ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 二十五、二十一 (感想)

おすすめ度:金メダルの大傑作
笑顔と涙度:100%
愛と友情の日記度:100%
原題:스물다섯 스물하나 (25 21) / Twenty-Five Twenty-One (全16話)

二十五、二十一 韓国ドラマ感想

18歳と22歳で出会った2人…2022年放送のヒューマン系青春ストーリー。

あらすじ・キャスト

1990年代…18歳のヒド(キム・テリさん)はフェンシングに夢中。しかし経済危機のため廃部に。
同い年でフェンシングのメダリストであるユリム(ボナさん)に強く憧れていたヒドは、夢を諦めないためにユリムの通う高校へ転校する計画を立てる。そこにはジウン(チェ・ヒョヌクさん)やスンワン(イ・ジュミョンさん)も通っていた。
一方のイジン(ナム・ジュヒョクさん)も同じく時代の煽りを受け、生活を立て直そうとしていた。

感想

苦しいほど感情を揺さぶる作品
文句なく素晴らしかったです!!どこを切り取っても傑作。
様々な要素と感情が繊細に絡み、泣きたくなるような切なさと優しさが素晴らしかった。
まず最も凄い点ですが、胸が苦しいほど泣かされたと思いきや、次のシーンでは普通に笑ってしまうという転換の絶妙さ。
そして全く先が予測できないストーリーライン。しかも胸に突き刺ささりまくる深いものばかり。演出は驚くほどセンチメンタル&ロマンチックで凝っています。
ちなみに私は異常にこの作品に入れ込んでしまい、毎話なんでもないシーンでも泣きましたし、出演者5人が歌う”With”を聴くだけで涙が出そうになる程でした。

描かれた90年代の”時代”は、現在の”どうしようもない”状況とリンクしています。
「人生は全て悲劇でもないし、常に笑顔でもない」「いつか思い出になる」という一貫したテーマは素敵でしたし、今を生きる我々をどこか勇気付けてくれるようでした。

メインの90年代とは別に、40代のヒドと娘ミンチェが”現在”の軸でも存在。
この時代軸の交差が心をざわつかせる巧みな演出で、非常にヤキモキさせられます。未視聴の方は、是非途中でネタバレを見ず、そのままの気持ちで視聴を続けて頂きたいです。そこがドラマのポイントにもなっています。

主演のキム・テリさんも、ナム・ジュヒョクさんも大好きな俳優さんですが、本当に素晴らしい演技でした。
テリさんのイノセントさが、ヒドという弾けるようなキャラにピッタリ。またジュヒョクさんですが、憂いがある役を演じると負けなしの役者さんで、本当に完璧すぎました。

ちなみに脚本と監督のお2人は「恋愛ワードを入力してください」も手掛けた方です。恋愛ワード~も光と雨、カメラワークの演出が秀逸で個人的に強く印象に残っていますが、今作も雪と水そしてカメラワークが特にただただ美しかった。
この二十五、二十一でもシーンがとにかく詩的で、全シーンスチールカットできるぐらい…唸るばかりでした。
今回は特にイジンを背後から撮るシーンが多かったと感じましたが、場面に効いており切なかった。

考察は後述しますが、伏線回収が少々粗いようでした。が、個人的には全て納得しました。
映像の全てが説明される必要もないし、余白を残すからこそあの”時代”がより輝くという意図ではなかったでしょうか。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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ナム・ジュヒョクさんインスタグラムより

18歳、22歳
1998年、ナ・ヒドは18歳。
女子高校でフェンシング部に所属しているヒドには、夢がありました。憧れの選手である、ユリムのライバルになること。
しかし時代の波がやってきます、経済危機です。フェンシング部の廃部が決定。
ヒドはフェンシングを続けたい一心で、ユリムが通う高校へ転校できないかと無謀な計画を立てます。そんな時にイジンに出会うのでした。

一方のペク・イジンは元々は裕福な家の出身でしたが、彼もまた時代の煽りを受けた者。一家は離散しイジンはアルバイトをしながら就職活動を行っています。
彼は新聞配達時にヒドに出会い、その後も頻繁に会話を交わす仲に。
ここから2人の応援団のような強い友情と、淡く繊細で配慮された恋が混じった不思議で可愛らしい関係が始まっていきます。

ヒドですが、本当に魅力的でまるで光の塊のような女性。ポジティブで、声がデカくて、元気いっぱい、真っ直ぐで、単純で素直…。「一緒に成功しよう」イジンはそんな強い彼女の存在に触れ、勇気付けられます。
ヒドは国代表の座を勝ち取ります。しかし、その時イジンは彼女の元から去ります。
悲惨な状況からだけでなくヒドから逃げたようにも思え切なかった。2人はお互いの成功を応援する関係ですが、嫉妬もあったはず。持ち前の精神力で自分の階段を登っていくヒドを素直に応援する力が持てる状況でなかったイジン…それが伝わり辛かったです。
離れた状況で2人は留守電にメッセージを残します。ポツンとある公衆電話が2人を繋いでいる場面は胸を打ち切なかった。

