ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国映画 リトル・フォレスト春夏秋冬 (感想)

おすすめ度:83%
自分と暮らしを見直す度:99%
映像の美しさ度:100%
原題:리틀 포레스트 103分

f:id:mirume01:20210301190850j:plain

手紙を残して去った母。ソウルから故郷に戻った私…待っていたものとは。2018年公開のヒューマンドラマ。

 あらすじ・キャスト

田舎の故郷から教師を夢見てソウルで暮らしていたヘウォン(キム・テリさん)。
しかし、就職活動や彼氏との恋愛に消耗してしまい、へウォンはある日なんとなくリュック1つで故郷へ戻ってくる。
そこには、母と暮らした家があり、そして昔から何も変わらない自然があり、ジェハ(リュ・ジュンヨルさん)、ウンスク(チン・ギジュさん)という友達があり、四季があった。
彼女が見つけた大切なものとは…。

感想

五十嵐大介さんの『リトル・フォレスト』という漫画が原作の映画。日本では橋本愛さんが主演で映画化されました。
韓国版の映画では、日本版のものより、もう少し人との繋がりをやや強調して描かれていました。(どちらも良い作品でした!)

全体的に韓国の田舎の情緒や風景、そしてこの作品シリーズならではの料理がとても魅力的に美しく、そしてもちろん美味しそう!
派手なストーリー展開などは一切ない作品ですが、なにかふと心に残るような良い映画でした。
出演していた俳優さんたちも作品の自然さを損なわず、ピッタリのキャスティングでその点も本当に良いなあと思いました。

韓国の慶尚北道の軍威郡で撮影されたそうです。とても自然が豊かで、四季折々の美しい情景が映し出されていました。

ヘウォン(キム・テリさん)
ソウルの暮らしに「疲れて」しまったヘウォン。
ある日思い立って、故郷の田舎へ戻ります。実家は空き家。
数年前に母は突然書置きを残して、去っていました。
母の料理を思い出しながら、再び田舎の家で暮らし始めます。

ジェハ(リュ・ジュンヨルさん)
ヘウォンの同級生の男性。
ソウルで働いていたものの、自分の生き方を見つめなおし、故郷で果樹園を営む。
ソウルで付き合っていた彼女の事が忘れられない様子。

ウンスク(チン・ギジュさん)
故郷を離れず、そのまま地元の農協で働いている。
しかし、都会に出たいと望んでいる。
ジェハの事が少し気になっている。

ゆるいネタバレありの感想

リュ・ジュンヨルさんインスタグラムアカウントより

ヘウォンが誰も住んでいない故郷の実家に戻ったところからお話がスタートします。
彼女はこの田舎の家1人、再び(ほぼ)自給自足の暮らしを開始し、自然の摂理にしたがって「そのまましばらく」暮らしてみようと思います。

都会の暮らしに疲れてしまったヘウォン。
しかし、疲れた…と書くと、少々語弊があるかもしれません。何となく水が合わない、という方が適しているかも…。そのあたりの微妙な空気感をとっても良く描かれていると思いました。
特にヘウォンが仕事終わりに家でコンビニのお弁当を口にいれたものの、吐き出すシーンがあるのですが、このシーンは本当に秀逸だなあと思いました。
短いシーンですが、とても彼女の都会の心情を端的に、適格に表現しているとすごく感心しました。

リュック一つで実家に戻って来た彼女の元に、ジェハとウンスクが集います。
この3人の関係も親密になりすぎず、微妙なバランスで良いと思いました。
後半ジェハはヘウォンの事が好きなんだろうと思わせるシーンも、決してわざとらしくなく、そして非常に軽く匂わせるだけで、最後までこの作品の雰囲気を損なっていなくて良かった!
また時折、ジェハはへウォンに鋭い”意見”を投げかけるのですが、責める訳でもない、ただただ真理というか、へウォンの気持ちを見透かしたような、そしてジェハも言わば同類な訳なので、彼なりの共感とも取れるようなセリフも良いなあ…と印象的でした。

このジェハとへウォンの2人の一番素敵なシーンは、やはり夜の川の描写です。スイカを食べている2人のリラックスした雰囲気…本当に印象的です。

田舎暮らしについては、恐らくこの映画で描かれるような美点だけでは決してないことは容易に想像ができます。
ただ、ヘウォンの母が残した手紙のように、あの故郷がヘウォンの人生において心が根付く場所、戻れる場所として、存在しているという表現は素晴らしいなあと純粋に思いました。

 日本版と同じく、映像が美しく、そして料理が美しく、本当に美味しそうでした!
台所のデザインは心なしか、何となく日本版と似た機能的でシンプル、そして少しレトロなセットなのも良かったです。

出て来た食事ですが、すいとん、蒸し餅、マッコリ、パスタ、お好み焼き、クリームブリュレ、玉子とキャベツのサンドイッチ、天ぷら、豆乳スープ麺、栗の甘露煮、干し柿、パン、などなど。
そして犬が…はちゃめちゃに可愛い!!!とにかく…カワイイです。
この犬、最初にへウォンが帰って来た日にジェハが連れてくるのですが、そのそっけない優しさとシーンも好きでした。

全体的にコレといった山場もなく、強い主張がないストーリーかもしれませんが、それが逆に心に響きました。
「帰る場所」としてある故郷や親友たち、そして根本的に食べ物に向き合うというマインドを改めて映像化して観ると、気付きが多いなと思った作品でした。シーンがとにかく美しく、その部分だけでも良い映画でした。

こちらもおすすめ: