ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ ミセン-未生- 感想

おすすめ度:100000%
YES?YES!度:100%
屋上度:100%
原題:미생(ミセン)全20話

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生きるとは、働くこととは?すべての人の物語。2014年放送のヒューマンドラマ。

 あらすじ・キャスト

幼少期から囲碁を習い研究生となり、プロ棋士を目指していた、チャン・グレ(イム・シワンさん)。しかし家庭の事情も重なり、囲碁の道を諦めることに。
囲碁という道を失ったグレは学歴もなくアルバイトをして暮らしていたが、とあるコネで大企業の商社にインターンとして入社することになる。
同期インターンとして、アン・ヨンイ(カン・ソラさん)、チャン・ベッキ(カン・ハヌルさん)、ハン・ソンニョル(ピョン・ヨハンさん)らと知り合う。
営業3課のオ課長(イ・ソンミンさん)の元で働き始めるが、コピーもろくに取れないグレは失敗が続き…。

感想

とんでもなく素晴らしいドラマでした。
控えめに言っても、最高。
かなり心に尾を引くというか、ずっとぼんやりと心のどこかに残り続けるタイプのドラマでした。
ストレスになりそうな重いドラマはちょっと…と、すこし敬遠していたのですが、観始めて2話で、もっと早く観ておけばよかったと速攻で後悔しました。
良いドラマでした…ほんとに。ただただ感嘆!!

チャン・グレ(イム・シワンさん)という26歳の男性が主人公ではありますが、彼だけではなく、彼の上司や同僚、家族。そして社会全体が主人公でした。
人には各個人それぞれドラマがあって、人が働くとは、生きるとは一体どういうことかという、視聴者に問いかけるようなお話。
そんな厳しさや優しさを、決してわざとらしくなく包み込んだストーリーでした。
これが本当にグッときてしまい、視聴していてかなりの結構な頻度で目頭が熱くなりました。

タイトルの「未生ミセン」ですが、囲碁の用語とのことです。ドラマ内で語られる意味として、まだ何にも”成って”いない石、つまり弱い石です。
オ課長がグレに「俺たちはまだ、ミセンなんだ」というシーンがあります。
一見、グレがミセン(弱い石)の象徴だと思ってしまうのですが、上司である彼らたちもまだミセンだったんだという点が、印象的でした。

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ワン・インターナショナルの「新人」4人
チャン・グレ役イム・シワンさん
営業3課所属
やや小柄なシワンさんですが、そんな雰囲気もとんでもなく役にハマっていました。
まるで、シワンさんのために書かれた脚本のようでした。
ある意味完璧な「ミセン坊や」の26歳。
ずっと囲碁の道を歩んで来たため会社勤めの経験がなく、ネクタイさえ結べないグレ。
入社当初はとても要領が悪く、会社組織でのチームプレーに馴染めず、浮いた存在になり本人も悩みます。
コピーさえ取れないグレが採用された理由がコネだと周囲に知られたこともあり、冷たい視線も気になります。

アン・ヨンイ役カン・ソラさん
政治外交を専攻していた才女。
ちょっと気が強そうな反面、繊細な部分も持ち合わせている役柄でしたが、カン・ソラさんとても嫌味がなくてピッタリに演じられていて良かったです。
インターンの時からずば抜けて仕事が出来て、周囲も一目置く存在。
しかしその反面、先輩からは生意気だと目を付けれられることにも。

チャン・ベッキ役カン・ハヌルさん
カン・ハヌルさん、頭の回る意地悪さがあるベッキ役が最高でした。
完璧な「上司の愛情不足坊や」が可愛くもありいじらしくもあり。
独文科を専攻。秀才であり、何でもそつなくこなすエリート的な存在。
自分の能力に自信があり、プライドが高すぎるのが短所。コネ入社で仕事ができないグレを、見下しているフシがある。

ハン・ソンニョル役ピョン・ヨハンさん
とにかくコミュニケーション能力がハンパない新人。
ファッションセンスが独特でチャラ男だが、なぜか上司たちも憎めない存在。
ブルーカラーの父親の事を尊敬している。
 
この4人が、会社という1つの独立した”世界”に放り込まれ、理不尽さや己の弱さに対峙し、時に感動し、時に絶望します。
しかしこのドラマは誰かのサクセスストーリーでは決してない、というところが本当に素晴らしいお話でした。

ゆるいネタバレありの感想

イム・シワンさんインスタグラムアカウントより

ずっと囲碁の世界にいたこともあり、26歳でコピーもろくに取れないチャン・グレ(イム・シワンさん)。専務のコネで商社にインターンとして、そしてのちに契約社員として営業3課に配属されます。
この部署に配属されたことが、グレの最もラッキーだった点かもしれません。

