おすすめ度:5000%
名言度:100%
愛すべき人たち度:100%
原題:멜로가 체질(メロが体質)全32話(Netflix版)
親友3人…彼女たちが向き合う自分自身とは。2019年のヒューマンドラマ。
あらすじ・キャスト
女性3人、ジンジュ(チョン・ウヒさん)、ウンジョン(チョン・ヨビンさん)、ハンジュ(ハン・ジウンさん)は、30歳で親友同士。
ある理由で、3人とウンジョンの弟とハンジュの息子の5人で一緒に暮らし始めることに。
それぞれが、何かと「節目」の時期が重なる3人は、仕事や自分自身、そして恋愛に正面から向かい合うことになるが…。
感想
唯一無二の秀逸さ…最高でした!
抱きしめたくなるぐらい、本当に本当に素敵なドラマ。32話(Netflix版)でしたが、最初から最後まで完璧で、まるで1本の長い映画をみているようでした!(視聴後も何度も好きなシーンを観てしまいました)
ジンジュとボムス、JTB局の人々の会話は常に「なるほど~」と頷き、ウンジョンと"彼"とのシーンではいつも涙が出てくるし、ハンジュのシーンでは切ない気分を噛み締めました。
ヒューマンドラマでもあり、ラブコメもあり…。詩的でもあり、哲学的でもあり…。万華鏡のように切り口がどんどん変化し、違う面が出るたびに感情をかき立てられて、“刺さる"作品。個人的にはダントツで大好きな作品となりました。
本当に繊細で丁寧で素晴らしいドラマだと思います。だから韓国ドラマって好きなんだよ!と視聴後に叫びたくなるタイプの作品でした。
ストーリーの組み立てが群像劇のそれで、1話目から独特のテンポで進んでいきます。
過去と細かくオーバーラップするシーンも多く、やや時間軸が分かりにくい描写があるかもしれませんが、気になっても流れを止めず視聴する方が楽しめると思います(すぐ慣れるので…)
1話目から引き込まれてしまい、中盤では既に「一生終わって欲しくない!!」と真剣に願ってしまいました。
お話の軸としては、大学時代からの親友の女性3人の「30歳」の頃の仕事・恋愛・内面=つまり彼女たちの人生、に焦点を当てて描かれています。
メインの3人の女性はクセが大変強く、また彼女たちだけでなく関係する人々も漏れなくクセが上回るほど強い人ばかり。
ですが、上述した群像劇的なシーン割りと、うるさくないコメディ加減、どこか散文詩のような空気感で見事にまとまっていて、「好き!」と大感動してしまいました。
セリフも本当に(残念ながら翻訳で理解する限りですが)センスが良いと思いました。
控えめに言っても最高なドラマで、欠点は皆無だと私は感じました。
メインキャラクターとキャスト
イム・ジンジュ役チョン・ウヒさん
ドラマ脚本家を目指し、大御所脚本家チョン先生のアシスタントの職を得る。
7年付き合って別れた元カレの事が気になっている。自己主張が激しく、自分の軸が全くブレない性格。
イ・ウンジョン役チョン・ヨビンさん
ドキュメンタリー作品の制作を夢見て、テレビ局に入社するがその職場環境の悪さに辟易し、トラブルの末退職。
独立した監督として、ドキュメンタリー作品を撮ることにする。
ファン・ハンジュ役ハン・ジウンさん
大学時代から常に男性から人気だったが、非常にガードが堅いタイプだった。
しかし押しが強めのある男性との間に子供(イングク君)を持ち結婚するも、その後離婚。現在はシングルマザー。
ソン・ボムス役アン・ジェホンさん
TV局JBCの人気ドラマ監督。
育ちも良く常に自信満々で頭の回転が速い。ジンジュ曰く「胸くそが悪い」タイプ。
チュ・ジェフン役コンミョンさん
ハンジュが勤務するドラマ制作会社の新入社員。
カルビ味チキン屋で働いていたことがあるらしい。(『エクストリーム・ジョブ』)
アルコールが好きな、ワガママな彼女と同棲中だが、ケンカが多いのが悩み。
ゆるいネタバレありの感想
チョン・ウヒさんインスタグラムより
出てくるキャラクター達と同様、この作品自体が良い意味で掴みどころがないとも
言えます。お話の主軸は女性3人の30歳という、濃密なある一定の期間を切り取って描いてあります。
ストーリーテラー的な設定は、脚本家のジンジュ。彼女は人気脚本家のアシスタントをしていますが、そのクセの強い性格でたびたび"先生"と衝突。そんな中テレビ局の脚本賞へ未完の作品を応募。その作品が局の人の目に留まり、見事1人の脚本家として、独立デビューとなります。
このジンジュの書いた作品こそが、この我々が視聴した(している)『恋愛体質』というドラマであり、ある意味入れ子構造のような舞台設定になっています。
メイン3名のゆるいネタバレ的な顛末:
ジンジュ
応募作がJTBドラマ脚本と採用され、ボムスが監督をすることに。
助監督として7年交際していた元カレとも再会し、2人は当時の気持ちを思い出したり、考えたりすることに。
一方で、ジンジュは当初嫌っていたボムスへの気持ちに気が付き、2人は付き合うことになる。お互い主張が強い2人だが、仕事とプライベートを時間で分けて考えるという妥協点を見出し仲良くすることに。
ウンジョン
ドキュメンタリー作品の企画で出会った、実業家の男性と交際することに。
しかし彼は病で亡くなってしまう。彼を失ったことでウンジョンは深く深く傷ついていた。彼女を心配した友人と弟たちが、ウンジョンの家に集まり共同生活を開始。
ウンジョンは再び監督として復帰するが、彼女だけにしか見えない"彼"と会話する姿は
周囲をしばしば戸惑わせた。
弟のすすめでカウンセリングを受けたりするウンジョンだったが、新たな人との出会いもあり、彼女なりの"彼"との結末を見つけ始める。
ハンジュ
シングルマザーとして映像制作会社「興味誘発社」で働き始めるが、なかなかうまく行かない。とはいえ奮闘している内に社内で経験を積んだ社員となってゆく。
部下としてジェフンと組んで働き始めるうち、彼に複雑な気持ちを自分が抱いていることに気付くハンジュ。
最終話で、その気持ちはジェフンと、ではなく「恋愛したい」という気持ちだったという気付きを得る。
ただこの作品は、ストーリーのあらすじや上記のような説明を文字で追ってもあまり意味がないというか、伝わりにくいと思います。とにかく未視聴の方は今すぐにでも視聴して頂きたい!!
グサグサと胸に突き刺さる鋭さ、締め付ける切なさ、温かさを持ったセリフの数々。
そして考えさせられるエピソードがとにかく多くて上手い!その部分が最大の特徴であり、このドラマのとにかく最高にしている部分だと思います。
このドラマでは名言というか、とても印象に残る秀逸なセリフが大変多かったです。
個人的に好きだった会話(セリフ)を挙げてみます。
・生きるって少しのいい思い出を抱えて辛い日々を耐えることなのかな?(2話)
・あなたの勝ちだわ、最低だけどマネしたい(3話)
・実家で食べるとまずいものでも美味しくなる(4話)
・顔にシワが増えるほどチャンスが減る(5話)
・当然の事が一番難しい、きちんとしている人が優しい人なんです(5話)
・地球は格闘場なのか?(8話)
・私は都会の漁師(9話)
・"欲しい"と"欲しい物を持っている"の間を狭めるため頑張って働いているのに(11話)
・人は考え方が違う。考え方の違いで問題が起こるならば、半分は自分のせいだ(19話)
・俺をいい人にする(20話)
・純度の高い自己中(22話)
・未来に対する期待が過去に対する後悔を上回った(24話)
・スターの名前を挙げると、運気が上がる気がする(26話)
・最高を目指すのはやめて、そこそこにやろう(26話)
・あの3人老けてなかった、きれいだった。(27話)
・不細工に無自覚(27話)
・旅行という単語をヘンな想像で汚さないで(28話)
・バランスを保つためには遊ぶことが大切(28話)
・公共の交通機関には魅力がある、乗り換えが無料だ(28話)
・旅先で探していたものを、家で見つける時間(28話)
・憎まない勇気がいる(28話)
・やらざるを得ないのが組織(29話)
・修正すれば必ず良くなる(29話)
・罪悪感を減らすために悩むフリした(30話)
・非生産的で成長でもなんでもない過程は、経験値として多くの人の中に残っている(31話)
・自分を知っていると信じている人には、傷つかなきゃいけない出来事が待ってる(32話)
・肩をたたいてなだめる好意が危機に立ち向かう一番の武器(32話)