19歳、23歳
ヒドとイジンの感動のはずだった再会は意外な人物(特別出演)との同席で笑えました。イジンさんもかなり面食らった様子。
ヒドはこの年、自覚せず真の初恋を経験します…が、混乱。
また、アジア大会でヒドが初めて金メダルを手にしてから、ユリムとの仲が決定的にこじれます。ヒドは勝利したものの誤審疑惑で世間からバッシングを受け傷つくことに。7話の定食屋さんで流れるイジンの報道と、見知らぬお爺さん達とヒドとのシーンは、今作でずば抜けて素晴らしかったと思いました。
ユリムへの気持ちが憎しみに変わっていた時、ヒドの長年のチャット相手が何と彼女だったと判明。
今までの前振りは何だったのか的に仲良しになる2人。これにはイジンさんも椅子から転げるほど驚愕。ここは、10代女子の気分屋な面も表現していて、可愛かった。

25,21韓国ドラマ感想レビュー

20歳、24歳
ヒドはイジンに「愛している」と言われて以来、自身の彼への気持ちを確信。反対にイジンはヒドとの距離の取り方に迷いが生じます。
それは記者と選手として、またヒドが高校生だという自制心もあったかもしれません。特にヒドが制服姿の時はイジンは常に一定の距離をとっていたようにも思えました。
しかしヒドは、拒否しようとする彼に「失う覚悟」を持って真正面から賭けに出ます。
彼女があのドラマチックな夜に着用していたキャップには"Every moment is special"という言葉。
イジンは遂にヒドとの世界に飛び込むことを決意します。
そして悲しい別れも。ユリムは実業団には進まず国籍変更を決めます。彼女も家族のために”闘う”ことを決意。
まるで子供だった彼女達はもうずっと大人になっていたのでした。
しかしこのユリムの帰化を報道スクープしたイジンは、自身の仕事の厳しさを痛感し苦しみます。ヒドの母親のように。
ヒドはイジンに辛い時は一緒に苦しもう、と伝えます。

21歳、25歳
2001年を迎え、約束のマドリード(五輪)で再開を果たすヒドとユリム。
熱を帯びた試合の理由は、2人しか理解できない重圧と友情。勝敗が確定し、2人は号泣し固く抱き合います。お互いしかわからない彼女たちの”時代”でした。
金メダルを得たヒドでしたが、恋人のイジンにはなかなか会えません。イジンはより忙しい報道局へ移動していました。
大事故の取材でNYに長期出張したイジンは、惨状を目の当たりにし再びヒドから隠れてしまったのかもしれません。
しかし同時にイジンは記者として強い信念を抱き始めます。ヒドの「あなたは私たちの住む世の中をよりいい方向へ導く人」という言葉に重なります。
もうヒドの「応援は届かない」…しかし、25歳のイジンも”時代”によって彼の階段を自らの力で登っているまさに最中でした、かつて”時代”に助けられたヒドのように。
この別れは、会えない時間が2人を離したという単純な理由だけでなく、イジン自身が1人で向き合わなければならない事を見つけたという理由は説得力があり良かった。
この年の年末のカウントダウンに1人向かうヒド、彼女の中ではこの時に「もう別れていた」のでした。
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驚愕したのが、40代のヒドが自分の日記を娘が読んでいるのを全て知っていて、知らないフリをしている事でした。
あの海の思い出を忘れているなんて、と私はショックを受けていたのですが…脚本スゴい、本当に。
最終的に失ったと思っていた最後の日記が、40代のヒドの元へ娘を通じて再び戻り時代の軸の交差がエンディングで美しく帰結。ものすごくドラマチックでした。

謎と伏線の個人的な考察をします。
ただこの作品に根本的には伏線は「なかった」と考えるのが一番妥当かなと思います。日記と話がリンクしているのもあり、彼らの生活が全て「語られた」訳ではないからです。

  • ミンチェの父/ヒドは誰と結婚したのか:この答えは存在せず「イジンではない人」とヒドは結婚したという事実しか存在しないと思います。一番好きな人と結婚するわけでもないというリアリティと、ユリム&ジウンとの対比にも。
    40代のヒドをテリさんが演じず、40代のイジンは映らないという点から、現在のヒドにとっては既に思い出になっていて、過去と線引きを強くしているのが明確だと考えます。
  • イジンしか購入しなかったヒドが1人で写った修学旅行の写真:多分サンプル(貼っていた)写真をヒドがジウンからもらったのでは。
  • ミンチェと最後の日記:彼女は恐らく読んだと推測します。しかし母には元々日記を読んでいるとは明かしていませんので、彼女も母同様「知らない」フリをし、自分の”時代”を見つけることを決意したと思います。

日記は、あの輝く”一瞬で過ぎ去る”日々を経験した母から娘へのメッセージでもありましたが、同時にあの頃の5人のように”どうしようもない時代”を生きる現代の我々へのエールでもあると受け取りました。
「すべては一瞬で終わって消え(40代ヒド)」て「いつか思い出になる(10代ヒド)」けれど、「その一瞬こそが長い人生を輝かせ(40代ヒド)」生きる糧になっていくのでしょう。
そしてこの”一瞬”は決して10、20代の頃だけの話ではないはずです。
輝いていた頃の日記が40代になった自分へ、次の世代を紡ぐ娘の手によって舞い戻されます。
ヒドの中で失っていた最後の欠片のような日記と共に、彼女の人生の中であの”時代”が真に終わりを迎えたというのも素晴らしい物語の帰結だったと思います。

エンディング含め本当に隅から隅まで大好きなドラマでしたし、本当に感動しました。ずっと忘れないと思います。

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