ドラマや映画の感想を書いてみるブログ

観た韓国ドラマや映画の感想を書いてみます。誰かの参考にでもなれば…。

韓国ドラマ Run Onそれでも僕らは走り続ける (感想)

おすすめ度:100%
新しい切り口のドラマ度:100%
会話のズレを楽しむ度:100%
原題:런 온(ランオン)全16話

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出典:런 온 | 프로그램 | JTBC

 決められた人生を生きてきたトップアスリートがある女性に出逢って、自分を見直すことに。2020年放送開始のラブストーリードラマ。

 あらすじ・キャスト

両親とも有名人で自身も韓国代表のトップアスリートのキ・ソンギョム(イム・シワンさん)は何不自由なく育ち、また親が望む道の人生を生きてきた。
一方で映画の字幕翻訳者で通訳者ののオ・ミジュ(シン・セギョンさん)は、苦労しながらも意思を通して、自分の仕事に誇りをもっていた。
ある日、ソンギョムの通訳をする仕事を請け負ったミジュだが、彼の違った一面を知ることになり…。

感想

かなり面白かったし、とっても良いドラマでした!!
そしてこのコロナ禍で閉塞感ある日々に”ちょうど良い心地よさ””優しさ”を提供してくれた、素敵な作品でした。

第1話から面白い!というよりは、回を重ねるごとにじわじわ出演者全員に愛着が湧き、作品自体を大好きになってしまいました。
また観ていてストレスになるシーンが少なく、ほんわかするシーンやクスっとくる部分も適度にあって、語りかけてくるような優しさ全体的にありました。

そして!
1)ジェンダーレス
2)声を上げること
3)古い社会通念への疑問
これらの問題に対するさりげない切り口が上手く、かなり大げさですが、2021年にふさわしい新しいタイプの韓国ドラマだと言っても過言ではないと思いました。(放送開始は2020年12月です)
ストーリー性も良かったですが、この3つの別の視点から考察しても、とても面白いドラマになっていました。

1)ジェンダーレス

このドラマで大変興味深かったのが、「ミジュとソンギョム」の関係性です。
彼ら2人はあまり男女の差を感じさせない雰囲気にしているな、と今までのドラマで描かれる男女とは少々違ってなり、見ていて非常に新鮮なカップルでした。
特にイム・シワンさん演じるソンギョムという男性が、性格的にも雰囲気的にもかなりニュートラルな存在に思えました。

見た目が小柄なシワンさんですが、そこがまさに重要なポイントだったのでは…という点。
衣装も顕著で、イム・シワンさんご本人の可愛らしくもあり、かっこよくもある雰囲気が最大限に活かされていました。
パステルカラー、小物のスカーフそしてビックシルエットなど、あえて男っぽい部分を封印した衣装が選ばれていたし、シワンさんがその衣装がとても似合っていました。
ソンギョムのキャラクターとして、いわゆる“男らしさ”を全面に出さない描写や演出が、大変興味深かったです。

ミジュも同様に、ヒールは履かずスニーカーを愛用。
比較的ゆったりしたシルエットの衣装が選ばれていることが多く、パンツスタイルが多く取り入れられていました。
ミジュもあまり身体的な“女らしさ”を出したファッションは、着用していませんでした。
しかし、それが逆にミジュという1人の女性の自然体の美しさや生き方を表現していて、とても印象的でした。
(もちろん、シン・セギョンさんご本人はとってもキレイでした!)

男女どちらとも、共有できそうな衣装や、ユニセックスの服が多いブランド(メゾンキツネなど)が使われていて、この点も新しさを感じました。

カップルとしてもミジュとソンギョムは男女共にイコールの関係性で、観ていて気持ちが良かったです。
男らしさ・女らしさの男女関係よりは、男女でありながらも、強く性差を感じさせないカップルの描写になっていて、ある意味これまでのラブストーリードラマのカップルの概念からすると、なかなか面白い2人の設定だなと強く思いました。

2)声を上げること/意見をいうこと

一番に感じた、このドラマの本当に素晴らしい点…。それは、ミジュとソンギョム、双方共に自分の考えや気持ちを、割とはっきりと言語化してくれているところでした!

ソンギョムとミジュの会話…2人は終始会話がうまくかみ合ってはおらず、序盤は特にかなりズレていました。(そこが面白いのもありましたが)
そのズレを2人はちゃんと話すことで解消しているのが、セリフでもよく分かったし、とても観ていて気持ちがよかったです。本当に長所!
彼らが何を考えているのかという部分をしっかり自分たちで語ってくれることによって、観ていてあまりストレスを感じませんし、より彼らの考えを理解しやすく、また共感しやすかった。

また誤解によって生じる、ドラマあるあるの面倒くさいシーンを、かなり排除してくれていました。
そのため、視聴していてイライラすることが少なかったのが、本当にありがたかったです。
加えて、観ていて実生活でも、このように自分の考えを素直に言葉で相手に伝えるのがいかに必要か、そして意見を伝えすぎるのも問題だ、という部分も陳腐な感想ではありますが、痛感しました。