・宇宙がなぜ広いか知ってる?私たちの場所が1つずつ用意されてるの。惑星には永遠にいられないから(32話)
・深夜のラーメンはいつまでも楽しめない(32話)
・挽回する時間があることに幸せを感じながら(32話)
他にも数えきれないぐらいあったのですが、例えばハンジュの元夫が別れる際のクズなセリフ「君の幸せは俺とは関係ない」も、なかなかでした。だけどある意味その通りというか…。根本的にこの作品では頻繁に「考え方の違い」を突いている点が多く(男女間、性的志向など)この元夫の立ち位置も「違う視点」を持つ人として明確なキャラでした。このあたりの対比も上手いなあと思います。
序盤にウンジョンを心配して集結した3人。エンディングでは彼女たちは自分と親友の力でそれぞれが立ち上がり、あの楽しかった共同生活も終わりを迎えます。
終盤にはボムス監督とイム先生(ジンジュ)の脚本会議での会話から、この作品のサブキャラ達の結末がドラマ脚本とオーバーラップして語られます。これも前向きさとシニカルな部分を持っている手法で面白いなと感じました。
個人的に心に強く残ったシーンは下記の2つです。
1)ハンジュが気になっているジェフンの彼女ハユンが男性とホテルに入るのを目撃。それをジェフンに言うべきが悩み続けるハンジュ。
ある日ジェフンから「彼女を見たでしょ?あの男性はいとこだ」「黙っていたら先輩が困った顔をするかと思って」と笑って告げられます。ハンジュはジェフンを思わずハグして「ありがとう、ありがとう」と言います。
このシーンですが、ハンジュは完全にジェフンが好きだったと思います。しかし、彼女を"止める”理由はたくさんあった…。もちろん、ジェフンの彼女のハユン。しかし、彼女は何度もジェフンを困らせ、今回も「浮気現場」を目撃したハンジュ。
半分ジェフンが自分のものになるかもしれないという期待、2人が別れたらいいのにという願望…そういう醜いような気持ち。一方で子供もいる彼女が年下の部下との恋愛はやめるべきという"常識"…。
そういう気持ちがジェフンの言葉で、彼女を止めてくれたわけで、ある種一番ホッとしたのはハンジュだった、という描写が「ありがとう」という言葉に集結されていて、胸にグッときてしまいました。
2)彼が病気で亡くなってから、自分にしか見えない彼とずっと話し、過ごしてきたウンジョン。ドキュメンタリーを撮る課程で、自分が見えないものと話している姿を映像で冷静に観てしまい、再び彼はいないという現実を突きつけられるウンジョン。
カウンセリングの先生のアドバイスで日帰り旅行をした先に、ドキュメンタリー制作で知り合った、飄々とした変わり者の映像監督(ソン・ソックさん)と偶然出会います。
彼のふとした助言で、次の作品のヒントを得るウンジョン。
ヨーロッパへ撮影に発つ数日前、彼は「戻ってきたら僕はもういない」とウンジョンに告げ、2人は静かに最後の会話をします。
このエンディングに近いシーンですが、ウンジョンが彼とどう別離するのかな…とずっと不思議に思っていました。
この2人の最後のシーンとセリフ…前フリの「お店が閉店する」から続く、新緑が映る風景が前向きな気持ちにもさせてくれて、すべてが完璧で、ひんやりしているのに温かくて「そこで会おう」とウンジョンが言い切る姿。ものすごく強く印象に残りました。
このドラマの脚本・監督がイ・ビョンホンさんなのですが、監督された『エクストリーム・ジョブ』含め、『応答せよ1899』『太陽の末裔』など数々のドラマのオマージュ的な部分やセリフが多く、そういう点でも面白かったです。
一番露骨だったのは、やはり終盤に出てくる『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』の有名な雨のシーンですが、某2人の凹凸関係をこのシーンにはめるのは大変面白いなと思いました。
と、色々とあれこれ他にも止まらない延々と感想があるのですが、結論とにかく大変素晴らしかったし、面白かったし、泣けました。
観るたびにその時々の気持ちで胸に来るエピソードが違うんだろうなと思わせるような、味わい深さ。未視聴の方は是非観て欲しいです。こんなドラマ作って下さって、本当にありがとう!と関係者に感謝したいドラマでした。