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韓国ドラマ イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~ 感想

おすすめ度:65%
チョン・ギョンホ先生度:100%
おかず山盛り度:100%
原題:일타 스캔들 / Crash Course in Romance (全16話)

イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コースで~ 韓国ドラマ 感想考察レビュー

人気のトップ講師と高校生の子を持つお惣菜店を営む女性のラブコメ&スリラー。

あらすじ・キャスト

大人気で有名塾講師のチェ・チヨル(チョン・ギョンホさん)。彼の数学の授業を我が子に受講させるため、親たちは必死になって戦っていた。
一方、町で惣菜屋を営むナム・ヘンソン(チョン・ドヨンさん)は、日々の忙しさのために娘のヘイ(ノ・ユンソさん)が塾に通いたいことに気付かずにいた。
そんなある日、ヘンソンが作る惣菜を食べたチヨルは…。

感想

ANYWAY精神
面白かったですが、色々散らかっていたように思えます。
深みを与えてくれそうな問題が次から次に山盛りで取り入れてあり、興味深くて良かったです。出てくるキャラクターも魅力的でした。
ですが残念ながら、それらの”種蒔き”を貪欲にし過ぎた感があり、掘り下げ不足のひどさが逆に目についた印象でした。
完璧に働く売れっ子の数学講師、だけど心に何か”空いた”ものを持つチヨルが、惣菜店のヘンソン一家に出会い、トラブルが起こって…というストーリーです。
コメディタッチも多く、とても観やすい展開になっていると思いました。
序盤はラブコメの典型的なスタートで始まりますが、次第にスリラー系が強くなっていきます。恋の特訓だけではありません。
私はチヨルとヘンソンのラブストーリーに興味を持てなかったので、事件や人間関係、子供たちの考え方など、それらにドラマの焦点がシフトして行くことはむしろ大歓迎でした。が、もっと彼らの気持ちを描いて!と切に願いつつも、叶えられませんでした。

主役のヘンソンの口癖のセリフ「エニウェイ(ANYWAY=とにかく、いずれにしても)」が、まるでこのドラマそのものを総括している単語のようで、もしかして伏線になっていたのかな?と、視聴後の今考えるとその用意周到さに震えそうになる次第です。
このセリフの通り今作は全ての問題を「エニウェイ」で乗り切っていて、軽い場面転換のレベルで”スキャンダル”をどんどん片付けて行く様は、ある意味チヨル先生の受験テクニックなのかもしれません。
とにかくそのエニウェイ精神がすごすぎて、私は特に終盤は完全に呆気にとられました。(理由は後述します)
全16話作品でこの俳優の布陣が揃ったドラマと考えると、正直ちょっとどうかなと渋い気持ちになりました。

出演されている俳優さんが非常に素晴らしく、特に数学講師チヨルを演じたチョン・ギョンホさんは、素人目にも抜群に演技が上手かったです。
塾の先生役ですが、独特の玄人っぽさが抜群に出ていて素晴らしくて驚きました。あと板書のスピードや文字の消し方など細かな部分も大変リアリティがあり、上手いなあと心底思いました。
個人的に好きなキム・ソニョンさん(スア母)も出演されていて、とても嬉しかったですが、一面しか描かれない面白味のない役でかなり残念でした。
特別出演(カメオ)でイ・サンイさんが出演されています。

ゆるいネタバレありの感想

チョン・ギョンホさんインスタグラムより

様々な家庭料理が並ぶヘンソンの惣菜屋「韓国代表」。その名の通り、ヘンソンは元ハンドボールの韓国代表選手、今は惣菜店の社長です。
彼女には高校生の娘ヘイとヘンソンの弟のジェウと3人で暮らしています。
ヘイもそろそろ受験を考え始める時期…、塾にも通っていない彼女は、自力での勉強の限界を感じ始めます。しかし、ヘンソンには「塾に通いたい」となかなか言い出せないヘイ。
ヘンソンは日々お店のやりくりに追われていて、金銭的にもあまり余裕はありません。
しかしヘイがヘンソンに強く希望を言えない、もう一つの大きな理由がありました。
ヘイはヘンソンの娘ではない、ということ。
世間にはヘンソンの娘はヘイで、父は海外で事業をしていることになっています。しかし、実はヘイの実の母は行方不明。ヘンソンはヘイの叔母にあたり、未婚です。
まさに親子のように暮らしてきたわけですが、そこには埋められない少しの配慮と申し訳なさが2人の間にあったのでした。

一方この地区の教育熱心な親子に人気の塾でトップ講師を務めるチヨル。
イルタとは「人気1位のスター」という意味。
その呼び名の通り完璧な講義とカリスマ性で、生徒にも大人気で多く稼ぐ有名な彼。
しかし神経質でもあり、ストレスなどで食欲が無く、弱い部分もありました。 
そんな食事を気楽に取れないチヨルを心配した部下のチ・ドンヒ室長が、たまたまヘンソンの惣菜店の料理をチヨルに渡したところから2人の線が繋がります。
チヨルはヘンソンの料理の味に親しみを覚えて、再び食べることができるようになったのでした。
しかし、ヘンソンとチヨルには、実は誤解がこじれたトラブルがあったのです。
お互いに敵状態になっていたヘンソンとチヨルですが、再びヘンソンのお店で顔を合わせることに…。
ここから、ヘンソンとチヨル、ゴシップ好きな教育ママたち、教育ママの被害者である子供たち、そして謎の事件とストーリーが展開されます。

ヘンソンの設定について
最初の数話はヘンソンのキャラ強調なのか、彼女の特徴的なセリフ(日本語字幕)「こんにゃろ」「エニウェイ」が頻繁に会話に入れてあります。
私はこれが狙いすぎたように思え面白味を感じず、正直なところ痛々しささえ覚えてしまったのですが、次第に落ち着いて来るので気になる方は我慢してください(?)。
このヘンソンというキャラは、考察するに30代後半と思われます。そして、講師のチヨルは30代半ばでヘンソンより年下設定です。
演じる役者さんの実年齢と役柄の年齢差を指摘するのは、”演技”ですのである意味フェアではないと思うのですが、実年齢としてドヨンさん(1973年生まれ)、ギョンホさん(1983年生まれ)です。
私が個人的に気になったのが、ドラマのセリフでやたらと「高校生の子供がいるように見えない!」など妙にあからさまなものがあり、疑問反語のように逆に年齢に注意を向ける結果になっていた点です。
露骨にヘンソンは若い!とセリフで無理矢理アピールせず、もっと上手く濁す手法は他にあるような気がしますので、残念に思った次第です。
またヘンソンの衣装ですが、キャラを作り上げる大きな要素として全く良い方向に働いていなかったと個人的には感じました。

イルタスキャンダル ネットフリックス 韓国ドラマ 感想批評考察

エニウェイ問題解決法
ブコメとして良いスタートを切ったドラマでしたが、不穏な鉄の玉が関係する事件が序盤から描かれていきます。
犯人も非常に露骨で何のヒネリもないスリラーパートでしたが、物語はラブ&スリラーの2本立てで(一応)進んでいた訳ですので重要な軸です。
ヒューマン寄りで犯人の心情が明らかになり、チヨルの過去のトラウマと重ねて事件が解決されるのであろう…。
そう思っていましたが、最も簡単な方法で”解決”してしまい、「エニウェイ、その話はもう終わり!!ハイ次!」という雰囲気がすごい。
まるで何事も起こらなかった状態で進み、私は視聴していて虚無になってしまいました。
この部分が最もこのドラマでヒドイ箇所だと思いますが、この作品では結構そのような展開が見られ、私はANYWAY的展開が好きではありませんでした。(個人の感想です)

もう少しキャラの心情を描いて欲しかった点や気になった部分を上げていきます。
・理由と謝罪はナシ
色々な問題を起こした人々。彼らは全員一律で世間や相手に「どうして」をほぼ語りません。また謝罪をしっかりしません。
ドンヒ、スア母、スア、ソンジェ母、最後はヘイまでも。上手く説明できなくとも理由があって、そのような言動をした彼らの心情を吐露して欲しかった。
察することはできますが、ヘンソンやヘイが、そしてドラマそのものがエニウェイで許してしまうのでもうそれで良いのかもしれませんが…。
・チヨルの精神的な問題
彼は専門家の元にも通っていましたし、過去の女子高生についてずっと悩まされていました。ヘンソンに出会って恋に落ちて改善されたのは十分理解できます。
しかし、ここは彼の繊細さを表現していた部分です。チヨルが自分の変化にどのように気付きトラウマを克服していったのか、もっと”詳細に”描いて欲しかった。
・ドンヒがヘイを殺害しなかった理由
ドンヒを目撃してしまったためヘイは誘拐されてしまいますが、ドンヒはなぜ彼女を殺害しなかったのかよくわかりませんでした。(もちろんして欲しくないですが、都合が良すぎると思います…)
・スアの回復
典型的な教育ママでゴシップ好きの母親の元で、ヘイに強烈なライバル心を燃やすスア。しかし追い詰められ、精神的に不安定になっていきます。
スアも自身のコントロールが効かなくなっていると悲痛な叫びを母に向ける、という迫真のシーンがありました。
このシーンで私はスアに大変興味を持ったのですが、エニウェイ音沙汰ナシ。
気付いた時には、元凶のスア母は”何ら変わっていないにも関わらず”、スア本人が自動的に正気を取り戻していたので、描写不足を感じました。
・藪から棒の生みの母
出ると思っていましたが最終回近くに突然帰還した、ネタのような母。
明らかに時間埋め合わせのようなキャラで閉口しました。
もうすぐエンディングなのだが?と思っていたら、エニウェイ自ら勝手に消失。
このネタは全16話中のどの部分に入れても良さそうな”40分ぐらいのコンテンツ”になっていましたが、なんだったのでしょうか…。
・ヘイとヘンソン
母と日本に行く、と決めたヘイ。
ヘンソンではなく母を選ぶという問題を、単なる口喧嘩レベルでサラッと流していて謎でした。母とヘンソンとの間でもっと葛藤するような描写があっても良かったのでは。
最終回、ヘンソンとヘイの過去とオーバーラップする描写はとても良かったですが、2人はもう真の家族になったんだ、というような繋がりや心情変化を見せて欲しかったです。
カップ爆誕
何も”お手隙”の人を全員ペアにしなくても…と思いました。大団円の局面への安直な印象でした。
・スア母の新しい仕事
しっぺ返しを食ったスヒですが、ヘンソンらに謝罪もせず新たな道を見つけたようです。ですがこれはどうなのか…。
私は彼女が己の間違いを認めたとは読み取れなかったので(スアの進路自慢と自分の教育法を肯定しているようにも思えました)、どうなのかと思えました。

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ということで、ハッピーエンドで良かったな~とは思いましたが、終盤は特に色々詰め込んだパッケージになっていて、少々茶番さも目立ったドラマだったかなと思いました。
色々考えさせられそうになったところで、話が全て無かったことのように進むので視聴していてエニウェイよくわかんねえな…と思った次第です。とはいえエンタメドラマとして楽しめました。
とにかくチョン・ギョンホさんの演技が素晴らしかったです。

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