ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

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韓国映画 アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜 感想

おすすめ度:72%
男性4人を楽しむ度:100%
ケーキ度:100%
原題:서양골동양과자점 앤티크 105分

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ケーキが嫌いな男性がオープンしたケーキ屋に集まった3人の人間模様とは。2008年のコメディ/スリラー/ヒューマン系作品

あらすじ・キャスト

お客は女性が多いという理由から、ケーキ店を突然オープンすると決めたオーナーのジニョク(チュ・ジフンさん)。
パティシエの募集にやって来たのは、数々の有名店を経験した天才パティシエのソヌ(キム・ジェウクさん)だが、彼には別の一面があった。スタッフ採用にトラブル続きだったが、ソヌの主張もあって男性のみを募集することに。
ケーキが好きなギボム(ユ・アインさん)と、ジニョクを慕うスヨン(チェ・ジホさん)の4人でお店を運営することになり…。

感想

原作は日本の漫画、よしながふみさんの『西洋骨董洋菓子店』です。
街の一角にある男性4人が働くケーキ店が舞台のお話。
ちょっと話が散漫な点が気になりましたが、なかなか面白く視聴しました。原作は未読なので、あくまでもこの映画作品の感想を書きます。

コミカルというよりは、独特の誇張表現が魅力である、昔の(全盛期の?)バズ・ラーマン監督風だなと個人的に感じた描写が前半に多くありました。
一方でジニョクの過去やトラウマを振り返るシーンでは、割とシリアスでサスペンス風の描写になっています。同性愛を扱った描写もあります。

ただ、あくまでも個人的な意見ですが、エピソードがどれもちょっと中途半端なようにも思えました。「頑張ってる感」がすごいのですが、掘り下げ不足を感じる部分も多々あったように感じ、特にシリアス部分とコミカル部分のエピソードの繋ぎの悪さというか、まとまりの無さを最後まで感じました。
とはいえ(後述しますが)言わんとすることは十分に理解できましたし、総合的にはそれほど粗さが欠点とも思わせず、視聴していて楽しい作品でした!

ただ、正直この映画ですが、細かいことはいいんだよ的に楽しむ方が圧倒的に正しいかもしれません。
実際、視聴していると、現在活躍されている豪華な俳優陣(の若い頃)がどんどん出てきて、話の雑な部分など気にならない、楽しむ方が勝ち!という作品に。
それぐらい、特にチュ・ジフンさん&キム・ジェウクさん&ユ・アインさんが素敵!!
ヨ・ジングさんも子役で出ます。
視聴前はチュ・ジフンさんとキム・ジェウクさん出演という部分しか見ずに観始めたのですが、ユ・アインさんが出てきて、個人的に更にテンションアップになりました。若い頃のユ・アインさん、非常に可愛らしいです。

ゆるいネタバレありの感想

キム・ジェウクさんインスタグラムより

裕福な家庭に生まれたジニョクは、ある日突然ケーキ店をオープンすると決める。
簡単な募集の張り紙を見てやってきたのが、天才的なパティシエのソヌ。
彼は数々の華々しいお店で働いてきたのだが、同性愛者の彼の「魔性の魅力」によって、彼に夢中になった人々と行く先々でトラブルを起こしていた過去を持っていました。
ジニョクはソヌの魅力には落ちない…だからこのお店で働きたいと熱望するソヌ。そんなソヌの希望はただ一つ、男性だけの従業員にしてほしいということ。

ということで、再び張り紙のみで従業員募集をしますが、そこに来たのがギボム。
彼はソヌのケーキを食べてケーキの味に落ち、ソヌを師匠と仰いで働き始めます。加えて、ジニョクを「若」と呼ぶ謎のボディーガードもやってきて、ソヌの希望通り、ややドタバタ感ある男性4人でこのケーキ屋さんの物語が始まります。

