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観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ ナビレラ-それでも蝶は舞う- 感想

おすすめ:97%
高く舞う度:100%
背中を押す度:100%
原題:나빌레라(ナビレラ)全12話

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23歳のバレリーノと70歳でバレエを始めた老人とのヒューマンストーリー。2021年放送。

 あらすじ・キャスト

70歳のドクチョル(パク・イナンさん)は、雑居ビル内にあるバレエスタジオで、青年チェロク(ソン・ガンさん)が練習している姿に、ある日魅了される。
バレエで舞台に立ちたいという、子供の頃からの夢を叶えるべく、バレエスタジオにレッスンを申し込む。
スタジオを運営しているスンジュ(キム・テフンさん)は教室ではない、と断られるドクチョル。
しかし先生の考えで、チェロクがドクチョルを教えるように告げられるが…。

感想

胸を打つ作品で、とても感動しました。
人が支え、支えられるという関係性を再び考えさせられた作品でした。

孤独でどこか思いやりが欠けていた、バレエダンサーの23歳のチェロク。
70歳にして、もう一度夢だったバレエに挑戦しようと決意するドクチョル。
この年齢も全く違う2人の心の交流と、お互いに与え合う影響をストレートに描いているドラマでした。HunさんとJiminさん作のWEB漫画(Daum)が原作の作品です。

そしてキャスティングも大変良かったです。
主演のソン・ガンさんやパク・イナンさんはもちろんのこと、出演されている全俳優さんが、とにかくパズルのようにピッタリと役にハマっていました。
特に”ハラボジ”役のイナンさんは、どこか可愛らしさも感じさせ、作品にユーモラスさも添えていました。

全12話のドラマですが、お話の紡ぎ方が本当に上手いなあと思った作品です。
小細工を入れずに素直に描いてあったため、2人の心の動きや周囲の人々が次第に変わっていく様子が、視聴していてストレートに伝わってきて、感動しました。

エンディングに差し掛かってくると、新たな驚きが明らかにされていきます。切なさと悲しさで、気持ちが押しつぶされそうになる終盤。
チェロクとドクチョル…バレエを志す同士であり師弟でもあり、そして家族のような関係。年齢も境遇も違う他人でありながら、しっかりとした信頼が築き上げられてゆきます。

イ・チェロク役ソン・ガンさん
23歳のバレリーノ4年目。
母親はチェロクが10代の頃に亡くなり、父は体罰問題で服役しているため、孤独に暮らす。そのため金銭的に厳しく、アルバイトをしている。
元々は13年間サッカーをしていた。嫌いな食べ物はにんじん。

シム・ドクチョル役パク・イナンさん
70歳の老人、通称ハラボジ(おじいさん)。
独立した子供が3人(長男・長女・次男)いて、妻と2人暮らし。
現役時代は郵便局員で、金銭的にも苦労しながら郵便配達をしていた。
バレエスタジオでチェロクの踊る姿を見て、昔からの夢であるバレエを習いたいと
切望する。

ゆるいネタバレありの感想

ソン・ガンさん所属事務所インスタグラムより

雑居ビルにある、個人のバレエスタジオ。
元が協会だった場所のせいか、日中は高い位置にある窓から降り注ぐ光がとても美しい静かなスタジオです。
オペラ座の舞台に立った経歴もある、元有名バレエダンサーのキ・スンジュのスタジオで、チェロクは1人練習しています。
素人状態だったチェロクの才能を見出したスンジュ(先生)でしたが、4年目の現在、チェロクのバレエに対する気持ちは今一つだと不満を抱く先生。
チェロクの方も真面目にバレエをしてはいるのですがアルバイトに明け暮れ、父親との関係、同級生との関係で心が動き、気持ちがバレエに集中して向かい合えない状態です。

そんなある日、70歳のドクチョルがスタジオの門を叩きます。
ここから、70歳のハラボジ(ドクチョル)と23歳のチェロクとの関係が生まれていきます。
ハラボジの努力と純粋なバレエに対する熱意が伝わり、次第にスタジオの全体の雰囲気が変わっていきます。そして、もちろんチェロクにも。

母を亡くし、出所した父とも仲が悪く孤独なチェロク。
そんな彼にハラボジは、やや強引にチェロクの心をこじ開けていきます。ハラボジは率先してチェロクを守ろうとし、一方の悪態をつくホボム(キム・グァンさん)にも理解を示します。

設定としてやや型にはまった組み合わせの描写ですが、愛情不足でどこかなげやりだったチェロクに、他人ながらも彼を家族のように扱ってくれるハラボジ。
凸凹コンビの2人が時にユーモラスでもありながら、チェロクの尖っていた心がどんどんと丸くなっていきます。

バレエに対するハラボジの熱意はチェロクにも伝わり、遂にコンクールを目指すことに。しかしトラブルは起こります。
ホボムとのトラブルにより、チェロクは足を骨折。今期のコンクールは断念することになります。
加えて、チェロクはハラボジの「秘密」を知ります。
そう、ドクチョルはアルツハイマー認知症を患っていました。
ハラボジは自分でその病を認識していて、そのために頻繁にメモを取っていたのでした。チェロクはその件を知り、ショックを受けます。

tvNインスタグラムより

第8話のチェロクがハラボジのためだけに踊る、夜の雪の中のバレエシーンがあります。記憶があいまいになり混乱してしまうハラボジ…彼を落ち着かせようと、チェロクは咄嗟にハラボジに向けて踊ります。

チェロクがおじいさんを助けようとする飾り気のない愛情。彼らを結ぶ接点であった「バレエ」、そしてチェロクにできる精一杯のこと。
言葉でなく、踊りという演出で出してくるという…素晴らしかったです。
また雪が舞う夜の公園で踊る姿は、幻想的で美しくもあり、同時に”おじいさんを失っていく”という寂しさも感じられ、何とも言えない気持ちに胸を打たれました。

そんなハラボジからの「答え」が、夜の道でチェロクへ踊ったバレエです。
この第10話のシーンは、第8話のチェロクに対してのハラボジからの力強い”アンサー”シーンでした。
どちらのシーンも共に夜で、公園のデコレーションライトと車のライトが効果的に使われた、とても印象的に対に仕立ててあるシーンです。

この作品、後半からメッセージ性が非常に強くなったと感じました。
チェロクがウノに「君はいつが一番幸せ?」と聞きます。このストレートで単純でもある問いに対して、キッパリと回答できる大人はそう多くいないかもしれません。
君の幸せを見つけられるのは、君だけ
これこそが、このドラマで一番主張したかった事ではなかったでしょうか。

自分のしたかった事、幸せを見つける事…。
「怖い」けれどチャレンジする、ハラボジ。そんな彼を「大声で応援する、側にいる」と支えるチェロク。
一方通行ではなく互いに応援し、応援されて成り立っている関係。
決して投げやりにならず、”弱くない自分”を信じて諦めないこと…。
2人の置かれた状況は違えど、いつも背中を押しあってきた2人でした。この2人の姿こそが、私たち視聴者へのエールになっていました。

バレエで2人が対になったシーンは、12話最終回でも出てきます。
海外から3年ぶりに帰国したチェロク。記憶が曖昧になってしまったハラボジに踏み切りで再会する、素敵なシーンです。
「高く舞えたか?」こう問いかけるドクチョルの姿に、泣きそうになるチェロク。
ここは本当に良い演出で、特に涙が出たシーンでした。
この2人が”対”になってバレエを踊る(仕草)シーンですが、2人の関係性である「支える/支えられる」象徴になっているかなと感じました。
(ちなみにこの踏切は、恐らく『マイディアミスター 私のおじさん』でも頻出したロケ地の踏切ではないかと思います。)

アルツハイマー認知症を扱ったお話ではありましたが、記憶を失ってゆく悲しみや、ドクチョルの頑張る様子だけを描いたお話だけでは決してなかったです。
困難な境遇の中で、自分を信じ”幸せ”を見つける…。
ハラボジの強い姿勢から、チェロク含め視聴している私たちに、再び大切なこととは何か、思い切って挑戦してみることの重要性をゆっくり問いかけます。
人は誰しも支えられ、支える存在なんだ…と、痛感させられるストーリーでした。

ある意味とてもストレートに作られているドラマだったからこそ、素直に胸に来る、感動したお話でした。
「君もまた羽ばたける」「思い切って飛び込むんだ」
視聴している我々を勇気付けるようなメッセージが、非常に強く心に残りました。温かく力強い、とても素晴らしい作品でした。

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