ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ 調査官ク・ギョンイ (感想)

おすすめ度:70%
女性度:100%
演劇度:100%
原題:구경이 全12話

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少し変わった保険調査官が追いかける事件の黒幕、そして自分の知りたかった過去の謎とは。2021年放送のサスペンス系ヒューマンドラマ。

あらすじ・キャスト

少し変わり者の保険調査官ク・ギョンイ(イ・ヨンエさん)は、生命保険会社勤務のジェヒ(クァク・ソンヨンさん)の頼みで、とある保険金事件を調べ始める。しかし、それは連続殺人事件のほんの入り口だった…。
謎の青年サンタ(ペク・ソンチョルさん)やジェヒの部下ギョンス(チョ・ヒョンチョルさん)とチームを組んで犯人を追いかけるギョンイだったが…。

感想

個性的でありながら、なぜかぼんやりしたドラマだなと思いました。
面白くはありました。実際面白かったです。
がしかし、ちょっと狙いすぎた雰囲気が作品よりも勝っているように思えてしまいました。この作品の素晴らしい持ち味や創意工夫、強くチャレンジした部分よりも、個性を出そうとし過ぎてわざとらしさが目に付いたというか、逆に個性を消してしまっていたように感じたのが個人的には残念に思いました。

まずは長所!このドラマの一番の特徴は、とにかく女性。
通常であればこのお話設定ですと、男性がメインでキャスティングされるであろうキャラ達を全て女性で見事描き切り、完璧に魅せたのは非常に挑戦的で素晴らしいと本当に思います!!
そして演出!とにかく演出がとっても面白くかったです。
テーマである「演劇」色を上手く強く使っていて興味深かったです。画面転換やセリフ回しなども非常に凝っているなと思いました。
全体的にやや大袈裟な雰囲気を保っていたのも、この演劇テーマが基本にあるからだと考えられます。
コミカルな部分もメリハリとして効いていましたし、犯人の行動をたどる際の答え合わせのシーンなどもまるで舞台を見ているようで照明なども抜かりなく工夫されていて面白かったです。

ただ短所として、やっぱりその演劇風の部分での"頑張っている感"が強すぎたかな…。
ギョンイさん自身が身なりに構わない風貌で、身勝手な行動をするものの、天才的な推理力を持つという相当クセが強いキャラ。
そんなキャラにイ・ヨンエさんが演じている訳ですが、畳み掛けるようにドタバタしたコント的な動きを入れてみたりと、そのあたりがもう少しスマートにできなかったのかなとは思いました。
「ギョンイは変わり者なんですよ?」という免罪符のような行動が、いちいち目立ちすぎたような。
元々警察官でしっかりしていたという過去がオーバーラップされるだけに、現在の変わり者演出が続くという違和感。ヨンエさんが悪いという訳ではもちろんなく、とにかくギョンイのクセの強いキャラ設定を幾度となく全面的に毎回出し過ぎではないかなと個人的に思いました。
そこまで強くアピールしなくても、ギョンイという人物像は十分伝わってくるのに…。
ちょっとやりすぎてクドイような。むしろ彼女のクセの強さを全編主張し過ぎて作品そのものの凝った部分を霞ませていたと思います。

ストーリーとしては、掘り下げや警察の不在など全体的に事件の描写の雑さが多くて描き切っていない部分が多いとは思いましたが、そこは問題にするところではないのかなと思います。
割と早く犯人が明かされるのもあり、事件解決や真相解明というところを決してそこは主題に描きたかったわけではないと思います。(だから雑)あくまでも犯人とギョンイという2人のヒューマンドラマのような視点を持って欲しいと意図された作品かなと感じました。
しかしドラマタイトルからの印象や、特に第1話の掴みから序盤まではその主題部分が非常にわかりにくく、視聴する側の期待値と作品の持つ流れに乖離が生まれやすいドラマだなと思いました。
ギョンイの個性の押し出しも含めて伝わりにくいドラマだな…と感じ、終始なんとなくモヤモヤしてしまったドラマでした。
面白かったのですが!!!(本当に)

ゆるいネタバレありの感想

 
 
 
 
 
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イ・ヨンエさんインスタグラムより

元警察官で現在はひきこもり気味の保険調査官、ク・ギョンイ。
独特の視点と天才的なひらめきを持つギョンイさんですが、普段はズボラでアルコールを嗜みオンラインのゲームに夢中。
そんな彼女の元に、ある日NT生命保険に勤めるジェヒから仕事の協力を求められます。
仕事に全く乗り気でないギョンイさんですが、新しいゲーミングPCというエサにつられてしまいます。
こうしてギョンイの親友でもあるジェヒから、"部屋からひっぱり出されて"彼女はとある事件にしょうがなくとりかかることに。それが多額の保険金が関係する謎の失踪事件。
ここから、チームとしてギョンイとジェヒ、そしてギョンイのゲーム仲間だった謎の青年サンタ、ギョンスの4人の秘密捜査班が生まれます。

一方でギョンイの過去も語られていくことに。
ギョンイ自身はかつては警察官という職業についており、そして彼女の夫は高校の演劇部の顧問の先生。しかしそんな夫は既に亡くなってしまったようです。
ギョンイが現在のようなひきこもりゲーマーになってしまったのも、この夫の件が関係していると推測されます。

そしてもう1人重要な人物も…。
彼女の名前はソン・イギョン(キム・へジュンさん)。イギョンはギョンイの夫が指導する女子高校の演劇部に所属していた学生です。そんな彼女が通っていた高校でもかつて事件あり、警察官としてギョンイが調べていた過去が。
そのような過去の繋がりもありつつ、このイギョンこそが、ギョンイやジェヒが追っていた、当初の保険金事件の黒幕だったのではと視聴側にはかなり早い段階で知らされます。

このように、イギョン(=ケイ/K)は次々とそして楽しそうに簡単に殺人を進め、ギョンイたち4人はドタバタしながらも彼女を追い続けます。
ただ、イギョンがターゲットにする相手は全て「いわゆる悪人」「死んで当然」そう誰もが感じる相手を用意周到に殺し続けるケイ。
彼女のこのポリシーは一貫して変化がなく、次第に追い詰められても大胆に犯罪を続ける様は完全にサイコパス(ソシオパス?)のイギョンさん。ですが、彼女のあの手この手を使う犯罪は面白みもありました。

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ただサスペンス系のドラマとして考えると、ものすごく雑だなと思ってしまいます。
上述したようにそこは突っ込まずに試聴すべきかなと思うのですが、問題としてこの作品のプレゼン手法としては、あくまでもサスペンス形式を取っているので、そこが微妙な気持ちさせられる部分だったのかとは思います。
サスペンスとして視聴するとその犯罪方法が雑でコメディタッチが強く感じますし、彼女たちの内面を理解しようとしてもあまり深くは語られず…。
結局どっちつかずというか…。

名前もアナグラム状態のイギョンとギョンイ。まるで合わせ鏡のようにどこか似た部分を持つ2人、それはお互いにそう感じているようでそこも面白い部分でもあったのですが、結局大して語られないのですよね。
もう少し後半のイギョンとギョンイの関係性について、彼女たちの過去を深堀してほしかった気もします。
結局表面的な部分でしか彼女たちを理解できなかったので、そこが最も残念かな…。

ただ、最も良いなと思ったシーンが、イギョンが最終的に逮捕されてしまう場面です。
結局彼女には「誰もいなくなって」しまいました。
対照的にギョンイは(色々あったものの)あの仲間が残っています。それを車の中から、寂しそうにそして痛感させられるように見つめるイギョン。
このシーンは、かつて幼いころにイギョンが車のなかに両親から取り残されたシーンとリンクします。また、ギョンイが幼少期のイギョンを想像したシーンも車でした。
車の中というわかりやすい閉ざされたエリアが、イギョンのたった一つの場所だったというか、何者にも侵略させない彼女だけの場所を描写しているようで興味深かったです。
ギョンイは、あの籠っていた自分の部屋からジェヒによって連れ出されました。そして、自らも最終的には仲間のために踏み出します。それは彼女が夫の死と彼女自身を乗り越えた象徴だと感じます。
イギョンには結局そんな人、そう思わせてくれる人がいなかった…。そこがとても可哀想にも思えました。
あのシーンはイギョンとギョンイの決定的な違いを明確にしていて、非常に良かったなあと印象的でした。

ということで、色々と良い部分も大変多かったのですが、やっぱり描写不足は否めないかなと思いました。
作品として新しいことに挑戦しているというのはものすごく伝わって来て、本当に素晴らしかったし、こういう作品をもっと観たいと正直思わせられました。
ただ、全体的に魅せたい場所のバランスがちょっと悪すぎて、逆に長所を目立たなくさせているというチグハグさも感じるドラマだったかなとは思いました。
イデアも面白かったし好きなタイプの展開だったですが、ドラマとしては少し微妙な気持ちで視聴を終えました。

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