ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国映画 雨とあなたの物語 (感想)

おすすめ度:70%
手紙度:100%
傘度:100%
原題:비와 당신의 이야기 / Waiting For Rain (117分)

韓国映画 雨とあなたの物語 感想レビュー

小学校の時の初恋相手に手紙を書いてみると…。2021年公開のヒューマン・ラブストーリー。

あらすじ・キャスト

大学受験に失敗し浪人生活を送っているヨンホ(カン・ハヌルさん)は、スジン(カン・ソラさん)らと予備校に通う日々。
鬱屈した日々を過ごすヨンホは、小学校の頃の初恋相手に思いついて手紙を送る。
姉宛に届いた手紙に、代理で返信する妹のソヒ(チョン・ウヒさん)だったが…。

感想

雰囲気がとても良い作品でした。
大きな盛り上がりの山場はありませんが、人生においての坂道を下るような時に、一筋の希望や小さな光なんかを上手く表現していて、なかなか印象的な作品。
情緒の余白や描き切らない点は映画作品になると、やっぱり美しく仕上がるなあと思わせられました。
”手紙”を通して、淡い初恋と煮え切らない現状や生きづらさなどが描かれています。
ただちょっと抒情的というか、描かれているお話を”恋愛”として現実的に考えると少々ドリーミーなお話にはなっていますので、ぼんやりとはしています。その点が評価が分かれる点かもしれません。個人的には好きな作風でした。
主演がカン・ハヌルさんですが、役柄としてのナイーブさや不器用さ、朴訥さを出す演技がとても素晴らしいと思いました。
ハヌルさんが演じるヨンホと同じ予備校に通う女性のスジンをカン・ソラさんが演じられています。お2人が出演されたドラマ『ミセン』のコンビでしたので、嬉しく思いました。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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チョン・ウヒさんインスタグラムより

大学受験に向けて、2浪目が確定してしまった2003年を生きるヨンホ。
苛立ちと葛藤、そして漠然とした不安な気持ちを抱えた日々を過ごしています。勉強にも真剣に取り組めず、ぼんやりとした時間を持て余す毎日。
そんな時、ふと小学校の頃の初恋相手を思い出します。彼女の名前はコン・ソヨン…。
ヨンホは急に思い立って、彼女に手紙を書くことを決めます。友人の母が教師で、ソヨンの住所を調べてもらったのでした。

ヨンホが突然小学校の頃の初恋相手に連絡しよう!となる流れが、なかなか突然だなと思いはしました。
ただ、この時期の彼の置かれた状況や心理を考えると割としっくりくるというか…。
彼は浪人2年目で、”楽しいことがない”日々です。そんな時、輝いていた子供の頃の思い出にすがりそうになる気持ちが理解できなくはないと思いました。端的にいうと、現実逃避になっていたのかもしれません。
この初恋相手のソヨンは引っ越してしまっていて連絡方法が”手紙”しかないため、返事が来るのは”クジに当たる”感じというか、鬱屈した日々を過ごす彼の中での小さなチャレンジだったのかもと考えると共感もできます。

手紙は無事ソヨンの元に届きます。しかし、ソヨン本人の置かれた状況はまた異なっていたのです。
ソヨンは病気で入院中。言葉を発することはできません。
そんなソヨンの代わりに妹のソヒが、彼女宛の手紙を読んであげるのでした。ただ残念ながらソヨンの”回答”は「あなたを覚えていない」というもの。
妹はその姉の返事を代筆しますが、ヨンホに悪いと思ったのでしょう、ルールを設けて返事を書きます。「質問しない、会いたいと言わない、会いに来ない」と。
ここからヨンホとソヨン(ソヒ)の「文通」がスタートします。
やる気のない日々だったヨンホでしたが、ソヨンからの手紙を待ち焦がれ、何度も読み返し笑顔に。
やがて彼の中では、彼女からの手紙は”生活の糧”になっていくように。
ソヒも、闘病中の姉と、そして自身をも勇気づけるように手紙をヨンホと送り合います。

ヨンホはやる気の出ない予備校生活を続けていますが、彼を想う女性は身近にいました。
同じ予備校に通うスジンです。彼女はハッキリと意見を言うタイプの女性で、積極的にヨンホに話しかけます。
しかしヨンホはまるでスジンに興味を示しません。それどころか、彼は最近は”文通”に夢中になっている様子…。
スジンは思い切ってヨンホ「彼女(文通しているソヨン)と私、どう違うの?」と聞くのでした。

雨とあなたの物語 韓国映画批評

秋が来る頃には、ヨンホやソヒの環境に変化が訪れます。それは必ずしも良いものばかりではありません。それはお互いが静かに、一歩ずつ何かに向かって歩き出す時間だったのかもしれません。
ヨンホは年末の12/31に「雨が降ったら会おう」と手紙に書き、送るのでした…。

冒頭で「待つこと」のお話だと説明されますが、確かに待つストーリーにはなっています。
人生の中で”待ち”の時間は、なかなか多いものではないでしょうか…。そういうことに結構気付かされました。
ヨンホとソヨンの淡い恋愛感情だけでなく、自分のやりたいことや目標、家族の問題、お金の問題、数々のタイミングを待って、時にその機会を逃し…。だけれども、そのミラクルのようにタイミングを掴む時もあるんだという優しいメッセージが込められたような作品だなと思いました。
一見ラブストーリー軸かと思うかもしれませんが、かなり強めのヒューマンストーリーだと感じます。
エンディング少し過ぎた頃に「なるほど」と思えるエピローグのシーンが入りますが、ただ正直私はちょっと蛇足のような気がしました。
少々ドラマ的すぎるといいますか…。もちろんドラマが悪い・良いという意味では決してありませんが、2人の関係にこじつけがなくてもこの作品の場合は「手紙」が存在しますので十分成立すると思うので、ここは少々やりすぎ感が強いように思えてしまいました。(個人的な感想です)
2人はあの夜、恐らく会えると思いますし、会って欲しいです。
本作では手紙がとても素敵で切ない、光のような存在になっていましたが、同時にヨンホが職人として制作している”傘”というアイテムが非常に良いなと思いました。
ひっそりと雨から守ってくれるような存在といいますか…、ヨンホの性格にとても合っているなと思いました。
スジンが誘ったあのオーロラの空、彼女に付き合うことはできないけれど、精一杯の彼の誠意が傘に込められていて、何とも言えないシーンになっていたのは素晴らしかった。
派手さはなくお話として強いインパクトはありませんでしたが、とても優しく染みるような映画でした。
カン・ハヌルさんのキャスティングが本当に良かったです。

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