。もちろんお互いが対決することになるとは、事前には知りませんでした。驚く2人。
スチョルはボクシングを辞めた後、父と事業を始めようとしており、その資金目的。全国チャンピョンの登場に沸く場内。
そして悲劇は起こります…サングがスチョルを倒し、スチョルはそのまま意識不明の重体。サングは逮捕。

刑務所から出ても、病院で眠るスチョルには会いに行けなかったサングですが、容態が急変したと彼の妹から電話があります。
手術をどうにかしてスチョルに受けさせるため、グルの家の不動産登記を闇賭博の主人に渡し、サングはお金を借ります。
が、時すでに遅し。スチョルは死んでしまいます。

サングが自ら亡くなったスチョルの遺品を「整理させてもらえるか?」と自ら申し出て、スチョル小さな部屋で、1人静かに彼の想いに触れます。
この一連のシーンはサングが「変わった瞬間」でもあり、とても感動的でした。
スチョルがボクシングを辞めた理由、彼がサングの家族を探していたこと…、遺品1つ1つが語っていたのでした。

また一方のグル…彼ももついに亡くなった父へと向かい合います。
大好きだったお父さん、ジョンウの遺品整理です。

この7話ぐらいから最終話までのお話の盛り上がり方が、とっても良かったです。
大きく各キャラクター達のコアの部分に切り込んでいるストーリー展開で、驚きもありつつ、温かさもあり。
このタイトルでテーマである遺品整理が、サングやグルの心の成長と、気持ちの整理、現実への向き合い方と綺麗にリンクしてあり、描写がストレートであり良かったです。
そして、グルのキャラクターがとても淡々としているので、彼の静かで繊細な感情表現がとても伝わりました。

エンディングですが、サングがグルの後見人として確定するか否かというエピソードが来ます。もともと3か月という期限で一緒に暮らし、働いてみてサングの適正を見るという条件でした。

この最後の弁護士事務所でのシーンがイ・ジェフンさんのはちゃめちゃに良い部分の演技が見れて、個人的にとっても嬉しかったです。
泣きそうなのですが、外面だけで強がっているのを敢えて”丸出し”にしている演技…強がっているシーンですが、バランス具合が最高。最後ホッとして、隠し切れず素の笑顔になったのも良かったです。

ということで、全10話という観やすいドラマでした。もしかしてシーズン2の可能性あるかもしれませんね…という最終回でした。(10話というエピソード数がまず怪しい予感…)

1話から最終話まで中だるみもなく、とても良いドラマだなと思って視聴しました。
2020年以降のドラマは本当にほぼ漏れなく面白いので、そのレベルの高さに驚愕してしまいます。この作品も、もちろんおすすめです。

こちらもおすすめ: