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観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国映画 SEOBOK ソボク (感想)

おすすめ度:70%
生死度:100%
マジックテープ度:100%
原題:서복 / SEOBOK 114分

ソボク 映画感想

クローン人間ソボクを護衛する元エージェントの物語。2021年のSF映画

あらすじ・キャスト

極秘実験で生まれたソボク(パク・ボゴムさん)と名付けられたクローン人間を、護衛することになったギホン(コン・ユさん)。
しかしあらゆる勢力がソボクを狙い、2人はトラブルに巻き込まれていくが…。

感想

SFエンターテイメント!と書いてあったので身構えるというか、若干姿勢を正して視聴を開始したのですが、予想を遥か越えたかなりベーシックなお話の作りになっており、途中からいつものダラけた態度に戻りながらそれなりに面白く視聴しました。
コン・ユさんとパク・ボゴムさんが主演で、お2人共役柄に合っていて良かったです。
個人的には今作においては、ダントツでボゴムさんがその特殊なキャラに非常にハマっていて印象的でした。ボゴムさんの不思議な雰囲気は、なかなか他の人には真似できないものを持っておられるなあと痛感した次第です。

SFというよりは、どちらかというと哲学や生命倫理を含めたヒューマン系のお話に近いかなと個人的には感じはしましたし、その部分が最も良いなあと思いました。
ただ、映画というフォーマットのためか派手でわかりやすい”対立”が採用されていて、その部分が妙に古臭いというか、逆にチープな感じになっていて残念に感じました。
ストーリーが凝っておらず、驚くほど素直に進展するため大変観やすい作品でしたが、そのため物語の筋書きが読めすぎてしまうのと、ちょっと茶番っぽさがあったので、その点が面白くないと評価される可能性はあるかなと思いました。
新たな発見があるような作品ではありませんでしたが、個人的にはラストシーン含めそれなりにスタイルが合って良い映画だったと思いましたが、如何せん題材がベタすぎるかな…。
ただ後述するソボクとギホンの静かな飾り気のない関係の積み重ねのシーンは、本当にとっても良くて強く印象に強く残りました。

お話としては、人間の生死に関する実験のために”生まれた”ソボク(パク・ボゴムさん)。そして病に冒されながら、そのソボクを護衛することになったギホン(コン・ユさん)の2人の静かな物語です。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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CJエンターテイメントインスタグラムより

とある国家極秘プロジェクトを進める研究所。そこにはソボクと呼ばれるクローンの生命体が存在しました。
ソボクの命名由来は約2500年前、秦の始皇帝に命じられ不老不死の薬を探した家臣の名前から取られたもの。(徐福 - Wikipedia
ソボクは見た目は人間の男性のようですが、彼は人間とは異なる遺伝子を持つ者…。
そして、彼は決して「死なない」存在。
つまり彼がいる限り、人間はあらゆる病気から解放される=死ぬ恐怖から解放されるというもの。

もちろんこの秘密の研究は、他国に狙われています。また、国家側にも裏切り者も。
その間に立たされるのが、ギホン。彼は昔は情報院のエージェントだったようですが、同僚を"裏切った”暗い過去を持つ男性のようです。
またギホンは脳に病気を患っており、余命宣告されている状態。度々ひどい頭痛に悩まされ、鬱々とした日々を過ごしています。
そんな彼にその情報院から「依頼」が。あの、ソボクを護衛すること…。
見返りとして、そしてギホン自体も実験体としてソボクの”力”で彼の病気を治すというのです。それに応じたギホンさんです。
こうして、ソボクとギホンの不思議な関係が生まれます。

ですが護衛中にこの研究を狙っていた他国に2人は連続で襲撃されるというトラブルが。
トップシークレットのためなのか、護衛といってもほぼギホンさんだけという手薄な状況で絶対絶命かと思いきや、そこにはソボク君のとんでもねえ”パワー”があったのでした。
ソボクですが、実はこの不老不死研究の別の副産物として、超人のような脳波を手に入れていたのです。もうそれメインのパワーのレベルでしょ…とこれには困惑。
作品内で「死なない技術は強力な武器だ」とソボク実験についてのセリフがありましたが、この脳波こそ文字通り相当な”武器”になると推測されましたので、この問題を軽視しすぎというか、単純にこれには都合が良すぎて笑いそうになってしまいました。
つまり、このソボク・パワーこそがかなりチートというか、銃をも無効とするぐらい(ほぼ)無敵状態になるという威力があったのです。普通に危険。
当の本人ソボク君ですが、そのパワーの力加減は感情まかせな点があるので余計にコントロールが難しいところです。
そんなソボク・パワーに助けられながら、2人は逃亡します。

そして、逃亡劇。
ここからがこの映画の最も良い部分だったなと個人的に印象が残ったところとなります。ギホンとソボクの不思議な関係性が短い間ながらも積み重なる描写は大変良かったと感じました。
まずソボクですが、もちろんずっと研究所のエリアで育ったわけです。
女性の博士を母と呼び、外界を知らない人型生命体ですが、人と同じように思考をしますが、やや機械的っぽい考えをしたりする部分も時折見せていて面白いなと思いました。
このソボクを演じるボゴムさんですが、年齢不詳・(やや)性別不詳でニュートラルな雰囲気を上手く醸し出していて素晴らしかったです。
そのアンバランスで不穏、邪なのかピュアなのか察することができない不思議なキャラがボゴムさんにとにかくハマっていました。
一方でギホンを演じるコン・ユさんですが、割と感情的で人間味を出したキャラでしたが、ちょっとステレオタイプな設定だなとは思いました。
研究者や権力者のある種の無機質な人間ばかりの中で、唯一感情を持って普通にソボクに接するという役柄です。

2人の逃亡中の小さなエピソードがとにかく繊細で本当に素晴らしく、個人的にはこのシーンだけで、この作品を観た甲斐が十分にあったなと思わせられました。
正直、このあたりの2人の感情や思い出、会話の積み重ねをもっと観たかった…と切望するぐらい良かった!
ありふれた商店街、カップラーメン、靴のマジックテープ、選んだ服…。
何気ない小さなエピソードのチョイスでしたが、しっくり来ていました。「ヒョン」と呼ばせるギホンの描写も良かった。(靴のマジックテープのシーンは、意味が無いようでしっかり繋がっており本当に良かったです)
そして2人のまるで禅問答のような、静かでとつとつとした会話。
「死ぬのは眠るのと同じか?」「眠るのを恐れないのはなぜ?」など、2人が生と死の両極端を背負って”生きて”いる状況だけに、効いたセリフだなと思いました。

しかしそんな2人の逃亡にも終わりが。
なぜなら結局ソボクは「他に行くところがない」のでした。哀しい。
上述したように、ソボクや研究を狙う勢力対決が筋書きとしてしょうがないと理解できるとはいえ、かなり典型的な構図で茶番的であまり好きになれませんでした。
物語の最後はそれしかないだろうなという終わり方でしたが、意外とアッサリしていたのは韓国映画っぽいなと思った次第です。

エンディングシーンですが、私は面白いし好きだなと思いました。
あの後からどれぐらい時間が経過したのかは一切不明の短いシーンでしたが、私はソボクの「生きているのは美しいですね」と呟いたシーンとのリンクを何となく感じ、生きていると時に不思議なこともあるという”美しさ”から、ギホンは余命宣告過ぎてもまだ(何とか)生きている、(苦しくても)生きていこうとギホンは感じ今も「生きている」のではと考察しました。

ということで、全体的には悪くなかったと思いますが、茶番と繊細のバランスの悪さがちょっと気になったかなと思いました。
とはいえ、心に残った大きな理由としてはやっぱり2人の逃亡中のシーンの存在感です。
あの静かな2人のやり取りと空気感は、とても味があって刹那的で非常に良いなと思った次第です。
ちなみにコン・ユ先輩が主演された2016年映画「男と女」でも役名がギホンでしたが、単なる偶然なのか謎です。

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