ミジュとソンギョムだけでなく、ダナ(チェ・スヨンさん)やヨンファ(カン・テオさん)、
ソンギョムの母もしっかりタイプでしたね。
ダナは他の誰よりも、より強く意思表示をするタイプなので、それが裏目に出てトラブルにもなりますが…。
(でもダナさん、本当に大好きでした…第16話のコバルトブルーのパンツスーツ姿、素敵すぎてしびれました。)

3)古い社会通念への疑問

1)2)で述べたのと被るってしまいますが、このドラマは全体的に「今までの考え方では無理な部分があるよね?」というメッセージが、しっかり込められているお話だなと感じました。

性別についてや、多様な恋愛、さまざまな親子関係、年齢だけによる上下関係、権力に屈することなど、社会における色々な概念や通念に、疑問を優しく投げかけるような作りになっていました。

すこーしこじつけた感もありはしましたが、他にもアウティング、やりがい搾取などもエピソードで触れられていました。
また、ダナは常にマイボトルを持参しているキャラ設定など、数々の社会問題もエピソードで触れてあり、かなり好印象でした。

ゆるいネタバレありの感想

シン・セギョンさんインスタグラムアカウントより

ちょっと深読みしてしまいましたが、普通にはちゃめちゃに面白かったドラマです。
特にソンギョム(イム・シワンさん)とミジュ含め他のキャラとの会話のズレが、かなり個人的に大のお気に入りでした。
会話のズレに加えて、シワンさんの表情の演技が…最高か?!

ダントツでお気に入りのソンギョムは、終盤14話。(ちなみに14話は全てが最高でした)
ミジュはダナに連れられて、ヨンファの故郷で過ごすエピソード。
ミジュは1人で寂しくなり、ソンギョムに(彼の)写真を今すぐ送って!とメッセージします。
そんなソンギョムから送られて来た、1枚の彼の写真。

ソンギョム君…なぜ…虚無顔…。
この写真は、本当に本気で吹き出しました。
かなりの虚無感ある顔…どこを見ているか謎の目線と謎ポーズ、そしてアングル…。
ソンギョム君のセンス…好きすぎる…(愛)
このソンギョムなんですが、他にも頻繁に虚無の顔をしている時があって、本当に面白くて大好きでした。

誰かに整えられた美しいトラックを走っていたソンギョムが、自ら新しい道を見つけること。
ずっと自分で道を整備して、必死に走っているミジュ。
ダナ、ヨンファもそうでしたが、違った環境にいた人々が共に影響しあい、彼らなりのペースで悩み、模索し新しい道を走りだすというテーマが、タイトルRun Onにピッタリで素晴らしかったです。

ただ、ソンギョムは父親に反発しつつも、金銭的にかなり恵まれていて、恩恵を受けているのは結局はその親のおかげ、という部分は結構な矛盾を感じざる得ませんでしたが…。(まあここはドラマだな、という部分でした)

カン・テオさんインスタグラムアカウントより

この『Run On それでも僕らは走り続ける』の脚本家はパク・シヒョンさんという、新鋭の方だそうです。
新しい脚本家の方がどんどん違ったタイプのストーリーを採用していて素晴らしいです。
既成概念にとらわれず、また違った新しい価値観で、色々なタイプのドラマが今後も観れるのではないかという部分も含め、このドラマに重ねると面白いなと感じました。

ドラマ中に流れるOSTも良く、特に私はSeol Hoseung (SURL)さんが歌う"I Wish It Was You"という曲がとても好きでした。ゆったりとした曲に美しい男性のボーカルの曲で、ドラマでも特徴的でしたので印象に残っている方もいるかもしれません。
『スタートアップ:夢の扉』と使用曲の雰囲気が似ている印象です。

そして…スタートアップと言えば、驚きのカメオ出演(ゲスト出演)が最終話、16話に…。
俺たちのジピョン再び!!!
『スタートアップ:夢の扉』では、キム・ソノさん(キム・ソンホさん)演じる、ジピョンが我々のハートを奪っていきました。
そんなキム・ソノさんが突然画面に颯爽と出現されたので、視聴していて鼻血が『Sweet Home俺と世界の絶望』並みに出そうになったのは、言うまでもありません。
キム・ソノ(キム・ソンホ)さん…笑顔…ありがとうございました。
(スタートアップも非常に面白いドラマでしたので、興味のある方は是非ご覧ください)

ということで、色々と大変楽しめたドラマでした!
出演者のキャラと離れるのが寂しいような、いわゆる”ロス”の気持ちになってしまいますね…。
このドラマもまさに、最終回までずっとエピソードを追って楽しみにしていたのに、いざ終わってしまうと、相当な寂しさを感じる作品でした。
最終話の16話のエンドロールは映画風に仕上げてあったのが、余計に「終わりか~」とヒシヒシと感じて、ちょっとグッときました。
どんな作品もそうですが、コロナの状況で撮影や制作も大変だったのではと思われます。
楽しませて頂きました、本当に感謝したいです。

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