ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ あなたに似た人 (感想)

おすすめ度:68%
アイルランド度:100%
芸術家度:100%
原題:너를 닮은 사람 全16話

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封印したはずの過去を知る謎の女性、彼女が完璧だった"妻"の生活に暗い影を落とす…2021年放送のサスペンス/ドロドロ系ドラマ。

あらすじ・キャスト

大学理事の夫を持ち自身も売れっ子画家のヒジュ(コ・ヒョンジョンさん)の娘が、ある日臨時教師のへウォン(シン・ヒョンビンさん)によって体罰を受ける。
それがきっかけとなり、ヒジュとへウォンは対峙することに。しかしへウォンがヒジュと会ったのは、実はこれが初めてではなかった。
ヒジュには"過去"があったのだった…。

感想

恨みは自身を蝕むという陰鬱さ
原作は小説とのことですが、私は未読です。
第1話のスタートではもっとミステリー/スリラーが強いストーリーになるかと予感させられましたが、普通の痴話喧嘩がベースのお話だと早めに明らかになり、正直なところ相当ガッカリしました。
とはいえ、その種の物語の特有の中毒性があったのと、主人公含め登場人物がほぼ全員クレイジー。キャラの誰一人にも共感する部分は皆無でしたが、すごいなあ…という怖いもの見たさの雰囲気があって、続きが気になって観てしまうというタイプの作品。

全編を通してテーマにしていた恨みや妬み、どうしようもないマグマのような渦巻く自身の気持ちの捌け口は結局どこにも"ない"、という部分の描き方は大変素晴らしかったなと本当に感じました!
「深淵を覗く時、深淵もまたあなたを覗いている」という言葉を何となく思わせる作品でした。だからこその『あなたに似た人』だったのかもしれません。「あなたはわたし」なのだから…。

ただ根本的なストーリーですが、話としてネタの広がりというか、明らかにされていくエピソードに全く意外性を感じられず、ドラマとしてはそんなに面白いとは思いませんでした。
ドロドロとしてはいますがほぼ家族という相関図のシンプルさもあり、ウソでしょ?!という新規性のある驚きをもう少し存在させても良かった気がしました。
ひたすら全編陰気な訳ですが、それ自体は悪いとは一切思いませんでした。ですが、だったら最後までそのスタイルを突き通して頂きたかったですし、観ている側をもっと絶望させて欲しかったかな…と個人的には少し残念に感じました。
よって最終回はあまり良い終わり方でない気もしました。(一個人の素人の感想です)

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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キム・ジェヨンさんインスタグラムより

誰もが羨む売れっ子の画家のヒジュ。
お金持ちの家に嫁ぎ、専業主婦から画家として大成功しているという才能の持ち主です。
しかしヒジュ自身は貧しい生まれなのもあってか、夫の母(ヒジュの義理の母)からは全面的に嫌われていて肩身の狭い時も。また幼い息子と中学生の娘との親子関係もあまり上手くいってはいません。
とはいえ、常にヒジュを全面的にサポートし味方してくれる優しい夫もいて、彼女の生活は他人から見るとまさにパーフェクト。
そんなヒジュですが、ある日娘のリサが臨時教師に暴力を受けたという連絡で、義理の母親も経営に関わる学校に出向きます。
暴力教師の名前はへウォン…。彼女の妙に意味深な言葉と、反抗的な態度と目つき。ヒジュはへウォンの姿を見て、すぐに不穏な雰囲気を感じ取ります。
そう、それはかつてヒジュに"絵画”を教えてくれた女性ハンナ…へウォンは彼女にそっくりだったのです。
へウォンとヒジュ…2人の女性の運命が再び交差します。
ここから、ヒジュの生活や仕事面、そして家族にもへウォンの影が常につきまとうことに。苛立つヒジュ、そして平然と”嫌がらせ"とも取れる行動をとり続けるへウォン。
一体2人の間には過去に何があったのでしょうか…?

ヒジュに執拗に執着するへウォンさんですが、その原因はある男性。そう、へウォンの夫であるウジェ(キム・ジェヨンさん)です。
過去ヒジュとウジェは、お互い配偶者がいながら親密な男女関係になっていたようでした。
へウォンはそんなウジェとヒジュを憎み、悩み、そして2人の裏切り行為に怒り、人生すべてを賭けるかの如く自分のように彼らを苦しめてやろうと誓います。
このようにへウォンの思わせぶりな怒りの原因がただの不倫だったという、ヒネリもない非常に簡単な話だったので、上述したように個人的には拍子抜けした次第です。

ストーリー展開としてはジリジリとへウォンの度を越えてくる行動と、ヒジュ&ウジェの過去がフラッシュバックして彼ら2人の”関係”が明らかにされていく訳ですが、ヒジュの背景を知れば知るほど「・・・。」と無言にさせられる点が多すぎてちょっと困惑。
というのも、彼女は留学と称してウジェと2人(後に息子も産まれ3人で)まるで家族のように仲良く3年もの間暮らしていました。しかしそんな生活にも終わりが。
ウジェをアイルランドに残し、彼女は息子を連れ"逃げて”夫のいる韓国へ帰って来たのでした。

