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韓国映画 キル・ボクスン (感想)

おすすめ度:70%
殺し屋度:100%
母親度:100%
原題:길복순 / Kill Boksoon (137分)

韓国映画 キル・ボクスン 考察レビュー批評感想

殺し屋の母、思春期の娘…。2023年のアクション映画。

あらすじ・キャスト

殺人請負人として働いているキル・ボクスン(チョン・ドヨンさん)は、A級キラーとしてもはや伝説級の仕事人だった。
しかしそんな特別な彼女も家に帰ると、1人の母。15歳の難しい年頃の娘を持つ母として、ボクスンは娘との関係に悩んだりしていた。
チャ(ソル・ギョングさん)が代表する会社との次年度の契約に渋るボクスンだったが…。

感想

面白かったですが、ちょっと一本調子だったように感じました。
ストーリーの2本の柱としては、キル・ボクスンという殺人を生業とする女性の仕事。そして、思春期の一人娘との関係に悩む母の姿。この2つのバランスの間に立つボクスンが描かれています。
カメラワーク含むビジュアルや、アクションシーンも格好良かったです。
主役のチョン・ドヨンさんが持つ可憐さと殺し屋という役柄との意外性というか、その狙い通りの設定がガッチリハマっていて実際に素敵でした。
作品自体が色味も大人っぽく落ち着いていて、クラシカル寄りのシックな印象を強く持ちました。(有名なガイ・リッチー監督、タランティーノ監督の作品らを意識されたのかなと思う雰囲気もありました)

血まみれの見せ場はそれなりに多いので派手ですし、実際目を引くものの、ストーリーの進展が弱いというか、正直なところ内容があまりないように感じました。
ある意味そこがアッサリしていて面白くもありはしますし、今作の持ち味でもあるかと思いますが、やっぱり一本調子で物足りないというか…。
結局「入退場」を激しく”魅せた”だけで、少々ワンパターンではあったかなとは感じました。
そのため、試聴後は「お、おう・・・」という感じだけで終わってしまいました。(個人的な感想です)
人物描写に深さが殆どないので、そこが好き嫌いが分かれる点かもしれません。
ただ娘ジェヨンの今後については、考察させる部分はありはしました。(後述します)
とはいえ、内容から受ける印象よりもずっとポップで軽く仕上げてあったので、かなり観やすい映画だと感じました。これは大きな長所だと思います、良かったです。

俳優陣が非常に豪華でした。ファン・ジョンミンさん、そしてイ・ジェウクさんらも特別出演されています。
殺し屋がテーマなので、(ほぼ)毎シーン血や暴力シーンが多めに出てくる作品です。感じ方は人それぞれですので、苦手な方はご注意頂ければと思います。
また、短いですが性的なシーンもあります。

ゆるいネタバレありの感想

Netflix Koreaインスタグラムより

キル・ボクスン、彼女は15歳の娘を持つ裕福な女性。そんな彼女の仕事は「殺人」、プロの集団に属しているのでした。
ボクスンの仕事の腕は素晴らしく、彼女が所属しているMKエンターテインメントではほんの一握りしかいないA級の、つまりトップの殺し屋です。そのため当然その報酬は他の者よりずっと高い様子。
MKとしてもボクスンを”優遇”しているのは明らかなようで、彼女の実力を認めるものの不満を抱く同業者も多いようです。

ボクスンと娘
ボクスンの悩みといえば、思春期の娘ジェヨン。
ある日、ジェヨンが学校でトラブルを起こします。自分が最初に殺人を”実行した”年齢に近い我が子の行動に、胸がざわつくボクスン。
理由を問い詰める母。話したがらなかったジェヨンでしたが、ついに彼女は母親に理由をカミングアウトするのでした。

恋心
面白かったのは、とても”強い”MKのチャ代表や、ボクスンとも男女関係を持っていた後輩のヒソン(ク・ギョファンさん)、チャ理事(イ・ソムさん)など、弱点を「好きな相手」に持っていた点でした。
ボクスンはチャ代表が自分を好きだったのは、前から気づいていたはずです。そして代表も彼女を決して殺せないことも…。
ここは娘ジェヨンが初めて失恋を経験したことで、強みを持ったシーンと被ります。

ネットフリックス キルボクスン レビュー考察感想批評

ボクスンのカミングアウト
娘ジェヨンが退学問題で悩んでいた時期に、母親ボクスンも同じく”会社の同僚”とトラブルがあります。
ジェヨンは珍しく弱音を吐いた母に「大変だね」と同情した姿を見せ、母ボクスンは「お互いにね」と互いに労うシーンがありましたが、ここはぐっと来ました。
このシーンで娘と母の壁が崩れ、イコールの関係になったように強く感じました。
ジェヨンは母の仕事を別のものだと察しているわけですが、ボクスンの仕事は彼女の予想を遥かに超えるものです。
その後のシーンでジェヨンは母の本当の姿を知る訳ですが、この「お互いに大変だ」という前フリで、娘と母の10代が重なるものと予感させられるのは良いなあと思いました。

メタファーとエンディング
例の議員のニュースが流れていますので、恐らくこの”仕事”はボクスンが行ったのではと考察します。
しかしボクスンの姿にピントは当たらず、艶やかなリンゴが写っています。
「禁断の果実のリンゴ」、恐らくこれはジェヨンの将来についてのメタファーだと思います。
ジェヨンのエンディングでの行動で、ソラは完全に彼女に”落ちて”しまっているように見えますので、代表とボクスンのような関係になるのではと考察しました。
またジェヨンの笑顔はボクスンの10代の母の姿と完全に被ります。
彼女は完璧に母の”カミングアウト”を受け入れ、理解していると考察します。恐らくこの先の未来のジェヨンは、母ボクスンと同じ道を辿るのではないでしょうか。

ということで、MKエンターテインメントのトップにボクスンは君臨することになるのでしょうか?恐らくそうではないかなと思うのですが、このあたりは一切不明です。
ジェヨンとボクスンの間に隠し事はお互い無くなった点、そしてボクスンを縛り付けるものはある意味もう無くなったこと。
そんな若干の爽やかさ(?)を残しつつの、ラストシーンとなりました。
嫌味のない展開のアッサリした作品で、面白く試聴しましたし、個人的には好きでした。
ですが、せっかくならもう少し突っ込んだ描写があっても良かったのでは…という、妙な後ろ髪を引かれるような、何だか物足りない気分を味わった映画でした。

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