ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ グリッチ -青い閃光の記憶- 感想

おすすめ度:83%
宇宙人度:100%
廃車度:100%
原題:글리치 / Glitch (全10話)

グリッチ -青い閃光の記憶- 感想レビュー考察 韓国ドラマ

そこに存在する宇宙人、消えた彼氏…2022年のヒューマン系ミステリースリラー。

あらすじ・キャスト

ジヒョ(チョン・ヨビンさん)は他人には見えない”宇宙人”に悩まされていた。
交際している彼氏のシグク(イ・ドンフィさん)との同居の話も出た頃、ジヒョは一方的に彼に別れを告げる。しかしその後シグクが失踪したという連絡が。警察のビョンジョ(リュ・ギョンスさん)に相談するが取り合ってもらえない。
不審に思ったジヒョはシグクの行方を追ううちに、あるUFOの掲示板にたどり着く。
オフ会で中学時代の同級生ボラ(ナナさん)に”再会”するジヒョだったが…。

感想

信じるかは私が決める
面白かったです!!
UFOと宇宙人そして宗教団体をテーマにした"low-key"で、ゆるいコメディ的要素とキッチュさを上手くミックスしたヒューマン系ミステリーサスペンスのドラマです。
全10話と観やすい尺でしたが、特に前半は少々もったりした流れだったように思えました。もう少しテンポを上げて、全8話ぐらいに仕上げたらもっと良くなるような…。
low-keyと書きましたが、全キャラたちの妙に抜けたような描き方と、ストーリーの入りとしての不穏さとファンタジーが混在している世界観の演出に全力投球しているのがその前半。
ただ「どう話が転ぶのかわからない」ところがとにかく面白いのですが、作品としてちょっとクセがあるので、つまらないと感じる方もいるかなとは思いました。好き嫌いが分かれるタイプの作品かもしれません。

個人的に今作でとても興味深く感じたのは、物語の中心的ストーリーラインだけでなく、主人公ジヒョの思春期を経て大人になり切れていなかった点の描写でしょうか。
深読みで個人的で勝手な考察ですが、ジヒョの性的嗜好というか、カミングアウト的な部分などもやんわりと描かれていると感じました。(後述します)
”宇宙人”が彼女にとって一体何であるか?を考えるのは大変面白かったです。
ミステリー系だけでなくそのようなヒューマンドラマとしても楽しめました。

加えて私が嬉しかったのはキャスティングです!
主演のチョン・ヨビンさんも大好きな女優さんですし、イ・ドンフィさん、リュ・ギョンスさん、キム・ナムヒさんなど、この作品のテンションの低めな雰囲気にハマっていてその時点で歓喜してしまいました。
そして色々な作品で名脇役を演じられている俳優さんたちがかなりの人数がカメオ的に出演されていますので、とても楽しめました。キャスティングに一貫性がありすぎて、その点で個人的に100億点でした。

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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チョン・ヨビンさんインスタグラムより

建築会社に勤めるホン・ジヒョ、30歳。MBTIは提唱者。4年付き合っている彼氏がいて、同居している両親も比較的裕福です。
そんな彼女には長年の”秘密”がありました。ジヒョは「宇宙人」が見えるのでした。
彼シグクから同棲の話をされ、更に(?)宇宙人はジヒョの元に出現するようです。それどころか、彼女の周囲のスマホなどの電子機器の説明できない誤作動など、状況は悪化するばかり。
ジヒョは混乱状態のようになり、シグクに別れを切り出します。彼女は自分の事で精一杯、彼と同棲どころではなかったでした。しかし別れてたった数日後、ジヒョはシグクの家を管理する不動産屋から彼と音信不通の連絡が。ジヒョは嫌な予感がします。
シグクの足取りを追ったジヒョ。
彼の足取りが途切れた高架下で、理解不能の光景を目にします。ミステリーサークルのような円と三角形を組み合わせたマークが出現したのでした。
ジヒョはシグクの失踪には、何か”違う”力が関わっていると確信します。

ボラとの再会
検索している最中ジヒョは自分が”見えている”宇宙人の絵が掲載されているUFO掲示板を発見、オフ会に参加しようとします。その場所で合ったのが、態度の悪いボラ。
実は2人は中学生の時の同級生でした。ボラはすぐにジヒョだと気付きます。
一時期の間はとても親密で仲が良かったのですが、ジヒョはある事件以降、ボラのことや当時の記憶も忘れかけていたようです。
ボラから宇宙人の絵(ジヒョが見ているユニコーンズの帽子を被った宇宙人)は、そもそも”2人”が合作で描いたものだと「思い出させられ」驚くジヒョ。

中学時代の2人
中学生の頃の2人は、正反対の”異質さ”を持っていました。ボラは飲酒喫煙など素行の悪いタイプ、ジヒョは異常にUFOや宇宙人に興味があり空想に耽る少女。
2人は何故か意気投合し、葦の草原にある廃車で2人だけで長い時間をよく過ごしていました。ボラはジヒョの宇宙に関する話をよく聞いてやり、彼女から色々なことを学んでいたのです。
しかし2人に事件が。ボラはある夜、葦の草原で「青い閃光」を見て倒れてしまい意識不明となります。警察らはボラの素行不良のせいでジヒョは巻き込まれて倒れたと結論づけ、ジヒョは倒れた自分をボラは置き去りにしたと思い恨みます。
2人の友情は壊れ、ボラは転校してしまったようです。
しかし大人になり再会した2人の立場は変わっていました。
ジヒョは熱心だったUFOに関する興味は失い「非科学的なものは信じない」として生きてきました。一方のボラはUFOなどに関する動画配信チャンネルを持ち、ジヒョから教えてもらった様々な不思議な出来事を追っている人間になっていたのです。