そんな過去があったウジェとヒジュ。
しかしここで問題になってくるのが、現在のウジェさん。彼は現状、記憶障害を患っていて何と過去の記憶が一切ありません。過去にヒジュに「捨てられた」ことも覚えていません。。
そんな状態のウジェに数年ぶりに再会して驚くヒジュですが、穏やかでないのは彼女だけではありません、ヒジュの夫。そしてへウォンも何か企んでいるようです…。

このように、もつれた2組の夫婦…。
要はへウォンはウジェとヒジュが過去に関係していた事を盾に、ヒジュを苦しめようとします。
一方のヒジュはウジェとの関係は無かったフリを続けますがそう上手くいかず、ウジェにも再び惹かれている始末…というお話が続きます。
そして記憶喪失のウジェも次第に記憶を戻すことに。

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個人的にいろいろな意味で気に入った点は、やはりウジェさんが記憶が戻った後の180度変わったキャラクター描写です。
ヤバすぎでしょ…という性急さに、正直なところ普通に面白さを感じてしまいました。ヒジュさん曰く「そういう所が嫌だった…(だけど好きだった♡)」と回想していましたが、イライラして作品を破壊しまくったら終了!という散見された雑さはもう少し何か描写方法がなかったのかなとは思いました。狂気の表現もあったかもしれませんが…。
ウジェの人を惹きつける抗えない不思議な魅力のような部分が、後半もあっても良かったような。(実際またウジェもへウォンも彼に執着していた訳ですし)彼の後半の様子を見ていると、ただただ不穏でワガママな芸術家という点が目についてちょっと残念。

興味深いと感じたのはへウォンが、ヒジュに復讐のような形を取り続けどんどん自分で自分を止められなくなっていくところ。そして彼女自身がそんな自分が負の感情に蝕まれているのを感じているところです。
一体どのような“謝罪“を受ければ自分が納得するかさえわからず、醜い感情に突き動かされていて、どうしようもないんだなと説得力はありました。結局あの感情を処理できるのは他人ではなく、自分だけなんですよね。
これは、ヒジュの弟ソヌに固執する親友の母と同じでした。
ギャラリーで開催した結婚式ですが「新郎が(また)逃げたら」と半分願うように、みんなに悲しみを見せつけられた…、とむしろ自ら不幸を買って出て自分を“可哀想な者”に仕立て上げたいという、ねじれた心情も象徴的かなと思いました。
この自分にとって強い毒にもなるマイナスの感情を乗り越えたというか達観できた人が、あのバーのマスターだったように思えます。

最終的にへウォンがかつて願ったように、ヒジュは“めちゃくちゃ”になってしまいます。しかしへウォンはそれに達成感はあったのでしょうか?
へウォンがソヌに付きまとっていた元親友の母親に告げた「その子はそれを願う人だったのか」という問いかけの言葉がそのまま自分に返ってきたのは皮肉でもあり、そもそも彼女はその母親に自分自身を見つけていて哀れみを感じていた気がします。ここもタイトルの意図だと思います。

最後にへウォンはやっとヒジュを“許した“ことがわかります。一方の許されたヒジュですが、全くの別人として暮らしているようです。
ここからのラストへ繋がるシーンですが、ヒジュの死さえ予感させる語りが入ります。しかし、湖から鐘の音が聞こえたヒジュはハッとします。
ウジェが「純粋な心を持つ人に鐘の音が聞こえる」というギル湖の伝説…。あの音です。
当初干上がりかけた湖からウジェが呼んでいるのかと思ったのですが、あれはヒジュが真に「許された」という合図かと感じました。
ヒジュの夫だったヒョンソンは明らかに彼女を今なお探していますし、彼女がソウルの街に出てきているカット(檻から出た)もその前にあって、遠からずこの3人は新たに再び接点を持つのではないかと思わせる前触れのようでした。(へウォンがヒジュの展覧会を知ったシーンと重なりますし)
ですが将来3人が会ったとして、義理の兄・姉の関係もそうですが、人の業というか、結局人は醜い感情からは断ち切れないというネタを描いているのかなとも思え、ある意味「また"業”の物語が新しくスタートする」んだという不吉さを残していて良いエンディングのようにも思えるのですが、ヒジュは本当に許されたのか?謝罪したのか?前回と同様逃げただけでは?という疑問もあり、この「輪廻」的な帰結はあまりスッキリしないなと勝手にモヤモヤした次第です。(全て私の仮定での感想です)
もちろん、大なり小なりある意味様々な罪や醜い感情を抱きながら人は生きている訳で、許し・許されがあって生きていかねばならないという部分も強く理解できます。
ドラマ的に希望を残すのは良いと思いますし救いも必要なのですが、結局娘や夫たちに"傷”を持たせた所に、ヒジュだけが悪者ではない的な逃げ道にズルさを感じてしまい、そこが一番私は気になってしまい最後まで微妙な気分になりました。

終始憂鬱な雰囲気で観ていて楽しいドラマでは決してないのですが、やはりこのような負の感情や人の不幸を覗き見するようなドラマをついつい止められず観てしまうのも、「あなたに似た人」であり、彼らは我々なのだとタイトルがなかなか深いな…と色々思いつつ視聴を終えました。

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