とはいえ、物語は既にこの時点で終了…。
ジニョクという男性ですが、実はケーキそのものは苦手。彼には幼少期に誘拐・監禁された辛い思い出したくない過去がありました。
その過去が何度もフラッシュバックのように彼を悩ませます。単純に悪夢を見たりするという部分だけでなく、女性関係含めてこの事件が彼の生活に暗い影を落としていることが描写されています。
誘拐中にケーキを無理矢理食べさせられていたジニョク…。もしかして「アイツが来るかもしれない」
単なるふざけた理由でケーキ店を開こうとしたのではなく、ジニョクは自分を長年悩ませていた、誘拐犯を追ってお店を開いていたことが明らかになります。

そんなある日の閉店間近のお店。ケーキを買ったある中年女性客を送ったジニョクは、その彼女の家で子供の声を聞きます。
自分が誘拐された過去の事件を重ねるジニョク、思わず彼女の家に乗り込みます。ここで過去の記憶や行動が明らかにされる訳です。
残念ながらこの女性客の家は、ジニョクの誘拐犯とは関係ありませんでしたが、この件でジニョクの気分は少し「軽く」なったようにも態度から思えました。(このあたり原作はどうなんでしょうか)
彼が悩まされてきた誘拐犯を捕まえた訳ではありませんが、別の誘拐犯を偶然にも捕まえたジニョク。
ここで一旦彼は"リセット"されたのかもしれません。

また"リセット"という点では、ソヌとの関係も少し似ています。
元々ソヌとジニョクは高校生の時同級生でした。ソヌは卒業式の日、ジニョクに勇気を出して告白しますが、酷い言葉でソヌを傷つけるジニョク。しかし、ソヌは彼のヒドイ言葉が逆にきっかけになり、リセットされて我が道を行くことに。
現在は「ジニョクに感謝」しているなどと言いますが、もちろん傷ついていたはず。
そしてそれはジニョクも実は気にしていることでした。

このジニョクとソヌの関係性はソヌが同性愛者ということもあり、あやふやに描かれていますが、根本的には2人は次第に信頼を得た関係になっていくのがわかります。
ソヌがフランスへ行くという話が出た時で、そのあたりの微妙な雰囲気が出ているのが
良いと思いました。(しかし、彼らは2人ずっと同じようなプラトニックな関係だとは思います)

エンディングで、真の誘拐犯が彼らのお店にやって来ます。
ジニョクはもちろん自分を誘拐した犯人だとは知らずに、にこやかに接客。ジニョクはふと何かを感じたように描かれます。
ですがソヌに話しかけられ、ニジョクは意識がそがれて「ん?まあいいや」的に終了。このあたりは根本的に「人生は続く」的な流れで、個人的には大変良いなと思いました。このシーンで、ジニョクはもうあの事件から吹っ切れたのではないでしょうか。
スヨンが少し前にジニョクの元を去りますが、そのシーンもジニョクが精神的に独り立ちしたという前フリだったと思います。

1つ本編のお話とは特に関係ないですが、個人的に少々気になったのがギボムのケーキの食べ方です。
最初にお店に来た時は、ケーキをつまむという状況でしたし、食べる→美味しい→夢中で貪るというのは理解できました。
が、どのシーンも終始彼は手づかみでケーキを食していて、ケーキ自体がデリケートである意味特別感ある食べ物でもあるため、もう少し手掴みで食べるシーンを初期だけにしてほしかったかな…と残念に思いました。
元ボクサーで大雑把という設定だったのかもしれませんが、ソヌのケーキを愛しているのであれば、他店のケーキも同様にどれだけ手間をかけて作られているものかは明らかな訳で。ここはちょっとどうかな?と個人的に気になりました。ユ・アインさんが悪いワケではありませんが、もちろん。

ということで主人公でありお店のオーナーであるジニョクのトラウマからの脱却的な部分を、男性だけのケーキ店で甘くコーティングした面白い作品でした。
とにかく俳優さんが素敵で、その部分だけでも視聴する価値はあるかなと思いました!

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