事件と記憶
シグクの失踪と例のミステリーサークル的なマークを持つ宗教団体との関係を怪しむ2人。過去に集団自殺などの事件の影もちらつきます。
内部潜入し、探る2人でしたが、思ってもいないことが発生。ジヒョが新たな”メシア”だとされてしまうのです。教団に狙われるジヒョ。
ずっと引っかかっていたのが、ジヒョが過去の記憶をあやふやにしか覚えていない点。あの夜の閃光の記憶が、ジヒョの中では”宇宙人と出会った”という確信に変わっていきます。
「自分の頭にはチップが埋め込まれている」と考えるジヒョは、教団に無理矢理奪われた”自分の”チップを取り戻すべく、そしてあの”閃光”への事実を知るため、ボラの助けを拒否し教団にメシアとして留まりまります。
そして「真実」を知るのでした。

グリッチ Netflix 韓国ドラマ 感想レビュー批評

ジヒョとボラの関係の考察
ジヒョが見ていた”宇宙人”ですが、ボラとの再会によって出現しなくなります。
また、それの出現が顕著になり始めたのが、彼氏との同棲・結婚が現実的になった頃。ジヒョは同僚の結婚報告に「大人だね…」とこぼしたり、彼との行為中も全く興味がなさそうなシーンがあります。
個人的は、あの宇宙人の存在はジヒョにとって、「イマジナリーフレンド」のような存在で、もっと具体的にはボラに対する”置き去りにした気持ち”があるのではと考察します。この気持ちには熱中していたUFOなどへの興味も含まれていると思います。
男性との結婚が迫り、彼女の中で無意識に「チガウ」という感情がぼんやり再び湧き出したのではないかと思います。
おそらく思春期のジヒョとボラは、無自覚にお互いを友情以上の感情を抱いていたのではないかと察します。
理由としては、あの廃車の中で2人がよく寝ていた(性的な意味ではありません)描写や、やたらとアップな表情のシーン。ジヒョの両親(再婚)の描写…。あの廃車のシーンは全般的にあどけなさの中にある、ある種の危うさのような雰囲気を常に感じました。
エンディングの2人のシーンはハッピーエンドとして明確で、ジヒョもボラも愛情をこの一連の事件を通してお互い認めたのではないかと思います。ここは視聴していてとても上手くて良いなあ…と思いました。
恐らくですが、中学の時にジヒョから”捨てられた”ボラは、ずっと彼女を待っていたのではないかとも思えます。
彼女がジヒョと描いたユニコーンズの宇宙人の絵をWEBに上げていたのも、ワッペンにしたのも全部ボラからの信号だったのでしょう。彼女は常にジヒョの話を聞き、心配して絶対に諦めず助けに行きます。ジヒョが過去の記憶を「開けた」のもボラが一緒にいたからかもしれません。
そう考えると、色々なことがこのドラマでしっくり来るなと思った次第です。

宇宙人は存在したのか
「そんなもの存在しなかった」
青い閃光がドローンだったことが判明して騒然とした皆さんでしたが、説明できない物体を何人もの人が目撃します。
ここはドラマとしてまた面白いなと感じたのですが、今作で頻繁に「信じる」というセリフと関係していると思います。
ボラがジヒョの「誰を信じるかは私が決める」という発言で、(恐らく)恋に落ちたように、信じることに対する主体性を持つことを促すようでした。(だからこその宗教団体のモチーフかと思います)
ジヒョやボラが見たミステリーサークルについても、もちろん謎です。しかし彼女らは見たと「信じている」ことで、他人がとやかく言えることでもなく、また信じても信じられなくてもいいこと、なのだと思います。
ボラが長年教団にいたヨンギに「何を信じるかは自分で考えて」と言っていましたが、そこがまさにこのドラマの言いたいことだったのではないかなと感じました。

チョウザメのメタファー
チョウザメが何を示しているのか、特に父親の過保護気味の象徴かなというぐらいかなと思います。
恐らくジヒョの父は、ジヒョがボラのせいで意識不明になった訳ではないと知っているような気がしますが、彼こそがジヒョに「スクリーン・イメージ」を植え付けた人かもしれません。
ジヒョ父が常にチョウザメの番組を”観ている”シーンが多かったですが、あれは実際に観ているものとは違うと思います。TV画面は一度も(多分)写りませんので…。
あれは恐らく父からの”無言の過保護気味”を感じているジヒョの精神的な描写ではないかなと思います。
最終回では(悪気はないが)親の強すぎる愛情の元から脱出する、という成長も描かれていると感じました。

ということで、独特のテンションを保ちながら妙に間の抜けたキャラたちが「信じる」ことを追う、ユニークさもある良いドラマだったなと思いました。
チョン・ヨビンさんもナナさんも役に大変合っていて、素晴らしかったです!
事件の最後は予想できるものですが、上述した人間関係など隠れた線を考えると結構凝っていて、面白い物語の着地点だったなあと印象に残りました。
私はとても楽しく視聴しました、良かったです。

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