トップのオ・サンシク課長(イ・ソンミンさん)、キム代理(キム・デミョンさん)がいる課ですが、社内でも"泥くさい”風潮が残る課です。
ドライな部分があまりなく、完全にオ課長がお父さん状態の部署。
そのため、社内で浮いている部分もあり、オ課長は出世コースからも外れ気味です。

しかし仕事熱心でグレを何かにつけて気にしてしまう、まさに父親のように指導するオ課長。
加えてこっそり後からフォローしてくれる、グレのお母さんのようなキム代理。
グレは毎日ミスをして怒られながらも、会社員=共同作業を、後に最大の理解者となる2人の元で必死に学ぼうとします。

何もできなかったグレですが、めきめきと頭角を現す訳ではありません。
ただ彼の囲碁をしていた部分とリンクされますが、目の付け所は他人とは違う部分を
持っていました。
社会人未経験+新人という部分もあって、常識にとらわれない目線で物事を見る事が
できたグレ。次第に、周囲の目も変わってきます。

このドラマのスゴイなあと感心する点が、一貫して必ずしも物事を一面で捉えない点があると思います。
グレ含め他の新人3人が他と違った見方をしていても、いつも正義なワケではありません。
過去ずっと続けていた手法には、裏打ちされた理由が存在します。
自分では良いと思った方法が、ただの独りよがりだったという面もしっかり描かれていて、
なかなか身につまされるなあと視聴していて思いました。

ドラマ内では社内不正なども発覚する場面もあります。
正当化される訳ではありませんが、どうしてそうなったかという点では働いたことがある人なら理解しうる部分もあったのではないでしょうか。本当に上手いと思いました。

会社という組織の理不尽さ、歯車でありながらも意思を持つ個人ということ、自主性を必要とされながらも調和を重んじられるなど、矛盾しそうな両者をバランスよく持ち合わせることが必要とされるのが会社組織…。
「僕」と「僕たち」を使い分けるその難しさ、その辛さが痛いほど感じ、観ていて両頬をビンタされているようでした。
働くって、組織の一員になるのって本当に難しい…。

同期4人の中で1人だけ、契約社員だったグレ。
2年という契約が終わりに近づき、本人もそうですがオ次長(課長から昇格)やキム代理、
チョン課長が全員どうにかできないかと悩みます。
これまでのグレの仕事ぶりを見ていると、正社員採用一択。当然だと思います。
が、そうはいかないのが会社。これにもまた、「別の正義」がある訳です。(こういう既成概念こそ打ち破るべきで、本当に残念ですが)

このグレの採用も含め、ついに最終決戦が始まります。(ドラマのクライマックス事件です)
オ次長と専務が推す案件…チーム的には何かおかしいと思いながらも、各自の思案があり進めます。
オ次長のセリフで「結果を知っていても、やるしかない事がある」とありましたが、まさにその通りでした。

その戦いの代償は大きかった…。
しかし彼らの人生は終わったのでしょうか?そうではありません。
「石を失ってもゲームは続く」のでした。上手くいくことも、行かないこともある。
エレベーターに乗れなかったグレ。だけど、次を待てば?階段を使えば?方法はいくらでもありました。

私たちはみんな各自自分のゲームをしている。だけど「ゲームをしていると抜け出せなくなる」相反する2つの面を持ちながら、生きていく私たち。
YES?YES!常に疑問を肯定を胸に抱いて生きていかなければなりません。
生きるって難しい、だけど尊い

ということで、はちゃめちゃに心に響いた作品でした。
完璧なドラマを観れて、本当に良かったです。よくこんなドラマ作るね!?と感心したし、驚いた次第です。
キャスティングも本当に絶妙で、出演者全員が最高に素晴らしくて、感動しました。無駄な演技やわざとらしいシナリオがなく良かった…。

ただ、パワハラとセクハラ、社内暴力や女性差別的演出が過剰で、その部分はやはり観ていて非常に腹が立ちました。やや2014年の古い作品なのでしょうがないかもしれません、
今だといくら架空のストーリーとはいえ、時代に合ったトーンダウンした演出になりそうですが…。

どの課も個性的な上司たちでしたが、個人的に下で働きたい上司(代理)としては、ダントツで鉄鋼課のカン代理でした。(ベッキの上司)
ワン・インターナショナルとう会社にいたら…と想像するのも、少し楽しいです。全20話でしたが、まるでこの会社に少しの間在籍したような不思議な気分になりました。

もし未視聴の方がいたら、是非ご覧になって下さい。
本当に見て絶対に損はしないと思います!!とても心に残る、本当に真に素晴らしい作品でした、感動しました。

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